ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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ちなみにリリウスはまだ9歳。幼少期(まだその範囲だけど)の栄養失調、小人族(パルゥム)の種族特性でとても小さい。
これに仕事させておいて食事制限しろという小人族(パルゥム)の勇者がいるらしい


都市の悪意

 第二級冒険者。Lv.3。

 大半がLv.1のまま終わる冒険者の中で、2度のランクアップを行える者は希少だ。小規模どころか、大規模な派閥ですら団長になり得る。Lv.3が平団員など、それこそロキかフレイヤのところでしかありえない。

 

 そんなオラリオでも有数のLv.3の小人族(パルゥム)リリウス・アーデは、昼間っから酒を飲んでいた。

 周りには大量の空となった皿。げふ、と食い物と一緒に飲み込んだ空気を吐き出すが、決して満腹になったわけではなく追加で注文した飯を食う。

 

「…………相変わらず、すごい食欲ですね」

「んあ?」

 

 テラス席で食っていたためとても目立っていたため視線を向けられるも気にせず食事を続けていたリリウスだったが、声をかけられ顔を上げる。

 

「アミッドか……」

「はい。ここ最近、多くの店を荒らしているそうですね」

「何処ぞの勇者様に狩り場を限定された上食事を制限されたからな」

「大人しく従うんですね」

「美味い飯が食えるからな」

 

 そう言うと酒を飲む。まだ10にも満たない小柄な小人族(パルゥム)の子供が大人でも気絶しそうな程度数が高いドワーフの酒を………。

 

「お体に気をつけて」

「あー、問題ねえよ。俺の悪食(アビリティ)は毒に強いから」

 

 耐異常の事だろうかと首を傾げるアミッド。

 リリウスに目覚めた新しい発展アビリティ『悪食』は文字通り何でも食えるようにするアビリティ。元より毒の効果を弱めていたが、今のリリウスはポイズン・ウェルミスの毒ですら致死には至らず、経口摂取においては腹を壊す程度に収まる。後、どうしても飢えて肉がない時、大樹の迷宮で木の皮を剥がして食って消化できた。

 

「お酒が毒だと解っているなら飲まないでほしいですね」

「いやだね」

「というか本来、貴方の年齢でお酒は………」

「………………」

 

 説教が聞こえてきそうなので残りをかきこみ金を置いてその場を後にする。屋根へと駆け上がったリリウスを見て、アミッドははぁ、とため息を吐く。

 

「はは、振られちまったねえアミッド」

「………………」

 

 派閥の先輩をジトリと睨む。悪い悪いと肩を竦められた。

 

「でも俺としては、関わらないでほしいけどね。人食ってるって噂だぜ?」

「………………」

 

 噂ではなく、本当なのだが。とは口に出さないアミッド。確かにあの人にモンスターと人間の違いなど肉質と姿形以外になく、どちらも等しく死ねば肉なのだろう。

 でも、存外義理堅い人でもある。アミッドは2度助けられた。片方は借りを返すためだけ。片方は、そもそもアミッドは巻き込まれただけだが去っていく敵にわざわざ魔法まで使い彼は戦った。

 

 もしも、もしもあの人が全てが敵と思わず生きることが出来たなら、きっと周りに優しく出来たのだろう。

 

 

 

 


 

 

 

 リリウスはキレていた。必ずや邪智悪辣なる勇者の首元に牙を突き立ててやると心に決めた。

 珍しくダンジョン探索の依頼。小人族(パルゥム)を中心とした冒険者の行方不明事件の捜査と聞き、数週間ぶりに好きなだけ肉が食えるかと思えばチームを組ませられた。

 

「仕方ないだろう? 小人族(パルゥム)の殆どはサポーターだ。ガリバー兄弟は僕の言うことなんて聞いてくれないしね」

「俺だっててめえの命令無視しても良いんだぞ………」

 

 と言ったらリリウスが時折利用する店の裏メニューに関する情報と、その店での食費は1ヶ月間フィンが持つと言い出した。

 

