ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
その領地では人間は戦争に参加しない。厳密には、少ししか参加せず後方に徹している。
「………モンスターの軍団か。ここまでモンスターに密接に関わってりゃ、怪物趣味が生まれるってもんだ」
「まあそれも愛の形よね。でも、野蛮なのもありだとは思うけど恋も愛もなく欲望だけなのは美しくないわ」
勝手にファンズの背に大きめの鞍を載せ寝そべりながら葡萄を食うアフロディーテ。日傘も備え付け、オペラグラスで戦争を観察している。
戦に於ける男の高揚、獣性を司る女神だがそれでも戦神。戦争そのものに忌避はなさそうだ。
「あら、中々いい男」
モンスターとの戦いに慣れているのか、オラリオでもそれなりにやっていけそうな強さを持っている。
Lv.2が放つ短文詠唱は地上の大型モンスターを滅ぼすには足らずとも、怯ませ、その隙に剣を振るう。
「………あら、今度は大きいのが」
「オーク………いや、トロルか?」
怪物達の群れの奥から現れたのは、棍棒を持った
「ウオオオオオオオオオオオッ!!」
咆哮と共に駆け出す巨人。軍馬が怯え、それが幸運にも巨人が振り下ろす鉄塊の如き棍棒から騎士達を救う。
地面が爆散したように弾け、砕けた土塊が下位の魔導士の魔法の如き威力を以って鎧を着込んだ人間を吹き飛ばす。
「いけない! あのままじゃ折角のイケメンが殺されちゃうわ! 行くのよ、ファンズ!」
「え? あ、ぐ、グオオオオオオオ!!」
「………俺達も行くぞ」
「ガウ!」
「グルル!」
「妾は?」
「眠ってろ」
リリウスの体から滲み出るように現れたドゥルガーは、落ち込みながらリリウスの中へと消えていった。彼女は普段、リリウスの中に居るのだ。
「あの鎧には手を出すなよ。お前等じゃ勝てんし、
青銅の鎧を纏った巨人は、同族たるファンズに気づき固まる。ただし敵国の人間からみればモンスターが増えただけ。
「先に行く」
「あのイケメンは助けるのよ〜!」
見れば丁度アフロディーテが目をつけた男が棍棒で潰されそうになっていた。ので蹴り飛ばす。
「!?」
割り込んできた小さな影。構わず潰そうとしたトロルは、しかし片手で受け止められ、驚愕から体を震わせる。
「ん、これ魔剣か」
オラリオ産のものに比べれば質はかなり低いが、魔剣の類。味からして炎。
込められた魔法を使いきった魔剣が辿る結末の通り、砕ける棍棒。
「!?」
その光景に目を見開きながらも予備の棍棒に持ち替えようとする。明らかに人用、その体躯と合わせれば小枝のような棍棒は、しかしその膂力から人を殺すには十分。
顔を目掛け叩きつけられた棍棒は、リリウスの牙に噛み砕かれる。
「落ち着け。俺はてめぇをダンジョンに連れ帰るためにきた。まあそれでも、武人の矜持なんてもんで戦いたいっていうんなら…………」
目を細め、放たれるは
巨人は騎士達よりも更に小柄な矮躯でありながら、巨獣の如き威圧感を持つ目の前の戦士に後ずさる。
「食い殺すぞ」
「────!!」
と、その時、銅鑼の音が響く。見ればシャバラ達がモンスターを片付け
Lv.2の
これ以上は危険と判断し、撤退するようだ。
「……………」
「…………?」
鎧の巨人は敵国の兵士達に崇められてるアフロディーテ……を背に乗せたファンズを見て、しかしエルリアの兵士達と共に撤退を開始する。
シャバラとシュヤーマは追いかけようとするが、リリウスが指を咥え鳴らす。2匹は立ち止まり、リリウスの下へ戻ってきた。
「美しい、女神だ」
「ああ、美しい!」
「女神様ー! その御御足をペロペロさせてー!」
アフロディーテに救われたと、女神を崇める敵国兵。いや、なんか変なの混じってるな。
まあここ数日眷族と離れリリウスに自分を崇めるよう五月蝿かったし、満足するまでやらせるか。
「………長いな」
ベキンと弓騎兵が持っていて落とした盾を噛み千切るリリウス。そろそろ日が暮れそうだと言うのに、アフロディーテは馬鹿みたいに騒いでいた。
「ほら、リリウス、あなたも歌いなさい!」
「シャンパン片手にアフロちゃーん、騎士のみんなと荒れ狂う〜」
「なんなのその無表情!? それ以前に何その一切ぶれない音程! カラオケ採点で直線引けるわよ!?」
「……………からおけ?」
神々がよく馬車停める時に使う「ヘイ・タクシー」みたいな天界用語だろうか?
