ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
メイドリリウス
アフロディーテがコーディネートしたミニスカ男の娘メイド。
家事スキルは持ってないが全部騎士がやってくれるので問題ない。
真っ昼間から酒を飲む不良メイドだ! 因みにポニーテール。
モンスター達が眠る畜舎の奥。城壁の一部に存在する地下牢の入り口。
脱獄幇助する者は近付けず、牢から脱獄する者もモンスターの餌食になる、実に解りやすい構造。
「………隣国と争うだけはあるな」
フィルヴィスは
オラリオでも中堅派閥に食い込めるだろう。
「…………………」
もしくは、
「存外、根深そうだな…………」
ダンジョンのモンスターの売買、それはつまり千年間閉じていたからこそ弱体化したモンスターが原種返りを起こすという事。
この畜舎の何匹かが地上のモンスターと子を為せば、地上のモンスターに慣れていた眷族はたちまち蹂躙されるだろう。事実今回も敵国が蹂躙されかかっていたし、恐らく他の場所でも………。
「コストはかかるはず…………」
買い手がいなくなれば、新しく売買ルートを作るまで金にならない密漁も控えるはず。
それは間違いなく彼等の密猟を減らす手段になり得る。
「………しかし、やけに鎧が多いな」
大きさ的に明らかに人用ではない青銅の鎧がいくつもあった。
あのトロール用のものだとしても、やけに多い。というか明らかに大きすぎる物もあるような?
『いいリリウス、私がせっかくかわいいのを用意したんだから、破くのも汚すのも無しよ!?』
と、
やっぱ無視しようかな、と思ったが後で文句言われてシャバラとシュヤーマの更新を拒否されるのも面倒。
後このモップもアフロディーテから授与された物。折るのは駄目だろうな。
「よっと………」
後ろに回り込み膝裏を叩く。倒れかけた体を支えようとする体に登り、蹴りつける。
そのまま後ろに跳び距離を取る。
ズゥンと音を立て倒れるトロール。尤もこの程度じゃ大して堪えないだろう。
立ち上がろうと地面についた手。肘をモップで叩きまた転がす。
何度立ち上がろうとしても転がす。立ち上がろうとするたびに転がす。ならばと反撃しようとするが転がす。
「このような闘争、面白くない」
「文句言うなドゥルガー。そもそも俺は戦いに来たんじゃない」
リリウスの体から顔を出しつまらなそうに呟くドゥルガーに、リリウスはそれだけ返す。あれだけひっくり返されて、精神的にも肉体的にも疲労はたまる一方だろうに、よくやる。
「人が集まって来るのではないか?」
「彼奴等にはフィールといちゃつくから朝まで帰るなと言っておいたから、大丈夫だろ」
「メイドとは…………」
日が昇るまで帰りませんと元気よく叫んで街の警邏に向かった騎士達。ドゥルガーは我が契約者ながら破天荒だな、と思った。
そういうとこ大好き。
「グ、ウゥ………」
「この先にいるのが、お前の守りたい奴か。人だろ」
「母サンハ、ボクガ………!」
「……………母親?」
「ウオオオオオオオオ!!」
衰えぬ闘志の源泉は、その母親か。モンスターの母親などダンジョンだろうに……或いは、このモンスターは親に抱かれる人間に憧れたのか。
「わかんねえなあ、俺には」
肩に乗り、側頭部に膝を叩き込む。その衝撃でニーソが破けた。
トロールは脳が揺らされ、倒れる。今度はちゃんと気絶した。
扉を開け、地下へと続く階段を下りる。
松明に照らされた薄暗い地下通路。罪人を閉じ込める牢の一つにその女はいた。
「…………貴方は?」
「旅人。人間に捕まった喋るモンスターの解放が主な目的」
「っ! なら、ここに居るの! お願い、あの子を………!」
「………………あの子、ねえ」
本気で母親をしていたらしい。異種族どころか、怪物相手に。
「何故怪物を庇う?」
「……だって、私は大人よ? 迷子の子供を放っておけないわ」
「……………………」
「目の前の子供しか助けてあげられない、ただの自己満足だけど」
『だって、私の目の前で飢えていたんだもの』
ふとアフロディーテの言葉を思い出す。目の前で不愉快だから救うアフロディーテに比べれば、目につかない何処かの誰かすら思う傲慢な女だが、無力であると自覚してはいるらしい。
「お願いします。あの子を、どうか」
「あんたがいる限り、彼奴は何度だってここに戻ってくるだろうよ。あんたも連れてったほうが早い」
「それは、無理です。この牢はあの子の力でも………それに、この首輪は
「むぐ、本当だ。この味は炎のだな」
「………………へ?」
鉄の首輪をバリボリと食い千切るリリウス。俯いていた女性は顔を上げ、牢を見る。曲げられていた。
改めて小さな影を見る。鉄の首輪を噛み砕いている。小さい影?