「んで、具体的には何をすりゃ言いんだ勇者様」

 

 と、【アストレア・ファミリア】のライラが尋ねる。

 

「んなもん囮だろ」

 

 リリウスはくだらない質問に時間を取らせるなと吐き捨てる。

 

「……まあ、そうなんだけどね」

 

 

 

 

 小人族(パルゥム)中心の行方不明事件。わざわざ種族を限定したのは、例えば小人族(パルゥム)のサポーターがいるパーティーが消息を絶ち、しかし主神いわく小人族(パルゥム)の恩恵が繋がっている………つまり生きていると解ったからだ。

 

 小人族(パルゥム)だけのパーティーの場合恩恵が切れるのは一人二人。何者かが小人族(パルゥム)を攫っている。

 

 なので小人族(パルゥム)のパーティーを装い中層、大樹の迷宮を探し回る。リリウスのパーティーには2名の小人族(パルゥム)………。

 

 3人は正規ルートを外れず、しかし人気のない場所に移動する。リリウスがモンスターを殺しサポーターの二人がドロップアイテムや魔石、ダンジョンの採取物を回収する。

 

 珍しいが全く居ないわけではない小人族(パルゥム)のパーティーに見えるだろう。食える採取物を食いながら先を歩くリリウスは、何者かの襲撃を恐れている様子はない。

 

「勇者はまじでクソ野郎だ」

「え? あ、そんな………【勇者(ブレイバー)】をそんなふうに言うのは」

「言うね。あの野郎、俺を良いように使いやがって」

 

 と、リリウスは唐突に振り返りサポーターの片方へナイフを振るう。スキニングナイフの形をした第三級装備は質素な鎧ごと皮を剥ぎ取る。

 

「……………?」

 

 突然視界が赤く染まり何が起こったか分からず固まる小人族(パルゥム)は漸くむき出しの神経を風が撫でる灼熱の激痛に気付き()()()()()()()()を放り投げ叫ぶ。

 

「あ、ぎゃああああ!?」

「!? な、何を!!」

「殺気がだだ漏れなんだよカスが」

 

 リリウスは不愉快そうに顔を歪め、背負っていた巨大な鉄の箱を蹴る。ガタンと一部がスライドで飛び出し、中の剣を取る。

 オーダーメイドの【包丁入れ】に【皮剥包丁】をしまい、新たに出すのは【脱骨包丁】。

 

「くそ!!」

 

 毒を塗ったナイフで襲いかかるサポーター。毒塗りナイフが指ごと消える。

 

「!?」

「麻痺毒ね………」

 

 バリバリと指ごと安いナイフを噛み砕きながら呟くリリウス。驚愕し固まるサポーターの腕に鋭い剣先が突き刺さり、骨を僅かに削りながら肉を切り裂く。

 

「ぐぎゃあああ!?」

 

 肘から肩に向けて斬り上げ、肩で【脱骨包丁】をグルリと一廻りさせ骨と骨の隙間に差し込み腕を掴んで腹を蹴る。

 僅かに残っていた肉がブチブチと千切れ腕が外れる。

 

「あのクソ勇者、てめぇ等がスパイだと気付いて俺に当てやがったな」

 

 ふざけやがって、と腕を食うリリウス。そのまま指のない手で肩を押さえるサポーターの顎を蹴る。

 

「さっさと立て。んで、黒幕について教えろ」

「が、あ………ヴァ………」

「あ?」

「ヴァレッタざまああああああ!!」

 

 大樹の迷宮に響く大声は、モンスターを呼び寄せる。だが、問題はそこではない。

 上級冒険者の優れた感覚器官が捉えるモンスターの足音。そして、虐げられる弱者として培われてきた危機感知の本能がその足音を無視して一つの足音に意識を向ける。

 

「ひゃはははは!!」

「!!」

 

