特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第17幕:天霆號アーゼウス「時には寿司屋の大将! 時には百合の間に挟まるお助けロボ! ——仕事の時間だ」

 話は少し遡る。十二獣達の中で一目散に逃げたモルモラットは我が身可愛いさ。と言うだけでは無かった。

 彼女はサラブレードを揶揄いはしたが、決して聞いていない訳ではない。故に、近くまでやって来ていた鉄獣戦線の下まで駆け付けて、事情を説明していたのだ。フェリジットは直ぐに状況を整理した。

 

「シュライグ。彼女の言う状況、恐らく。ドラグマの者達が『例の力』を持って来ているのだと思う」

「だが、進軍中の俺達にまで影響がないことを考えると、かなり小規模に絞っている様だな」

 

 モルモラットも話は聞いていた。ドラグマ付近には他種族の力を封印する結界があり、討伐に出て来る聖女にもまた同じような力があるのだと。しかし、彼女達の拠点に来たのは、両方共男性だった。

 

「だとしたら、そう言う力を皆が使えるようになったってこと?」

「かもしれない。でも、彼女の言うことが全て本当だとしたら、相当に厄介よ。最初から交戦範囲外で戦えなくなるなら未だしも。交戦範囲内に入った瞬間に力を失う方がよっぽど脅威だしね」

 

 相手が見えない内に戦えないなら撤退するという手も使える。だが、相手が見えてから戦えなくなれば、一体どんな目に遭わされるか分かった物ではない。率いて来た獣人達にも動揺が走る中、シュライグが両翼を広げた。

 

「フェリジット、俺が先行する。お前達は後詰めで来てくれ。俺が帰って来なかった場合は、彼女を連れて撤退を」

「分かった」

 

 フェリジットに指揮権を譲ると、シュライグは調査の為に先行した。仲間に対するドライなやり取りに、モルモラットは不安を感じていた。

 

「お姉さん。良いの?」

「大丈夫よ。シュライグなら帰って来る。私は信じているから」

 

 ドライでも無関心でもない。信じているからこそ、必要以上の言葉も気遣いも要らないのだと。何かと心配されがちなモルモラットとしては、そう言った信頼関係が……少しばかり羨ましくもあった。

 

~~

 

「ほぅ」

 

 シュライグとバスタードがぶつかり合っている中、この集落では二つの異変が起きていた。龍淵はこれらを観察していた。

 1つ、御神体と思われていた物体が稼働している。単なる像かと思っていたが、これは鉄の国などで見られる、用途に応じて部品を組み上げて作られた『機体』と言う物だと判断した。

 

「(これだけの規格を持っている種族は知らん。ドラグマがどうなるかは分からんが、少なくとも大霊峰は滅ぼせそうだな)」

 

 この機体がどういった用途で作られた物かは知らないが、何かを攻撃する為に作られたのだとしたら。……それこそ、神すらも殺せるのではないかと感じられる程の物だった。そして、二つ。

 

「おいおい、ワイルド坊。この馬鹿でかい御神体は動くってのか?」

「そうか。ブルホーン兄さんは、コイツを見る前に居なくなっちまったから知らないんでヤンスね。色々と事情があって、俺達が管理することになった『アーゼウス』って御神体でヤンス」

「私達が何処かの勢力と戦うことになった時、アーゼウスは起動してくれるんですけれど……」

 

 ライカは上空を見上げた。曇った空が裂けていく。次元の穴が拡がって行き、裂け目からはアーゼウスと同規格の漆黒の巨体が出現していた。ドランシアの代りに、ブルホーンが叫ぶ。

 

「お前ら! アレの撃退方法を教えてくれ!」

「兄さん! コイツに乗り込むでヤンス! 少なくとも、俺達は助かるでヤンス!」

 

 ワイルドボウを始め他の十二獣達がアーゼウスと呼ばれた機体に乗り込んで行く中、巻き込まれた者達は困惑していた。シュライグが叫んだ。

 

「おい、アレはなんだ!」

「ティ・フォンだ! なぜか、このアーゼウスを狙って何処にでも現れやがる!」

 

 サラブレードが怒声混じりに返事をしていた。彼らの動揺を他所にアーゼウスは起動し、立ち上がる。周囲の木々が薙倒され、破壊が撒き散らされる。

 

