ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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戦神達

 精霊。オラリオにも存在し、エルフなども住処が近いから精霊の住処に都を作ったりするが、英雄譚に語られる大精霊などは最早歴史の彼方の伝説になって久しい。

 

 その存在が確認されれば、精霊を場合によっては神よりも崇めるエルフ達が狂喜することだろう。我こそはと名乗りを上げ、或いはこのお方こそ英雄時代にすら現れなかった真の使い手などと宣いリヴェリア(ハイエルフ)を推すだろう。

 

 英雄譚における精霊が最も契約していた種族はヒューマンなのに。

 さて、そんな我等こそは精霊の隣人など恥ずかしげもなく宣うエルフがこの現状を見たらどう思うだろうか?

 

「断る」

「な、何故!?」

「いや、初対面だろ」

「だが妾はお前の魂を覚えている!」

 

 他種族を見下すエルフが嫌うのはドワーフだが、特に蔑むのは小人族(パルゥム)。全種族の中で最も貧弱。搾取される側の存在。

 懸命に生きようとする様を嘲笑い、知恵を以て成り上がった商人などは浅ましさが透けて見えると嫌悪する。

 

 そんな小人族(パルゥム)に大精霊……それも、感じる力は勿論だが与えられた名からして大精霊と言う枠組みの中でも間違いなく最高位のドゥルガーが迫る光景を見れば、泡吹いてぶっ倒れそうだ。

 

「契約者なんざエルフに頼め。両手を上げて感激してくれるぞ」

「断る! 妾、彼奴等好きじゃない!」 

 

 古代より存在するドゥルガーは、エルフが同族をして引き篭もり(恥知らず)と呼ばれていた時代より地上を見てきた。

 

 恩恵なき時代、魔物共の放つ炎よりも頼りなくとも、雑多な魔物なら滅ぼせる威力だけ見れば下界最強の種族でありながらその魔力は結界に費やし森に引きこもった臆病者。

 

 そのエルフが隣人とする精霊も、清浄な魔力を好む微精霊。単純に住処が被った場合が殆どだ。後は、雲泥の差はあれど同じ魔法種族(マジックユーザー)故にほぼ現象に近い微精霊なら寄ってくるだけ。

 

「妾はお前としか契約せん! お前が死んだら、今度こそ魂を手に入れるのだ!」

「余計嫌だわ」

 

 足に抱きつく精霊を蹴りつけるリリウス。アフロディーテはそういえばカーリーがその昔、荒れ狂って暴れた際に下界を吹っ飛ばしそうになり慌てて夫が割り込んで止めたという話を聞いたことがあるな、と思い出す。

 

 その際正気に戻りおどけて舌を出したが、それが天界、下界を含む世界最古のテヘペロ。

 まあリリウスは踏みつけても全然舌とか出しそうにないけど。

 

「何故じゃ!? こんなにお主を愛しているのに!」

「俺は愛してないから」

「まさに、正論!」

 

 反論のしようもない正論にドゥルガーは項垂れる。

 

「あら駄目よリリウス、愛をそんなぞんざいに扱うなんて。ええ、愛の女神(わたし)の前でそんなことは許さない」

 

 と、アフロディーテからのまさかの援護。さっきまで玩具取られた童のごとく文句を言っていたのに。

 

「俺の意思は?」

「勿論、尊重するわ。愛を受け入れるのも、放り捨てるも貴方の自由。でも、()()()()()()()()()()()()

 

 要するに、相手をまるで知らぬのに拒否するなと言うことだろう。

 

「取り敢えず一晩寝て体の相性を確かめてから心の相性を………と言いたいところだけど、あんたまだ子供だしねえ」

 

 子供じゃなかったら一晩寝ろと言うつもりだったのか。流石愛の神。その辺りの寛容さはアマゾネス以上かもしれない。ちなみにリリウスはちゃんと意味を理解している。

 

「それに、この子は私やアレスと違って生粋の戦神の精霊。それも頭の色々可笑しいヴェーダ。精霊の力はもちろんだけど、戦い方を教わるのも損にはならないはず」

「そうじゃそうじゃ! もっと言ってやれ女神よ!」

 

 戦神………戦を司る神の分身が持つ『武』は、確かに興味がある。ダンジョンのない外の世界において高めるべきは、まず間違いなく技術だろう。

 

「愛を利用できる男になりなさい。それが良い男への一歩よ」

「…………………」

 

 バチコーンとウィンクするアフロディーテ。脳内に紅い髪の女が浮かぶ。そういえば彼女も「私達の弟だもの」とやたら「イイオトコ」とやらにしようとして来た。

 

