ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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人殺し

 リリウスが【黒い竜巻】をオラリオに呼び寄せた。

 それを見たという男の言葉に嘘はないのだろうと、フィンは歯噛みする。

 

 リリウスはその咆哮でベヒーモスの分身体であるモンスターを誘引した。それを目撃した者にとって、リリウスがオラリオに禍を運んだというのは、真実だ。

 

 その男にとって真実である以上、神の目には嘘がないと映る。だいたい察していても、これから起こる騒動に舌舐めずりをするのが殆ど。

 

「…………ああ、あれか」

 

 暫く考えた後に、思い出したように呟くリリウス。彼の言うモンスターを呼び寄せた、は纏めて殺すために誘引した時の事だろうが………。

 

「ああ、あの時のだね。助かったよリリウス、君のおかげで被害を最小限に出来た」

 

 【アストレア・ファミリア】やアーディが動こうとしたが、それよりも早く『勇者』が動く。

 

「モンスター誘引アイテムはあれど、あんな突然では使用以前に持ってくることも出来なかった。改めて、礼を言わせてほしい」

 

 勇者の言葉に敵意へと傾きかけていた民衆の空気が困惑へと変わる。

 リリウスを民衆と敵対させては駄目だ。名声も、富も興味ないリリウスは、容易く民衆を傷つける。

 

 悪しき存在、という訳ではない。ハードルが低い。破落戸同然の冒険者ですら、平気で民を脅せるが殺してしまう可能性を常に考える。しかしリリウスは殺すことを問題視していない。

 

「その時のことを勘違いしたんだろう? だが彼は、今回の戦いになくてはならない存在だった」

 

 ややもすれば、リリウスが居ないだけでオラリオの冒険者の半数以上が死ぬか全滅して闇派閥(イヴィルス)が再び活気づく可能性すら高かった。

 だからどうか民よ、筋違いな怒りを向けてくれるな。

 

 「リリウス・アーデが強くなるしかなかった子供である」という噂を消したのが、ここに来て痛手になった。

 

「はん! どうだかなあ、あのモンスター共と惹かれ合ったんじゃねえのか!? ケダモノは、ケダモノらしくなぁ!!」

 

 酔っ払いは止まらない。フィンは困ったような笑顔の裏で、拳を強く握る。戯言をほざくのがこの男だけなら良かった。だが、今の言葉はまずい。

 

「そういえば彼奴、ベヒーモスの力を使ってた…………」

「ああ、あの姿は間違いなくベヒーモスだった!」

「あの化物みてえな咆哮、俺も聞いたぞ!」

「黒い風も操っていたわ!」

 

 怯え、遠目で見ているだけだった冒険者が殆どだが近くで見ていた何人かの冒険者すら、リリウスに懐疑の目を向け始めた。

 

 そして、民衆達に自分達の疑いは間違っていないのではと錯覚させる。

 

「さっきから黙って聞いてりゃ、くだらねえ」

 

 と、そう吐き捨てるのは銀の髪を持つ狼人の少年。

 

「そいつがいなけりゃ、あのバケモンは倒せなかった。大して役にもたってねえ奴等が妬んで適当なことほざいてんじゃねえぞ!」

 

 口はすごく悪いが、庇っているようだ。

 

「そうだよ! リリウス君は、口や目付きが悪くてもいい子だよ!」

「そうね! お目々は怖いけどいい子だわ!」

「目つきは今関係ねえだろ。ま、悪人ではねえな」

「それには同意しますね」

「私も、エルフの誇りにかけて保証します」

 

 アーディやアリーゼ、【アストレア・ファミリア】も庇う。それでも天秤は懐疑に傾くのみで、敵意ではなくなっても信用には至らない。

 

「嘘よ! そいつが、善人な訳が無い!!」

 

 そう叫ぶのは、女の声。振り返ると怒りで顔を赤く染め、足取りも覚束無い女がリリウスを指差す。

 

「だってそいつは、大抗争で人を殺した!!」

「?…………………あ、お前あの時闇派閥(イヴィルス)といた女か」

 

 これにはアリーゼ達も困惑。つまりどういう? 彼女は闇派閥(イヴィルス)になった親しい者がいた? それだけなら、まあ珍しくはないが。

 

「ふざけるな! 皆、皆闇派閥(イヴィルス)なんかじゃなかった! ただの、一般人だったのに!」

「? ただの一般人が何で俺を殺そうとしたんだよ」

 

 もちろん冒険者に勝てるとは思ってないだろう。思ってないからこそ、一般人なら当たりどころで殺しうる力で石を投げた。

 傷ついても……なんなら本当は、死んでも構わないと思いながら。

 

 だが、あの時家族を、友を、恋人を何時の間にか失っていた者は多く、何より『あの時は一般人だって石ぐらい投げると』冒険者達すら認識している。故に………

 

