ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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アルテミス

 強さとしては、Lv.3もいる集団。オラリオの外では破格の戦力。

 ワイバーンと共に降りてきたリリウスを警戒している。調教師(テイマー)の可能性を考えているのだろう。

 

 ワイバーンがリリウスを襲ったとはいえ、腕の低い調教師(テイマー)が逆襲されるなどよく聞く話だ。

 

「……先のワイバーンは、君が操っていたのか?」

「いや、殺しに来た」

「…………そうか」

 

 神に嘘は通じない。リリウスは嘘か本当か分からなくは出来ても、嘘を本当に見せることは出来ないしやるつもりもない。

 

「その子の言葉に嘘はない。しかし、どうやってワイバーンの背に」

「これぶん投げて」

 

 と、釣り針を見せるリリウス。鎖がちょっと長くなりすぎたので適当な場所で切る。そのままボリボリ食い出すリリウスに戦乙女達はギョッと固まる。

 

「え、それ食べれるの!?」

 

 と、一人だけ突っ込んできた。猫人(キャットピープル)? いや獅子人(レオル)だろう。

 

「私も食べて見ていいかな!?」

「駄目だ。これもそれも、俺のものだ。それとそれと、後あれはお前等が持っていって良い」

 

 リリウスの咆哮で気絶し落下死したワイバーンの半数は魔石が砕け灰になっているが、なってないのはリリウスのものだ。

 女達が放った魔法や矢で死んだワイバーンは彼女達に譲る。後とどめを刺した群のボス。

 

 女達、と称したようにこの【ファミリア】には女しかいない。男の匂いも、薄れている。恐らくは数日街ですれ違った程度。

 

 女だけの【ファミリア】。何処となく雰囲気が【アストレア・ファミリア】に似ている。女神も、なんだかアストレアから優しさを少し引いて厳しさを付け足したような雰囲気だ。

 

「お前もアリーゼ(馬鹿)っぽい」

「え、なんで私急に罵倒されたの?」

 

 獅子人(レオル)の少女は唐突な罵倒にぽかんと固まる。リリウスは気にせずワイバーンの死体を蹴ってひっくり返す。

 

「あ、でもドロップアイテムを運ぶ手伝いぐらいは……………え」

 

 魔石とドロップアイテムを取るのだろうと思い声をかけた少女は固まる。それも仕方ない。何せ、目の前で幼い子供がワイバーンの死体を食い出したのだから。

 

「モ、モンスターって食べれたの!? じゃあこれから食費と狩りの時間を節約出来──ふぎゅう!?」

「ランテ、冗談でも言うな!」

「多分、スキルです。【ゼウス・ファミリア】にモンスターを食べて力に変える英傑が居たと聞いたことが」

 

 実際似たようなスキルだ。リリウスの場合、それに加えて強者の肉限定で一時的な強化どころか経験値(エクセリア)に変えたり、何でも食えるスキルがあったりするが。

 

「あの〜、あなた主神や【ファミリア】の仲間は?」

「もぐ…………そろそろ来る」

 

 食事を止め質問に答えてやるリリウス。

 直ぐに食事を再開したリリウスに、どういうことかと聞こうとすると、ガサガサ茂みが揺れる。

 

「終わったんなら戻ってきなさいよ! 心配するでしょ。シュヤーマ達が」

「ワフ」

「クゥ」

「俺の心配なんて不要だとよ」

 

 シュヤーマに乗ったアフロディーテだ。蒼月(ブルームーン)の髪をした女神は、瞬間仇敵にでも出会ったかのような表情を浮かべた。

 

「アフロディーテ!」

「は? あら、アルテミス………」

 

 アルテミスと言うらしい女神は、知り合いのようだ。だが、仲はよろしくないらしい。

 2()の女神の間にピリピリと張り詰める空気。神威こそ放っていないが、女神達の纏う空気に眷族の女達も犬達も落ち着かず、リリウスだけ『この爪魔石抜いても残るな』とワイバーンのドロップアイテムになったであろう部位を味わっていた。

 

「ふ〜ん。噂通り女ばかりの【ファミリア】みたいね。相変わらず汗臭く走り回ってるのかしら?」

「は?」

「天界にいても地上にいても、変わらず森を駆けてるみたいね。あ〜、蛮族蛮族。こんな子が同じ女神なんて恥ずかしー!」

「は?」

「今なら『グリグリ踏まれたいだけじゃなくて足の匂いも嗅がせてほしい女傑(めがみ)No.1』とか言われてそうね〜!」

「は?」

 

 女神の瞳孔が開き、シャバラとシュヤーマが耳と尾を伏せる。リリウスはそういえばそんな要求してくる男がいたな、と思い出す。あの男は願望が神の領域に至っていたらしい。

 

「貞潔を尊ぶぅ? 永遠の純潔ぅ? そんなこと言ってるから私より不細工なのよ、この喪女神(もじょがみ)ぃ!」

「は?」

 

 キリキリと糸が張り詰める音が聞こえた。

 

「げぇ〜! 鋭い鏃が美しい私の眉間に照準されているぅー!!」

「あの子は君の眷族か、アフロディーテ」

「リ、リリウスの事? ええそうよ。ちょっと他の皆と離れてるからあの子達が今の私の可愛い眷族!」

 

 と、自慢するように叫ぶアフロディーテ。

 

「リリウスは最強なんだから! やっちゃえ、リリウス! この喪女神の眷族に目にものを見せてやりなさい!」

「やだ」

「ちょー!」

 

 リリウスは別に殺気を感じなかったので食事を再開した。

 

「君、アフロディーテから何か厭らしいことを教わってないか?」

「厭らしいこと……………? ……………………」

 

