特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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 2話目です。マスターガイド7が早く出て欲しいです。


第2幕:バスタード「ふざけんな!」

 教導国家ドラグマ付近。邪教徒として囚われた仲間達を救出するべく、種族の垣根を超えて結束された獣人集団『鉄獣戦線(トライブリケード)』の面々に異常事態が発生していた。

 特定の境界を越えた瞬間。獣人達を率いていた銀狼の男が崩れ落ちた。馬人の青年フラクトールが駆け付け、彼を起こした。

 

「ルガル。どうしたのですか? まさか……」

「間違いねぇ。他の奴らが言っていた例の力って奴だろう。お前は何ともないのか?」

「はい。他に症状の出ている者達は?」

 

 フラクトールは直ぐに確認を取ったが、引き連れて来た者達には何の症状も出ていない。だが、自分達を引き連れて来た者達には色濃く症状が現れていた。

 ルガルと同じく先頭に立っていた鳥人の容姿は異様な物だった。彼らの特徴である大翼は片方しか生えておらず、もう片方は機械仕掛けの翼が接続されていた。

 

「義翼が動かない。急激な故障と言う訳でも無いだろう」

「嘘でしょ? シュライグさんまで!?」

 

 彼と同じく鳥人族の少年であるナーベルが悲鳴を上げた。鉄獣戦線のリーダーと地上部隊の隊長が戦えない。となったら、この作戦は変更を余儀なくされる。

 フラクトールはもう1人の隊長格である山猫の獣人、フェリジットへと視線を向けたが、彼女も静かに首を横に振った。普段は狙った獲物を外さない驚異の集中力を持っているハズの彼女の視線は右往左往していた。

 

「ごめん。全然集中できない。多分、行っても使い物にならないと思う。こんな状態、生まれて初めて」

「嘘だろ!?」

 

 堪らず、牛人の大男ケラスが吠えた。決して、彼らが大作戦を前に臆病風が吹いた訳ではない。ということは、この場にいる誰もが知っている。

 奇妙なのは、何故この3人だけに症状が出たかということだ。自分達は異変が起きて居ることなど到底信じられない位に、いつも通りだった。

 

「作戦は一旦中断ですか?」

「いや、続行にするに決まっている。フラクトール、動ける奴の中で隊長が出来るのはお前だけだ。俺達の代りに、皆を指揮しろ」

 

 ルガルは心底悔しそうに述べた。助けを求める同胞達の為に戦うことすら出来ないというのがどれだけ口惜しいことか。

 鉄獣戦線の面々に困惑が走る中、シュライグは自らが使い物になるかどうかを確かめる為に歩行しようとしたが、使えない翼は重りでしかなかった。

 フェリジットは視界の隅に横切る羽虫を追いかけ、皆の顔を見渡し、フラクトールを見たりと集中力の欠乏が如実に表れていた。

 

「分かりました。これより、奪還作戦の指揮は私が執ります。ただし、今回は欠員した戦力のことを考え、撤退のタイミングは前後します」

 

 頼りにしていたリーダー達が欠けたことによる不安は大きいが、それらを遥かに凌駕するほどの闘志が湧いていた。必ずや同胞達を助けて見せると。

 

「フェリジットとルガルは境界ギリギリで待機している。ここまで逃げて来れたら、追手は全員撃退してみせる。粘ってくれ」

 

 少しでも飛翔できるようにと。シュライグとフェリジットは木に登っていた。ルガルもまた奇襲の為に木へと登り、息を殺していた。

 そして、フラクトール達が発って数十分後のことである。彼らの頭上に広がる空は赤黒く染まり始めていた。

 

~~

 

 何処でもない場所。暗い水中を掻き進むような感覚だった。全身の皮膚は鋼鉄の様に高質化し、四肢には尋常ではない程の力が滾っていた。

 今ならば、全てを灰燼に還すことも出来るのではないか。そんな全能感に支配されながら突き進んだ先に出口はあった。滾る力の奔流を如何にしてぶちまけようかという目論見は一瞬で崩れ去った。

 

