特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第12幕:キット「悪いことはしていないよ。ちょっと、仲間を連れて来ただけだから」

 探索船エクスブロウラーの船外では戦闘が行われている。数で言えば、スプリガンズ達が有利だが、エクレシア達はドラグマより賜った聖具の力により彼らの攻撃を退けていた。

 破壊しても、弾き飛ばしても必ず手元に戻って来るアルの短剣には驚いたが、あくまで短剣でしかない為、脅威では無かった。問題はエクレシアが背中に背負っている盾の方だった。

 

「畜生! 何だよ、これ!?」

 

 先程からロッキーがミサイルモードへと変形して突撃したり、マシンナーズ・ギアフレームやケラスが援護射撃を放ってくれているが、彼女が掲げる月を映しだした鏡の様な盾に全て防がれていた。

 ロッキー達が使っている武器はホール由来の物であり、この世界における従来の鍛造品程度なら吹っ飛ばすほどの威力がある。だというのに、ビクともしていない。傷がつく様子もない。

 

「分からない。ただ、先程スキャンに掛けた結果。分かったことがある! あの盾は攻撃を受け止める瞬間、対象物よりも僅かに固くなるという性質がある」

「は!? じゃあ、絶対に受け止められるってことじゃねぇか!」

 

 マシンナーズ・ギアフレームの解説にケラスが声を荒げた。

 彼の説明通りだとすれば、聖女が持っている盾は実質無敵とも言える盾であったからだ。

 

「分かって頂けましたか? 争うことの無意味さを知って欲しいのです。もう、こんなことは止めましょう」

 

 包み込むような優しさ。と言えば聞こえは良いが、彼らの必死の抵抗や反攻を嘲笑い、包み込みながら絞め殺すような圧迫感さえ感じた。

 そして、ケラス達の攻撃は無限に行える訳ではない。弾薬と言う限りがある故、無駄と分かって撃ち続ける真似も出来ない。ケラスが大砲を置いて、拳を握り締めた時、マシンナーズ・ギアフレームが彼を手で制した。次の瞬間、エクレシアの体が吹き飛んだ。

 

「エクレシア!?」

 

 何が起きたか分からず、アルとパキケファロは彼女に駆け寄った。だが、彼女は直ぐに起き上がり、叫んだ。

 

「アル君! パキケファロ! 避けて!」

 

 よく見れば、彼女の全身は薄い皮膜に覆われていた。それに阻まれるようにしてコロリと落ちたのは銃弾だった。一体誰が? マシンナーズ・ギアフレームが攻撃する動作など無かったと言うのに。

 そして、アルは直ぐに察して短剣を掲げた。刀身が砕けるが直ぐに再生される為、勢いが殺されるまでエルマは破壊と再生を繰り返し、ようやく勢いが殺された所で銃弾が砂の上に落ちた。

 一方、そう言った気配に鈍感だったパキケファロはモロに攻撃を食らっていた。幸い、頭骨が分厚いこともあって貫かれることは無かったが、目を回して気絶していた。

 

「おい、パキケファロ!」

 

 ノビてしまった彼に駆け寄るが、そもそも生きているのか死んでいるかすら微妙だった。直接戦闘をしていた者が行動不能になった訳ではないが、戦場では大きな変化が現れ始めていた。

 

~~

 

「ねぇ、ねぇ。なんだか体が軽くなったと思わない?」

 

 船上から戦いを眺めていたコバルト・スパローは同胞である金色の羽毛を持つベリル・カナリーとサファイアの装飾を身に着けたサファイア・スワローに声を掛けた。

 彼女らは直接戦う力は持たないが、お互いの力を重ね合わせることで鉄獣戦線の者達も見たことが無い力を発揮する。彼女達の姿が重なったかと思えば、全く別の姿へと変貌していた。

 

「プロム・スラッシュ。行くよ!」

 

 彼女達の色であった明色から一転して、漆黒の翼を持った鳥人。プロム・スラッシュはエクスブロウラーの縁に飛び乗り、猛スピードで飛び出した。

 スプリガンズ達のミサイルにも劣らぬ勢いで行ったのを見たキットは、まさかと思い船内へと降りて行った。

 

「やっぱりだ」

 

 エクスブロウラーのエンジンは回復し、スプリンドとベアブルムも稼働状態になっていた。また、直ぐに動かなくなるかもしれないと思い、彼女は作業兼戦闘用二足歩行メカベアブルムへと乗り込んでいた。

 キットが出撃しようとした、正にその時である。先程まで動けずにいたマシンナーズの1機。3基の履帯を取り付けた制圧機、フォートレスが居た。

 

