ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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新たな旅路

 一先ずエルリアの異端児(ゼノス)は全員解放し終わった。なので、アフロディーテは使いを出して眷族達を呼ぶ。

 今【アフロディーテ・ファミリア】は巨人達に破壊された街の復興作業に当たっている。

 

 Lv.1にしてもあまりに雑魚ばかりだが、恩恵を持つと持たないでだいぶ異なる。

 リリウスは顔を出すと騒がしくなりそうだからと残っていた中で一番高い宿で待機しているように言われた。

 

「お前等の魔法、『わんわん』じゃなかったな」

「わふう」

 

 『代理詠唱』にて騎乗者に詠唱を肩代わりして貰う希少詠唱(レアスペル)。何時だったかリリウスが予想した詠唱とは違った。

 

「俺かアフロディーテぐらいしか乗せねえくせに。自分で詠唱しろよ。ほら、わんわん」

「わおん!」

「ヴッ」

 

 と、リリウスの世話を命じられていた女団員の一人が胸を押さえてぶっ倒れた。

 

「しっかり〜!」

「息をしてない!」

「………………」

 

 何故か心臓が止まっていたのでリリウスが微弱な雷で動かしてやった。

 

 

 

 

「………………」

 

 そして夜。リリウスは宿の窓から外へ出る。

 魔石灯も壊れて真っ暗だが、視覚能力に優れた小人族(パルゥム)のLv.7ともなればこの程度の夜闇など闇に入らず、そもそもレイから学んだ反響定位(エコーロケーション)があるリリウスはスイスイ進む。

 

 巨人の残した爪痕は大きい。マルスも、表向きには城の崩壊で王族達と共に死んだ事になっている。

 導く者のいないこの国は、直に敵国であった国々に飲まれていくだろう。或いは、税金を正しく使うがゆえにリリウスの標的にならなかった貴族達が纏めるか。まあ、そこはあまり関係ない。

 

「カリス」

 

 水路に訪れ、名を呼ぶ。水面から勢い良く大きな影が飛び出してきた。

 

「リリウス!」

「声を抑えろ」

「あ、ごめんなサイ」

 

 飛び出してきたのは拙いながらもマリィよりスムーズに喋る人魚(マーメイド)。名はアフロディーテが与えた。

 『優雅』という意味らしい。あと『美しい娘達』とも………。

 

「見つからなかったか?」

「ええ、ちゃんト潜っていたもノ」

 

 えへん、と胸を張るカリス。マリィより少し大人びた見た目だが、年齢はマリィより下らしい。精神年齢は、似たようなものだ。

 地上の異端児(ゼノス)の中でもかなりの仕打ちを受けていたが、恨み辛みはないらしい。何時か出してくれると約束した王子が居たそうな。

 その王子はカリスが好きだったのだろう。死んだけど。

 

「連絡があった。明日には迎えが来る」

「リリウスも、来るノ?」

「……………いや」

 

 エルリアでの売買は止めたが、もう少し外に残ることになりそうだ。アフロディーテが何かさせたそうだったし、リリウスはともかくシャバラとシュヤーマの二匹(ふたり)の恩恵を更新していた恩がある。

 

 後アフロディーテが言っていた世界を滅ぼす要因とやらも気になる。

 ダンジョンの無限のモンスター()は食えないが、今のリリウスはその気になればそこらの石でも食える。

 

「え〜! ついてきてくれナイの?」

「いずれダンジョンには戻る」

「………大切な人がいルの?」

「…………いない」

 

 むぅ、と頬を膨らませるカリス。

 

「本当に、ママのところクル?」

「ああ、俺にとってもあそこに行く意味がある」

「約束、ネ!」

 

 

 

 

 と、カリスと約束を交わし、異端児(ゼノス)を迎えに来たフィルヴィスに渡して【アフロディーテ・ファミリア】の団員と別れて半年。

 リリウスはアフロディーテと共に秘境ベルテーンに向かいながら周辺の村々を救っていた。

 

 『頼みがあるの』と切り出したアフロディーテに内容も聞かずに了承すれば、何故か怒られた。

 やってほしいことがあるくせに、断られたいとはどういう意味なのか…………。

 

 とはいえ、その為に少しでもアビリティを上げろと言われた。「ついでに私を崇めさせなさい」と言い出したので、こうして村や町を滅ぼし得る怪物退治。

 

「ありがとー! 女神様ー!」

「美しいー!」

 

 竜の死骸を食うリリウスの傍らでアフロディーテが村人達に崇められている。

 

「そうよ! アルテミスなんかより私を崇めなさい! オーホッホッホッ!」

「「「は、殺すぞ?」」」

「ぴいっ!?」

 

 2年ほど前、【アルテミス・ファミリア】に救われたという村でアフロディーテが対抗意識を向けるとアルテミス親衛隊を名乗る当時の猟師や戦士達が青筋立ててブチギレた。

 

