特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第11幕:蝶の短剣エルマ「悪いことはしていません。手元に戻るだけです」

「あわわわ」

 

 スプリガンズの母艦『エクスブロウラー』にて、猫科の獣人であるキットは慌てていた。

 出撃前にバッチリと調整したはずの母艦が動きを停めたこと。探索用の小型艇である『鉄駆竜スプリンド』も作業用兼戦闘用二足歩行メカ『ベアブルム』も全く動かない。電源すら入らない。

 

「キット! キャプテンやバンガー達も碌に動けない! 朝はバッチリ決まっていたのに! どうなってんだ!?」

 

 スプリンガンズの1機。ピードからも苦情が入るが、こんなことは彼女としても初めての経験だった。この場を落ち着けるようにして、ピートの傍に立っていた機体が声を上げた。

 スプリガンズのシルエットが寸胴かミサイルを模した流線型が多い中、彼はまるで人間の様に四肢と頭部を持つ造詣をしていた。

 

「ビート君ッ! こういう時こそ毅然とするべきだ!! コバルト・スパローが持って来てくれた情報によれば、ドラグマの人間が来ているらしい! 彼らに問い質そう!!」

「ギア、お前。そんな、骨みたいな体しているのに元気だよな」

「当然だ! 我々マシンナーズの使命は! 熱く滾っているのだから!!」

 

 自分よりおかしな存在を見ると逆に冷静になる。我に返ったビートは、キットに癇癪を立てることも無く、マシンナーズ・ギアフレームへと付いて行った。

 彼女も暫く修理を試みていたが、効果が現れない。と分かるや、彼女は猫科特有の気質に従って行動することにした。即ち。

 

「(シュライグや姉さん達。このエクスブロウラーや皆を封じるドラグマって言うのには、どんな力が使われているんだろう!)」

 

 好奇心。彼女が鉄獣戦線や姉達と行動を共にしていないのは、体が小さく戦いに向いていない。ということもあったが、このスプリガンズ達とウマが合ったことも大きかった。

 彼らはド派手なことが好きで、この大砂海ゴールド・ゴルゴンダには見たことが無いテクノロジーや物品が大量に手に入る。先程、ビートと行動を共にしていたマシンナーズと呼ばれる仲間もホールから落ちて来た物の一つだ。

 未知と驚きが溢れた生活。獣人や人間達が差別し合い、傷つけあう中。この大砂海は厳しくもあったが……冒険と発見に満ちていた。なので、彼女は我慢せずに飛び出した。

 

~~

 

 エクスブロウラーの傍では睨み合いが続いていた。まず、対話の為に来たというエクレシアが用件を述べた。

 

「どうか矛を収めてください。きっと、貴方達は私達のことを誤解しているのだと思います。我々は皆さんを苦しめたい訳ではありません。確かに獣人の方達やホールからお越しになられた方を捕縛したり、連行したりはしています。しかし、これは大陸の平和を願ってのことなのです」

「ソイツは誰にとっての平和なんだ? あぁ!?」

「そうだ! 少なくともオイラ達の快適なトレジャーライフは守れてねーぞ!!」

 

 以前、ケラスに似た様な演説をしたこともあってか反応は芳しくなかった。便乗するようにして、生業を邪魔された。と思い込んでいる、ロッキーも抗議の声を上げていた。聞き慣れない言葉にエクレシアが首を傾げた。

 

「トレジャーライフとは?」

「この大砂海ゴールド・ゴルゴンダにはな。ホールから山程お宝が落ちて来るんだ! オイラ達はソイツらを追い求めて、ド派手に生きているんだ!」

「お宝とは。一体どんな物が?」

 

 ホールから。と言う話を聞いて、アルも興味を引かれていた。ドラグマ以外の場所では、どんな物が落ちて来るのだろうかと。

 思ったより食いついたことに気を良くしたのか、ロッキーは背後にあるエクスブロウラーを指差した。

 

「まず、コイツが記念すべき最初のお宝だ。その他にもスゲェ物がどんどん手に入っている! 見た物をソックリそのまま記録しちまう箱もあるし、ボタンを押せば目の前で演劇が繰り広げられる装置なんかもあるんだぜ! そして、オイラ達ほど派手じゃないけれど、ナイスな奴らとかだな!」

「それは。どんな奴らだ?」

 

 アルが疑問を抱いたのも束の間。エクスブロウラーから1機が飛び降りて、こちらに向かって来た。橙色の装甲を身に着けた機体は人型に近かった。

 

「このマシンナーズ・ギアフレームが来たからには、貴様らの横暴は許さんぞ! 何が目的だ!」

 

 これで派手じゃない、と言うのは無理がある。しかし、ほんの少しばかりだが。コレをカッコいいと思ってしまった自分を、アルは恥じた。

 話題が逸れてしまったが、彼が問うてくれたおかげで再び戻すことが出来そうだ。エクレシアは話すことを少しまとめてから、向き合った。

 

「危険です。ホールがもたらしてくれるのは恩恵だけではありません。中には大陸や周囲が飲み込まれてしまったこともあるんです。そんな危険な物を求めて生きるのは止しましょう! これは貴方達のことを思って言っているんです!」

「そう思うんなら放っておけ!! 危険だってのも承知済みだい!」

 