「キット君、私も行こう。ギアフレームが苦戦している様子が見えた。キャプテン達からも頼まれている」

「フォートレスが居てくれるなら心強い。キット、ベアブルム! フォートレス! 行きます!」

 

 エクスブロウラーのハッチが開き、2機が砂漠へと降り立ち、戦場へと駆け付ける。形勢は逆転していた。

 

「吹っ飛べ!」

「あっ!!」

 

 聖女を無敵に足らしめていた月鏡の盾は、プロム・スラッシュにより遠方へと飛ばされていた。どうやら彼女の盾は、アルが持つエルマの様に手元に戻って来る訳ではないらしい。

 

「今だ!!」

 

 彼女が手にしていた盾が弾き飛ばされたのを見て、ロッキーが再び突撃した。エクレシアも手にしていた槌で迎撃を試みるが、ロケットの推力に押し負けて吹っ飛ばされていた。

 アルもまたギアフレームとケラスからの二重の砲火を回避するのに専念しており、彼女やパキケファロに駆け寄ることが出来ない。

 

「良いぞ! ケラス君! このまま、彼らを捕縛しよう! そして、我々の力を封じる秘密を聞き出すんだ!」

「よっしゃ!」

 

 アルは歯噛みしていた。あまりに形成の逆転が急だったからだ。

 一体、何が原因か? 一番最初に思い当ったのが、パキケファロが目を回していた時だった。ノビている彼に視線を送る。

 

「(マクシムス様。彼は一体、何者なんですか?)」

「皆!!」

 

 悪いことは重なる。ただでさえ苦戦している中、スプリガンズからさらなる増援が駆け付けて来た。機体に乗った獣人と砂漠を履帯で走破する、明らかに格の違う存在。

 

「フォートレス殿! お体の方は無事で!?」

「あぁ。何があったかは知らないが、今なら戦える。さて、相手は1人だけか。少年に告ぐ。投降したまえ、悪い様にはしない」

 

 形勢の不利は言うまでもない。このまま抵抗を続ければ、自分はおろか他の2名にも危害が及ぶ。このまま投降をするべきかを迷った。

 

「(本当に。俺達が無事で居られるのか?)」

 

 だが、アルの中に疑念が過った。ドラグマが獣人達に対して行って来た所業の中には、非道と呼べる物は幾つも存在している。

 エクレシアはドラグマの象徴とも言える存在だ。即ち、獣人を始めとする他種族が溜め込んで来た憤りの捌け口に、これ程まで相応しい存在は居ない。

 先程まで、話をしたいと願っていたが、いざ立場を脅かされることになれば疑心暗鬼と恐怖が一気に襲い掛かって来た。そして、一つの使命感に駆られた。

 

「俺が、皆を護るんだ!!」

「む!?」

「フォートレス殿!?」

 

 奇妙な光景だった。降伏勧告を掛けていたフォートレスがアルへと吸い込まれて行くと、2人の姿が融け合い混ざり合う。輪郭が崩れ、光が膨張していく。やがて、巨大な質量と共に現れた。

 それは、彼がこの大陸へとやって来る前に象っていた姿。全身が白金の甲殻で覆われ、体のいたるところに赤熱した鋭角を生やした竜。全てを灰燼に還すかのような威容をした存在の名は『灰燼竜バスタード』と言う。

 

「おい、アル。冗談だろ!?」

 

 瞬時に悟った。自分達の手持ち武器では、この怪物に通じないと。

 ケラスを始めロッキー達の判断能力も凍り付こうとしていた所、キットはベアブルムを通して通信を入れていた。

 

「キャプテン! 何時までぼさっとしているのさ! このゴールド・ゴルゴンダは私達のホームグラウンドだよ! このデカブツに目に物を見せてやろうじゃないか!」

 

 彼女の激励に呼応するようにして、先程から沈黙していたスプリガンズ・シップ エクブロウラーは動き出していた。船上では気力を取り戻したキャプテンのサルカズが船員達に指示を飛ばしていた。

 

「野郎ども! ド派手に! ぶちのめしてやれ!!」

 

 応! と、鉄獣戦線の者達も合わせての返事があった。船に搭載されているホール由来の火器達が火を噴き、ゴールド・ゴルゴンダにはいつもの想像しさが戻って来ていた。

 そんな激闘の陰での話である。不意打ちによって気絶させられていたパキケファロが目を覚まし、同じく。倒れていたエクレシアを背中に乗せた後……戦場が激化していく様子を見て、そっと離れていくのであった。

 

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