「な、なによぉ! 女神にマジモンの殺気向けるんじゃないわよー!」

 

 リリウスの後ろに隠れ涙目で村人を睨み返すアフロディーテ。でも『魅了』はしない。

 まあ、助けたとはいえお前達の信仰捨てろと言うアフロディーテが悪い。

 

 リリウスはどっちが悪いとか正しいとか興味ないので食事を再開した。

 

 

 

 

 その夜は宴。

 

「パンプキーンは出なかったな」

「ちょっと、変なこと思い出させるんじゃないわよ」

 

 最近参加した妙な宴を思い出すリリウスにアフロディーテが呆れながら言う。

 精霊を操る杖(アーティファクト)と、パンプキーンの実に憑いた精霊が存在した村。何気に上級冒険者すら操るという、ちょっとした世界の危機と、まあ、一応、言ってもいいレベルの騒動だった。

 

 リリウスがパンプキーンの実を全部食い尽くしてパンプキングの仮面に食いつき、天授物(アーティファクト)も壊して事なきを得たが。

 

 因みにアレスの青銅鎧はあれ以上壊すのも面倒なので、一部の欠片だけ残して後は纏め、デイモスを括り付けてからデイモスを刺すことで諸共天界に送還した。同じ天授物(アーティファクト)でも、やはり格が違った。

 

 

 

 

「さて、それじゃあ行くわ!」

「「「さよーならー! アフロディーテ様ー!」」」

 

 なんやかんや、結局村人達に好かれるあたり、彼女は善神なのだろう。

 と、小さな子供が2人駆けてきた。男女だ。少女は手には不格好な犬のぬいぐるみ。シャバラとシュヤーマに渡すらしい。

 少年の方はリリウスを見る。

 

「僕も、フィアナ様みたいになれますか?」

 

 小人族の女神(フィアナ)? 何でいきなり架空の神性の名を出したのだろうかこの子供は。

 いや、一応古代の英雄の名前でもあった。

 

「知らん」

 

 と、返すリリウス。そもそもどんな英雄だったか詳しく知らない。槍持って渓谷作った英雄だったか?

 良く分からない英雄みたいになれるかと問われても、知らないとしか言えない。

 

「まあ、抗えば強くなれる」

「……………はい!」

 

 と、少年は嬉しそうに叫んだ。

 

「ありがとうございます、フィアナ様!」

 

 

 

 

 

 

「……………フィアナって俺か?」

「遅っ」

 

 3日ほど経ち、村から大分離れて気付くリリウスに、アフロディーテは思わず突っ込む。

 

「【勇者(ブレイバー)】のおかげで、蔑まれてばかりの小人族(パルゥム)でも一部尊敬されるようになったものね。一時期は他種族には名前だけ伝わっていたフィアナも、フィアナ騎士団という英雄譚を知らない子の方が少なくなってきた」

 

 そして、そんな時代に現れた村や町を救う小人族(パルゥム)()()。そりゃもう、名前を重ねて尊敬を集める。と、そこまで考え別に少女と思われてることは言わなくていいか、と押し黙る。

 

「それよりステイタス、更新しましょう」

「ん」

 

 

 

 

【リリウス・アーデ  Lv.7

力∶H189

耐久∶G227

器用∶H107

敏捷∶G204

魔力∶G248

捕食者C

悪食C

強食D

毒牙G

咆哮G

治力I

《魔法》

【ラーヴァナ】

・狂化魔法

・詠唱式【傲慢なる悪意の王。血の河を啜れ、肉を貪れ】

【ラーフ・シュールパナカー】

・変質魔法

万象補食(コンセプトイーター)

・詠唱式【月を喰らい太陽を飲め暴食の化身。首となっても歯を突き立てろ。肉親(だいしょう)を糧に我が身は千の姿を得る。貪り喰らえ、千変(かて)の傷を喰らい我が傷に、我が牙を以て汝に傷を】

《スキル》

狂餓禁食(プレータ・ナンディン)

強喰増幅(オーバーイート)

・強者を食らうことによりステイタス成長速度向上

・食事による回復

・常に飢える

天喰餓鬼(マハーグラハ)

・嗅覚及び聴覚の強化

損傷吸収(ダメージドレイン)

魔法補食(マジックイーター)

万物補食(オールイーター)

混濁精霊(スピリット・オブ・カオス)

・魔力に高域補正

・魔力変換

獣王化身(ベヘモット・アヴァターラ)

・猛毒生成

・黒風

・黒雲

・発展アビリティ耐異常を高域発現

・神性抵抗   】

 

 

 やはり、低い。Lv.7になってから約2年。ダンジョンの外で、Lv.7は殆ど上がらない。

 マルス戦でそこそこ稼げたが。

 

