ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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お前嫌い

 ベルテーン。

 それはとある一族が建てた国。()の一族は先天性の病を患い短命であった。

 救いを求め彷徨い、ほんの少し病が抑制される極寒の冬を乗り越え、辿り着いたのが後に生命の泉と呼ばれる泉。

 

 天然の回復薬(ポーション)のように癒す力を持つ泉の水を飲むことで病を抑え常人と同じ寿命を手に入れた。まさに奇跡の水として泉を崇め、そこに国を建てた。

 

 だが、数百年前悪い方の奇跡が起きた。

 泉にたまたま傷ついたモンスターが落っこちたのだ。運が悪いことに、源泉近くに。そしてそのまま源泉に引っ付いた。

 

 後は鎧の巨人(アーマージャイアント)の中身と同じ。あちらは傷つけて過剰回復を繰り返し短期で巨大化させたが、こちらは長い時間をかけて体を巨大化させた。

 

 泉に近づく人間を喰らい、モンスターを取り込み強化種となった上で自身の一部となったモンスターの肉体を修復………つまりは複製して無限の兵を放つ。

 

 おまけに汚染された泉の水は沼のように濁り、触れれば皮膚は溶け肉は爛れる最悪な性質を持つように。

 何度も何度も濾過をして、漸くベルテーンの民の宿痾を抑える。

 

 絶望に染まる民達の前に一柱(ひとり)の女神が現れたのは、そんな頃だ。

 彼女は民に沼の王を倒せずとも封じる術を教え、彼等は生き繋いだ。聖域たる泉を汚す憎いモンスターの体液を啜る屈辱の日々。

 

 二百年ほど前、あらゆる財をかき集めオラリオへ助けを求めても、不死身の如き沼の王には勝てず、最強(ゼウスとヘラ)を呼んでくれと掛け合っても、ギルドは『国を捨てるほうが賢明』と返したらしい。

 

 後『真実』しか言わないという女神が今のオラリオでも討伐は不可能と言ったらしい。アルフィア達は最近まで生きてた現代の人間。二百年前のオラリオには、当然三大冒険者依頼(クエスト)を打ち破るほどの戦力もないわけで、あの世代より弱いということ。

 

 とは言えその世代のオラリオなら、救世を行う2派閥に手間取らせる余計な情報としてロイマンが握り潰すだろう。ところでベルテーンは、今のオラリオならどうなるか聞いたのだろうか?

 

 聞いてないんだろうな、とリリウスは確信を持って目を細め案内役の背中を見つめた。

 

「ベルテーンの噂を聞いたこともないのはそう言う訳か」

「知っていれば助けに行ったかしら〜? そうよね。あなたはそういう神」

「何が言いたい、アフロディーテ」

「ゼウスとヘラが、最盛期と言わずとも存在してたオラリオのギルドが自信を持って派遣して、敗れたんなら国を捨てろというモンスターよ? あんたの眷族で敵うわけ無いでしょ」

 

 少なくとも下層階層主級と、アフロディーテは断ずる。そのうえで無限の回復能力に無限の軍勢。深層の階層主にすら迫るかもしれない。

 

「てか封印出来てるんならなんで今さら助けを求めるのよ?」

「封印は『巫女』の一族により定期的に施さねばなりません。再封印の時期まではまだ間があったのですが、突如沼の王が活性化して………!」

 

 『真実』とやらを告げる神が何も言わなかったのなら、神すら予想し得ぬ異常事態(イレギュラー)と言う事か。

 

「力も増し、『巫女』の力だけでは封じれぬと。ですが、殺せずとも弱らせる事が出来れば………!」

 

 『巫女』の力も再び届く。そう女神は告げた。

 アルテミスは物知りな神もいるものだと感心し、アフロディーテはふ〜ん、と興味なさそう。

 そもそもアフロディーテとしては再封印も何もリリウスに食わせるつもりだし。

 

「アルテミスは方法を知らないのか? 神は全知なんだろ?」

「ええ、何でも知ってるわ。でもそれは、知ろうとすれば。知るつもりがなければ知らないのと同じ」

「…………?」

「この世全ての本を持って読んでも、常にその知識が頭にあるわけじゃないでしょ? 記憶から引き出さなくっちゃ」

 

 色々面倒なのだな、全知というのも。

 

「それにモンスター………ダンジョン関連には色々未知があるの。この下界にもね。そういうのを求めて神々は降りてくるんだし」

 

 それもそうか。全知の神々でも驚く未知が溢れるのが神々からすれば低次元、故に不完全なこの下界と言う世界なのだ。

 

「見えてきました。あれが我々の避難所です」

 

 数多くの天幕が見える。柵は簡易的だが、兵士らしき鎧を着た者達がいるなら、地上のモンスター程度なら大丈夫だろう。

 

 Lv.1でも高位。Lv.2や3も交じっている。総力なら【アルテミス・ファミリア】を上回り、同数なら『ラキア』とも渡り合えそうだ。

 案内役の男は兵士に向かって手をふる。

 

「おお〜い!」

「! 戻ってきたか! 先に手紙は届いてる。彼女達が?」

「ああ、あの白い髪の少女ならきっと。あの戦いは、常軌を逸しげはぁ!」

「「「!?」」」

 

 突然血を吐いた男にアフロディーテとアルテミス、アルテミスの眷族達は目を見開き固まる。

 

