特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第14幕:マシンナーズ・アンクラスペア「墓地に落としただけですが。何かそんなに悪いことがありますか?」

「う……」

 

 焼けるような痛みの中でアルは目を覚ました。傍に誰かの気配を感じた。

 首を横に傾けると、鱗に覆われた胴体があった。ひんやりとしていて気持ちが良く、凭れ掛かった。

 

「おぅ、俺の腹は気持ちが良いか?」

「うぉ!?」

 

 何処から声が? と思っていると、人影が近付いて来た。

 しかし、下半身は人間の物ではなく、先程まで自分の中に滾る熱を押し付けていた、鱗に覆われた冷涼な胴体だった。

 

「アル君! 目を覚ましたんですね!」

 

 周囲の探索へと出かけていたのか、エクレシアはパキケファロとインスペクト・ボーダーを引き連れて戻って来ていた。

 空は暗くなっており、かなりの時間が経っていることが伺えた。覚えている限りでは、自分は鉄獣戦線とスプリガンズ達と交戦をしていた。彼らの力は予想以上であり、エクレシアとパキケファロが行動不能にされた後は……憶えていない。

 分からないことだらけだった。なので、アルは一つずつ疑問を解消して行くことにした。彼は隣にいる男に声を掛けた。

 

「まずは、俺から名乗るべきだな。俺の名はアル。ドラグマ教導騎士団に所属している。……過去の記憶は無くて、自分が何者かはよく分かっていない」

「ほぉん。嘘を吐いとる訳じゃ無さそうだな。じゃあ、俺も名乗っておこうか。俺は魚腸。そこの大霊峰で竜人共を束ねている」

 

 竜人、聞き慣れない言葉だった。ドラグマに住まう獣人達は鳥や猫などの特徴を持っているが、竜の特徴を持っている種族は聞いたことが無い。チラリとエクレシアに視線をやった。

 

「聞いたことがあります。どの種族とも関わらないで、秘境に住まう武人集団がいると。彼らは、強大な力を持った竜の末裔だと言われています」

「聖女様は博識だな。そう、俺達は竜人族だ。この度は、同胞の窮地に駆け付けた。と言う訳だ」

 

 ドラグマの建国には、竜が関わっていた。と言う逸話があるにしても、それだけで同胞と言うには繋がりが薄すぎる。

 エクレシアが今まで学んで来た歴史の中にも、竜人とドラグマの関わりについて記されていた物は無かった。

 

「魚腸、同胞とはどういう意味だ?」

「何も聞いとらんのか? 俺達、相剣の一派はドラグマと手を結んだ。お前達を助けたのは手土産と言う訳だ」

 

 信じられなかった。ドラグマに訪れた獣人達を迎え入れていることは知っていたが、マクシムスが他種族と同盟を結ぶ。等、考えたことも無かったからだ。

 あまりの情報量に何処まで信じていいかも判断が付かない。この疑問に関しては、帰還してから確認した方が良いだろう。別の質問をすることにした。

 

「助けてくれたことは礼を言う。だが、そもそも。俺達に何があった? 鉄獣戦線やスプリガンズ達と相対していたことまでは覚えているが、途中で記憶が抜け落ちている」

「アル君。本当に何も覚えていないんですか?」

 

 首を横に振った。エクレシアがどう言い出そうかと迷っていると、インスペクト・ボーダーが一歩前へと出た。

 

「アル様。私はその瞬間を直接見た訳ではありませんが、貴方が意識を無くしたであろう後に起きた出来事を記録した映像を今から投射します」

 

 インスペクト・ボーダーのツインアイから映像記録が地面に投射された。

 1匹の竜がスプリガンズの母艦を襲っている。獣人や機体達が逃げ惑う中、エクレシアを乗せたインスペクト・ボーダーは果敢に立ち向かい、竜を撃破した。

 問題はその後である。撃破された竜は、巨大な輪郭を失い萎んで行き、跡に残ったのはアルだけだった。

 

「この竜は、俺。なのか?」

「獣人達の証言と現場の状況を考えれば、恐らくは」

 

 エクレシアが言い難いことを、インスペクト・ボーダーは淡々と述べていた。

 自分にそんな力が眠っているとは思わなかった。だが、使いこなせないのであれば意味がない。今回は偶々、誰かを傷つけることも無かったが次回も同じ様に行くとは限らない。

 

「俺が。こんな力を……」

 

 鋼鉄の母艦を易々と引き裂き、周囲を焼き払う力。もしも、これらを自在に使えれば反抗的な獣人や他種族を力でねじ伏せることも出来るだろう。

 だが、彼の脳裏に過ったのは話し合いに応じようとしたケラスやロッキー達の姿だった。最終的に戦うことになってしまったが、彼らには彼らの主張や意思があった。力を用いて、蹂躙する気にはなれなかった。

 

「小僧。何を悩んでいる? 力を持つことは素晴らしいことだ。気に入らない連中も敵対する者達も潰せる。決して、悪いことではない。ひいては、お前の大切な物を守ることにも繋がるんだ」

 

 実際に、この竜化のお陰で窮地を脱することが出来たのだから魚腸が言うことは間違いでは無かった。だが、アルは首を横に振った。

 

「いや、力に依存したくない。……してしまえば、話は早く済むだろうが」

「そうですよ。魚腸さん。力に頼るのは野蛮な邪教徒や獣人と何も変わりありません。我々は人間です。言葉を交わせるんです」

 

