特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第22幕:白銀の城の火吹炉「何も悪いことはしていません。手札を捨ててトラップを設置しただけです」

 アルを含めた突入メンバーが決められ、向かった先。まるで芸術品の様に美しい白銀の城がそこにはあった。だが、城と言うには奇妙だった。見張りも居なければ兵士が巡回している様子も無い。

 

「これも含めて罠なんだろうけれどさ」

 

 突入部隊の指示役を務めるフェリジットが言った。この場に居る者達は、あの城の内部が罠で満たされているということは知っている。敢えて、警戒心の無さを見せつけることで迂闊な侵入者を釣ろうという腹積もりなのだろう。

 今回、選ばれたメンバーは鉄獣戦線の中でも特に実力に秀でた者であり、アルの他にも危機感地能力が高い十二獣のモルモラット、突破力を期待されたドランシア達が連れて来られていた。

 

「罠なんて全て破壊して突破すればいい。いざとなったら、アーゼウスで吹っ飛ばすのも」

「いや、あの城を手に入れる為なのだから、吹っ飛ばしたら元も子も無いのでは?」

 

 あまりに豪快な解決策を打ち出すドランシアをアルが宥めながら、件の城へと近付いて行く。道中で妨害や襲撃が無いというのに、モルモラットは縮こまるばかりだった。

 いざ、門へと辿り着いてみればあまりの煌びやかさに声を失うばかりだった。フェリジット達は一応、入る前に大声で呼びかけた。

 

「すみませーん! 誰か、いますかー!!」

 

 暫くすると、門に取り付けられていた陶器製の管から高笑いが響いて来た。

 

「オーッホッホッホ! ようこそ、おいで下さいました。我が迷宮城へ。私、城主のラビュリンスと申します。何か御用ですか?」

 

 最初の高笑いとは兎も角として、声からは高貴な響きが感じられた。まさか、応対してくれるとは思っていなかったが、フェリジットは冷静に用件を伝えた。

 

「こちら、鉄獣戦線のフェリジット。単刀直入に言うと、私達と同盟を結んで欲しいんだ。この世界のことはどれ位知っている?」

「興味がありませんわ。しかし、解説して下さるなら是非とも拝聴させて貰いますわ」

 

 フェリジットはチラリとアルの方へと手招きした。体系付いた知識を話せるのは彼だと判断してのことだろう。彼女から解説役を引き受け、自分の考えを整理することも含めて、アルは解説を始めた。

 彼自身も話し上手でないことが相まって言葉に詰まりながらであったが、ラビュリンスは最後まで聞いていた。

 

「と言う風に。現在、鉄獣戦線は自主性の確保のために対立しているという状況だ。だが、国家に立ち向かうには拠点や力を貸して欲しい」

「私が協力する義務がありまして?」

 

 最もだった。ラビュリンスは迷い込んだ異邦人にしか過ぎず、この世界の争いに立ち入る理由は無い。アルはフェリジットへと交渉役を渡した。

 

「協力してくれたら食料の提供とか警備とか。労働力も提供できるよ」

「結構です。私達にとって食事は嗜みでしかありませんし、労働力も足りていますからね。仮にどちらが必要だとしても、ドラグマと手を組んだ方が良さそうですしね。……ですが、こういった返答が来るだろうことも想定して人間側の事情を説明していたことは好感が持てます」

 

 もしも、アルが交渉を有利に進めるためにドラグマのことを不当に評価するか、あるいは存在を隠していたら、この時点で交渉は打ち切られていただろう。彼の誠実さによって、首の皮一枚繋がったと言っても良かった。

 

「じゃあ、こっちも正直に言うよ。鉄獣戦線の拠点としてここを間借りさせて欲しいの! 駄目?」

 

 それは流石に正直すぎるだろ。この場に居る者達の誰もが、ラビュリンスの返答を恐れる中。むしろ、彼女は優雅に返して来た。

 

「良いでしょう。私の下まで辿り着けたら、その話。考えて上げてもよろしくてよ。盛大に歓迎して差し上げますから」

 

 門が開いた。入っても良いということらしいが、一体何が待ち受けているのだろうか。全員が一歩踏み出そうとした所で、モルモラットが叫んだ。

 

「跳んで!!」

 