「逆にどうやって出してるのよ、あと笑いなさい」
「…………………」
ニパッと作り笑いを浮かべるリリウス。表情筋がつかれたのですぐやめた。
騎士達の何名かが胸を押さえて気絶している。
「素材は良いわね」
うん、と満足気に頷くアフロディーテ。
「どういう状況だ、これは…………」
その光景を眺める仮面をつけた黒衣の人物は、幸いにもリリウスの背後に居たので笑みを見ることはなかった。
「で、どうしたフィルヴィス」
「む………」
そう、彼女こそはフィルヴィス。本来ならメレンで『
フェルズから信頼出来る相手に配達を頼んだとしか聞いてないので、誰が運んだかまでは知らないが。
「リド達からの手紙だ」
「あら、何その子?」
と、兵士達を起こし国に帰らせたアフロディーテが戻ってきた。美しい女神に、フィルヴィスは仮面で顔を隠しているというのにさらに隠れるようにフードを深く被り背を丸めなるべく小さくなろうとする。
「クゥ………?」
「ワフ」
そんなフィルヴィスの不思議な匂いに興味深そうに近寄るシャバラとシュヤーマ。ファンズも彼女から同胞の匂いを感じたのだろう、鼻を近づける。
「貴方は、リド達の知り合いか」
「しゃべ!? いや、リドやグロスも喋っていたな」
「こいつはフィルヴィス。
「ふ〜ん。どんな顔をしてるのかしら?」
「わ、私のような醜い顔を御身に見せるわけには……」
「あ〜、エルフね。なるほど」
フィルヴィスの態度から種族を察したアフロディーテ。
「なら命令よ、顔を見せなさい。エルフって決まって綺麗な顔してるもの。美の女神として見ておかないと」
「お、おやめください! やめ、やめろー!」
「わらひだって、わらひだってほんろはらんひょんでマリィ達といたかったのに〜!」
「………………」
「地上にれたくらんてなかったのに、それでも頑張ったのに、あんまりだ〜!」
フィルヴィスはどうやら酔うと泣き上戸になるらしい。アフロディーテもやりすぎたかしら、と少し引いてる。
「すこしだけ、すこしだけようすをみにいっはら、ひおにゅひょすしゃまのへやにはリリウスの絵がかざられへるし!」
「え、なにそれリリウス、貴方大丈夫? この子の主神の………ひおにゅひょす? には近づかないほうが良いわよ」
と、アフロディーテがリリウスに心配するように忠告した。
「愛と恋の神じゃなかったのか」
「だって貴方の反応からして全く知らないんでしょ? ドゥルガーみたいなタイプなら、そもそも貴方を眷族に誘うはずだし…………つまり、見た目に惚れたストーカーよ!」
「うう、ひおにゅひょすしゃまはちいさいおとこのこふきのへんひゃいだ〜!」
アポロンと同じ変態ということか。
一体何処で目をつけられたのか。というか顔を合わせたことあったか?
「ところで貴方、どうしてあの鎧を見逃したの?」
「……………」
「貴方なら取り押さえて連れて帰ることも出来たでしょうに」
「…………彼奴は強かった。あの軍を一人で滅ぼせるぐらいにはな。なのに、従っていた」
「その理由が解るまで、連れていけない、と。案外考えてるじゃない」
「リリウス〜! けがれたわたしをなぐさめて〜!」
「シュヤーマ」
「わふ!」
フィルヴィスにシュヤーマが飛びつき、そのまま頰をペロペロ舐めて涙をぬぐってやる。酔ったフィルヴィスはそのままシュヤーマを抱きしめた。
エルリアの領地の一つ。国境に面するそこは、他国と何度もぶつかりあった。
兵が帰ってこないことも何度もあり、しかし何時しかオラリオの外の眷族にとっては強敵なダンジョン産のモンスターを買うルートを手に入れ、
そんな領主の館の地下を目指すのは鎧を着込んだトロール。
やがて辿り着いた地下牢には、白い髪をした美しい
「タロス………」
何処悲しそうな表情を浮かべた女性は檻の鉄格子へと近づこうとしても、鎖が彼女を進ませない。
「今日は、血の匂いがしないのね」
「強イ、奴ガイタ。邪魔、サレタ」
「……………」
「デモ、後少シ………モウ少シデ、ボクガ」
「タロス………可愛いタロス。お願いだから、もうやめて。領主様は、約束なんて守らない。貴方は、自由になっていいの」
その瞳は、その声は、モンスターに向けているとは思えないほど慈愛に満ちていた。
我が子に言い聞かせるように、女は語る。
「貴方は一人で生きていける。だから、もう誰も殺さないで」
「……………一人ハ、嫌ダ。母サンハ、ボクガ助ケル」
青銅の鎧を纏う巨人は、それでも女の言葉には従えなかった。
彼女を助けるためなら、どれだけこの身が血に汚れようとも構わない。
踵を返し、地下への入口に向かうトロールの先、女は悲しそうに見つめていた。
タロス
ダンジョンで生まれてすぐに
モデルは誰だろうね? 割とリリウス特攻。とても美人、胸もでかい。