 エクレシアがフォローしてくれたが、アルは口から出そうになった言葉を呑み込んだ。魚腸はカラカラと笑っていた。

 

「なるほどな。マクシムスの秘蔵っ子と言うだけにはあるな。このまま大霊峰へと連れて行ってやりたいが、承影の奴が煩いからな。ひとまず、お前らはドラグマへと帰って、今回の顛末を報告して来い」

「分かった。魚腸、貴方の考え方は賛同しかねる部分はある。でも、俺達を助けてくれたこと、礼を言う。ありがとう」

「気にするな。もしも、恩義を感じているなら。自力で霊峰まで来てみろ。歓迎してやる。待っているぞ」

 

 エクレシアはパキケファロの背中に乗って、アルはインスペクト・ボーダーの反重力ボードに同乗して、ドラグマへと戻ることにした。

 今回の目的は鉄獣戦線が鉄の国へと向かうことを阻止することだったが、彼らの協力者であるスプリガンズ達の母艦を潰したので、足止めは出来たことだろう。ただし、阻止まで行ったとは思えない。

 だが、あれ以上の作戦遂行も不可能だった。事実がいかなるものであれ、報告の必要はある。任務の不履行を鑑みて、処罰が下る可能性もあるかもしれないが、覚悟はしていた。

 

「エクレシア。もしものことがあれば、俺が暴走したことにして」

「何を言っているんですか。そもそも、私が後れを取ったことが原因ですから。アル君は気に病む必要はありませんよ。……それに、少し。マクシムス様のご加護に頼り過ぎた所はありますしね」

 

 

 カン。と、彼女は背中に背負っていた月鏡の盾を叩いた。戦闘においては強力無比だが、盾が弾き飛ばされたりしたら一瞬で無力になる。と言うのは、由々しき問題だった。

 故に、自分が護衛として守り抜かねばならない。と考えた所で、アルは身に着けている装備品に足りない物があることに気付いた。

 

「インスペクター。俺の短剣を知らないか? 蝶を象った使をしていた物だが」

「いえ? 貴方が気絶していた時についでにスキャンもしましたが、該当品は何処にもありませんでした」

 

 ならば、変身した際に何処かに紛失してしまったのだろうか。

 折角、賜った聖具を紛失したという失態も合わさることを考えれば、アルの頭は重くなるばかりだった。

 

~~

 

「全ては見ていました」

 

 帰還した彼らに対して、マクシムスは告げた。この場から遠見で全てを見ていたと。隠し事が一切通じない中、2人の弁明を促す様に押し黙っていた。

 

「聖具の力に頼り切り、不覚を取りました。次は上手くやります」

 

 失態を犯したというのに、エクレシアのあまりに威風堂々とした振る舞いにアルは戦慄さえ覚えていた。聖女ともなれば失態を意にもしない胆力も問われるのだろうか。

 

「よろしい、次は上手くやりなさい。こちらは何も痛手は負っていませんからね」

 

 こちらへと視線が配られた。自分には彼女ほどの胆力は無い。ならば、忌憚なき考えを述べることが最も誠実だと判断した。

 

「自分にあのような力が宿っているとは思いませんでした。任務の遂行はおろか、仲間まで傷つけてしまう所でした。……もしも、許していただけるなら。この力と向き合いたいと考えています」

「よろしい。今後のことを考えずに泣き言を吐くだけでしたら、罰を与えていましたが、今後のことを考えているならば良しとしましょう。詳しい報告は明日に頂きます。今日はもう休みなさい」

 

 1日でこなすには余りにハードスケジュールであった為、2人は別々に部屋へと戻った後、糸が切れた様に眠りへと落ちた。

 

~~

 

 母艦を破壊された鉄獣戦線とスプリガンズ達は徒歩で砂漠を横断する羽目になった。……ということも無かった。

 大砂海ゴールド・ゴルゴンダで活動をしていれば、自分達以外にも活動をしている船の存在も知っている。メンバーの殆どが飛行能力には事欠かないため、通りすがりの敵対者の船へと乗り込んで、やった事と言えば。

 

「キャプテン出しやがれ! 俺ァ、エクスブロウラーのキャプテン! サルガスだ! この船を賭けて、決闘を申し込む!!」

 

 あまりに馬鹿げた提案だった。そもそも、飲み込むメリットがない。……筈なのだが、サルガスを上回る巨体を持つ機体が現れた。

 

「テメェがクソッたれエクスブロウラーのキャプテンか! 船と同じくチンケな野郎だ!! このギルタブ様に敵う訳がねぇだろう! 俺が勝ったら、テメェらは一生甲板掃除係だ!!」

「吠え面掻くんじゃねぇぞ!!」

 

 誰がゴングを鳴らした訳でもないのに殴り合いが始まった。周りの船員達は野次と共に無責任に煽り立て、静寂な夜の砂漠は瞬く間に活気に包まれた。

 

「理解不能」

「でも、慣れると楽しいよ?」

 

 マシンナーズ・アンクラスペアだけは状況が飲み込めずにエラーを吐き出していた。そんな彼の背中をキットはポンポンと叩いていた。

 この勝負はゴールド・ゴルゴンダの夜明けまで続き……、キャプテン・サルガス達は新たな船と仲間達を手に入れた。

 

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