ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
女神が花弁に埋まったのを見届け、リリウスは食事に参加する。
骨付き肉をとり齧り付く。どうやったら両側から骨が飛び出てかつ、骨を切らずに肉をまっすぐ切れるのだろうか?
まあ食っちまえば同じだが。
「ぶわっは! ぺっ、ぺっ! ぶぇー! は、花びらが口の中にぃ!」
「アフロディーテ様ー! 美の女神がしてはいけない行為をしていますよー!?」
口の中に入った花弁を唾と一緒に吐き出すアフロディーテ。美の女神というか、女としてあんまりな姿をアフロディーテの眷属が慌てて隠す。
「うぇ〜、まだ喉の奥に何か張り付いてるような感覚がする〜………うぅ。ちょっとあんた! いきなり何してくれんのよー!」
「…………………」
リリウスはチラリと視線を向け、興味なさそうに食事を再開する。
「ちょいちょいちょーい! 美の女神を花弁で埋めておいてなんなのその態度! はっ!」
と、アフロディーテは何かに気付いたように肩を震わせる。
「私の美しい姿を他の誰にも見せたくなかったのね!? なら仕方ないわ、この最強無敵の超絶美を独占したくなるのは人の性だもの! でもごめんなさい、私は世界のために、この美しさを世界に示し続けなければならないの!」
「………………………?」
「何よその珍獣でも見るような目は」
リリウスは女神の言ってる言葉の意味が解らなかった。解らなかったが、とにかくすごい自信を感じる。
「ん? ていうか、あなた『魅了』されてない? もしかして旅人? 盗賊の子供達の一人じゃないのね」
「え、
「武器も持ってたし、てっきり盗賊の一人かと。めんご☆」
どうやら武器を持つリリウスを見て、武装した盗賊の一人………実行に移す大人と思ったらしい。
子供のような体躯から成長しないのではなく、そもそも赤子も他種族のものより遥かに小さいのだ。
「盗賊ね……積荷を奪ってた奴等か。突き出すのか?」
「
肯定でも、否定でもない。それは拒絶。
下手すれば直に来るという領主の騎士団に対し喧嘩を売るも当然と、言い切った。
「この子達はもう
傲慢、豪胆、高慢………人ならざる神故に、人の法を無視する者。
「あら、遅かったわね」
「あ、貴方は…………」
現れた騎士達は、全員眷属。隊長らしい男はLv.2だろう。大国など人が多いと、外の世界でも時折Lv.3ぐらいまで成長出来るものもいるらしいが…………。
「私? 私はアフロディーテ! 天界下界はもちろん
騎士達は確かに凄い美人だけど、というような反応をして顔を見合わせる。
「…………最も美しい女神ってフレイヤ様じゃ」
「はぁ〜!? 何言ってんのよ、私に決まってるでしょ! フレイヤなんてちょーっと強い眷族手に入れただけで崇められてるのだけの小娘! 美と愛、戦争と豊穣とか色々被ってるけど、私は更に金星と海をも司るちょーすっごい神格なんだから!」
司る物が多いなら、確かに凄い神なのだろうが、なんだろうこの小物感。三下感と言い換えても良い。
とにかく、凄いはずなのに全然凄く見えない。
「は、はあ………それで、アフロディーテ様。我々はこの辺りを荒らす盗賊の討伐に来たのですが」
その言葉にボロ布を着た老若男女が震える。
アフロディーテは笑みを崩さず答える。
「全員、私の可愛い
「そうですか。では、その者達を引き渡していただけるでしょうか?」
「もちろん、いーや!」
「………………は?」
アフロディーテの言葉に固まる隊長。アフロディーテは、目を細め彼等を見据えた。
「私の物を奪おうなんて傲慢よ。でも許してあげる。さ、そこをどきなさい」
「い、いえ、しかし! 我々は、賊の討伐に………!」
「その賊を連れて行ってやるって言ってるの。良いじゃない、どうせ畑を失って税を納められないなら、野垂れ死んで欲しかったんでしょう?」
責めてる………訳ではなさそうだ。それも人の在り方と認めた上で無視している。
「
「っ! か、勝手なことを言わないでいただきたい! 税を納めるは国民の義務! 守られる者が払う当然の対価!」
「でも、
兜で顔は見えないが、恐らく怒りで顔を赤く染めていることだろう。肩もプルプル震えている。
「傲慢な! ならば、貴方は下界全ての苦しむ民を救うと言うつもりか!」
「そんなわけ無いでしょ。私は
下界の子供達を救う為に………
「ならば邪魔しないでいただきたい!」
「だから嫌だっての。だって、
それが不快だった。だから酒と飯を与えた。たまたま彼等が女神の視界に入ったが故に救われる。たまたま視界に彼等が映ったが故に、彼等を救う。
「そ、そんな道理が通じるとでも!?」
「
「………………!」
「安心しなさい。貴方達がいくら税を貰っても仕事をしない奴等だなんて言いふらしたりしないわ。つまらないし」
まあ、モンスターに村が滅ぼされて、滅ぼされた村の住民が彷徨っている時点で、少なくともこの領地に於いて税を受け取る者達はまともに働いていないのは確かだ。
「っ! 捕らえろ! 抵抗するなら、殺しても構わん!」
「あら、そうきちゃうの。目を閉じてなさい、ちみっこ」
と、女神は呆れたように言う。あれで交渉のつもりだったのだろうか?
「力で黙らせようなんて野蛮ね。そういうの、好きよ。でも──」
女神の瞳が妖しく光り、空気が………空間が、女神の存在そのものに支配されていく。
「『跪きなさい』」
木々が、草花が、大気が、虫が、人が、全ての存在が『奪われる』。目を、心を、魂を………それすらないはずの風でさえ、女神の神威の前に音を立てることを忘れる。
「「「ははあぁぁぁぁ!!」」」
即座にひれ伏す騎士達に、女神はニッコリ微笑んだ。
「そ、それでいいの。じゃ、この子達は連れてくわね」
「はい、どうぞご自由に!」
「アフロディーテ様、美しいー!」
「そのおみ足で後頭部をふみふみしてくださーい!!」
これが女神の魅了。イシュタルも使ってたそうだが、ベヒーモス食ってなかったらこうなってたかもしれないのかと思うと食っててよかったと改めて思えた。
「さて、それじゃあ次はあなた」
「…………俺?」
「何か面白いことをするのでしょう? 女神の勘は当たるの。暇つぶしよ、教えなさい」
「嫌だ」
「……………あら」
「『魅了』でもして、聞き出したらどうだ」
「やーよ。そんなの、品がないじゃない」
髪をかきあげ笑うアフロディーテに、リリウスは『魅了』を喰らいブヒブヒ鳴いてる騎士達を見る。
「『魅了』なんて嫌な事避ける時に使えばいいの。やりたいこと、知りたいことに使ってたら、
飲んで騒ぐのは品がある行動だったのか、リオンが下品な、とか良く言ってたからてっきり、などと的外れな感想を持つリリウス。
「だから、そうね。