「こんな所に居られるか。俺は先に戻るぞ。アル、お前も飛べるんだろう? 自力で戻って来い」

 

 龍淵は回復したヴィシュダの背中に乗って颯爽と現場から去って行った。残されたシュライグはバスタードの方を見て問うた。

 

「この状況でもやり合うか? お前の相手をしている暇はないぞ」

「俺もこんな状況で争うつもりはない」

「そうか。では、見逃してやる。さっさと行け」

 

 先程の戦いでは竜化をしたにも関わらず、まるで相手にならなかった。

 鉄獣戦線のリーダーとしての力量は認めざるを得ない。しかし、アルも逃げるつもりなど無かった。

 

「いや、俺はお前達を滅ぼしたい訳じゃない。どういう形であれ平和を望んでいるのは間違いない。だから、この場における脅威は打ち払う」

「そうか。お前、その姿で戦ったのは何回目だ?」

「2回目だ」

「なら、俺の指揮下に入れ。俺は、お前よりお前を上手く動かせる」

 

 敵対勢力の指揮下に入る。下手をすれば使い潰される危険性も孕んでいたが、幸いにして龍淵は既にこの場を去っている。巻き込む心配も無い。

 

「分かった。シュライグ、俺に指示をくれ」

「少しは疑え」

 

 あまりの正直さにシュライグも呆れていた。彼に追従する形で、アルも空へと上がった。間もなくして、大陸を揺るがす程の激闘が始まろうとしていた。

 

~~

 

「退避!! 退避!!!」

 

 フェリジットとモルモラットが殿を務めながら、鉄獣戦線のメンバーは急いで引き換えしていた。上空から降りて来た漆黒の機体を討つべく、集落からも巨大な機体と竜が空へと向かって飛翔した。

 先に攻撃を仕掛けたのはティ・フォンだった。背部兵装のコンテナに紫電が迸ると、指向性を得たエネルギーは蛇を形取りアーゼウス達へと放たれた。コックピット内では、ヴァイパーが皆に向けて指示を飛ばしていた。

 

「ワイルドボウ! 回避機動を頼む!!」

「分かったでヤンス!」

 

 正面にシールドを展開し、横から迫り来る攻撃に関しては脚部付近から放たれたエネルギー誘引性のフレアを撒いて振り払っていた。

 シュライグのヒットボックスと機動性を捉えるのは最初から不可能だとして、バスタードは全身から放つ熱波で、ティ・フォンの攻撃を焼き払っていた。

 

「ヴァイパー! 攻撃はどうやるんだ!?」

 

 不謹慎ではあるが、この様な大迫力のバトルにブルホーンは興奮していた。

 この機体の動かし方は分からないにしても、何かできることは無いか。ヴァイパーに尋ねた所、怒鳴り声が返って来た。

 

「目の前のボタンを押してください!」

 

 狭苦しいスペース。ここは、アーゼウスを動かすのに必要なコックピットと言うらしい。何かの中にいるというのに、外の光景がハッキリと見える――全天周囲モニタというらしい――不思議な空間に居ればテンションも上がる。

 何か難しいことをするのかと思いきや、目の前には『こうげき』と書かれたバカみたいなボタンが一つ設置されているだけだった。

 

「おい。コレ、バカにしている訳じゃないよな?」

「じゃあ、アンタが火器管制か姿勢制御をやってみるか!!?」

「わ、悪かったよ……。コレ、押せばいいんだな?」

 

 ボタンを押してみた。すると、背面にマウントされていたコンテナから大量のミサイルが発射された。推進剤として使われているのは、アーゼウスから発せられている蒼電状のエネルギーであり、目標を取り囲むような軌道を描きながら進んで行く。

 しかし、ティ・フォンもまた先程と同じ様に指向性のエネルギー弾を放ち、深淵大陸の上空で大量のエネルギーが散っていく中であった為、迫り来る存在に気付くことが出来なかった。

 

「落ちろォ!!」

 

