特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第10幕:宣告の神巫「天使族を墓地に落としただけです」

「大砂海へと向かいなさい」

 

 マクシムスに呼び出されたエクレシアとアルは、指令を受けていた。

 傍らに佇む少女『宣告の神巫(デクレアラー・ディヴァイナー)』は何も言わなかったが、リリーサーは口出しをしていた。

 

「ちょっと。大砂海なんて随分と遠方じゃない。それに正式に着任してから日が浅いアル君を付けるだなんて、どういうこと?」

「確かに。彼は信徒になってから日は浅いです。しかし、全身に刻まれた聖痕とここ数日の目覚ましい活動。そろそろ、箔を付けて貰おうと思いましてね」

 

 アルの全身に聖痕が出たという話は、国民には公表されていない。

 彼がホールから出現したということもあるが、先に名誉ばかりが先行しては不都合なことが多いと踏んでのことだ。故に、功績を打ち立ててから公表するつもりであり、今回の遠征もそう言った実績作りの一つだろう。

 

「大砂海には何が?」

「あそこはホールが非常に発生しやすい場所であり、そこから生み出される財宝を狙って『スプリガンズ』と言う無法者達が跋扈しております。また、彼らは鉄獣戦線に技術を齎し、戦火を拡げる幇助もしております」

 

 ドラグマと敵対する者達の多さに、アルは顔をしかめた。これに加えてホールと言うトラブルにも対応しなければならないのかと。

 

「大丈夫ですよ、アル君。私とパキケファロ。それに、インスペクト・ボーダーさんも一緒に行きますから!」

「アレ? あの機械人形はフルルドリスが破壊したはずじゃ」

「なのましん? とか言うので、自己修復した。って、言っていました。実際にキチンと動いていましたし」

 

 ホールから来た者達はどういった原理で動いているのかよく分からない。それは、彼女の隣に立つパキケファロも同様だった。

 

「本当を言うなら他の人員も付けたいのですが、大砂海は遠方の地。それも叶いません」

「大丈夫です! でも、大砂海で何をすればいいんですか?」

 

 自分達は頻発するホールを止められる訳ではない。先の話からするに、目的はスプリガンズ達を捕縛撃破することだろうか?

 

「私達が入手した情報によりますと。鉄獣戦線の者達がさらなる力を求めて、大砂海を越えた先にある『鉄の国』へと向かっているそうです。これ以上、争いを激化させない為にも、彼らを止めて欲しいのです」

「分かりました! 必ずや、彼らの目論見を止めて参ります!」

 

 使命感と決意に溢れた瞳を輝かせながら、彼女はパキケファロの背中に乗った。それと、ほぼ同時に室内に入って来たのは電子ボードに騎乗したインスペクト・ボーダーだった。アルの肝が冷える。

 

「待ってくれ。まさか、準備とか無く。今から向かうのか?」

「大丈夫です。表門に用意して下さっていますよ。それじゃあ、アル君。行きましょう!!」

「定員は2名までなら何とかなります」

 

 インスペクト・ボーダーに抱えられたアルは、飛び出して行ったエクレシア達を追って飛び出して行った。そんな彼らの様子を見ながら、今まで口を閉ざしていたディヴァイナーがポツリと呟いた。

 

「あの子達。少し、煩い」

「アレで丁度良い位よ。おほほ」

 

 リリーサーは笑っていたが、ディヴァイナーは眉間に皺を寄せていた。物静かではあるが、しっかりとストレスは感じる性質であるらしい。

 

~~

 

 エクレシアの言う通り。表門には旅支度が用意されていた。

 これらを受け取った彼らの旅路は何日も掛かる……と思いきや、凄まじいスピードで進んでいた。

 

「(は、早い……)」

 

 パキケファロの進行速度は兎に角早い。スピードも出ているが、何よりも疲れなど存在し無いように、ずっと同じペースで走り続けているのだ。旅支度として色々な荷物を持たされているにも関わらず。

 こんな速度で揺られていればエクレシアも臀部の痛みなどを訴えるかと思いきや、聖痕の影響なのかずっと走り続けている。

 

「(なるほど。これは他の者達を連れて行くのは無理だ)」

 

 自分もインスペクト・ボーダーに抱えられて飛行しているが、平衡感覚が揺さぶられまくっている。多分、普通の人間なら吐いているか意識を失っている。

 だが、こんな無茶とも言える行軍をしたおかげで、陽が沈む前に目的地と思しき場所が見えて来た。一面、砂だけが広がる世界。大砂海ゴールド・ゴルゴンダである。

 

――

 

「ドラグマの野郎が来やがった」

 

