ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「これ、相当お金と技術がいるわよね」
と、
中身のポーションもそうだが、注入器の機構もかなり高度で精密。人の域を超えた………高い『器用』を持った
「高いわよお、人も、素材も、技術も。一介の領主だけで、雇えるかしら?」
つまりは、国規模。
アフロディーテの想像の通り、
大群を有しているのは大貴族や辺境伯のみだったが、2、3体はいた。
「最後はあの王都! 絶対面倒事の気配がするわ!」
「王都だぞ? これまでの巨人共はただ暴れるだけ。流石に危険だろ」
と、
ダンジョンでも類を見ない規格外。この鎧にだって相当な金を使っているだろう。そして、これも暴れまわっていた。
「制御不能の力を足元に置くなら、その王はただの間抜けだ」
「そうね。でも、愚王によって滅ぶ国なんていくらでもあるわ。そういうのを見るのが好きな神々もいるし………私も嫌いじゃないわ。その王が神に干渉されず愚かなら、意志ある者に討たれるべきよ」
神だけあり、国の行く末すら娯楽の一つ。
噂では何処ぞの島国は
「アソコガ、コノクニノチュウオウ」
「我々の同胞を弄んだ者達の王!」
「グルル!」
「オウオウ!」
と、この国に捕らえられていた
「はいはい、あなた達、そこまで。貴方達を攫い、傷つけたのは人類だけど、貴方達を助けたのもまた人類。それをちゃんと理解しているものだけ叫びなさい」
ヒョイ、とリリウスを抱えるアフロディーテ。身長差からブランと垂れ下がるリリウス。気の所為でなければゔるるる、と不機嫌な猫がそうするような唸り声を上げてる気がする。
とはいえ、落ち着いた。自分達だって人を恨む者、まだ好きな者と分かれているのだ。人間だって千差万別。それを思い出した。
「あら、騒がないの?」
「「「………………」」」
「そう、よくってよ!」
と、アフロディーテは満足したようだ。
「ところでエルリアで神やってるの誰だっけ?」
「デイモス」
「ああ、彼奴ね」
納得だわ、と呆れ顔のアフロディーテ。聞けば神であるが、アレスの信徒。地上に降りた目的も戦地を広げるためだろう、とアフロディーテは予想する、ゴリゴリの『邪神』だ。
司る概念は『恐怖』。特に、蹂躙され怯える人間の顔を愛している厄介な性質。
それでも確かに人類を愛しているのだから神というのは厄介なのだ。
「で、次に忍び込むのは王城か? 都貴族の屋敷の可能性もあるが、どのみちこれまでより入りにくいだろ」
「う〜ん、そうね…………」
どうせまた『メイド』だの『かいとー』だの『すぱい』だの、変な格好をさせられるのだろうな、とすっかり慣れたリリウス。
アフロディーテは不意に視界の端に何かを捉えた。
その旅芸人達は、間違っても優れた芸人達ではなかった。
街々を転々としては、旅に必要な資金分を何とか稼げる、その程度の集団。しかし女神の助言により、僅かに3日で王都の広場での公演から王城へと呼ばれる程に成長した。
「さあさあ、続きましては双子の大犬による玉乗りショー」
灰と白の二匹の犬は器用に鼻先でボールをパスしながら玉乗りを披露する。
最後に互いの玉に飛び移り、パスしていた玉……その数10個を、半分の5個ずつ鼻の上に重ね積み上げた。
拍手と歓声が響く。
「………はぁ、俺達は見張かよ」
「文句言うなよ。俺まで気が沈む…………」
残念ながら旅芸人を見ること叶わぬ見張り達は、あまり元気がない。
聞こえてくる楽しそうな声にどんどん気分は沈んでいく。
「……………?」
「どうした?」
「今、足音が………見てくる!」
「お、おう!」
互いに笛を取り出す。異変を感じたら、すぐに鳴らして他の仲間にも知らせる為だ。
曲がり角に近づくと、やはり聞こえてきた足音。靴を履いてないのか、ペタペタと音が鳴る。
「……………踊り子?」
顔を覗かせ、見つけたのは白い髪の小さな踊り子。不安そうにキョロキョロ周囲を見渡す姿は、どう見ても迷子。
ホッと胸をなでおろす。
旅芸人の中の子供が迷い込んできただけだったらしい。
「お嬢ちゃん」
「!」
ビクリと肩を震わせ、後ろめたそうに振り返る少女。よく見るととても可愛い。
露出の多い服を着た幼い、にしても小さな………恐らくは
トレンカから覗く踵や指先まで小さい。
「ここは立入禁止だよ。案内するから、ついてきなさい」
「……………」
コクリと頷く少女。テテテとかけてくる姿が愛らしい。そういえば、と衛兵は声を殺すように尋ねる。
「その、君達は……
「……………チッ」
「へ?」
トン、と小さな手が胸板を包む鎧に当てられ、爆ぜた。
「─────!?」
厳密には鎧通しで衝撃が伝わっただけだが、鎧の中に爆薬でも入れられたのかと錯覚するような衝撃。
声も出せずに倒れる。
「………………」
少女はそっと酒瓶を握らせる。
「遅いな。何してんだ?」
何か異常事態か、と笛を握る手が震える。と、そんな騎士の首に絡みつく黒い鎖。
「ぐぇ!」
締められたアヒルのような悲鳴をこぼし天井へと引き込まれていく騎士。入れ替わるように白い踊り子が降り立ち、落ちてきた騎士をそっと寝かせ、また酒瓶を握らせた。
針金を取り出し鍵穴に差し込む。数秒して、ガチャンと錠前が開く。
「それで、結果は?」
「馬鹿でけえ壊れた鎧があった」
推定50
恐らくはあれが嘗てこの地に落ち、その力を使いモンスターを倒し、守り神として祀られているのだろう。
アフロディーテの言葉を信じるなら神の鎧。しかしそれは
「古代の力ある怪物にでもやられたのね。ずいぶん
「……………は?」
「ところで、他にわかったことは?」
「…………
溶けも伸びもしないから、溶かした青銅の中に埋め込むような形だっただろうが。
「あと、外の世界にしちゃ強いのが居た」
騒ぎを起こせば協力してくれた旅芸人達に迷惑がかかるからと、深入りをせず戻る途中、たまたま見かけた神の眷族について思い出す。
モンスターを戦力とするこの国で、王都でありながら怪物いらずと言われている王都。その理由が『エルリアの英雄』マルスがいるから。おそらく彼がそれ。
そのレベルは、『4』。
資源を求め殺し合う『砂漠世界』と呼ばれる過酷な環境下でさえLv.2がせいぜいなのを考えれば、間違いなく英傑。
「噂を聞く限り結構な善人みたいねえ。軍の将軍なら、関わってるだろうけど」
「善人ねえ。血の匂いが濃かったが………まあ、拷問の類のつき方じゃなかったな」
あくまで戦場でついた血の匂い。
「で、あんたは何してんだ?」
「内職」
何故女神が内職として石鹸作りなどしているのだろうか。確かにこの王都には大浴場がたくさんあるが。
「神々の言葉で言うなら、伏線ね」
「………………」
ドヤ顔が、なんかいらっときた。
「ところで、そろそろこの子達も1年経つんでしょう? ランクアップ、してあげましょうか?」
「………………」
そうすると、1年は
フェルズ曰く神の同意無しで
「こいつ等の意思に任せる」
「あらそう。貴方達、さらなる力が必要になったなら言いなさいね」
アフロディーテはそう言うとシャバラとシュヤーマの頭を撫でた。
お前達の次の感想は『踊り子リリウスだと!?』と書く