ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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女神の価値観

 領主は死んでた。巨人に食われたらしい。

 なのでアフロディーテは好きにやる。

 

「貴方達、私はだあれ?」

「「「天界、下界、地界(ダンジョン)、三界全てにおいて至高の美、アフロディーテ様あああああ!!」」」

 

 やかましいのでリリウスは端の方で飯を食う。

 この街の名物だという包み焼きを一つ食ったら、何故か次々に飯が運ばれてきた。

 

「リリウス」

 

 と、飯を食うリリウスの後ろにスッと現れるフィルヴィス。

 

「私はあのトロール、タロスと……それからエウロペを連れて一度オラリオに戻る。お前の手紙も渡しておこう」

 

 タロスは一先ずダンジョンに戻る事を了承したが、エウロペから離れるのを嫌がった。エウロペもまた、親離れには早いとフィルヴィスに頼み込んだ。

 

 どのみちモンスターと友愛を築いた愚者だ。ここに残っていたところで面倒事が増えるだけとフィルヴィスも了承した。

 

 少し離れていたのはウラノス達から許可を取っていたのだろう。

 

「お前は祭りに参加しないのか? 巨人どもを倒した祝勝会だか美の女神の降臨祭だか分からんが」

 

 兎に角アフロディーテは騒ぎたいだけなのだろう。だが飯が出る。なら食っていけばいいのに。

 リリウスは腹が減って上手く回らない頭でそう考えた。

 

「私のような者が、美の女神の宴を穢すわけには………」

「あ、メイドのお姉ちゃん!」

「ここにいたんだ!」

 

 と、フィルヴィスに駆け寄るヒューマンと獣人の子供達。フィルヴィスは慌てて仮面をつける。

 

「な、何の話だ? 人違いじゃないか!?」

「え、でも…………」

「よせよ、人間誰だって仮面被りたくなる時はあるもんさ。物理的にも、別の意味でも、な」

 

 ヒューマンの子供が困惑する中、獣人の子供は良く解らない言葉で相方を止めた。

 

「じゃあ、メイドのお姉さんにあったら伝えておいてください。助けてくれてありがとうって」

「助けてくれてありがとう!!」

 

 そう言うと子供達は去っていった。片方は妙なガキだったな。

 

「……………私は」

「あら、そんなところで何をしているのフィルヴィス?」

 

 と、アフロディーテが現れた。容姿の整ったエルフすら及ばぬ美貌を持つ美の女神の接近に気付かぬ程俯いていたフィルヴィスはギョッと固まり、すぐに冒険者であり怪物でもある身体能力で逃げようとする。

 

「リリウス」

「ん」

 

 アフロディーテが果物を差し出してきたのでリリウスは『釣り針』の鎖でフィルヴィスを捕まえ引き寄せた。

 

「放せ! 放してくれ!」

「この私の前に連れてこられて随分な態度じゃない。魅了してブヒブヒ鳴かせてやろうかしら?」

「そういうのはやらないんじゃないのか?」

「だって私、チヤホヤされないのは嫌だもの」

「………………」

「それにこの子、一度はっちゃけさせて正気に戻したほうが面白いと私の勘が言ってるわ!」

「ひい!?」

 

 それは勘ではなく、フィルヴィスが酔いから冷めた時の実体験では?

 しかしフィルヴィスは怯えている。

 

「ご、後生です! それだけはご勘弁を、穢れたこの身でもエルフの矜持が! あ、あのような恥辱耐えられません!!」

 

 ハイハイハイ、と元気よく踊りアフロディーテ様ばんざーいと叫ぶ者達を見て叫ぶフィルヴィス。聞けば、昨日の足を舐めさせてほしいと叫んだ女はフィルヴィスのすぐ近くに居たのだとか。

 

「じゃあ逃げるのはやめなさい。あと、せっかく可愛く着飾ってあげたのにまたそんなだっさい格好して」

 

 と、仮面を奪うアフロディーテ。

 

「ええ、そう。このアフロディーテが可愛いと言ってあげたのよ。なのに何なの? 自分は穢れてるだの醜いだの。エルフの価値観からして、美の女神から物を受け取るのは屈辱とでも言いたいのかしら?」

 

 美の女神はそのまま愛を司るだけあり、割と奔放らしい。世界一美しいとされるフレイヤも男女問わず団員と関係を持ってるし、オラリオの神々で抱いてないのはウラノスなど極一部だとか。

 

 そんな性にだらしない女神でも潔癖眼鏡エルフに崇められてるという。まあリリウスは興味無いしあったこともないのだが。アフロディーテみたいに見てて飽きない女神なのだろうか? と、アフロディーテとフィルヴィスのやりとりと大蜥蜴の姿焼きを肴に酒を飲むリリウス。

 

「そ、そのようなことは………」

「そもそも、あんたの事情は聞いたけど、あんた世話になってる奴等を醜いと言いたいの?」

「そ、そんなことは……! ただ、私は人でもモンスターでもなく………どちらにも、居ていい存在では………」

「あいつなんて小人族(パルゥム)で変なモンスターの力使えて精霊の力を振るい、殺戮の大精霊と契約してるわよ?」

「…………?」

 

