ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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旅路

「シー・サーペントだ!」

 

 旅船を襲うは巨大な蛇のモンスター。ダンジョンではアクア・サーペントと呼ばれる水棲モンスター。

 強さはともかく、大きさだけならダンジョンでもそうは居ないほど成長したシー・サーペントは船へと襲いかかり──

 

「──邪魔だ」

 

 頭が吹き飛んだ。

 ただの蹴り一つで頭蓋が爆散した。巨大なシー・サーペントが壊した船から獲物をくすねる気だったマーマンは啞然と固まり、文字通り釣られていく。

 

「う、うわ! モンスター!?」

「ガルル!」

「グワウ!」

 

 甲板に落ちていくマーマン達に牙を突き立てていく大犬達。もちろん護衛の神の眷族も戦っているが、一番活躍しているのはあの2匹だろう。

 爪で引き裂き牙で貫き、顎で引き千切る。マーマンも負けじと応戦するが、やがて甲板に落ちてくるマーマンは居なくなり最後の一匹の頭蓋が食い千切られた。

 

「終わったか」

「ワウ!」

「ワフ!」

 

 口元を血で赤く染めた2匹の大犬は甲板に戻ってきた小さな主人にすり寄る。

 

「いやはや、助かりました冒険者様」

 

 スリスリ手を擦りながら近づいて来るのはこの船の客の一人。

 

「よろしければ何処に向うかお聞きしても?」

「エルリア」

「なんと! 実は私もエルリアに向かう用事がありまして。よろしければ船を降りた後も護衛として雇ってもよろしいですかな?」

「……………報酬は?」

「もちろん、払いますとも」

「そうか」

 

 それだけ言うと、シー・サーペントの体に鎖を巻き付け船に引かせる少年。

 

「あの、何を?」

「あれは俺の飯だ」

「た、食べるんですか?」

「食事を遠慮しろと言われたんでな」

 

 バイキング形式の食事を全て食い尽くてしまいかねないリリウスに、船員達は頭を下げお願いした。別に飢え死にさせたいわけでもないし、飯なら海に潜れば採れるので問題ない。

 

 

 

 

 

「い、いやぁ、エルリアに寄る前に、用事があったのを思い出しました! で、では私はこれで!」

 

 少年、リリウスが目茶苦茶食うので商人はそそくさと逃げていく。

 

 

 

 

「ありゃ、この道通るのかい? 実は最近モンスターに襲われた村があってねぇ、食うに困って村人が盗賊になってこの道を通る人から積荷を奪うって話だ」

 

 と、羊飼いの男が忠告してくれる。リリウスが神の眷族だと解らないのだろう。

 彼の相棒の牧羊犬は小さいが声の大きい犬種。年老いて尚働く牧羊犬に、2匹の猟犬は敬意でも払うように大人しくしていた。

 

「でもこんなめんこい番犬に守られてるなら大丈夫だねえ。ほれ、骨っ子やろうなぁ。坊主には飴も」

 

 蜂蜜を乾かして作る飴をもらった。口に含むと甘さと、少し苦みを感じる。シャバラとシュヤーマは貰った骨をガリガリ噛む。

 

「でもなぁ、その犬っころ達貸してくれんなら、暫く家で暮らしてええぞ。直に国から騎士が派遣されるだろうからねえ」

「殺すのか?」

「貴族様たちはねえ、税金払わなくなったら国民じゃないんだって。すぐ殺しちまうのさ………こういう時、助けるために税を取ってるんじゃないのかねえ。噂じゃ、異国の珍獣を買ってるって話だ」

 

 その言葉にリリウスは目を細める。羊飼いは大きな手で頭を撫でていたので気づかなかった。

 

「まあ俺はこれでも神の眷族だ。そこらの賊に遅れは取らないよ」

「神の眷属! はぁ〜、初めてみた。ああ、ちょっとまっててくれ」

 

 と、羊飼いは走り去り、荷物を持って戻ってきた。

 

「盗賊達もねえ、腹が減ってるだけなんだ。坊主が強いと言っても、戦わないに越したことはねえ。飯さえやれば、通してくれると思うよ」

「…………これはあんたの食料だろ」

「がはは! 気にせんでええ、いざとなったら年老いた奴をその日の肉にするだけだ」

 

 多分何を言っても渡してくるのだろう。本当に必要ないのだが………いや、その村人達も、知り合いなのかもしれない。

 

「飴の礼だ、届けておこう」

「……………気ぃつけてなぁ!」

「ワオン!」

 

 ブンブン手を振る羊飼い。リリウスはお辞儀を一つして歩きだす。

 

「ワフ」

「バウ!」

 

 シャバラとシュヤーマも吠え、リリウスの後を追った。

 

 

 

 

 

 暫く進むと人の気配。風向きを上手く使い匂いを隠しているが、Lv.7の冒険者の感覚は誤魔化せない。

 まあこのまま進めばいいかと歩くリリウスだったが、何か………騒がしい?

