ダンジョンで飯を食うのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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蠍の王

読者「アンタレスがやばいの生んでる! 酒カス、これはいったい!?」

酔っ払い「知らん…なにそれ…すばらしい!」

 

今回酒カスは関係ない

 

 

さて、今回のイベントアフロディーテが出て来たけど、どうしよ。

 

 


 

 リリウスを蹴り飛ばしたモンスターは、単眼をキョロリと動かし死にかけのアンタレスを見る。アンタレスは身動きもせずモンスターを見つめ、モンスターはアンタレスの体へ近付くと甲殻に手を添える。

 

 五指に形を変えたとはいえ、蠍の握力は健在なのか指が甲殻を砕き、食い込む。力任せに剥がし、肉を貪り魔石を露出させ、喰らう。

 

 アンタレスは、まるで一部の虫がそうするようにその身を捧げ、魔石を食わせる。

 アンタレスの体が灰と崩れ、モンスターは立ち上がる。

 

「「「────!!」」」

 

 動くことすらできなかった【アルテミス・ファミリア】が慌てて得物を構える中、モンスターは視線を向ける。ゾワリと走る悪寒。

 体が石になったかのように動かない彼女達を、モンスターは興味を失ったように視線から外し天井に空いた大穴を見つめる。

 

「イル………テキガ、イル」

 

 やはり、人の言葉を発している。敵とはリリウスの事だろう。まだ生きているようだ。

 

「キェェエエエエエエエ!!」

 

 アンタレスを喰らい増幅した魔力が地下を揺らし、遺跡を震わせる。精霊の封印がバキンと音を立て砕け散った。

 

 モンスターは穴から飛び出す。目の前の【アルテミス・ファミリア】を、敵どころか路傍の石並みの興味も抱いていない。

 

「キュウ………」

「クウン」

 

 【アルテミス・ファミリア】と同じように動けなかったシャバラとシュヤーマが耳と尾を垂らす。

 

「怯えたことは恥じゃないわ。()()()()

 

 と、アフロディーテがそんな2匹の頭を撫でてやる。

 しかし、リリウスの経験としてアンタレスを食わせるつもりだったのに、とんでもないのが出て来た。

 

 神の鎧が起動したり、沼の王が精霊取り込んでたり、リリウスの冒険、予定外の強敵が現れてばかりだ。そういう星のもとで生まれてきたのだろうか。

 

「でも、神々(私達)がしてあげられることはない。乗り越えてもらうしかないわ…………」

 

 

 

 

 地面に落ちたリリウスを狙う蠍。その単眼を掴み握り潰し、甲殻に中から触れて指を突き刺し引き寄せる。

 そのまま蠍を噛み砕いた。

 

「エサトスル、カ…………」

「喋れるんだな、てめぇ」

 

 パキリと枝を踏み折り現れる人型蠍。異端児(ゼノス)………ではない。感じる殺気はモンスターのそれ。

 知能が高く、人の言葉を発せられる生態を持ち合わせただけだろう。ウーズのように人に化けるモンスターも居るし、それと似たようなものだろう。

 

 このモンスターが擬態が必要なほど弱いとは思えないが。

 

「オマエハテキダ。デハ………ワタシハ、ダレダ?」

「自問自答に意味があるかよ。ただ話せるだけのモンスターが」

 

 リリウスが立ち上がりマーダを構える。ギチギチと甲殻が擦れ合う音が響く。

 

「それでも何者か知りてぇなら………お前は俺の敵だ」

 

 途端、膨大な魔力が溢れ出し枯れ木から葉が吹き飛ばされる。

 

「………テキ。テキダ! ワタシハ、オマエノテキ! オマエヲコロスタメニウマレタ!」

「そうかよ。なら死ね」

 

 同時に駆け出す。先に攻撃を放ったのは、当然手足の長いモンスター。振るわれた手刀を回避するも、風圧だけで木々が切り裂かれる。

 

 リリウスが振るったマーダは、再び月の光の如き障壁に阻まれ甲殻にすら触れられない。防御性能だけでいえば戦神の鎧を除けば最強だろう。ヴリトラすら超える。

 

 だが………リリウスがマーダすら歯が立たない障壁に向かい拳を振るう。モンスターは構わず背中の鋏をリリウスへと伸ばし……

 

「ギッ!?」

 

 障壁は薄氷の如く砕ける。甲殻に拳が叩き込まれ、亀裂が走る。月が隠れた今、回復手段は…………!