「お前が、姉さんを………!?」

「…………お前の血縁は居なかった」

「よくも、父さんを!」

「お前が!」

「お前がああ!!」

「お、おいやめろよお前等!」

「お前のせいだ!」

「どの面下げて生きてやがる!」

「落ち着いて、あんな子供に!」

「死ね!」

「死んでしまえ!」

 

 並べられた食べ物を投げつける民衆。

 

「待って! 落ち着いて皆!」

「てめぇ等正気か! リリ坊がどんだけ強いかわかってんのか!?」

「我等に守ってもらえると思っているのか貴様等!」

 

 止めようとするアリーゼ達の言葉は、もう届かない。民衆の波の中から聞こえる誰かの声と一緒に流されていく。

 

 食べ物だけなら、幾ら投げつけられてもリリウスは気にせずむしろ「お、これ美味い」と味わう。が、頭へ向かい飛んでくる石に目を向け…………

 

「……………」

 

 ゴッ、と額に当たり跳ね返った石は石畳を数回跳ねる。リリウスが避けず、反撃もしない光景にアリーゼやフィンが困惑し、リリウスは視線を向けられ怯える小さな少女が石を投げた母の後ろに隠れるのを見つめ、己の手を見る。

 

「………………?」

 

 反撃しようとしたのだろう。敵意に敵意を、殺意に殺意を返そうとしたのだろう。だが、何故か止まった。

 

 その事をリリウスは理解せず、理解したアリーゼ達はだからこそ止めなくてはと決意し、故にその接近を許してしまった。

 

「死ねええええ!!」

 

 あの日目の前で虐殺を見た女でも、リリウスが怪物を呼んだと叫ぶ男でもなく、それは冒険者。

 死の7日間に何処ぞの闇派閥(イヴィルス)に親を殺され冒険者になったLv.1。

 

「……………!」

 

 一瞬で炎に包まれた。装備も武器も焼け崩れ、肉は一瞬で燃え尽き炎に包まれた骨は膝を突く前に崩れ灰へと変わる。

 

「きゃああああああああ!!」

「ひ、人殺しいいい!?」

「いやあああ!」

「なんとかしろよ冒険者あああ!!」

「逃げろ! 逃げろぉ!」

 

 混乱する民衆。逃げ出すだけならまだいい。中にはフォークやナイフ、酒瓶やキャンドルスタンドを手に取る者まで。これは、止めようがない!!

 

「そこまでだ、子供達よ」

 

 響く、流麗な声。されど放たれるは冒険者すら抑え込む威圧感。

 振り向けば、そこに立つのは陽光の如き輝く金髪を持った美青年。それは天に浮かぶ天体の中でも殊更高い神性を持つ太陽を司る神の一柱(ひとり)、アポロン。

 

「どうか怒りを収めてくれ。折角の宴が台無しだ」

「アポロン様!? 逃げてリリウス! お尻を守るのよ!」

 

 神威に圧せられながらも叫ぶアリーゼに、アポロンはフッと微笑み肩を竦めた。

 

「侮るなよアリーゼ・ローヴェル! このアポロンが、同意なく抱きながら私に抱かれるのは幸せだろうなどと宣う恥知らずに見えるか!」

 

 YESロリショタNOタッチは鉄則じゃろがい! と人類には理解不能なことを叫ぶアポロンに何柱かの神がウンウン、と頷く。

 

「ガルルルル!!」

 

 Lv.3の頃、眷属への誘いの返答を「断る。帰れ発情猿」と返し激昂した【アポロン・ファミリア】を逆にぶっ殺そうとして殴り飛ばされた記憶を持つリリウスは獣のように唸る。

 

 そう、唸る。

 

「…………あれ、私の神威が効いてない?」

「…………………?」

 

 

 

【リリウス・アーデ Lv.7

 

力∶I0

耐久∶I0

器用∶I0

敏捷∶I0

魔力∶I0

捕食者C

悪食C

強食F

毒牙H

咆哮H

治力I

《魔法》

【ラーヴァナ】

・狂化魔法

・詠唱式【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】

【ラーフ・シュールパナカー】

・変質魔法

万象補食(コンセプトイーター)

・詠唱式【月を喰らい太陽を飲め暴食の化身。首となっても歯を突き立てろ。肉親(だいしょう)を糧に我が身は千の姿を得る。貪り喰らえ、千変(かて)の傷を喰らい我が傷に、我が牙を以て汝に傷を】

《スキル》

狂餓禁食(プレータ・ナンディン)

強喰増幅(オーバーイート)

・強者を食らうことによりステイタス成長速度向上

・食事による回復

・常に飢える

天喰餓鬼(マハーグラハ)

・嗅覚及び聴覚の強化

損傷吸収(ダメージドレイン)