 戦い、虐殺、そのどれの音でもなさそうだ。むしろ、祭り?

 

「オーーーホッホッホッホッ!!」

 

 品性も知性も欠片も感じさせない笑い声まで響いてきた。

 

「貴方達、この世で黄金や宝石よりも尊い至高の至宝はなあに?」

「「「御身です!!」」」

「訪れただけで何もかも捧げたくなり、平伏する程の超絶最強無敵の美の女神はだあれ?」

「「「御身です!」」」

「そうよ! 天界下界そして地界(ダンジョン)さえ含めた三千世界! その中でも最も尊く美しい、存在そのものがありとあらゆる財の価値を上回るこのアフロディーテが来たのだもの、盗賊なんてやめやめ、廃業! おしまい! そんなことより、さあ、飲み明かすわよ!」

「「「はーーーい! アフロディーテ様ーーーー!!」」」

 

 真っ昼間からどんちゃん騒いで酒を飲み飯を食う集団。質の良い服をきた者の中に、明らかにボロ布を着た者が数人混じっている。

 

 子供にはジュースが配られている。

 

「「「飲んで飲ん〜で飲んで♪ 飲んで飲ん〜で飲んで♪ 飲んで飲ん〜で飲んで♪ 飲んで飲ん〜で飲んで♪」」」

「な、何じゃありゃあ…………」

「クウ?」

「クン」

 

 初めて見るその光景に、リリウスは固まる。シャバラとシュヤーマも何あれ、と言った顔をしていた。

 

「お、そこの小人族(パルゥム)ちゃん! 良いところに!」

「ほら、あの木に登ってアフロディーテ様に花吹雪を!」

「…………………」

 

 子供が登るには高く、大人が登るには細い木を指差されながら花びらの入った籠を渡される。良く解らないが、これを撒けばあの宴に参加して飯が食えるのだろうか?

 

 ヒョイヒョイ登って木に登ると花弁を撒く。

 

「オーーーホッホッホッホッ!」

 

 アポロンの陽光のような金髪とも違う、まさに黄金とも呼ぶべき艷やかな金の髪に、緑玉(エメラルド)の瞳。

 昨今漸く美醜の感覚が解り始めてきたリリウスからしても、美しいのだろうと感じる、恐らく美の女神。

 

 品性も知性もまるで感じない。イシュタルでさえ品性はともかく知性はあったのに。

 

「あら、何をしてるの、そこの小人族(パルゥム)? 私が幾ら美しいからってそんなところから覗くなんて、もう、仕方ないわね!」

「……………………」

 

 リリウスは花弁が入った籠をひっくり返す。数枚ならヒラヒラ舞ったであろう花弁は、しかし密集し空気を押しのけ女神へと降り注いだ。

 

「のびゃー!?」

「「「ア、ア、アフロディーテ様ーーーー!?」」」

 

 


 

 

情報力の暴力、二発目を喰らえい!

 

原作時リリルカ・アーデ

Lv.2

二つ名【蜜酒鼠(シュシュナ)】。ただし原作フィルヴィスと同じく情報を取り上げないようにしてるので二つ名は公式ではなくソーマが名付けた。元ネタはアムリタを口の中に隠していたアスラの一人シュシュナ。蜜の塊に化けたインドラを舐めようとしてアムリタを取られた。おそらく甘党。

 

「もうしかして、小人族誰もの憧れになれていると思ってます? 盛大な詐欺で世界を騙す、あなたがぁ?」とある勇者に向けて言うセリフ

 

 

「すごいすごーい! サポーター囮に逃げ出して、そのくせサポーターより地上に戻るの遅くってもなっさけないほどボロボロでも冒険者を続けるんですねえ」何処ぞの冒険者に吐くセリフ

 

あれ? これリリの声で再生したら、なんか既視感があるような?

 

因みに冒険者が良く利用する酒場の猫人の娘は、なんとなく好きになれないらしい。本人曰く汚れた鏡を見せられる気分だとか?

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