「貴方、まだ子供じゃないの…………」
「ゴクン。だから……?」
「いえ。いいえ………子供だけど、子供でいられなかったのね」
こんなところにいちゃ駄目よ、とでも言うのかと思えば切なげな表情を浮かべリリウスを抱きしめてくる。
敵意もなく、その唐突な行動に混乱し固まるリリウス。
「???」
「急に、ごめんなさい。これは、私のただの自己満足……」
そのまま頭を撫でられる。顔面に胸を押し付けられ息ができない。何故この女は自分を抱きしめる。似たような気配を感じたことがあるような?
あれはそう、アストレアやデメテル。それと、アルフィア………。
「──!?」
と、そこで漸く女から体を剥がすリリウス。女は心配そうにリリウスを見つめる。
「ごめんなさい。男の子だもの、急にこんなことされたら恥ずかしいわよね」
「いや…………? 俺が男ってわかるんだな」
「? ええ」
自信満々なアフロディーテの「私を信じなさい」を思い出すリリウス。普通にバレてるじゃないか。いや、でも彼女以外にはバレなかったが。
「…………あんた、名前は?」
「私はエウロペ。よろしくね、可愛いメイドさん」
と、その時だった。地下空間に響く遠吠え。
「シュヤーマ………?」
新しい敵? 耳を澄ませば、足音が聞こえる。いや、まて、おかしい。この足音、下手したらトロールより大きい。
「シュヤーマ! シャバラ! 降りてこい! この女を守れ!」
その言葉に階段を駆け下りてくるシャバラ達。リリウスはその上を飛び越え入れ替わるように地上に出る。
「………………なんだ、こいつ等」
「オオオオオオオ!!」
「ブオオオオオオ!!」
そこに居たのは、全長7
一匹が持ってるのは、
だとしても、このモンスターはなんだ? サイズだけなら
「オオオオオ!!」
「チッ」
一匹襲ってきた。
回避し、伸ばされた腕を蹴りつける。あっさり肉が千切れる音が響き、腕が吹っ飛んだ。
「オア!? ガアアアアア!!」
しかしすぐ生えた。
ギョロリと腕に存在する目がリリウスを睨む。
リリウスは知らないが『ベルテーン』という秘境に住まう者達ならば、その醜悪な姿に既視感を覚えたことだろう。
それも当然、それは沼の王と呼ばれるただのモンスターでありながら厄災の一つと言ってもいいほど進化したモンスターをモデルに試行錯誤を重ねられ作られた存在だからだ。
事の発端は、エルリアにある神が沼の王に関する情報を伝えたことから始まった。
本来なら、下界を滅ぼせるだけの可能性を見つけたその神はオラリオを落とすための力を探すこともせず、それをオラリオから遠く離れた地にて研究させるように唆すことも無かったが、生憎彼の眷族は誰一人として迷宮から戻らなかった。
「…………この匂い、ポーション?」
腐臭に紛れて臭う嗅ぎ慣れた匂いは間違いなくポーションのものだ。ただし、濃度がこれまで嗅いできたどのポーションよりも濃い。
生命の泉は、わかりやすく言うなら天然ポーションが無限に湧き続ける奇跡の泉。そんなもの簡単に見つけられないし、そもそも見つけたところで動かせない。
だから高濃度のポーションを配給し続ける装置を植え込んで過剰な再生を繰り返させモンスターを取り込ませ生み出した巨人。
彼の神は自らの領地に伝わる神に対抗する巨人の名を冠し、
どこの酔っぱらいが余計なことしたんだろうね