特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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 初めまして。以前、戦え! レイヴンちゃんという作品を書いていました。
 遊戯王はMDから入った身である為、OCGストーリーに要素を散りばめたとしても拙い所は出て来ると思います。ご容赦、あるいはご指摘いただけたら幸いです。


第1幕:シムルグ「ふざけんなよお前!!!」

 深淵。外部から隔絶されたこの大陸は多種多様の人種が存在していた。

 容姿も思想も違う彼らは互いに手を取り合うことは無く、争いの絶えない日々は皆を疲弊させていた。そんな彼らに追い打ちを掛けるようにして、この世界は異変にも事欠かない。

 厚い雲に覆われた空に亀裂が走ったかと思えば、その中央から空間が裂けていく。事態に対応するべく、集結していた教導騎士団の1人が叫んだ。

 

「今だ! 聖女を呼んで来てくれ!!」

 

 伝令が奔る。空中に広がった裂け目からは、数人分の大きさはあろう頭が出て来た。翡翠色の美しい羽毛に覆われ、頭頂部はまるで王冠と見間違わんばかりに荘厳な色彩をしていた。王と呼んでも差支えの無い鳥獣が嘴を開く。

 

「グェエエエエエ!!」

 

 あまりの声量に耐え切れなかった未熟な者は意識を失い、耐え抜いた者達でも暫くはマトモに立つことさえ不可能だった。

 胸元まで見え、巨体に相応しい翼がホールから這い出て来ようとした所で、先程伝令の為に走って行った者が帰って来た。その後ろに、1人の少女を乗せた珍妙な生物と共に。

 

「でかした!!」

 

 彼女達の姿を見るや屈強な兵士達が諸手を上げて喜んでいた。既に勝敗は決したと言わんばかりの歓喜ぶりに王鳥は憤慨した。

 必ずや全身が出た暁には、生皮を剥いで吊るして曝して食してやろうと考えた矢先、彼は異変を感じた。

 

「ン?」

 

 突如として空間の裂け目が閉じて出れなくなった。自由に動くのは頭だけ。そして、周りには弓矢や弩を構えた者達。

 

「撃て!!!」

「ア” ア” ア” ア” ア” ア”!!」

 

 顔面に大量の矢が突き刺さる。もしも、この王鳥が全身を使える状態であれば、羽ばたき一つで猪口才な飛び道具の全てを払い除け、有象無象を消し飛ばしていただろう。しかし、頭だけでは何も出来ない。

 一方的に矢を放たれダメージが蓄積しまくってヘロヘロになった所で、件の少女と1匹が近付いて来た。白銀の鎧で身を固めた金髪の少女は端正な顔立ちをしていたが、何より特徴的だったのは額に浮かんだ模様だった。

 

「教導の聖女エクレシアの名の下に。彼の魂に安らぎを」

「ゲェエエエエ!!」

 

 お前達のせいで安らげてないんじゃい。と言いたげな鳴き声だったが、当然彼女に通じるはずはない。ならば、一縷の望みに賭けて彼女が乗っている珍妙な生物の方へと視線を移した。

 一言で言えば、骨の様な岩だった。全身を食いつくした跡に残る骨だけが動いている。

 

「パキケファロ。何を言っているのか分かるんですか?」

 

 発声器官を持っていないこともあって、パキケファロ。と呼ばれた珍妙な生物は首を傾げる様な挙動を見せるだけだった。意思の疎通は不可能だった。

 王鳥は腹を括った。このまま近付いて来い。その華奢な体を食い千切ってやる。と、偽りの降伏を見せた所で少女が背負っていた盾が輝いた。まるで、月明かりの様な優しい輝きだった。その光に見とれていた間に、王鳥の頭部を鉄槌が打ち鳴らしていた。

 

~~

 

 教導国家ドラグマ。深淵の極北に位置する大国には、聖女が討伐した王鳥が運び込まれていた。自分達よりも遥かに強大な怪物を討伐してなお凛々しい姿に、国民達から惜しみの無い賛辞を受けていた。

 

「流石、聖女様だ!」

 

 彼らに対して手を振り返し、拠点である聖堂へと戻る。そこには、皆を取りまとめる『教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)』が……いなかった。というか、全体的に人が少なかった。

 

「帰って来たか」

「フルルドリスお姉さま。お体の方は大丈夫なんですか?」

 