 リリウスは暫く考え、唇を尖らせ指に触れさせ、指を弾く。

 

「…………………何なのそれは?」

「投げキッスだ。この前、アフロディーテが色仕掛けとか言ってたろ」

 

 呆れ顔なアフロディーテは、ため息を吐きながらアルテミスに向き直る。

 

「ま、あの通りそう言うことも全然知らないおこちゃまよおこちゃま」

「「「エ、エッチすぎる…!」」」

「USOでしょ」

 

 顔を真っ赤にして戦慄する処女神とその眷族達に驚愕するアフロディーテ。

 

「え、なんなのあんたら。頭古代エルフなの?」

「こ、こんな幼子になんて破廉恥な事を! やはり『美の女神』は人類(子供)達には早すぎる!」

「ガチの殺気と鏃を向けんじゃないわよー! どこの世界に投げキッス教えて処女神の怒りに触れる美の女神がいるってのよ!?」

「ここ」

「ええそうね! いやぁ、死にたくない、死にたくなぁい!!」

 

 アフロディーテがやかましいのでリリウスがアルテミスとアフロディーテの前に立つ。

 

「良くやったわリリウス! そのままこの頭カチンコチンの処女神を説得しなさい!」

「矢を収めろ女神。じゃなきゃ、お前の眷族鏖殺(みなごろ)す」

「まさかの、脅迫!!」

 

 しかも本気でやる気だ。

 【アルテミス・ファミリア】の面々も得物を構えるが、リリウスの放つ威圧感に戦力差を察して冷や汗を流す。

 

「…………解った」

 

 思い切りアルテミスからの警戒を受けながら、リリウスは殺気を収めた。そのまま食事を続けようとしたリリウスをアフロディーテが引っ叩く。

 

「……………何しやがる」

「何しやがるも何も何なのよあれは。私は説得しろつったの!」

「これが手っ取り早い」

「そうね………でも私は女神よ? 天界に帰るだけで本当に死ぬわけじゃないし、殺気は本気でも、アルテミスだって本気で私の脳天撃ち抜く気は無かったわよ」

「…………そうなのか?」

「そうなのよ」

 

 庇っているわけではなさそうだ。神なりのスキンシップなのか、殺気はあれど分別はあったのか。

 

「殺そうとして悪かった」

「あ、ああ…………」

 

 素直に謝罪にアルテミス達も困惑する。悪いと思ってることに、嘘はない。

 極端というか、どういう環境で育ったのだろうか?

 

 

 

 

 

「私達はこの辺りの村の依頼を受け竜の群を狩りに来た。まあ、必要なかったようだが」

「村一つ通り過ぎていた。お前等がいた村だ。お前等を警戒していた」

 

 リリウスが昇ってる途中の村だ。

 群を率いるボスはわざわざ危険を冒さない。アルテミス達の気配を感じていなければ壊滅とは言わずとも多少の被害は出ただろう。

 

「そう言ってもらえるとありがたい」

「優しいリリウスに感謝するのね。ほら、もっとありがたがりなさい?」

「…………………………」

 

 何故お前が偉そうに、と目で睨むアルテミス。

 

「だけど彼奴等、他のからも逃げてたな」

「…………え?」

 

 本来人類と見れば襲い掛かるモンスターは、しかし強者を避けた。モンスターの中には狡猾なのもいるが、少なくともワイバーンは竜種だけあり大概の敵には襲いかかる。リリウスにも追いつかれたとはいえ、逃げるより襲うほどだ。

 

「怯えていた。お前達以外の何かに、巣を追われていたんだろ」

「『竜の谷』のワイバーンが混じった群を、追い出した?」

 

 

 

 

 とある渓谷。ワイバーンの死骸を蛇のような長い体をしたドラゴンが食い漁っていた。

 卵を丸呑みし、成体を噛み砕く。抵抗したのだろうが、そのドラゴンの身にそれらしい痕は見受けられず、牙や爪の砕けたワイバーンの死骸だけが無意味さを知らしめていた。

 

 その竜もまた、『竜の谷』の結界を通り抜けた竜の一匹。

 『竜』の中には上級冒険者にも引けを取らぬ狼人(ウェアウルフ)の集団を満月の月夜に滅ぼすほどの個体もいる。

 

 地上のモンスターでありながら、破格の強さを持つ。その竜もまた、村々を滅ぼし国すら焼く、脅威の一つ。

 ガラガラと崩れた崖の上を見る。何かがいる訳ではない。だが、不愉快そうに目を細めた。

 

「オオオオオオオオオオ!!」

 

 ここは己の縄張りだと、姿の見えぬ全ての生き物に咆える。バチバチと放たれた雷が周囲を焼いていく。

 音の届く全ての場所から動物もモンスターも逃げ出す。

 

 竜の名は『雷竜(リンドヴルム)』。雷を纏い、高速で空を駆け抜けるその姿から『竜星』とも称される、深層域の竜の一種。

 

 地上のモンスター、という枠組みはもう通じない。上質な『竜』の魔石を喰らったリンドヴルムは、濁った翡翠のような竜鱗をモンスターの血に染めながら夜空へと咆える。

 

 


 

 リンドヴルム。

 実はダンまちの世界って結構エルフの里や人の村、街とか滅んでるんだよね。この竜もその滅びの要因の一つ。

 貪欲な性格であり常に力を求め、現在の潜在能力(ポテンシャル)はLv.5。空中戦ならLv.6相手でも勝ち目があるちょっとすごいドラゴンなんです。

 本来なら『学区』の教員あたりが最強の教師含めたパーティ組んで討伐するような相手。

 今回は酔っ払い関係ない。実はエルリアの外で研究されてた巨人の残党を食ってるけど、酔っ払いも知らないドラゴン。

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