 通り名【殺帝(アラクニア)】、Lv.5の殺人鬼、

ヴァレッタ・グレーデ。

 正規派閥ではないが、名の知れた闇派閥(イヴィルス)には二つ名が与えられる。その中でも特に最悪なのが彼女だ。

 

 殺すことが目的。一人でも多く死なせるために暗躍し、一人でも多く苦しめることに快楽を見出す異常者。

 

「会いたかったぜ〜! 色々調べるとよぉ、フィンがお前のために動いてるのが解ったんだ。あの勇者様が! そんな事聞けば嫌がらせとしてグチャグチャにしたくなっちまってよ〜!」

 

 振るわれる大剣。【脱骨包丁】が砕かれる。技ではなく、純粋な鋼の強度。武器の優劣。

 闇派閥(イヴィルス)にも腕の良い鍛冶師(スミス)がいるらしい。

 

「クソが!」

 

 【解体包丁】シリーズ最大重量【骨絶ち包丁】を取り出すリリウス。手持ちの武装で一番の重量、硬度、鋭さを持つ包丁だ。

 

「おぉおぉ、反撃するのか。やってみろ!!」

「蜘蛛は不味いから、あまり食いたくねえんだかな」

 

 技量、能力値、経験。全てヴァレッタが勝る。唯一勝機を見出せるとしたら、向こうは時間をかけて痛めつける気で、こちらはさっさと殺すつもりという違い。

 

「舐めんじゃねえよ!!」

「ぐぅ!!」

 

 その勝機は、しかしLv差という分かりやすい理由で消え去る。剣が弾かれる。咄嗟に放さなければ、指の骨が砕けていた。左腕が斬り飛ばされたリリウスは左腕を掴み小人族(パルゥム)の首筋に噛みつき肉を食い千切る。断面を押し付けた腕は再び繋がる。

 

「はあ!? 何だそのスキル! 面白え!」

「うるせえ黙れ」

 

 【釣り針】を取り出し鎖を周囲に浮かせるリリウス。

 

「フィンに嫌がらせできりゃいいと思ってたがよぉ、決めたぜ! てめぇは壊さねえ! 手元においてあのクソ勇者を殺すまで玩具にしてやんよぉ!」

「やってみろ!!」

 

 縦横無尽、変則的に襲いかかってくる鎖をヴァレッタはLv.5に到達した技量と能力値で対応する。剣ではなく、蹴りをリリウスの腹に叩き込む。

 

「かっ、は!」

「ヒヒ。アタシはLv.5だぜぇ? Lv.3が調子乗っちゃいけねえなあ」

「…………数字遊びがそんなに好きか」

「あ?」

「ならあのクソジジイと遊んでろ」

 

 と、ヴァレッタに向かい飛来する槍。ヴァレッタが咄嗟に弾くと、壁を駆けながら飛んできた影が弾かれた槍を掴む。

 

「やあヴァレッタ」

「フィ〜〜ン〜〜!!」

 

 現れたのはフィンだ。

 

「よお、食うか?」

 

 と、ライラがリリウスにモンスターの肉(ドロップアイテム)を渡してくる。リリウスは肉を食い残りの傷を癒やしていく。

 

「あのジジイ、やっぱり俺が狙われてるってわかってやがったな」

「やっぱり?」

「ジジイが俺の情報統制するのを敢えて調べられるようにしてやがったからなあ」

 

 そして、フィンを敵視しているヴァレッタにそれを調べさせ狙わせた。何人か紛れていた闇派閥(イヴィルス)のスパイの内二人をリリウスにつけた上に18階層でリリウスのルートを教える合図を放置してやがった。

 

「お前って意外に頭はいいんだよな」

「ああ? 喧嘩売ってんのかババア」

「バッ!?」

 

 リリウスはライラの動揺を無視して【釣り針】を巧みに操り襲ってきたモンスターの首を切り裂く。

 戦闘音に誘われてやってきたのだろう。何匹かはLv.5同士の嵐が如き戦闘に無謀にも飛び込み肉塊に変わる。

 