「しっかりしろー! 持たせた『水』が足りなかったか!? おい、誰か!」

「は、はい!」

 

 別の兵士が慌てて大きな天幕に入り、水を持ってきた。ゆっくり飲み、ふぅ、と息を吐く案内役。

 

「いやぁ、すいません。我々、先祖代々宿痾を継いだままで。病というよりは、短命な種族なのです」

 

 おそらくアミッドやシュヤーマの魔法(ちから)でも癒せないだろう。延命させる事自体は薬で出来なくはないだろうが、国全体となればどれだけの金が動くのやら。

 

「そいつ等か?」

「………………」

 

 と、新たに現れたのは眼帯で目を隠した男。強いな。Lv.3だが、4も目前。顔の動きからして目は見えない。音や空気の流れで周囲を完全に把握している。

 

「…………とんでもないバケモンだな」

「は?」

「いや。希望が見えてきた。ついてきてくれ、俺達の姫に会わせる」

 

 リリウスはシュヤーマの後頭部を撫でてやる。シュヤーマは歩き出し、アフロディーテを乗せたシャバラも進む。

 【アルテミス・ファミリア】もそれに続く。

 

 大きな天幕につくと、見張りの兵士達がお辞儀をする。

 

「お嬢、例の奴らだ。連れて来た…………お嬢?」

 

 返事がない。天幕を叩き、中を確認する男。リリウスはふと、こちらに寄ってこようとする少女を見る。

 布を大雑把に巻きつけた、音による探知から逃れる為の格好。リリウスと目があって固まる少女は、ニコリと微笑む。

 

「なあ、お前等の姫って──」

「えい!」

 

 少女はそのままリリウスを捕まえた。

 

「ちっちゃい! かわいい! 見て見てリダリ! この子、小人族(パルゥム)の子供! 初めてみた!」

「…………………」

「ああ、リリウスちゃんが持ち上げられた猫のように!?」

 

 わーい、とリリウスを抱えてはしゃぐ少女を見てランテが叫ぶ。と………

 

「ワン!」

「ん? どうしたの? 大きいわんちゃん。ほ〜ら、おいでおいで〜」

 

 リリウスを抱きしめたままシュヤーマを撫でようとする少女。シュヤーマも敵意もない少女に困惑から後ずさる。

 

(ひい)様〜!」

 

 と、また新しく変なのが来た。小柄なエルフだ。

 

「いなくなったと思ったら何をしているのですか!」

「あ、ウスカリ。見て、ほら、可愛い。ウスカリより小さいの」

(ひい)様の子供の頃のほうがもっと小さくて可愛いです!!」

 

 何いってんだこいつ?

 

「ところで、この子、誰?」

 

 リリウスの頭を撫でながら可愛らしく首を傾げる少女。頭に巻いていた布を取り露わになった顔は可愛らしく、頭には4本の角が生えている。鹿と、羊だろうか?

 

 混獣(ビークス)と呼ばれる獣人だろう。種族の異なる獣人を両親に持つ希少種。首元に巻き付く腕をスンスンと嗅いだリリウスはリダリと呼ばれた男を見る。

 

「私は知りませんよ」

「ベルテーンの奪還に手を貸してくれるっつー冒険者だ。強いぞ」

「え、こんなにちっちゃいのに!?」

「まあまあ姫様。ほら、ウスカリ殿だって小さいし」

「そうそう。隣に立ってると見失いそうなのに俺等より強いし!」

「…………そうだね!」

「貴様等〜!」

「「げぇ! ウスカリ殿! 小さくて見えなかった〜!」」

「殺す!」

「「ぎゃああああああ!?」」

「ウスカリ〜、本当に殺しちゃ駄目だよ〜?」

 

 どうも国そのものが仲のいい連中らしい。国と言っても、規模は明らかに村落と変わらないが。

 

「………ね、ね、ベルテーンを助けてくれるって、本当? 沼の王と戦ってくれるの?」

「そうね。それが強いモンスターならね」

 

 と、少女の腕の中に囚われたままのリリウスの代わりにアフロディーテが答える。正面から顔を見た少女が「わっ、綺麗な女神様!」と叫べば機嫌が良くなる。

 

「でも、そっか。小さいのに、勇気があって、すごく強いんだね。ありがとう、大好き! ぎゅー!」

「「「!?」」」

 

 突然の告白に目を見開く美の女神と月の女神、その眷族達。

 

「うわ、うわ、告った!? 私、初めて見た! どうしましょう団長!」

「わ、私に聞くな!」

「で、出会ったばかりで抱きつき、す、す、好きなどと! 破廉恥だ、それは良くない!!」

「そうね。リリウスは可愛いもの。でもそれだけじゃないのよ? まずはそれを知ってから告白しなさい」

 

 何この混沌(カオス)とシュヤーマは思った。

 流石ボス、雌がほっとかねえぜとシャバラが誇らしげにしてるのがムカついたので頭突きする。

 

「沼の王は私が封印するから。貴方はそれまで沼の王を弱らせて、私を守ってほしいの。貴方のおかげで、私役目を果たせそう! 本当にありがとう!」

「………………」

「一緒に頑張ろうね! おー!」

「やだ」

 

 その言葉にアフロディーテもアルテミスもレトゥーサ達も、兵士を殴っていたウスカリも思わず固まる。

 リリウスは困惑している少女の手を剥がすと距離を取る。

 

()()()()。沼の王は俺が殺してやるから、ついてくるな」

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