「…………まあ、利用できるなら良い。こいつ等と一緒だ」

「クウン」

「キュ〜」

 

 リリウスの腕に頭を抱きかかえられながら顎下を撫でられ気持ちよさそうに目を細めるシャバラとシュヤーマ。

 

 そういえば一応非常食と言っていた。なんでも食えるリリウスに本当に必要かは知らないけど。

 

「ところでドゥルガー、貴方どういう契約の仕方するの? 武器化かしら、それとも力を貸すの?」

 

 そういえばアーディの語る英雄譚でも精霊はその身を武器に変える武器化タイプと共に戦うタイプが居た。

 因みに前者はアルゴノゥト、後者はアルバートというのがそれぞれ有名な英雄だ。

 

 ミノタウロス一匹倒して姫を救っただけのアルゴノゥトはともかく、黒竜の片目を奪い後にオラリオと呼ばれる地から追い払ったアルバートは、【ゼウス】と【ヘラ】が敗走したことを考えれば、間違いなく下界史上最強。

 

 それだけ精霊の力は規格外。そしてドゥルガーは殺戮の為の、間違いなく戦闘用精霊。

 

 精霊の強さのみならずアルゴノゥトとアルバート個人の強さも関係あるだろうが、まあ精霊の力は確かに損にはならない。

 

「無論、共に歩む。そも『武』を授けろと言ったのは貴方であろう」

 

 白い生足をリリウスの首に絡め、10本の内4本の腕でリリウスの頭を抱きしめるドゥルガー。

 

「ところで、生粋の戦神ってのは何だ?」

 

 戦神にも純度があるのだろうか? アフロディーテは確かに戦争以外も司るらしいが…………。

 

「ん〜、カーリーも大人しい時は山の娘なんて呼ばれて、司るものも貞淑とか富も混じってるけど……そうね、この場合戦う神って事でいいかしら」

「戦う神………武神とは違うのか?」

「似たようなものね。それに戦いで言うなら私とまるっきり正反対な生真面目だけが取り柄の知神(アテナ)も持ってるけど、あっちは戦略や防衛戦、戦の栄誉を司る神で、私は戦の高揚、高ぶった男の獣性の側面だし」

 

 そこも愛欲の神としての一面ということだろう。

 

「因みにアレスは戦争の狂気と破壊を司るの。つまり、クソ雑魚よ」

「破壊を司るのに?」

「破壊するものじゃなく、破壊された結果というか、まあ暴れる行為の側面というか……あんなんでも「城壁の破壊者」なんて二つ名も持ってるんだけどね」

 

 それは、アテナとかいう神と仲が悪そうな性質を持ってるな。

 

「しかも彼奴! ブチギレたヘファイストス見て私を置いて逃げたのよ! 「ちょっと下界救ってくる」とか言い訳して鎧取り出して………まあ金槌で頭ぶっ叩かれたんだけど。その後私も…………………!」

 

 アフロディーテがカタカタ震えだした。ヘファイストス………オラリオに居る女神だが、同郷だったのだろう。アフロディーテは彼女を恐れているようだ。

 

「そもそも何故ヘファイストスは怒ってたんだ?」

「…………………私が浮気したから」

「………アレスと付き合ってたのか」

「ん? ああ、違う違う。付き合ってたのはわ・た・し。ほら、女の子同士だとできないじゃない? アレスってば顔だけは良いし、私の事好きみたいだったからつい」

 

 えへへ、と悪戯を説明する子供のような態度だが、愛の神ってそういうものなのか。

 

「まあ女置いて逃げるような屑だけどね! しかも彼奴、その時鎧もなくしたのよ。いい気味ね!」

 

 下界に逃げようとした時、鎧を無くした? それってその鎧下界にあるのでは?

 

天授物(アーティファクト)の中でも上位の扱い受けそうじゃな。浮気現場から逃げそこなって落としただけなのに」

「戦争の狂気を司る神の鎧か。人間には過ぎた代物だな」

「………………貴方達、フラグって知ってる?」

「「旗がどうした?」」

 

 

 


 

 

この世界には、他にも危険の種がいっぱい。育つに困らねえ環境です。

 

 

ちなみにリリウスがリューの故郷のような排他的なエルフの里で馬鹿にされた場合

「内面の醜悪さが表に出るわけ無いだろ。お前等、自分が美しいと言ってるじゃねえか?」

と素で言う。

エルフ達は激昂し、精霊の雷や炎や氷が放たれ、里は一つ消え去る。

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