「うわぁああああああああああああ!!!!!?」

 

 蓄えて来た力を玄関に忘れて来たのか。華奢な体は空へと放り出され、手足をバタつかせる外なかった。このまま地面に激突すれば死は免れないと感じていたが、何時まで経っても落ちることは無かった。

 何が起きたのかと頭を上げると。そこには自分を抱える人……の形をした何かが居た。

 

「対象者を救助。マスターの現在地を確認、合流します」

「だ、誰だ!?」

 

 少年は咆えたが、目の前の人形ことインスペクト・ボーダーが答えることは無かった。

 程なくして怒号が聞こえて来た。眼下には多数の教導騎士を引き連れ、右腕に巨大な鉄槌を装着した大男、テオが獣人部隊へと啖呵を切っていた。

 

「今日はリーダー達を連れて来てないのか。嘗められたモンだな」

「そっちこそ、ご大層な神徒様も居なければ聖女様も居ねぇじゃねぇか。使い走りに用はねぇ。どけ!」

 

 売り言葉に買い言葉とはこのことで。大男の挑発に対し、ケラスが煽り返していた。一触即発の状況の中、彼らの間に割って入ったのは珍妙な生物に乗った1人の少女……エクレシアだった。

 

「皆さん! 戦いを止めて下さい!」

 

 手には巨大な戦槌、背中には満月を彷彿とさせる大盾を装着していた。

 一触即発の状態が制止されたことにより対話の余地が生まれたと考えたのか、フラクトールが一歩前へと出た。

 

「では、我々の同胞を解放して貰えませんか。そうすれば、私達も矛を収め引きさがりましょう」

「それは出来ません。彼らは今、教導を受けている最中なのです。聖痕を身に宿すことで争いや諍いを制し、始めて平穏を迎えることが出来ます。私達は争っている場合ではありません。この身に等しく奇跡を授かり、迫り来る脅威に対抗するべく手を取り合わなければなりません。もしも、貴方達が聖痕を受け入れるというのなら、私達はいつでも歓迎します」

 

 彼女の言葉に教導騎士団の者達は深く感銘を受け、中には涙を流す者さえいた。しかし、彼らとは対照的に獣人達は殺気立つばかりだった。

 

「よく分かりました。自分達がしていることの自覚すらない相手に話し合うつもりはありません」

 

 番えていた矢を放った。しかし、エクレシアは背負っていた大盾で弾いていた。それと同時に少年を抱えていたインスペクト・ボーダーが急降下を始めた。

 

「脅威と認定。排除します」

「え?」

 

 まさか、あの戦場に自分ごと突っ込むつもりでは無いか。という懸念は直ぐに実現した。教導騎士と獣人達がぶつかり合う。

 剣戟が響く中に放り出された少年は右往左往するばかりだったが、どちらに付けばいいのか分かった物ではない。

 

「キェエエエエエ! 邪教徒め!!」

「うわぁ!?」

 

 襲い掛かられたので、少年は反射的に殴り倒していた。驚く位にあっさりと倒せたので本人も戸惑う外なかった。呆然としていると自分の腕を掴む者が居た。先程、啖呵を切っていたケラスだった。

 

「やるじゃねぇか! テメェ、何処の奴だ? 自分で逃げて来たのか?」

「いや、俺は……」

 

 逃げるもクソも放り込まれたんだが。と言おうとしたら、もう片方の腕が引っ張られていた。見れば、先程演説をしていた少女だった。

 

「急に空から落ちて来たのでビックリしました。ホールから来た異人の保護は、ウチでもやっていますのでご安心下さい!」

「あ!? ふざけんな! テメェらに預けたら碌なことになりやしねぇ! 坊主、こっちに来い!」

「あ、コラ! 誘拐なんて野蛮な真似は止めなさい!」

「痛たたたた! 引っ張るな! 引っ張るな!!」

 

 両腕を綱引きされた哀れな少年は、戦っても居ないのに苦痛に曝される羽目になっていた。では、周りで激闘が繰り広げられていたかと言うと。

 

「クソ人間!」

「邪教徒め!」

 