魔法補食(マジックイーター)

万物補食(オールイーター)

混濁精霊(スピリット・オブ・カオス)

・魔力に高域補正

・魔力変換

獣王化身(ベヘモット・アヴァターラ)

・猛毒生成

・黒風

・黒雲

・発展アビリティ耐異常を高域発現

・神性抵抗   】

 

「まあ、これだろうな」

 

 と、リリウスの前主神であるアストレアにだけ特別にその新生したステイタスを見せる。

 そも黒いモンスター達………古代地上に進出した力あるモンスターは『神殺し』。神の力の絶対無効の特性を持つ。

 

 ゼウスやインドラが雷霆を落とそうとアルテミスやアグニが矢を放とうと、名だたる大神の権能、天界に轟く神造兵器が下界を吹き飛ばそうと彼等は生存する。

 

 その力の一部を再現していたリリウスは、その存在の核とも呼べるドロップアイテムと魔石を取り込んだ。

 

「これも下界の未知か……………」

「これも下界の未知か、じゃないわソーマ。つまりリリウスは神を殺せる。神威に怯まず、天界に送還できてしまう」

 

 バレたら多くの神々が欲しがりそうだ。ソーマはリリウスという規格外がいても、他の団員は弱いし舐められそうだ。

 

「あくまで抵抗。無効化ではないのが救いかしら」

「頑張れば神威で抑えられるんじゃないか。シヴァとか、ゼウスとか。オラリオならウラノスか…………」

「貴方もでしょう」

「俺は、ほら………ナヴァグラハでも趣味優先する神だし」

「……………」

「それに、俺、別にリリウス止める気ないし」

「親馬鹿。貴方はリリウスに甘くし過ぎなの! 優しくしてあげたいのはわかるけど、根が善良なあの子を、あの子のために、キチンと叱ってあげるべきよ!」

「今のリリウスの神権(しんけん)は俺にある」

神血()の繋がりは消えないわ」

 

 お互い主神(おや)として譲れぬ物がある。

 正義を司る星乙女に、光と月と酒を司る飲んだくれ。夜空に関する二人の神の教育方針はまるで違う。

 

 

 

 

「まさかソーマがあの場に向かうとは。おのれ!」

 

 【ソーマ・ファミリア】過半数以上にリリウスを戻す事をやめるよう懇願されながら全て無視しやがった。

 メガネの人心掌握に手を貸してやったというのに、これでは手に入れるのにまた1年待たねばならない。

 

 しかし、既に狂った獣かと思えばまさかあんな顔もするだなんて、何処まで興奮させてくれるのだろうか彼は。

 

「とは言え、これ以上は危険か」

 

 介入しすぎればあの勇者に影を悟られる。何より正義を司るアストレアはあらゆる罪を見通す力を持つ。

 神の力(アルカナム)を封印されているとはいえ、調子に乗れば見つけられる。

 

 今回だって自分の不幸を冒険者の不甲斐なさのせいだと騒ぎ飲んだくれる馬鹿に情報を与え、実際にリリウスの虐殺現場を見た娘を使ったのだ。

 馬鹿な冒険者が勝手に殺されに行ってくれた時は感謝すら捧げた。

 

「まあ良い。勇者辺りが動くだろうが、不審にならない程度に人をぶつけ、殺させれば噂は消せまい」

 

 民に、世界にリリウス・アーデを拒絶させる。それだけならリリウスは完全に獣には落ちないだろう。

 今回の件は、まあギルドの豚が不満よりも戦力を優先し大した罰を与えぬ筈。

 

「まずは、ふむ…………ん? っ! ふふ、最近は君のことばかり考えているよ。待っていてくれ、君に届ける都市の悪意を!」

 

 

 

 翌日、リリウスが【ソーマ・ファミリア】の団長ザニスを殺害してオラリオから逃走した。




アポロン
リリウスを下手に勧誘し続ければ死者が出ると判断し、眷属達が強くなるまで見送ることにした。
最近は眷属達に拳とステップが重要な格闘技を教えてる。


アポロン「同意なく抱いて幸せを感じろとか駄目だよネ」←ベルの寝言の「アイズさん」を「アポロンさん」と勘違いして漸くGOタッチしようとする男神。

イシュタル「………………」←魅了するために男も女も抱く女神

フレイヤ「………………」←原作開始少し前、砂漠の王子(姫)の嫌がる顔にそそりながら抱いた女神。

アフロディーテ「あら、抱くまでもなく私に関われて幸せを感じない子なんているわけないじゃない!」←魅了により無理やり情報を聞き出すとかは品がないからやらないこの世で一番ゴージャスでラグジュアリーで尊くてエモエモのエモな男も女も神も跪かずにはいられない最強究極無敵な頭がすっからかんな女神
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