ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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正義の乙女達

リリウスの美の女神に対する反応

フレイヤ→有名だな。会ったこと? 多分ない

 

イシュタル→………………誰?

 

アフロディーテ→見てて飽きない。あれが美しいってこと、なのか?

 


 

 

 リリウスがオラリオから姿を消しそろそろ一年が経とうとしていた。

 市井からは、驚くほどリリウスの噂が消えていた。

 

「それでも残ってやがるがな。たく、こういう噂話は彼奴の得意分野だろうに、もっとケツ蹴飛ばしてやりゃよかったぜ」

「う〜ん。まあ、モンスターの力を使ってたのは事実だもの。どうしたって思うところは出来ちゃうわ」

 

 それだけモンスターとは人類にとって、不倶戴天の存在なのだ。

 

「今じゃすっかりあのガキが守ってやがるしな」

「ああ、新入りのアマゾネスちゃんね? 入団当初からLv3なんて大したものじゃない! 勧誘すればよかった」

 

 ライラがフィンにリリウスの噂が残っていることに苦言を呈しに行こうとすれば、警戒心丸出しで唸るアマゾネスの少女を思い出し笑うアリーゼ。

 

 オラリオに来た時点でLv.3という有望株。しかも双子の将来美人になるのが解る美少女達。

 多くの【ファミリア】が狙って、必要ならアリーゼ達も介入するつもりだったが対人技術だけならオラリオでも間違いなくトップクラスだったので闇派閥(イヴィルス)を優先した。

 

 その間に【ロキ・ファミリア】に入り、姉の方はフィンに惚れたようでライラによく(文字通り)噛みついてくる。

 

 フィンを最強の小人族(パルゥム)だという彼女をライラが鼻で笑ったのが確執の始まりだ。

 

「今頃どうしてるかしら?」

「まああの少年の事ですし、元気に何か食べてるでしょうねえ」

 

 改宗(コンバージョン)したとはいえ、アストレアの神の血(イコル)は消えた訳ではなく、生きていると言っていたし。

 

「それもそうね。私達は私達の仕事をしましょう! 残る主な戦力は【ルドラ・ファミリア】! ジュラのあん畜生を牢屋にぶち込み臭い飯を食わせてやるわ!!」

「ア、アリーゼ! その言葉遣いはよくない!」

 

 正義の味方とは思えない言葉に思わずリューが突っ込んだ。

 

「ところでリオンだけ馴染まなかったわよね、リリウスのくれた鱗」

 

 リリウスが【アストレア・ファミリア】に残した黒い竜鱗は盾などの防具、剣やナイフなどの武具に成形されたが、どうにも炎の魔力と相性はいいがリューの風の魔法とは合わなかった。

 

 単純に硬く、それでいて軽く、ただの武器として使うには問題ないのだが折角魔導を得て正式な魔法剣士になったのに些か勿体ない。

 

「ヘルメス様が伝を探してみるとは言ってたけど」

「胡散臭え情報だが、剣製都市(ゾーリンゲン)にかなり力を持った精霊がいるんだとよ」

闇派閥(イヴィルス)の件が片付いたら皆で向かうのもありかもね。精霊、生で見るのは初めてよ!」

「いや地精霊(ノーム)とか見かけるだろ。ま、確かに英雄譚に出るような精霊様なんてこのご時世目撃証言すらねえけど」

 

 というかまだ現存しているのかすら怪しい。元々は神が下界を救う為に遣わせたのだ。神が降臨し、人類に力を与えた今殆どが帰ったのかもしれない。

 

「リリウス、何処に向かったか知らないけど外の世界で見つけてないかしら。あってみたいわ!」

「見つけてたとしても、連れてくるかは別かと」

「仮にあいつについてくる精霊が居たとして、断言してやる、まともじゃねえ可能性が高い」

「う〜ん、リリウスは面倒見の良い年上に結構モテると思うけどなあ。聖女ちゃんやアーディとか」

「古代の精霊はもはや年上というレベルではないかと」

 

 

 

 

 

 

 【ルドラ・ファミリア】。実はリューとも浅からぬ因縁がある。というのも、まだ闇派閥(イヴィルス)と呼ばれる程でもなかった破落戸時代、彼等はオラリオに訪れたばかりの神の恩恵を持たぬリューを歓楽街に売るために攫おうとしたのだ。

