ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
リリウスの、読み聞かせの上手さランキング
4位 輝夜(極東限定)
3位 アリーゼ
2位 アストレア
1位 アーディ
シュヤーマの治癒魔法は、シュヤーマ自身も対象となる。
なので全員の傷を癒して、【アルテミス・ファミリア】が用意した避難所に向かう。
途中通った無人の村は、落雷で一部焼けていた。周辺のモンスターはとっくに食われたか逃げ出していた後なので、あの騒ぎで大群が押し寄せて轢き潰す、なんてことになってないのは幸いか。
リリウスはシュヤーマの上でオヤツ感覚で『リンドヴルムの鱗』を食う。それなりの糧になり得る相手だった。
同じくドロップアイテムの『リンドヴルムの発電器官』は、フェルズにでも渡そう。雷の魔法を使うフィルヴィス辺りの装備になりそうだ。
「戻ってきたぞ!」
「てことは……!」
避難所が見えてくると、不安そうに待っていた村人達が叫ぶ。
「倒してきた」
それだけ告げる。と、わあああああ!! と歓声が上がった。
遠くからでも確認出来る吹き荒れる暴風、雷雲と空を駆ける稲光。天災の如きその光景に、誰もが絶望しかけたのだ。
まあ、暴風はリリウスの放った矢から発生したものだが。
「特にあの風がやばかったな」
「ああ、雷もそうだが風もやばかった」
「やばいよね」
「やばい」
「…………………………」
リリウスはボリボリとリンドヴルムの鱗を噛んだ。
「リリウス」
「むぐ…?」
声をかけられたので振り返るとアルテミスがいた。
「あれだけの敵だ。私の
「あら、お礼がしたいの?」
と、アフロディーテがリリウスの頭に両手を乗せ、顎を乗せる。
「私がお礼したいのはリリウスであって、断じてお前ではない」
「言われなくても知ってるわよ。でも、この子は知らない。だから、この子の望む物のためにお願いするの」
「そうか、頼む」
と、リリウスはアフロディーテに要求を譲る。本人がそう言うならば、と顔をしかめながらも了承するアルテミス。
「あなたの精霊が封印した蠍………何って言ったかしら?」
「アンタレスか?」
「そうそう。それ………それの封印場所教えなさい」
「なんの為に?」
「リリウスと戦わせる」
「………………何だと?」
アフロディーテの言葉に、アルテミスは数秒固まり、意味を理解し直ぐにアフロディーテを睨んだ。
「お前、本気か!? あれが、どれほどの存在かわかっているのか!?」
「そうね〜。ダンジョンの後出しの後出しの、後出しで、最後に出て来た3匹よりは弱いんじゃない?」
3匹、ダンジョン…………恐らくは三大
「対応後のモンスターだけど、それはあくまで
「だとしても、あれは正真正銘、ダンジョンの敵意そのものだ!」
ザワザワと2柱の女神に視線が集中する。アフロディーテははぁ、とため息を吐くとその瞳を妖しく輝かせる。
「っ! お前………」
「人に聞かれたい話でもないでしょ。私だって不本意よ、何が悲しくてあんたの眷族で人形遊びしなきゃなんないのよ」
魅了を使ったようだ。アフロディーテにとって、今からする話を人に聞かれるのは『嫌な事』なのだろう。
「この子は力を求めてるの。そして、強い奴と戦えばそこらの冒険者より強くなれるのよ。その果てが今のLv.7。解る? あんたの眷族が束になっても敵わないわよ」
「だとしてもだ! まずは他の冒険者にも」
「あれと渡り合える冒険者なんてオラリオにしかいないわよ。そして、ただでさえ後が無いのに現状封印されたモンスターの為に動くと思う?」
まず動かないだろう。ウラノスはともかく、ロイマンは動かさない。
封じられてる世界の危機なら、いずれ解けると確信している黒竜の方を優先する。世界を救う気はあるが、見ている世界は意外と狭いのがあの男の欠点だ。
「黒竜を討伐した後に、連合を組めば良い」
「それまでに封印が持つ保証は? 確信を持って後百年は安全、なんて言えるの? 言えないわよね。私達は
「それは、そうだが…………だとしても、こんな子供に。そうだ、お前は決して悪神ではない! そんなお前が、この子が強くなることを望んでいたとしても、危険を冒させる理由はなんだ!?」
「……………『天の炎』を消させる」
また知らない単語だ。
アフロディーテがやってほしいこととはそれか。
「…………正気か?」
「ええ。11年前、ゼウスとヘラは黒竜討伐の後にあれに対処するつもりだった。
蠍とやらと同じ、後回しにしたということか。だが対処は必要な何か。
「あれがこれ以上穢れるなら、火の神を捧げる必要が出るわ。そして、おそらくその適性が高いのは………」
「っ! …………ヘスティア」
「私、あんた達と同じ処女神の中でもあの子は嫌いじゃないのよ。まあ、世界の危機と比べてあげるかと言われたら、ノーコメントだけどね」
女神の名前か。アルテミスと同じ処女神………真面目な神なのだろうか?