 どうにも主役を欠いたが如く間延びした戦いが繰り広げられていた。戦争と言うよりかは喧嘩と言った有様だろうか。

 少女が乗って来た珍妙な生物ことパキケファロは遠巻きから眺めているだけであり、戦場の中心で暴れていたのは両軍の将。という訳でもなかった。

 

「脅威排除、脅威排除」

「何だこりゃ。聖痕が使えねぇ!? この人形。さては、テメェらのだな!」

「たわけ! 私達に攻撃してきたコイツが味方な訳がないでしょう!」

 

 テオとフラクトールが戦っていた相手はインスペクト・ボーダーだった。両軍から攻撃された為、エクレシアと少年以外の全てを敵と認識しているのか、ひたすらに暴れていた。

 誰にも相手にされないので寂しくなって来たのか、パキケファロは戦場からコッソリと抜け出していくナーベルへと付いて行った。

 

「え? ……あの、君の御主人はあっち」

 

 猟犬の様に噛みつくことも無ければ、威嚇して来ることもない。

 ただ、首を傾げるだけだった。ナーベルからすれば不気味と言う外ない生物であり、距離を取る為に空を駆けだした。

 しかし、これが過ちだった。追いかけっこか何かの遊び相手になってくれると思ったのか、パキケファロは彼の跡を付け始めた。

 

「うわ! 来るな!!」

 

 彼は非戦闘員である為、パキケファロを追い払う手段が無い。

 だが、他の者達が稼いでくれた余裕を無駄にするつもりもなく、ジャケットに吊り下げられている球体のピンを引き抜いた。すると、レンズが現れ翼が生えた。

 

「行け!」

 

 次々と空へと放り投げると、それらはまるで生物の様にあちらこちらへと向かった。ナーゲルを偵察兵足り得る存在にするガジェット達だった。

 シュライグの翼が動かなくなった時は、これらも機能しなくなるのではないかと焦ったが杞憂だったらしい。そして、依然として後方からはパキケファロ。

 

「早く。頼む! 早く!」

 

 飛び立ったガジェット達が見つけてくれることを信じて、ナーゲルは空を飛び回っていた。

 

~~

 

 当然、鉄獣戦線が捕虜奪還の為にやって来たという知らせは教団にも伝わっていた。しかし、フルルドリスを始めとした実力者達は殆ど動けずにいる。

 唯一、自由が利くのは後方支援部隊の長である天啓のアディン位であり、報告に現れた騎士が彼に被害状況を告げた。

 

「現在、テオ様とエクレシア様を含めて獣人部隊と交戦中! 負傷者の多くは、連中が運び込んだ鉄の人形による物です!」

「おのれ。連中、何時の間にその様な兵器を!」

「(エクレシアの部屋に似た様な物があった気がするが)」

 

 正しく、フルルドリスが思った通りだった。そして、ここでジッとしている事などできない。倦怠感や虚脱状態を気合で跳ね除け、彼女は神器を身にまとった。

 

「フルルドリス様!?」

「アディン、私も出向く。お前達の奇跡で私を支えてくれ」

 

 相当に無茶をしていることは彼にも分かった。引き留めることなど出来る訳もない。アディンは特に腕の立つ部下を連れて、2人掛かりで彼女へと奇跡を注ぎ込んでいた。

 

「フルルドリス様。今、私達はテオを始めとした部隊に回す分の奇跡を貴方に回しています。速攻で決着をつけて下さい」

「すまない。私のわがままを聞いてくれて」

 

 教団最強の矛が飛翔する。騎士達から喝さいが巻き起こった。これで、獣人達は一溜りも無いと。彼らの歓喜を他所にアディンは考える。

 

「(しかし、聞いた報告によればリーダー格の者達は居ないという。交戦している部隊が囮だとすれば、救出部隊の方に宛がわれているのか? 周囲の警戒を強めねば)」

 

 直ぐに彼は獣人達の収監場所の警備を強化する様に命じた。……そして、そんな様子を、ナーベルが放った球体のガジェット達が捉えていた。

 

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