 狭間とかそういう垣根を飛び越えてなんかもう色々すごいリリウスを指差すアフロディーテに、フィルヴィスは言葉に詰まる。

 

「あんたは、その変わった怪物達が醜いと思う?」

「…………いいえ。ですが、私は彼等とも違う。この身は本来既に死んで、穢れた精霊の力で生かされた。リリウスが支配を消してくれたとしても、彼らと共に歩いていいような」

「私は美を司る神だけど、貴方達エルフの美しい生き方って全然共感出来ないわ」

 

 と、呆れたように肩を竦めるアフロディーテ。

 

「だってこの私が美しいと言ったものが、美しくないはずないでしょう!?」

 

 やはり根拠は神らしい。

 

「だからフィルヴィス、このアフロディーテが保証します。悩み、惑い、苦しみながらも誇りとは何たるかを忘れず人を救い、モンスターと手を取る貴方は、誰よりも美しいと。ま、美の女神(わたし)を除けばだけどね!」

「アフロディーテ様………」

「美しい貴方を愛している………()()()()()()()()()()()()()()()。でもそうね、(わたし)の言葉ではなく、貴方自身が答えを得て、それが満足のいくものだったら、その時は愛してあげる」

 

 陽光に輝く金の髪を風に靡かせながら微笑むアフロディーテに、フィルヴィスは目を奪われる。

 

「…………?」

 

 何処かで似たようなのを感じたようなと、リリウスは鈍色だったか銀色だったか思い出せない色を思い返す。

 だけど、まあ。()()()()()()()()あっちより、こっちの方が見ていたいな。

 

 

 

「ファンズは置いてくのか」

「当然でしょ? 私の足よ………ていうか貴方、その髪なに?」

「俺の毒は本気出すと服が溶けるから、新しい服の材料としてフィルヴィスに渡した」

 

 『毒牙』の方は牙や唾液のみだから問題ないが、【獣王化身(ベヘモット・アヴァターラ)】は全身から毒を出せる。まだ完全開放はしたことはないが、したら少しの力を開放しただけで全裸になるだろう。

 

「ドゥルガーに作らせればいいじゃない。乳海(サガルマタ)から衣や装飾品貰ってんでしょ?」

「確かに精霊たる妾なら神殺しの獣のルールに抵触しないが、出し続けるのも疲れる」

「…………神殺し? 何で今、その単語が出るのよ?」

「ん?」

 

 そういえばアフロディーテには話してなかった。ドゥルガーにもだが、まあリリウスの中に入っているから色々感じ取れるのだろう。

 

「…………アフロディーテ。ダンジョンってなんなんだ?」

「…………………ダンジョンはダンジョンよ。強いて言うなら、神々(私達)の負債。()()()も限界が近そうなのよね。黒竜といい、約定まで持つのかしら?」

「約定?」

「ん〜。これってどこまで話していいのかしら………ま、ダンジョン以外にも世界を滅ぼす要因はあるって覚えておきなさい。この国とかね」

 

 適当に誤魔化す神々の有名な言葉「ダンジョンはダンジョンだろ。ダンジョンに他の何を求めてるんだよダンジョン」という言葉よりはまともだが、答えははぐらかされた。

 

「世界を滅ぼす?」

「ええ。何、貴方世界の命運とか気にするタイプ?」

「世界は別にどうでもいい」

「あらそう…………じゃあ、この世界に守りたい誰かでもいるのかしら? それって女? まあ男でも良くってよ」

「別に……………」

「………あっそ」

 

 リリウスの態度に何を思ったのか、つまらないとでも言いたげなアフロディーテ。と、リリウスはふと聞き逃がせない単語を聞き逃していたことに気付く。

 

「…………この国?」

「ええ。タロスを見たときから既視感はあったんだけど、昨日の巨人軍団見て思い出したわ。あれ、モデルはアレスの鎧ね。あいつの鎧、ただの人間には壊れない青銅にしか見えないし」

 

 そういえば全部青銅で出来ていた。それがモデルになると言うことは、つまりこの国にとって象徴的な存在………?

 

「過去に、その天授物(アーティファクト)が使われた?」

「可能性が高いわね。なにせ神の鎧だもの、雑多なモンスターなんて消し飛ばしてくれるわ。ま、炎ほどではないけどデミ・アルカナムみたいなもんだし、古代の力あるモンスターにやられたんでしょうけど」

 

 それでも欠片は残ってる可能性はあるそうだ。

 

「能力の一つとしては巨大化で、これは砕かれても小さくなったりしないもの。それこそベヒーモスが相手じゃない限り欠片は残るでしょ。大変ね、扱い間違えたら下界が消し飛ぶ、まではいかなくとも、地表は破壊し尽くされるわ」

 

 もちろん、オラリオもね、と笑う女神に、リリウスは笑えねえ、と舌打ちした。

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