「まあヘスティアが来る前に焼き尽くされる可能性もあるけど、来たなら間違いなく選ばれるし、ヘスティアも受け入れるでしょうね。いやでしょ、そんなの?」
「だからといって…………」
「この子には神殺しの獣の力が宿ってる」
「!?」
「下界の未知が引き起こした、神の想像もつかない
ヘルメス………。あの胡散臭い男、そう言う気障ったらしい事言いそうだ確かに。
「ロキは【
その神がその人間に賭けるとしたら………勝利? 英雄………いや、アルテミスがここまでムキになるということは………。
「世界の危機ってやつか?」
アフロディーテが言っていたやつだ。アレスの青銅鎧とか、割とふざけていたけど悪意を持った者が上級冒険者すら精霊を通して操る事が可能な杖を持った時とかと同じ。
「そうね。あれは文字通り世界を焼き尽くす。そうなったら生き残れるのはダンジョンと古代の力ある怪物………貴方もひょっとしたら生き残るかも」
つまりまた神の力か。ダンジョンも神々の負債と言っていたし、意外と多いのか、神の不祥事? まあ迷惑かけるも何もこの世界は神々が創った神のものの訳だが。
「だけど、しかし………」
「世界の危機を後に回すか今やるか。結局これはそれだけの話よ。まあ、別に教えなくてもいいわよ。その時はこいつを未熟なままオリンピアに連れてくだけだし」
「……………解った。ただし」
「………?」
「私達も連れて行け。どのみち、遺跡の封印は私にしか解けない」
アフロディーテはリリウスを見る。精霊の奇跡により異界化された遺跡の中に封じられているとはいえ、リリウスならドゥルガーの力で強化された魔法で食い千切れそうなものだが………中身が人間とモンスターとはいえ、神の鎧を噛み砕いたわけだし。
「………ま、良いわ。そこが妥協点でしょ」
リリウスが封印を壊せると言っても、アルテミスは納得しないだろう。眷族がいても自分でモンスターと戦おうとする脳筋に、私の美麗な説得なんて効かないもの、と1人結論づけるアフロディーテ。
「まあその前に、ちょっと前の騒動のモンスターの原種の所にも向かうんだけどね」
「騒動? そういえば、つい最近巨人が暴れたと言う噂を聞いたな」
「それ殺したの俺だな」
「その中身の原種を探してるのよ。とっ、もう良いわね」
パン、とアフロディーテが手を叩くと周囲の者達が何事もなかったように動き出す。まるで時間でも止めていたのかと錯覚しそうだ。
「旅に戻る前にシャバラ達のステイタスも更新しちゃいましょうか」
「ワフ!」
そういえば一応格上のワイヴァーンと戦っていた。まあ、あれが大した
「あら、ランクアップ出来るわ」
「…………何?」
まだ半年しか経ってないのに? と己のランクアップ期間を棚に上げるリリウス。
「でもランクアップ出来ないわ」
「どういうことだ?」
「器を破るだけの偉業を成したけど、器が変化に耐えれるほど成長してないの。もう少しステイタス上げなきゃ」
つまりあのワイヴァーンとの戦いは器が昇華するに足る偉業であったが、器をそれだけ成長させる
「あんな臆病な竜が?」
「ワン」
「クゥン」
「ん? そうか…………」
シャバラ達が言うには臆病者ではなかったらしい。最後の最後で竜の『誇り』を取り戻したか。
「まあ、これから向かうベルテーンの沼の王にでも期待しましょう」
「ベルテーン!?」
と、避難民の中から声が響く。
「今、ベルテーンと言いましたか!?」
現れたのは一人の男。格好からして旅人だろう。
「ベルテーンの沼の王、倒せるのですか!?」
「さあ……」
「倒せるわ。だってリリウスだもの」
と、アフロディーテがリリウスを抱きしめ得意げに言う。
「ならば、ならばどうか我等を、ベルテーンをお救いください!!」