ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
オラリオに向かいリヴェリア様の下に向かうのだと意気込んでいたエルフと出会った。
運良く祭りの時期に重なり村人達と宴をした。
そして、漸く辿り着いた。
腐臭が漂う。木々が枯れ、大地が腐る沼。まだ
「沼が、広がっている…………」
ゴボリと沸く泡が弾け沼の雫が飛ぶ。シャバラの毛に触れるとシュウ、と音を立て溶けた。
「キャン!?」
「『耐異常』がないとはいえ、上級冒険者の体を溶かすか。ドゥルガー」
「ああ」
スルリとリリウスの体から現れるドゥルガー。ベルテーンの民達がぎょっと固まる横でドゥルガーはシャバラ達に加護を授ける。大精霊の加護だ。英雄時代でもそうは見れない。
「気付かれたな」
と、リリウスが沼を見て言う。沼が強く泡立ち、モンスターが現れる。
リリウスが蹴り飛ばした。
「…………ん」
「ガアアアアア!!」
猛犬型のモンスター。『沼』を纏い正確な種類は解らないが、地上のモンスターにしては速い程度の動きだったそのモンスターは、まだ死んでない。
蹴られた首があらぬ方向に曲がったまま突っ込んでくる。ので踏み潰す。
頭部ごと脊椎を完全に破壊した。それでもピクピク動いている。
何度か踏みつけ潰しても、灰に還る様子はない。そもそも魔石がない。矛盾するようだが、全身が
一見独立したモンスターは沼の王の『一部』なのだ。
「行くぞシャバラ、シュヤーマ」
「ワウ!」
「バウ!」
リリウスが沼地に飛び込むと同時に、現れる無数のモンスター。百を超える軍勢に対して、リリウスが行うのは一つの動作。
マーダを薙ぐ。ただの一撃、故に殲滅。
轟音、衝撃、圧壊。モンスターの群が肉塊へと変わる。
沼に汚染されていた地面がむき出しになり、悍ましい腐肉がゴポゴポと沼の元たる体液を流す姿を曝す。その殆ども今の一撃で潰れているが……。
「これが泉の力か」
潰れていた腐肉が増える。否、おそらくは吹き飛んだ部分が癒えた。どころか、増殖しているのか明らかに先程まで沼でなかった範囲を覆い体液を吐き出す。
直ぐに沼が広がり、水底から触手とモンスターが現れる。地上に於て弱体化していても上級冒険者を殺しうる、下層、深層にて生まれるモンスターも混ざっている。
だが、それでもせいぜいLv.2程度。
「ガルル!」
「グルア!」
ランクアップ間近かつ、互いに
ものすごい勢いでモンスターが溶けていく。その端から再生していくが。
やはり魔石を砕かぬ限り、無限に湧き続ける。匂いは、どこもかしこも酷い匂いだ。これでは探せない。
「なら、纏めて消し飛ばす………アグニ」
「ああ」
Lv.7の肉体を媒介に、精霊の炎が顕現する。海を焼いたというクロッゾの魔剣同様、精霊由来の炎。触れてもいない木々が燃え盛る圧倒的な熱量。
「消えろ」
文字通り国ごとを焼き尽くす業火は、しかし沼の王が放った炎とぶつかり、威力が激減した。
「……………あ?」
「…………キハッ」
触手の一部が裂け、乱ぐい歯を覗かせる口が嗤った。
「キヒ」「キャハハ」「ゲラゲラ」「アハハ」「フフ、ウフフ」「アッハッハ!」「イヒヒ」「ゲラゲラゲラ」
沼が、森が、嗤う。嘲笑う。
ギョロリとデキモノのように現れた色取り取りの瞳がリリウス達を睨み、一際巨大な極彩色の目玉が沼から現れリリウスを見つめる。
「オマエ、ウマイ? クワ、セロ!!」
「────!!」
雷の槍、炎の濁流、風の刃、水の大槌、光の波濤。あらゆる属性の魔法を、リリウスは
精霊の力は、同属性と反発し合う。防御と攻撃という違いはあればこそだが。
沼の王はリリウスの扱う炎に対して火精霊の防御を以て威力を減らした。今騒いでいる口も、精霊から言葉を奪ったのだろう。
「巫山戯るなよ……………
偶然、なわけがない。精霊一匹二匹なら偶然もあり得た。だが、規格外の殺戮精霊たるドゥルガーの攻撃から原型を保てるだけの防御を行えるだけの同属性を多数に…………複数の属性。誰かが意図的に、沼の王に精霊を食わせた。