「やっぱりベルテーンのモンスターに期待するしかないかしら。後は、それこそ封印された古代のモンスター………」

 

 ブツブツと呟くアフロディーテ。リリウスにさせたい何かのために、アビリティは上げたい。問題は、地上にあまり上げれる環境がないと言う事。

 

 『竜の谷』から結界を越える竜種は増えているが、Lv.7のリリウスからすればその程度の経験値(エクセリア)などアビリティが一桁上がれば良いほうだ。

 

「……………アフロディーテ、考え事の途中だがワイバーンだ」

「は?」

 

 リリウスの言葉に顔を上げると、夜空の星々を塗り潰すようなワイバーンの群れ。

 恐らくは数匹の『竜の谷』の翼竜(ワイバーン)が谷の外で繁殖していたワイバーンの群を取り込んだのだろう。

 

「シャバラ、シュヤーマ、任せた」

「ワン!」

「バウ!」

 

 リリウスはシャバラ達にアフロディーテの護衛を任せるとワイバーンの一体に向かい釣り針を振るう。

 釣り針は見事突き刺さり、リリウスは鎖を使い空へと昇っていく。

 

 

 

 

「グオオオオ!!」

 

 同胞の背に乗るリリウスへと牙を剥くワイバーンの首の肉を食いちぎり、死体を別の個体に投げつける。

 その程度では群は揺るがない。

 

 さて、どうするか。壁や天井のあるダンジョン内ならここまで上空に来ることはまずない。一匹一匹殺していくのも、自由に飛び回れる空では難しい。

 

 何匹かは取り逃すが…………まあ数を減らすか。

 一先ず群のボス、と向かおうとするリリウスを邪魔するように向かってくるワイバーン。

 

「オオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

「「「──────!!?」」」

 

 リリウスの咆哮に群の8割が硬直する。逆に言えば、2割が残る。

 その2割の内一匹の背中に飛び乗るリリウス。

 

 アンフィス・バエナ戦で、アクア・サーペントの頭に剣をぶっ刺し痛みで操る、なんてことをしたがあれは的が大きいから動きも大雑把でよかった。

 

 少なくともワイバーン相手にやったら明後日の方向に飛んでいくだけだ。

 

「ギャ、ギャッ!!」

「グオオオオ!!」

 

 リリウスを振り落とそうとするワイバーン。周りのワイバーン達も、リリウスを警戒して直ぐには襲ってこない。

 

 ワイバーン達は、リリウスしか見ていない。だから、避けられなかった。

 

「ギャッ!?」

 

 翼の付け根に突き刺さる矢。この上空に届かせ、竜の体に突き刺さる剛弓…………明らかに人間の膂力では引けない弓。つまり、神の眷族が放つ矢がワイバーンに突き刺さる。

 

 続いて魔法。

 やはり狙いは翼。威力が落ちる分、仕留めることよりも地上に落とすことを優先した魔法や矢の嵐。

 

 リリウスはワイバーン達と共に地上に向かい落ちていく。

 

「グギャ!」

「グギィ………!」

 

 リリウスの咆哮に耐えただけあり、中々強い。落下の衝撃に無傷とは言わずとも闘志を燃やし()()()()()()()

 

 リリウスの仕業だと思ったのだろう。またリリウスしか見てない。だから、やはりまた気付かない。

 

 一匹の首が切り落とされる。一匹の口に魔法が飛び込み爆発する。

 一匹の目に、矢が突き刺さる。特別速かったわけじゃない。

 人間の膂力で放たれる、人理の範疇の矢。だがワイバーンは反応出来なかった。

 タイミング? 射線? 風の音? 矢を使わぬリリウスにはおおよそ理解出来ぬ『絶技』………否『神技』を用いて放たれた矢。

 

「カッ!?」

 

 惜しむべくは、そのワイバーンが群のボスであったこと。柔らかな目を貫いても、脳に達せなかったこと。

 

 なのでリリウスが蹴りつけて押し込む。ワイバーンは今度こそ死んだ。

 

「済まない! 大丈夫か!?」

 

 声が響く。振り返り、どんな冒険者が今の『神技』を行ったのかと観察しようとすれば、数人の女の中から直ぐに見つけた。

 

 わかりやすかった。

 《()()》の筈だ。だって神だもの。

 

 蒼月の如き美しい髪をした女神がそこに居た。

 

 


 

 

パンプキング

ダンジョンクロニクルに登場する敵キャラ。パンプキーンと言う南瓜に似た作物をくり抜いたマスクを被り、同様のマスクを被せ人を操る。

顔面に迫るリリウスの口を見て杖を放り捨て逃げたが、追いつかれマスクは食われた。

現在は監獄でギザ歯と口内フェチを布教しているとかいないとか。

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