 そんな彼女を迎えたのは菖蒲(あやめ)色の長髪が美しい、美麗な女性だった。エクレシアと同じく、聖女である彼女はドラグマが持つ最高戦力の一つであった。

 しかし、彼女が本調子でないことは一目で分かることだろう。常在戦場の彼女が、神器である鎧ではなく法衣を纏っている。

 

「良くはない。マクシムス様はさらに良くない。教導騎士団総出で調べているが、理由はまるで分からない」

「一体何が原因なのでしょうか。ひょっとしたら、時期が関係あるのかもしれませんね」

 

 直接的な原因は分からなくても、少しずつ心当たりをかき集めて行けば答えに辿り着くかもしれない。

 聖女の名に相応しい頭脳明晰ぶりを示すと、当たり前の様に聖堂と言う神聖な場所に連れ込んだパキケファロも頷いていた。

 

「そうだな。エクレシアがソイツを飼い始めた前後から『教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)』も調子が悪くなったと言っていた。以前よりも体が重く、現場に出向き難くなったと」

「流行病でしょうか? 私やテオさん、アディンさんには何もないのですが」

 

 しかし、国民からそう言った話は何も聞かない。

 むしろ、そう言った物が流行ったとしても最後まで罹患しそうにない者達が優先的に発症していることが不気味だった

 

「私達も修行不足ということだろう。今日はよく頑張ったな」

 

 ポフッと頭に手を乗せられた。聖女と言う肩書には似つかわしくない光景であったが、フルルドリスの向ける視線は妹に向ける物の様に慈しみに満ちた物だった。

 

「はい。お姉さまや皆さんが動けない分。私が役目を果たします」

 

 覚悟と決意を秘めた眼差しに成長を感じこそすれど、同時に自らの不甲斐なさも自覚せざるを得ず、フルルドリスはそっと目を伏せていた。

 彼女と別れた後、エクレシアはパキケファロと一緒に自室へと向かっていた。聖女にあてがわれた部屋は一般の信徒と比べると広く、また神聖さを侵す。ということもあり、同じ聖女であるフルルドリス以外の立ち入りは許されていない。

 

「あ。また増えている」

 

 そんな彼女の最近の悩みと言えば、部屋に勝手に物が増えることだ。

 大陸の何処かにあるという人型を模した『キカイ』と一緒に細長い盾も一緒に付いている。部屋の隅には腕組みをした男の真っ赤な像、銛を持った珍妙な生物の青い像がジィっと部屋の中央を見ている。

 

「パキケファロの友達ですか?」

 

 ブンブンと首を振っていた。つまり、勝手に設置された非常に不気味な物品であるのだが、エクレシアは心清らかで慈愛に満ちた聖女であった。こんな不審物としか言いようがない物もキチンと磨いていたのだから。

 

「ふふっ。その内、喋り出したりして」

 

 ただ、彼女の優しさが石像に向けられたのが気に食わなかったのか、パキケファロは蹴りを入れていた。

 他にも人面を模した壺など悪趣味な物も転がっていたが、彼女は敬虔な信徒達からの贈り物として受け取っていた。

 

「(どうしたら、皆が元気になるんでしょうか?)」

 

 ホールの発生頻度は増えてきている。自分にはパキケファロと言う心強い相棒がいるが、1人で出来ることには限りがある。

 マクシムスの聡明さ、フルルドリスの頼もしさ。彼らの責を自分が背負わなければならないと思うと、如何に気丈な彼女でも心細さに駆られた。

 そんな彼女を励ますべくパキケファロがおどけてみせた拍子に身体の一部が当り、バルコニーへと続く窓が開かれた。外へと出ると空は赤黒く染まっており、かつてない規模のホールが開かれると同時に。

 

「うわぁああああああああああああ!!!!!」

「!?」

 

 何故か、色黒の少年が地面に向って真っ逆様に落下していた。

 一体、何が起きているかはサッパリ分からないがこのままでは無残なことが起きてしまう。どうにかして、彼を助ける方法が無いかを考えた時。部屋の隅に置いていた『キカイ』が立ち上がった。

 

「要救助プログラム起動。インスペクトボーダー、起動します」

 

 細長い盾に飛び乗ると、不可思議なこと空中を滑る様に進んでいき少年を回収していた。何が起きたかは全く分からなかったが、ひと先ずエクレシアは武装を整えて、現場へと向かうことにした。

 

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