 

 まあその前にアリーゼがやってきてジュラは逃げていったが。人攫い()()一々対処も面倒とギルドが放任していたのだから、『暗黒期』でも特に治安の悪かった時代は本当に酷い。

 

 今ではアリーゼ達も【ガネーシャ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】と協力して目を光らせているが………。まあ、ダイダロス通りはその迷宮のような構造や住民の殆どが自身が助けられることを望まないなどの理由で孤児院を支援するぐらいしか出来てないが。

 

 とにかく、嘗ては人攫いで人身売買()()()()()()なれど今では立派な犯罪者。故に【アストレア・ファミリア】は彼等を捕らえに下層に向かい、罠にハマった。

 

「…………死ぬかと思ったわ!」

 

 『火炎石』百個以上使用した大規模破壊。階層そのものによる圧殺を、しかし小狡いライラは見抜き、間一髪で逃れることが出来た。

 

「なんで、生きてやがるっ………【アストレア・ファミリア】の糞女どもがぁ! どれだけの『火炎石』を注ぎ込んたと思ってんだ!?」

 

 火の粉を巻く煙の奥で【ルドラ・ファミリア】のジュラ・ハルマーが喚き散らす。落ち目の闇派閥(イヴィルス)一世一代の罠をくぐり抜けた憎い敵の姿に怒りと憎悪を燃やすも、その目には確かな恐怖が宿っていた。

 

 それはジュラのみならず、他の【ルドラ・ファミリア】にも…………。

 

 あれだけ準備しても殺せない存在に、彼等の戦意は失われていく。だが、それでこの破壊はなかった事にならない。

 

 ダンジョンが、()いた。

 

 

 

「これは………!?」

「ウラノス? どうした、まさか神がダンジョンに!?」

「いいや、私も知らぬ。未知だ……ダンジョンが、()いている」

 

 ダンジョンに深く関わる創設神は、その異変を感じ取る。神殺しとも異なる何かが、生み出されようとしている。

 

 

 

 

「!? なんだ、今の音は!」

「母ガ……!」

 

 異端の怪物達もまた、母の痛哭を感じとる。

 フィルヴィスが持ち帰った手紙に書かれていた脅し文句に怯え深層で鍛錬をしていた彼等にすら、その異変が響く。

 

「上の方………フィルヴィス達は大丈夫デしょうか」

 

 レイは遠征班の自分達と別れ、異端児(ゼノス)基準で比較的安全な階層にいる仲間達を心配そうに天井を見る。

 

「一先ず向かうぞ! 急げ急げ!」

 

 

 

 

 

 それは通常のモンスターの生まれ方とは異なる。

 壁に走った深く、長く、大きな亀裂からこぼれ落ちるのは紫の漿液。

 

 子宮を引き裂くように何かが亀裂の中を蠢く。瞬間

 

「きゃあ!?」

 

 ノインの悲鳴が聞こえ1秒もかからず響く金属音。ドゴォンと「密林の峡谷」の木々が吹き飛んでいく。

 

「アリーゼ!!」

 

 見えたのはLv.5のリューと輝夜。黒い影がノインを狙い、庇ったアリーゼが吹き飛ばされた。

 黒い影は最も動揺している妖精を容赦なく狙い………

 

「油断するな馬鹿者!」

 

 輝夜の斬撃を、信じられぬ速さで回避した。

 ズシャと着地したそれは、一言で例えるなら鎧を纏った恐竜の化石。

 

 長い3本の爪を両手に備えた逆関節の痩躯の怪物は、己の爪に走った亀裂を見つめる。

 そのまま切れ味を確かめるように【ルドラ・ファミリア】の連中を剪断した。

 

 防具も、剣も、全て等しく切り裂いた。その光景を当たり前とでも言うように、不思議そうに切れなかった輝夜を見る。

 

「来るぞ!」

 

 吹っ飛ばされたアリーゼの代わりに輝夜が叫ぶ。怪物の姿が消えた………そう思えるほどの速度で移動し、狙いは鈍重そうなアスタ。

 

 叩き潰すような一撃は、しかし漆黒の盾をつっかえ棒の様に挟み塞ぐ。

 