 全員、確認することも無く同時に跳んだ。すると、門を潜った直後にある床が勢い跳ねた。もしも、無警戒に踏み出していたら何処かに吹っ飛ばされていただろう。

 アルやフェリジット達の顔が驚きで見開かれていた。こんなのが幾らでもあるのかと。ひょっとして、城に入るまでにも幾つも待ち受けているかもしれない。

 

「皆。気を引き締めていくよ!」

 

 フェリジットに先導され、アル達の迷宮城の攻略が始まった。

 

~~

 

 かくして、客人達を招待したラビュリンスは歓喜に打ち震えていた。部屋内には幾つもの水晶が設置されており、それぞれに映像が映し出されていた。そんな彼女の隣では、執事服を着た麗人が紅茶を淹れている。

 

「ちょっと、見なさいよ。アリアス! あの驚き方!! まさか、初手強制脱出装置であんなにビビるだなんて!」

「騎士様はいつも裏門から侵入でしたからね」

 

 ラビュリンスが苦々しい顔をした。彼女達がホールを通じてやって来る前の世界では、今回と同じように城に眠る財宝を求めて魑魅魍魎がやって来ていた。

 別に誰かを誘拐した訳でもないのに、押し入りまくって来るのは不法侵入以外の何物でもないのだが、そう言うのが許されていたのが彼女達の居た世界だった。

 だが、無礼な客人達は大量に設置した罠で追い払っていたが、中には最奥部まで突破して来る奴もいた。

 

「最初に出会った頃はあんなに初心だったのに」

 

 便宜的に彼女達が騎士。と呼ぶ存在は男か女かも分からない中性的な容姿の持ち主だった。最奥部まで来た騎士はラビュリンスを打ち倒し、城の調度品を宝と称して持って帰っていた。

 

「いう程初心でしたか? 持って来ていたバッグに宝石とか金塊とかを詰め込んでいた、強盗犯だと思うんですが」

「良いのよ。あんなの城の何処からでも生えて来るんだから」

 

 これに味を占めたのか、騎士は何度も襲撃に来ては宝物を強奪していた。

 最初の内はバリエーションを変えた罠に対応して、時には失敗して叩き出されたりもしていたのだが、最終的には不屈の闘志で最奥部までやって来ては宝石と金塊を強奪していくのだ。

 

「一応、姫様の歓迎に対応している内は良かったのですが。最終的には城から直接侵入した方が早いと、外壁を伝って入って来た時は私達も驚きましたね」

「きっと、アレね。城内の罠だけで対抗できると思うな。と言う、彼なりのメッセージだったのよ」

 

 どうして、強盗犯の所業に対して教訓を得ようとするのか。故に罠設置は城内だけではなく敷地全体に及ぶまでになったのだが、騎士の侵入はルール所か常識や世界の理すら冒すようになっていた。

 アリアスは思い出す。城の壁も強固にして、警備も増やして、トラップも設置しまくり、いざと言う時は最奥部の侵入を不可能とする様に全てに扉を付けたのに、虚空から突然ぶっ飛んで来た騎士の姿を。

 

「正直言うと、私はもうこの世界でやって行く方が良いと思うのですが。見て下さいよ」

 

 水晶には、庭園の中に設置した仕込みマシンガンが侵入者達を襲っていた。しかし、皆を庇う様にして前方に出た褐色の少年が全てを受け止めていた。

 彼の肉体で止まった弾丸がぽろぽろと零れ落ち、仲間達が心配そうに駆け寄ってくる姿を見て、いよいよラビュリンスの興奮は頂点に達した。

 

「キャー!! パーティ侵入の醍醐味! 仲間を庇う唯一の男役! アレは何? もう、パーティの配分も完璧!!」

「ひとまず、アリアンナとアリアーヌにも連絡を入れておきましょうか。客人として歓迎のやり甲斐がありそうですから。前の侵入者達と違って簡単に捕まってくれそうにないですからね」

 

 城内に走る伝声管に歓迎の準備をする様にと言った。妹達の返事に混じって、捕縛した獣人達の悲鳴が僅かに漏れていた。

 今まで、ロクでもない攻略ばかりされていた迷宮城は久しく正面から挑んで来る侵入者を相手に、活気づいていた。

 

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