 ゴールド・ゴルゴンダへと訪れていた鉄獣戦線の中で一番早くに異常に気付いたのは、ルガルだった。全身から力が抜け落ちていく様な感覚は、先の作戦で体験した物だった。

 彼らは現在とある船に搭乗している。砂海を往く様に進んでいたが、徐々に動きが鈍り始めていた。

 

「おい! 何が起きてやがる!」

 

 巨大な体躯を持つ1機が吠える。黄色の装甲を身に纏った男は、この巨大船『エクスブロウラー』の長を務める『キャプテン サルガス』だった。

 彼の号令に従い配下の者達が忙しく動き回る中、船上から飛び立とうとする者達も居た。

 

「ルガル、ケラス。ちょっと見て来るね!」

「私も行く!」

 

 見た目は人間に近しいが、両腕は翼も兼ねている。ナーベルと同じ鳥人族の少女達は、先の解放作戦で救出した者達であり伝令や斥候として共に付いて来た。彼女らの一族は『LL(リリカル・ルスキニア)』と呼ばれているらしい。

 先陣を切ったのは、頭部にターコイズの装飾を身に着けた少女『ターコイズ・ワーブラー』だった。彼女と同じく飛び立ったのは、全身ブラウン色の各所に羽毛を生やし、ワーブラーと同じく頭部にコバルトを身に着けた『コバルト・スパロー』だった。

 

「頼んだぞ! でも、無茶はするな! 何かあったら、直ぐに戻って来い! 俺がぶっ飛ばしてやるからな!」

 

 ケラスからの気遣いを受けて、飛び立った2羽は大砂海の上空を見て回っていた。どうやら、他のトレジャーハンター達の船も似た様な状況だった。

 ここに来てから騒がしくない日々が無かった大砂海が静まり返っている。まるで嵐の前の様な静けさに、彼女達の脳内に警鐘が鳴らされている中。割とすぐに該当者と思しき存在は発見された。

 

「居た! 前に言っていた、変なのに乗っている奴らだ!」

「早く報告に戻ろう!」

 

 鳥人族の基本は機動性の高さを生かした偵察であることが多い。ターコイズ達も例に漏れず即時撤退を試みようとしたが、地上部からこちらに向かって来る存在が1機。

 

「視線による電磁波を確認。我々を補足した目的を述べて貰いましょう」

「コバルト!」

 

 ターコイズの呼びかけに全てを察して、コバルト・スパローは猛スピードで来た道を戻っていた。対峙したインスペクト・ボーダーは逃げられたことに対して悔しがやる様に指を鳴らす動作を見せた。

 しかし、追いかける様な真似はしなかった。代わりに、目の前の少女を見据えていた。

 

「鉄獣のお方ですか。お話を聞かせて貰っても構いませんか?」

「話す事なんて無いよ」

 

 ジリジリと距離を取りつつ、一目散に逃げだそうとした所でピタッと付いて来た。スピードもかなりの物で振り切れない。

 

「ついて来ないでよ!」

「私は無事に帰れるかを見張っているだけです。どうぞ、ご遠慮なく」

 

 このまま帰ったら、拠点まで付いて来られる。そう考えた彼女は閃いた。その場でクルクルと旋回を始めたのだ。

 

「じゃあ、ずっと見張っていてね。私、ちょっと回っているから」

 

 こうなれば、この機械は何処へと向かうことも無いだろう。実際にインスペクト・ボーダーはその場で留まっていた。だが、地上部にいる者達はその限りでは無かった。

 

~~

 

「インスペクト・ボーダーから子機? と言う物を渡されたが。このまま真っすぐ向かえば良いらしい」

 

 パキケファロは背中にエクレシアとアルを乗せながら走っていた。これ程の体重が掛かっても走りには衰えの見えない健脚ぶりにアルは舌を巻いていた。

 

「あ。見えてきましたよ!」

 

 エクレシアの指差した先には巨大な船があった。この大砂海を進む為の物なのだろうが、気のせいでなければ動いている様には見えなかった。座礁でもしたのだろうかと考えていると、こちらに向かって来る者が居た。

 体の各所から火を吹かしながら、その手に巨大な牛人ケラスを連れて来たのはスプリガンズの突撃小僧『スプリガンズ・ロッキー』だった。

 

「ドラグマの奴らが。こんな所に何の用だ!」

「待って下さい。私達は争う為に来たのではありません。むしろ、争いを止める為に来たのです」

 

 まず、対話を試みるというのはエクレシアらしい対応だったが、一触即発の空気の中。直ぐに対応できるように、アルは短剣状の聖具を取り出していた。

 

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