ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
インファントドラゴンはリリウスが街の外まで運んだ。
踏み潰せてしまいそうなほど小さなリリウスが自分を抱えピョンピョンと屋根の上を駆ける姿にインファントドラゴンのファンズは目を丸くしていた。
本来ならこのままファンズと共に次の街に向かうほうが楽なのだろうが、リリウスはファンズに近くの森に隠れるように伝え街へ戻っていった。
向こうはこちらで遊ぶといった、ならばこちらも利用できるところは利用する。そう思った、のだが………
「「「シャンパン片手にアフロちゃ〜ん! エルリアの街で荒れ狂う〜!!」」」
「「「潰れる団員いるけれど〜♪ そんなの俺たちゃ関係ねえ♪」」」
「「「飲んで飲〜んで飲んで♪ 飲んで飲〜んで飲んで♪ 飲んで飲〜んで飲んで♪ 飲んで♪」」」
「さあ! もっと騒ぎなさい私の可愛い
「「「フ〜〜〜〜〜!!」」」
「…………………」
やっぱ別の神にしようかな。
「富者にも色々あるの。商人は蓄え、領主は備える。なら、私みたいな富者はどうすると思う?」
「……………騒─」
「そう! 与えるのよ!」
施す、とは違う。要は金を使うということだ。
その際はスラムの浮浪者だろうと街の資金を牛耳る商会だろうと平等。美の女神にとって等しく同じ。
故に貴賎無く、存分に女神を崇めればいい。
「その為には宴よ宴! さあ、老いも若いも、富める者も貧しき者も私を崇めなさあい! オーーホッホッホッ!」
「「「はーい! アフロディーテ様〜〜〜〜!!」」」
「犯人探し中の衛兵まで参加してたな」
「私の美しさに職務も忘れてしまったのね。ああ、美しさって罪だわ!」
どちらかと言うと自棄になって宴で騒いでいただけのような?
まあ昨日、賊に奴隷盗まれるわモンスター解放されるわ金は盗まれるわでの最中朝まで寝ていたのだから仕方あるまい。
ちなみに犯人は行方をくらました
「それで、貴方はさっさと出て行きもせず、私に何の用かしら?」
「こいつ等のステイタス更新」
「ワウ!」
「バフ」
「あら、その子たち眷族なのね? 主神はだあれ? 面白いことするじゃない」
「ヘルメスにやらせた」
「………やらせた? あっはは! 何それ、おっもしろい!」
神が人に使われる。これもまた下界の醍醐味だろう。神の中には子供にこき使われる事を楽しむ奴もいるかもしれない。
「でも1年経ってるの?」
「これを使う」
「『
違法薬を見ても特に驚く様子はなかった。楽しい事優先の神らしい。
【シャバラ Lv.1
力∶G209
耐久∶H187
器用∶l93
敏捷∶F305
魔力∶l0
《魔法》
【】
《スキル》
】
【シュヤーマ Lv.1
力∶H134
耐久∶H123
器用∶H167
敏捷∶G289
魔力∶l0
《魔法》
【】
【】
《スキル》
】
「…………魔法スロットに空きはあるけど、どうやって詠唱するのかしら?」
「…………ワンワン?」
「ワフ?」
「クウ?」
アフロディーテの言葉にリリウス、シャバラ、シュヤーマは同時に首を傾げた。【アフロディーテ・ファミリア】の女性陣が胸を押さえて倒れた。
「で、あんた一人がついてくんのか?」
「当然でしょ? あの子達は私の可愛い
と、ファンズの鼻先を撫でるアフロディーテ。
「それはつまらないわ。この子達は、まだ内緒。だから、暫くは貴方が私の
陽光に輝く金の髪、快楽と愉悦に満ちた翠玉の瞳を持つ女神は、獣が織りなす物語を、退屈という毒から神を癒す唯一の特効薬、未知を期待し微笑む。
リリウスは神の娯楽に付き合わされるのを面倒と感じながらもシャバラ達の更新には必要なので仕方なく付き合う。
「行くぞファンズ。他の
「ああ」
「それと、これは神からの助言。これからもお宝は盗んだほうが良いわよ? じゃないと、狙いが喋るモンスターだって気付かれちゃう」
「…………………」
その金で豪遊したいだけだろうに、理にかなった言葉だ。知性も品性も感じないが、それでもやはりアフロディーテは全知の神なのだろう。
「まあ、どいつもこいつも税を私欲で使ってる屑だろうからな。そうさせてもらう」
「ならばあちらだな。闘争の気配がする」
「面倒事は避けたいんだが」
と、そこでリリウスは勢い良くその場から飛び退く。人影が増えていた。