「ヒヒッ。これならどうだよ勇者様!」

 

 と、その言葉と同時に現れるのは小柄な闇派閥(イヴィルス)達。おそらくは小人族(パルゥム)

 

「この程度………!」

「ここで問題! 口塞がれた冒険者とただのガキ、何人混じってるかなあ!?」

 

 と、ヴァレッタが口と目を縫われた小人族(パルゥム)の少女を掲げる。よくよく見れば動きが明らかにおかしいのと、ナイフを片手に彼等を追い立てる者達で分かれている。

 

「っ!!」

 

 【勇者】と【正義の使者】が一瞬動きを止める中、捕食者は動いた。

 

「知るか」

 

 最適ルートに存在する邪魔な肉を切り払い蹴り潰し勝ち誇った顔のヴァレッタに近付き、得意げに掲げていた腕の肉を食い千切る。

 

「がぁ!! て、てめぇ!!」

「グチ………」

 

 Lv.5の肉。リリウスがこれまで食ってきた肉の中で、一番の力。

 

「【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】」

 

 追加に、詠唱。

 

「【ラーヴァナ】」

 

 狂化魔法。リリウスの眼球が紅く染まり、ダラリと涎が垂れる。

 

「ヒャハ!!」

 

 Lv.5の肉と魔法による能力値の大幅上昇。Lv.3の枠組みを超える超加速。邪魔な肉を切り裂きながら、本命の獲物に迫る。

 

「このガキがあ!!」

 

 怒りに身を任せ乱雑に剣を振るうヴァレッタ。それを隙と判断する小人族(パルゥム)の冒険者達。

 それを演技と判断する因縁の勇者と、野生の勘で気付く獣。

 

 万物を(えさ)とする獣は、故にこそ気付いた。自身の牙で噛み切れぬ、眼の前のヴァレッタとは別の肉に………。

 

「!!」

 

 ズブリと身体に突き刺さる2本の騎士を救う安楽剣(スティレット)。人体を熟知した、殺さぬ刺し方。

 塗られた強力な毒は恩恵を持たぬ者なら即死させる猛毒。

 

「あらあら、聞いていたより可愛い顔ね!」

 

 幼さを感じさせる無邪気な笑みを浮かべる煽情的な格好をしたエルフの女。Lv.5の近接戦闘を得意とする闇派閥(イヴィルス)最上位の一人。

 

「しっかり刺しとけ。抜くんじゃねえぞ、何か食ったらそれだけで治るからなあそいつ」

「まあそうなの? 素敵、ずっと遊べるのね!」

「ディナ・ディース!!」

「ヒヒッ。こいつはもらってくぜえ勇者様! おら、てめぇ等はササッと死ね!」

 

 冒険者混じりの闇派閥(イヴィルス)達が攻めてくる。己の命を顧みない特攻。ヴァレッタとディナはリリウスを抱えてダンジョンの奥へと消えていく。




【包丁入れ】第四級装備。デカくて硬い。中に数本の剣を入れて持ち運べる。
内包装備
【皮剥包丁】第三級装備。反りのある包丁。皮を剥ぐのに特化している。
【脱骨包丁】第三級装備。鋭い切れ味で肉と骨の繋がりを経つ包丁。
【骨スキ包丁】第四級装備。脱骨包丁と同じく肉と骨を切り離す他、内臓を傷つけず腹を割く為の包丁。
【骨絶ち包丁】第三級装備。重量、切れ味、硬度が最高の包丁。値段も一番。
【骨切り鋸】第三級装備。骨絶ち包丁でも斬れない硬い骨をギコギコ斬るための鋸。
【鱗取り】第四級装備。魚類系、爬虫類系の鱗を剥がすための武装。
【釣り針】第三級装備。ちょっと強化されてる。肉を吊るす時にも使う。



ヴァレッタの目的。フィンの嫌がらせ

ディナの目的。暇つぶし、妹と遊ぶ玩具探し
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