特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~ 作:ゼフィガルド
「フフフフ。今回のトラップは無限階段。必要な個所を攻略しないと延々と階段が続いて、奥まで辿り着けないというしようでしてよ。流石に擦り抜けは出来ても、こういった仕組みは突破できないでしょう。どう思うアリアス?」
「失礼ながら姫様。騎士は急に後ろ幅跳びを始めたかと思いきや、まるでワープしたが如く無限階段のループ機構を突破して最奥部まで来ていますが」
「アイェエエエエ!?」
迷宮城は正に罠の展覧会と言ってもいい程、多種多様の仕掛けが施されていた。先頭を行くモルモラットは仲間達に危機を報せる為に常に叫んでいた。
「皆! 伏せて!」
全員が一斉に伏せると。頭上をレーザーや砲撃が飛び交って行った。ゆっくりと、首を上げてみれば真っ赤な機体があった。
ヒョウタンの様な可愛らしいシルエットはしていたが、体のあちらこちらに砲門が生えている様子は物騒と言う外なかった。
「今の罠は魔砲戦機ダルマ・カルマと言います。見ての大きさですから、目標物と交戦に移ることは無いのですけれど、皆さまの様にビビッて伏せてしまうビックリメカですわ! ビビらずに調子に乗って挑んで来る奴は木っ端みじんにして差し上げますことよ!!」
何よりもウザいのは罠を回避する度にご大層な解説が入ることだった。ハスキーボイスなことも相まって、キンキン響いて来るのがなお腹立つ。
ダルマ・カルマを迂回して進んでいると。モルモラットがピタリと止まった。少し時間を置くと、床が勢い良く跳ねた。
「やっぱり、罠と言う格式においてバネ床は外せません。本当を言うなら感圧センサー型のを使いたいのですが、それだと難易度が跳ね上がり過ぎてしまいますからね。皆さまの進行速度を計測して時限式にして差し上げていますことよ」
「そんな気遣いするなら普通に招けーッ!!」
シュルシュルと跳ねた床が元の位置に戻って行く傍ら。神経をすり減らされてまくっているモルモラットが伝声管に向って叫んだ。すると、直ぐに返事が来た。
「お断りします! 良いですか? 私が施す試練を乗り越えた者だけが相対する資格があります事よ。誰でも招くほど暇ではありませんので!!」
「アル。こんな罠を設置しまくっている時点で十分暇じゃない?」
「だが、彼女達はこの世界に迷い込んで来たのだろう? 防犯と言う意味では、必要な作業では?」
伝声管に漏れないようにフェリジットが小声でアルに話し掛けていた。確かに、見知らぬ土地における来訪者が悪意を持っていないとは限らないので、罠を設置すること事態には意味はあるが。
「その割には、突破されるのを楽しんでいる様に見えるが」
ドランシアの指摘通り。本来なら、自分の身を守るための罠が突破された時の反応とすれば恐怖や困惑があって然りだというのに、ラビュリンスは饒舌に語っていた。
「さぁ、城内の扉はあと少しです! どうしますか? 新たな罠が稼働する前に突破しますか? それとも。ジックリと様子を見てから突入しますか? 貴方達の選択次第でしてよ!」
4人は顔を見合わせた。時間が経てば、どの様な罠が作動するかも分からない。だからと言って注意を欠けば、相手の思うつぼだ。
「絶対に何かある。皆、気を付けて行こう」
モルモラットは全身の毛を逆立てながら先頭に立った。アル達も一緒に付いて行くと、ま彼らを歓迎する様に壁が出現して、通路が出来上がっていた。
これでは横道に逃げることが出来ない。つまり、こういった状況にやられたということは相応の仕掛けが待っているということでもあった。フェリジットの耳がピンと立った。
「水の音。凄い勢いで、こっちに来ている!!」
「予想通りと言う訳か!」
ドランシアが壁の破壊を試みるが、ビクともしなかった。彼女の一撃で無理ならば、通常形態の自分では無理だろうとアルは予想が着いた。伝声管から高笑いが響く。
「やはり罠の醍醐味は何処で掛かるかですわ!! ここまで突破して来たのに、貴方達は激流に押し流されてしまうのです! ああ、可哀想! 可哀葬!」」
「あったら覚えておけよ! 一発引っ叩いてやるからな!」
モルモラットは顔から湯気が出そうな勢いでブチギレていたが、今はこの状況を何とかしなければならない。脚力に自信のあるフェリジットが飛び越えようと跳ねてみたが、届かない。
「アル! 竜に変身して空中に待機とかは!?」
「前に私と合体した時か。出来るか?」
「やってみる」
城に被害が出ることを避ける為、竜化は試みていなかったが状況の打破に使えるなら使用すべきだ。以前と同じ様にドランシアと融合しようとしたが、何の変化も現れなかった。
「おかしいな。以前は……」
「じゃあ、私とは!?」
フェリジットに差し出された手を取ると、彼女はアルの中に吸い込まれて行った。すると彼の背中に白銀の大きな翼が生えた。