 先とは一変して、ロッキーは憤慨していた。そんな彼を諭すようにして、ケラスが肩を叩いていた。

 

「無駄だぜ。その嬢ちゃん、人の話を聞いてねぇからな。むしろ、そっちの坊主の方がまだ話は通じると思うぜ? お前、名前はなんていうんだ?」

「アル」

「アルか。お前の方に聞くぜ。一体、俺達に何の用だ?」

 

 ケラスはエクレシアと話すのではなく、アルの方へと会話対象を切り返した。彼女も口出しするような真似をせず、彼がどの様に返すかを見ていた。

 

「俺達の目的は貴方達が鉄の国に行くのを止めることだ。力を持てば争いが起きる。そうすれば、両者が傷つく。それは望ましくないことだ」

「なるほどな。だけど、テメェらが邪教徒として俺達を捕縛して狩り出す限りは、鉄獣戦線(トライブリケード)は抵抗し続けるぞ」

 

 アルは口ごもる。実際に教団がどれだけ獣人や異種族を狩り出しているかを把握できていないからだ。話し合いで済むなら、ここまで拗れていないということも予想していた。

 

「多分、話し合いと言う段階は過ぎているのだろう。だが、聞いて欲しい。ドラグマにも獣人は住んでいるんだ。俺もこの間、1人の鳥人族に知り合った。『ナーベル』と言う少年で、体は弱いが手先が器用なんだ。一族から追放されたが、今は仕立て屋として働いている。彼が編んだ服は人気だと評判だ」

 

 暫し、ケラスが押し黙った。周りで動いている物が無いということもあって、時間が停まった様な気さえしたが、彼はゆっくりと口を開いた。

 

「それがどうした?」

「今は、俺達の傘下に入って貰うという形しか取れないと思う。だが、決して憎み合って、滅ぼし合う必要はないし、その関係性に縛られることもないと思う。こうして話す事も出来る。俺は貴方のことを知らないが、貴方は俺の名前を知った。多分、そう言う歩み寄りが大事なんだと思う」

 

 青臭いという外ない意見。ドラグマと他種族の間に出来た確執を知らないが故に吐ける綺麗ごと。久しく聞くことの無かった夢物語に、思わずケラスは声を上げて笑っていた。

 

「あぁ。あの時、坊主を連れて帰らなくて良かったぜ。お前がソッチに居てくれたから、こういう話も出来たんだからな」

「それじゃあ……!」

「だからって話は別だ。俺達はそんな悠長なことを言ってられねぇんだよ。俺達は鉄の国に進む。お前らと対抗する為にな」

 

 ケラスは大砲を構えた。ロッキーとギアフレームも多少の動揺はあったが構え、エクレシアも迷うことなく槌を構えた。背中には月鏡の盾を掲げ、パキケファロに乗りながら。

 争うしか手段がないというのなら、アルも臨戦態勢に入る。

 蝶をあしらった鍔を持つ、極めて前衛的な短剣であったが、マクシムス曰く。ホールから出て来た、非常に強い力を持つ物であり。名を『エルマ』と言うらしい。

 

「なら、受けて立つ!」

 

 ホールの開いていない静寂に包まれた大砂海を轟音が切り裂く。

 砲弾が命中する直前でエクレシアを乗せたパキケファロがアルの前へと出て、彼女が背負っていた月鏡の盾が砲弾を弾いていた。戦いの火蓋は切って、落とされた。

 そんな様子を、キットは双眼鏡を用いてエクスブロウラーの甲板から覗き込んでいた。興奮が尽きない光景だった。

 

「(あの変な生き物何!? それから、聖女が背負っている盾。明らかに普通じゃない! で、目に見えて分かるあの男の子の短剣もヤバイ!)」

 

 先程から、アルの短剣は何度も弾き飛ばされ、あるいは砕かれていた。

 しかし、ほんの目を離した一瞬の内に元の形へと戻って、彼の手に握られているのだ。

 

「(ドラグマもきっとホールからの技術をいっぱい知っているんだろうなぁ。ちょっと話は聞いてみたいけれど)」

 

 まぁ、無理だよね。と、最初から期待もしていなかった。

 数の有利を持ってしても中々に攻めきれずにいる仲間達を見ながら、甲板では狙撃銃を構えている者が1機。

 

「援護をします。許可を」

 

 全身の装甲が黒く変色したマシンナーズ。本来ならば、通常のマシンナーズと敵対している機体らしいのだが、今はキットやスプリガンズ達の『歓迎』によって調教された『マシンナーズ・アンクラスペア』は狙撃銃を構えていた。

 

「やめろ。殴り合いはド派手に行け。ケチが付いちゃいけねぇ」

 

 甲板で倒れているキャプテン サルガスはアンクラスペアの狙撃を止めていた。合理性を欠いた指示ではあるが、時には結果よりも優先しなければならないことがある。特に『派手!』を意識して生きているスプリガンズにとっては欠かせない物だった。

 

「でも。もしも、ロッキーやケラス達が負けた時の為に構えは解かないで」

「了解」

 

 キットの指示もあり、アンクラスペアは狙撃態勢を解くことは無かった。ド派手なスプリガンズに揉まれながらも、鉄獣戦線において狙撃手として戦場を俯瞰する徒花フェリジットの妹でもあるキットは、姉譲りの観察眼を持って戦場を見渡していた。

 

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