 

 暗雲を貫き降り注ぐ天からの光の矢が森へと落ちる。木々を蹴散らし、大地を破壊する圧倒的な破壊の豪雨。

 

 月は雲に隠れようと、変わらずそこに存在する。暗雲を貫き降り注ぐ大精霊の矢。雲の隙間から大地に差し込む月光を浴び傷を癒す怪物は、土煙の奥を見つめる。

 

「!!」

 

 土煙の奥から飛び出すチャクラム。背中の4本の副腕と精霊の力で防ごうとするも、高速回転するチャクラムに徐々に斬られていく。

 

 だが、月の光を浴びながら魔力を回復し障壁に回せば防げ………

 

「らあ!」

 

 リリウスがチャクラムを蹴りつける。障壁が砕け、鋼鉄より尚硬いモンスターの甲殻があっさり切り裂かれ……。

 

「ギィ!」

「チッ」

 

 半分ほど食い込んだ瞬間、交差させた腕を開きチャクラムを弾く。副腕が千切れかけるが月の光を浴び回復しようとし、傷口が凍りつき再生が阻害される。

 

 リリウスは腕の一本を掴みアンタレスを蹴り飛ばす。

 

「千切れた腕を簡単に生やせはしねぇか」

「ギイイイ!!」

 

 振るわれる爪を躱しながら回転し蹴り抜ける。

 モンスターの治りかけの亀裂を広げるリリウスだが、掠っただけなのに頬の肉が切り裂かれる。

 

 単純なスペックなら、モンスターが上。リリウスに固執するのがアンタレスの情報共有だとして、この個体は初めての形態故に、過去の蠍型の記憶を経験として活かせない。

 

「ヒュッ!」

 

 大地を踏みしめ、力を全身に通し拳を放つ。モンスターの甲殻が完全に砕けた。

 

「ナゼ、ムキズ?」

「………………」

 

 希少(レア)スキル……固有(ユニーク)スキルと言ってもいい【精霊喰種(スピリット・イーター)】は精霊由来の攻撃を弱体化させ、魔力を喰らう。

 

 純粋な大精霊ならともかく、力を使いこなせていない混じり物では致命傷になり得ない。

 

「キィ……!」

 

 ズン、とモンスターが地面を強く踏み込む。放たれた拳をマーダで防ぐが、吹き飛ばされるリリウス。

 木々をへし折りながら吹き飛んだリリウスはペッと血を吐き出す。

 

「ガアア!!」

 

 追撃しようと迫るモンスターに叩き込まれる音速の砲弾。吹き飛ばす事敵わずとも、動きが僅かに止まる。

 リリウスが髪を靡かせ蹴りを放つ。

 

「ギィ!」

「ガアアア!!」

 

 手数はリリウスが上。一撃の重さはモンスターが上。力も技量も、遥かに上だったアルフィアの時と比べれば、窮地と呼ぶには物足りない。

 

 まあ、それでも脅威であることは変わらないのだが。

 

「ギイィアアアア!!」

 

 モンスターの咆哮が森を揺らす。大地が揺れ、木々をなぎ倒しながら迫るは蠍の群。

 Lv.6は居ないが、Lv.5にも迫る精鋭の群。

 

 兵を呼び寄せた蠍の王は、リリウスに手を向ける。それだけで蠍が一斉に襲いかかった。回復のための時間稼ぎだろう。

 

「ヴァルナ」

 

 リリウスの言葉に現れる独鈷杵に紐がついたような武具。羂索と呼ばれるそれを、リリウスは振るう。

 蠍の甲殻を貫き互いに縫い付ける。

 動けなくなった蠍の玉を喰らう。

 

「チッ」

 

 時間稼ぎにもならない。モンスターはリリウスへと接近し、()()()()()()()()

 

「────!!」

 

 ドンッ! と大気を揺らすような音と共にリリウスが吹き飛ぶ。モンスターの足元の大地がひび割れていた。

 