『うわ。すご!? なにこれ!?』
「どうやら、全身の変化が起せるほどではないらしい。だが、翼があるなら飛翔は出来るか!」
ドランシアとモルモラットがアルへとしがみ付き、いざ飛翔しようとしたが……ちっとも動かなかった。
「武器が駄目なのかもしれない」
突入する上で武器を手放すことは心許ないが、背に腹は代えられない。ドランシアとモルモラットは武器を手放し、再びしがみ付いてみたがやはり飛翔できる気配はない。
「すまない。あまり力は強くないらしい」
「役立たず!!」
モルモラットに痛罵を浴びせられようとも出来ない物は出来ない。
慌てふためいている間にも轟音は近付いて来る。どうにかする方法は無いかと考えて、アルは伝声管に投げかけた。
「聞きたいことがある。例の跳ねる床は、複数人が乗っても飛ばせるのか?」
「勿論ですとも! 床の上に乗ったパーティーごと跳ね飛ばせる威力がありますことよ! ……あ」
「さっきまでの地点に戻るぞ!」
3人は一斉に逆走を始め、先程のバネ床のある場所まで戻って来た。轟々と激流の音は近付いて来る。ドランシアとモルモラットはアルにしがみついた。
『アル! 来るよ!!』
侵入者を弾き飛ばす為の床に飛び乗ったアル達は、バネ床によって高く打ち上げられていた。中空で翼を広げるとゆっくりと降下していく。地上では、突如出現した通路に激流が押し寄せ、全てを流し尽くしていた。
「いや、これ入り口まで押し流される程度じゃすまないでしょ……」
もしも、アルが居なければ激流に飲み込まれて、全身を打ち付けられ破壊され尽くしていただろう。仕掛けが作動し終えたのを見計らって、城の方までフワフワと落ちていく。玄関に設置されている伝声管から拍手が聞こえた。
「まさか、設置された罠を利用するとは! 柔軟性に満ちた行動でしてよ。貴方達ならば足を踏み入れる資格もありますわ」
何時の間にかアルの背中から羽が消え、フェリジットと分離していた。
閉ざされていた城の扉が開くと、美しい調度品と装飾に彩られた内装が彼らを出迎えた。
「ウェルカム・ラビュリンス。貴方達へのおもてなしを引き続き行わせて頂きます」
入り口前に設置された伝声管からは努めて平静を保とうとしながらも、声色に漏れ出る喜色を隠せずにいた。
~~
城主であるラビュリンス達とは別の場所にある控室では、2人の姉妹が目を輝かせていた。壁画の様に壁に立てかけられた水晶には、仕掛けられた罠に対して全身全霊で対応する侵入者達の姿があったからだ。
「ねぇ、アリアンナ! 見た!? あんな風に対応するとは思わなかった!」
「騎士様ならグリッチで判定無くして、壁を擦り抜けていたでしょうしね」
桃色の翼をパタパタと動かすアリアーヌに対して、アリアンナは翡翠色の翼をシュンとさせていた。
「私、アイツ嫌い!! 変な動きしかしないし、壁とか抜けて来るし! あんなのただの強盗犯だよ!!」
「私は嫌いじゃないけど。だって、アレが来ると何しても無駄だからサボれるし」
「そう言うね! やる気をなくすと嘗められるし、この城の格式が落ちちゃうの! ほら、見てよ。あの侵入者! 白銀の城の火吹炉(ラビュリンス・ストービー)への対応を見てよ!」
猫を象った炉から吐き出された火がアル達へと襲い掛かるが、前方に躍り出たドランシアが得物を高速で回転させて、吐き出される火を散らしていた。
『悪いな。私は火の扱いも得意なんでな』
『ンャーッ!』
ストービーが声を上げたのは怒りからではない。喜んでいたのだ。彼の張り切りぶりを見てアリアーヌは目頭を押さえていた。
「強盗犯にはスルーされるか、暇つぶしで破壊されるかグリッチの起点にされるばかりで、最近は拗ねてしょげていたのに。あんなにマジに対応してくれるなんて! もう、侵入者の鑑ね!」
「侵入自体が倫理観的にどうかと思うんだけど」
アリアンナの常識的な指摘は全てスルーされていた。だが、彼女も決して憎まれ口を叩いているだけではなく、久しく得物を握る手に力がこもった。
水晶モニタ内では侵入者目掛けて落下する白銀の竜飾灯(ラビュリンス・シャンドラ)の軌道を、フェリジットは手にしていた狙撃銃を用いて逸らしていた。
全力の抵抗と全力の迎撃がぶつかり合っている。この白銀の城はかつての活気と喧噪を取り戻した状態になっていた。
「もう待ちきれない! アリアンナ! 行くよ!」
「分かった」
最近はサボることばかりが上手くなってしまっていた姉妹だったが、そんな怠惰な状況はお終いにして、飛び出して行った。
ラビュリンスが居た世界での光景2。
「ねぇ、アリアンナ。なんで騎士はトラップとして設置した竜飾灯に飛び乗って高層階に進んでいるのかしら?」
「アリアーヌ。それを言ったら、火吹炉に接近したと思っためり込んだ挙句、大回廊をスルーして、隠しエレベーターに乗り込んでいるんだけれど」