「この野郎!!」

 

 ネーゼが蹴りつける。Lv.5の3人に劣るとはいえ、身体能力に優れた獣人の蹴り。素早く鋭いそれを、怪物は切り裂く。

 

「ぐあああ!?」

「ネーゼちゃん!!」

 

 慌てて駆け寄ろうとするヒーラーのマリューを喰らおうと大口を開ける怪物。

 後衛のマリューでは回避が間に合わず食われ……ベッと吐き出された。

 

 牙に貫かれた痛々しい傷のマリューが持つのは黒のメイス。傷一つ無い。

 モンスターは観察する。あいつも、そいつも、黒いところが硬い。黒………最初に吹き飛ばした女の剣は──

 

「【華開け(アルガ)】!!」

 

 詠唱と共に炎を纏い現れるアリーゼ。木々や岩に体をぶつけ、無傷とは言えないが健在。振るわれる炎の剣に、怪物は……

 

「!!」

「アリーゼ!?」

「…………………」

 

 絶対に避けられない距離まで近付いたアリーゼは、しかし足裏の炎を爆発させ軌道を変えた。その光景に困惑するライラ。

 

「リャーナ! あいつに魔法を放ってみて、放ったらすぐその場から移動! 威力を弱めて!!」

「え? え?」

「お願い!」

 

 困惑しながらも放たれる炎の魔法。怪物は躱さず、魔法が()()()()()()()

 リャーナが先程まで居た場所を、自らの炎が焼く。

 

「どういうことだ団長!」

「あいつ、私の魔法を()()()()()()()()()()

 

 それを並外れた観察眼で目ざとく察知したアリーゼはどうしても接近してしまう付与魔法(エンチャント)の自分ではなく遠距離魔法のリャーナに確かめさせたのだ。

 

 リリウスのような魔力吸収(マジックドレイン)の可能性も考えたが、その場から回避するよう言って正解だった。

 

「ひ、ひいいい!?」

「………………」

 

 怪物は逃げ出す【ルドラ・ファミリア】へと再び襲いかかる。

 モンスターは人を襲うが、それにしたって徹底的に。まるでこの場の一人も逃さぬというように。

 

「待てよ、ふざけんな。馬鹿みてえな速度に攻撃力で、その上魔法を跳ね返す!?」

 

 あの速度、下層最速の閃燕(イグアス)を凌駕している。その上、リリウスの置き土産以外では防御不能の斬撃。

 接近戦なんて御免被りたいのに、魔法を使えば跳ね返される。

 

 2年前の『神殺し』とは違う、冒険者という存在そのものを殺す為に作られたかのような殺意の結晶。

 

「そんなのどうしろってんだ!」

 

 絶望という二文字が、誰もの頭に浮かぶ。

 ただ一人を除いて

 

()()()()()()

「アリーゼ………」

 

 アリーゼ・ローヴェルは、絶望の化身の如き怪物を見据える。

 かつて灰色の魔女は言った。『お前達はあの黒竜(絶望)を知らない』と。

 

「こんなところで、絶望に沈む暇なんて、私達にはない!」

 

 何時か世界を救う為に、あの灰色の魔女達すら絶望した黒竜に挑まなくてはならない。

 

「だから、あの怪物を討つ! 正義の剣と翼に誓って! あ、でも………」

 

 と、アリーゼは悪戯っぽく笑う。

 

「リリウスもやった事が出来ないなら震えてていいわよ? その場合、リリウスの姉を名乗れるのは私だけね。唯一のお姉ちゃん、うんうん、いい響き!」

「「「イラッ☆」」」

 

 リューを除いた全員の額に青筋が浮かんだ。

 だが実際、リリウスはLv.3でアンフィス・バエナを殺しアルフィアと戦ったりベヒーモスに真っ先に突っ込んだりと、怖いもの知らずといえばそれまでだが、リリウスは確かに恐怖で足を止めたことは無い。

 

「うん。皆、いい顔。行くわよ!」

 

 


 

 

リリウスの手紙の最後の一文。

『俺がいない間に里から新しく攫われてたら、お前ら一人ずつ竜の巣に叩き落とすからな』

リリウスは竜の壺という名称を知らない

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