リリウスの類稀な五感をあっさりすり抜け接近し声をかけてきた何者か。
振り返ると同時に剣を向けた先にいたのは、白い肌をした美しい少女。どうして今まで気付かなかったのか自分でも疑問に思うほどの存在感は、彼女が人ならざる者であることを教えてくれる。
というか容姿が人のそれではない。
10の腕を持ち、額には第三の瞳。相対すれば知識がなくとも理解させられるそれは、
「…………精霊?」
「きひっ!」
リリウスの言葉に精霊は楽しそうに笑い、10の腕でリリウスに触れる。
「………瞳は、紅くないか。
「紅い瞳?」
「こちらにあるのは残滓のみか。まあよい、あんなもの、お前の本質には相応しくない」
紅い瞳と聞いて思い浮かぶのはフィンの【
「ちょっと、精霊風情が、私の玩具に馴れ馴れしく、どういうつもり?」
瞬間空気を支配するのは、女神の神威。美の女神としてでなく、戦を司る戦神としての側面の神威にシャバラとシュヤーマは思わず伏せる。
「ほお、戦の女神。我が主と同じ!」
「はん、見るからに野蛮な生粋の戦神と一緒にされるのは不愉快ね。見たところ、ヴェーダの精霊のようだけど………ん? ヴェーダの、戦の女神? まさか、カーリーの精霊!?」
「ああ、我が主は闘争と殺戮を司る女神カーリーだ」
聞いたことがあるような気がする。ヴェーダということは、ソーマの同郷なのだろうが。
「改めて、妾が与えられし名は近付き難し者『ドゥルガー』。存在目的は殺戮。リリウス・アーデ、どうか妾の物になってくれ」
「『
その神もまた、地上の民を愛していた。それは本当だ。司る権能が闘争や殺戮故に、地上に降り立てば屍の山が築かれ血の川が流れるだろうが、それでもその女神はその女神のあり方で人類を愛していた。
その頃は、多くの神々が己の分身、精霊を地上に送っていた。その女神も無限の自分から切り離した有限の分身を地上に送る。但し、彼女は英雄の助力も下界の救済も興味はない。人とモンスター、或いは人と人との闘争の果ての結末であれば闘争の女神は受け入れよう。
だから、送ったのは殺戮兵器。自らに死を捧げる殺戮の化身を助力するように命じた。
恨みのままに魔物を殺す狂った英雄でも、人同士の争いに疲れ全てを滅ぼそうとする騎士でも。誰でもいい。女神に捧げる多くの死を齎す者を探しに、その精霊は地上へと降りた。
その男は英雄ではなく、英雄に討ち滅ぼされる悪でもなかった。
その男の一生は神の興味を惹かず、精霊も見向きもしなかった。
それは事実だ。なにせ、精霊が興味を抱いたのは彼が死ぬ、まさにその瞬間なのだから。
『凶猛の魔眼』。この世の恨み、怒りを束ねた瞋恚の魔槍。純然たる下界から生まれた力の中でも最強。怪物も人も等しく殺戮する暴威の化身。
だが所有者はその力を疎み、抑えつけていた。せっかくの力を嫌い、何時も何時も殺しの手前で踏みとどまっていた。
だから精霊は直ぐに興味を失った。彼の死に際に再び現れたのは、たまたま見かけ、槍が次の所有者に移るのを見届けるためだ。
死に際の彼から殺意を感じた。魔槍と溶け合い、命尽きるその瞬間まで殺戮を行うのかと見守り、しかし彼は魔槍をへし折った。
神すら予期し得なかった下界の未知の結晶。それを人の身で2つに分けた。
彼はちゃんと怒っていた。彼は世界を憎んでいた。
それでも、彼は力を拒絶した。その怒りも憎しみも己だけのもの故に、何物にも染められてなるものかと。
己の血縁すら飲み込むであろう魔槍を受け継がせぬと破壊した。ああ、なんて…………尊く、綺麗だと思った。
死ぬその瞬間に、精霊は彼を見初めた。
見惚れている間に魂は天へと還ってしまった。精霊は戻らなかった。天に戻り、
あれは、あれだけは己のものだ。たとえ漂白され輪廻の輪に戻ろうと、何百何千の時を無為に過ごそうと、必ず手に入れると誓った。
彼の娘達が眠る地に潜り、彼の魂がそこに惹かれ、現れるのを待ち続けた。与えられた役目を放棄した殺戮精霊。その名はドゥルガー。
「お前が生まれる前から愛している! 契約しようぞ、我が契約者!」
ドゥルガーちゃん。
神の別名を与えられるほどとても強い大精霊。
アフロディーテが『神々の祈り』と呼んだ理由は神話におけるドゥルガーは神々がシヴァとヴィシュヌにアスラ殲滅を願ったらなんか光って、神々も光って、その光が集まって出来た女神だから。