「オコッテル?」「オコッテル!」「ゲヒヒ」「ギャハハハ」
数多の精霊を食らい、言葉を得ても尚『それ』は沼の王であった。意思を、力を飲み込み己のものとする精霊の檻。穢れたとも、堕ちたとも異なる『歪んだ精霊』。
覚えている。自らに極上の餌を差し出す人間達を。時折こちらに向かってきては喰われ、絶望する人間を。
「オマエ」「オマ」「オ」「オ」「オマエ、クイタイ!」「カンデヤル」「ナケナケ」「キャキャ!」
「図に乗るな」
伸びてくる触手を、炎の壁が焼き尽くす。その壁を貫く触手の槍。再生力と精霊の防御に物を言わせた質量攻撃。無限に続くこの攻撃は、なるほどいかなる冒険者でもやがて体力の限界が来る。だが…………
「…………?」
ブチッと音がして消えた己の触手を見つめる沼の王の一部。グチャグチャと響く咀嚼音。
「クソマズ………」
顔を顰めながらも飲み込むリリウス。
相手が無限に再生するならば、リリウスもまた無限に補給すればいい。戦いながら源泉と魔石の位置を………
「【奏デロ絶望ノ宴】」
「────」
それが聞こえた途端、リリウスはほぼ反射で詠唱を紡ぐ口を破壊した。
「【生贄ヲ捧ゲシ愚カナ民ヲ嘲笑ウ王】」
別の場所から、詠唱が聞こえた。すぐさまそちらも破壊する。
「【道化ノ踊リヲ見下シ
詠唱は止まらない。一つの口を破壊しても別の口から奏でられる『継承詠唱』。
「【殺戮ハ続ク】」「【微睡ミ】」「【ヨ、消エヨ、踊ル】」「【愚カナ民達ヨ、
止まらない。止めれない。国一つ飲み込む巨大な沼の王に数多存在する口は、距離を関係なく詠唱を続けられる。
「【楽園ハ潰イエ、氷城ハ朽チル。コレヨリ訪レルワ王ノ望厶
「【
空間が、塗り替わる。シャバラとシュヤーマがその場に倒れる。リリウスも虚脱感に襲われた。
「これ、は………エナジードレインか!?」
「違う。これは、
「たかが、その程度………」
「コレ、ツヨイ?」
と、立ち上がろうとしたリリウスを踏み付ける
「………あ?」
「ドレナラ」「ツヨイ?」「タクサンアルヨ」「アハハ」「コワイ?」「ツライ?」「ツブレテシマエ」
2つの首を持つ蛇が現れる。黒い鱗を持つ蛇が現れる。階層主より大きな風を纏う巨獣が現れる。顔の無い、灰色の髪の女が現れる。蛇と人の
「ツブレロ」「ツブレロ!」「
【ベルテーン・アルプトラオム】
ダンメモのイベント、ナイトメアスクールライフで堕ちた精霊がやっていた
領域内の存在から生命力と記憶を吸い、好き勝手に様々なものを構築する。沼の王が広がり続ければ、やがて世界は悪夢に飲まれ、苦しむ人間達を見て王は嗤うだろう。
情報力の暴力、ミニ!
Q.リリウスは学区で食料を食い尽くさなかったの?
A.自分で獲ってた
Q.海の狩りはリリウス一人?
A.シハチとモハチと名付けた鯱の双子と行うよ。
一部本編会話抜粋
「泳げない……?」
「ちが、くて。その、水が少し苦手なだけで、体が固まっちゃって…………」
「アイズ、何で強がるの?」
「褒められたいんやろなあ」
「…………………」
リリウスはふむ、と考え込んだ後、笛を咥えて水の中に潜る。沖の方から何かやってきた。
「え、何、鮫!?」
「いえ、あれは………鯨?」
現れたのはイルカのようなクジラのような、白と黒の生き物。なんか、模様が目みたいで可愛い。
「今はニョルズに預けてる、この辺りの海の見張りだ。こいつ等に掴まって水に慣れろ」
「だ、大丈夫? 食べられない?」
「きゅ、きゅい、きゅきゅう!」
「きゅいきゅきゅ、きゃう!」
「『大丈夫、溺れさせるのは好きだけど自重するよ』『亀みたいにキャッチボールのボールにもしないよ、重そうだし』と言っている」
「………………!」
「アイズたんが警戒のあまり海からすごい勢いで走り去った!?」
シハチ・ヤンクル モハチ・ヤンクル
リリウスで遊ぼうとして逆に捕まり丸焼きにされそうなところを海豚という理由でアフロディーテが助けた。
Lv.3のシャチの兄弟。