(……俺の真似)

 

 人型なのだ、人の武術を模倣できなくはないだろうが、それにしたって一目見ただけで真似るとは、とリリウスは己を棚上げする。

 

「……………?」

 

 上手くいかなかったと思ったのか、反復するモンスター。

 リリウスが立ち上がるとハッと月光の如き光線を放つが、リリウスは片手で受け止める。モンスターは何を思ったのか、単眼から紫の光線を放つ。

 

「づっ!!」

「………コッチハ、キク」

 

 精霊由来の力は効果が落ちる上に魔力を喰われるが、精霊由来でなければそれなりに効く。やはり魔力自体は喰われているが、ダメージの方が大きい。

 

 けど………とモンスターは熟考する。

 光線は魔力を消費する。月の光で回復出来るが、精霊の力から魔力に変換するのは効率が悪い。

 

 サイズ差もあり、当たる攻撃の数は向こうが上。直ぐにでも対応可能な技術が突発的に目覚めるわけもなく、もっと一撃の威力を上げたほうが対応策としては理にかなうが、さて…………。

 

「…………………」

「…………あ?」

 

 モンスターの甲殻の隙間から溢れ出す月光の如き蒼い靄。精霊の魔力?

 リリウスが訝しむ中、爆音が響きモンスターの姿が掻き消える。

 

「ガッ!?」

 

 一瞬で移動したモンスターの足がリリウスの腹へとめり込む。吹き飛ばされたリリウスへと迫るモンスター。振り下ろされる拳をマーダで防ごうとして、モンスターの肘が光をばら撒き爆ぜるのが目に映る。

 

「────!!」

 

 速度の増した拳がマーダを叩き折り、速度を緩めずリリウスの胸を叩く。パキパキと小気味の良い音を立て砕ける肋骨。

 砲弾の如き勢いで地面に叩きつけられたリリウスは、巻き込まれて砕けた蠍を喰らう。

 

「やろう………!」

 

 量だけはあっても通じない精霊の力を、ただの推進力に切り替えた。戦闘センスとでも言えばいいのか、能力値(スペック)ではなく技量(スキル)の成長が恐ろしく速い!

 

「キィ…………!?」

 

 想像以上に効果的と追撃しようとしたモンスターは、リリウスの体から溢れ出した黒い風に吹き飛ばされる。

 

 髪を黒く染め、角を生やしたリリウスがモンスターを睨む。

 

「………スキルが変質してから、試したことがなかったな」

 

 【獣王化身(ベヘモット・アヴァターラ)】+【精霊喰種(スピリット・イーター)】、同時解放!!

 

「死ね」

 

 右手に炎、左手に黒風(かぜ)

 漆黒の業火が渦巻きモンスターの視界を焼き尽くしながら迫る。

 

 森の一角が消し飛び、大地はその熱量ではありえぬほど溶け炎に僅かに触れた木が枯れ、煙を浴びた植物が腐っていく。

 

「ギィ………」

「良く分かった。お前は、()()()()()()()()()

 

 むしろ、自分の方が余程世界に危機をもたらすだろう。だが、目の前のモンスターは違う。

 ベヒーモスや、その子供。なんならリリウスがあっさり蹂躙していたアンタレス本体の方がよほど世界を殺す。

 

 このモンスターは、対人に特化しすぎている。一度に殺せる命は如何ほどか。此奴が世界を滅ぼそうと人類を追いかけている間に他の何かが先に世界を滅ぼすだろう。

 

 多くを殺し尽くすのではなく、ただ目の前を殺すためだけの存在。アンタレスがそれほどまでに危険視した個体…………まあ、リリウスだろうな。

 

「やってみろ、クソガキがあ!」

「ギィエエエエ!!」

 

 


 

 

シャウラの思考「殺す」

リリウスの思考「喰い殺す」

そろそろ100話。皆が読みたい情報の暴力は?

  • 英雄邂逅(ベル君との出会い)
  • 英雄堕落(アイズ達の前で異端児かばう)
  • リリと勇者の会話(18階層)
  • リリとアキの会話(異端児逃がすあたり)
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