 現れた灰燼竜は赤熱した爪でティ・フォンの脚部を引き千切っていた。

 通常の生物ならば激痛が走る所だが、この漆黒の機体に痛覚は存在していない。崩れた機体の制御を立て直すと同時に両の掌を翳した。

 中央に設置されたエネルギー射出口に迸った紫電がバスタードを吹き飛ばそうとした所で、取るに足らない存在として認識していた存在が躍り出た。シュライグだ。

 

「キットや皆が喜びそうだ! 」

 

 射出口に向けて放たれた大型の鋼鉄弾。ティ・フォンからすれば取るに足らないサイズであったが、エネルギーの発射口に打ち込まれたのは良くなかった。

 放たれた弾丸に込められていたエネルギーと干渉し合い、射出と滞留が相互に起きた為、機体の右腕が爆発を起こしていた。

 

「ウォオオオ! ナイスでヤンス!!」

「今です!!」

 

 今こそ、好機と言わんばかりに。ヴァイパーの意思を汲み取ったワイルドボウが、アーゼウスのスラスターを一気に吹かした。

 

「アル! 片方は俺がやる!」

「分かった!」

 

 ティ・フォンの両肩部のパーツが分離し、全身に紫電を纏いながら蛇のようにして宙を這い進みアーゼウスへと接近しようとしたが、片方はシュライグに叩き落され、もう片方はアルによって引き裂かれていた。

 

「いや、コンビネーションバッチリじゃないですか!」

 

 ライカは『こうげき』ボタンが機能するようにオートの設定を組みつつ、自身も火器管制を務めていた。そして、仕掛けるべきタイミングは今だと判断した。

 

「いっけぇ!!」

 

 アーゼウスの背面スラスターが変形すると同時にエネルギーの装填を行う。上半身に蒼雷の力が迸り、変形したスラスター、両肩、両手、胸部、両足へとチャージされたエネルギーがティ・フォンへと狙いを付けた。

 だが、ティ・フォンの判断も早かった。現状使用できる火器でアーゼウスを排除するのは不可能だと悟り、残された左掌にチャージしたレーザーをシュライグへと向けて放った。通常の射撃では当たらないと踏んでいたが。

 

「!?」

 

 既にラーニングされていたのか。エネルギーは指向性を持って、シュライグを追跡していた。先の大量射出の物と違い、一つに絞っている為か速度も比べ物にならない程、早かった。

 

「危ない!」

 

 咄嗟の判断で、アルは自らの巨体を用いてシュライグの盾となった。

 白銀の甲殻が焼け落ち、剥き出しになった胴体が貫かれた。力を無くし、地上へと落下していく中、アーゼウスが放った一撃もティ・フォンを貫いていた。

 機体の各所で爆発が起き、誘爆して、最後には大きな爆発を起こして墜落した。……深淵大陸を揺るがす大決戦は短時間で終わったが、十二獣達の集落を中心として周囲は焼け野原となっていた。シュライグは急いで、アルが落ちた場所へと駆け付けると。

 

「おい。しっかりしろ!」

 

 ドランシアが横たわっているアルに呼び掛けていた。グッタリとしていて、顔は青ざめている。身体的外傷はない様に思えるが、何が起きているか。

 戦いが収まったことを察して、アーゼウスから十二獣が降りて来た。少しして、鉄獣戦線の者達も引き返して来た。

 

「シュライグ。何が起きたの?」

 

 フェリジットも遠方から観察はしていたが、何が起きているかはよく分からなかった。ただ、敵であるはずの竜と途中から共闘を始め、最後にシュライグを庇って落ちた。所までは見ていた。

 

「俺も分からない。ただ、ケラスの報告にもあった様に。この少年、アルは少し特別な様だ」

 

 先に逃げた男の様にしていれば、こんな目に遭うことも無かっただろうに。ドラグマの手先と言うには狂信には至っておらず、あまりに青臭い。

 

「この子がキットの言っていたねぇ。……助けてくれたこともあるし、事情も聴きたいから。とりあえず、手当をしましょうか」

「私に任せてくれ。最初は敵対していたが、結果的に皆を助けてくれたからな」

 

 鉄獣戦線の者達が野営の準備を進める中。ドランシアはアルの衣服を剥いで、問診を始めた。周りが騒がしくなるのに反比例するようにして、アーゼウスの機能は停止して、再び御神体へと戻っていた。

 

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