特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第24幕:白銀の城の召使アリアーヌ「誰よアリアンヌって。アリアーヌとアリアンナだから」

 迷宮と言うのは広く、冒険心に満ちた造りでなくてはならない。最奥部にいる城主へと続く道以外は、行き止まりしかないという造りがあれば三流と言わざるを得ない。

 行き止まりであるなら、そこに辿り着くまでの苦労に見合った何かが無ければならないのだ。詰まる所、アル達は行き止まりに辿り着いていた。

 

「なにこれ?」

 

 フェリジットが指差した先にはゴテゴテとした装飾が施された箱が設置されていた。いわゆる、宝箱である。皆がモルモラットに視線を向けた。

 

「あんまり危険な感じは無いけれど」

 

 今回の攻略において、モルモラットへの信用は確固たる物になっていた。彼女の危機管理能力のお陰で突破できた罠も幾つもあった。

 この箱自体に危険は無くとも、何かしらの装置になっている可能性も考えて、アル達に警護をさせつつ、フェリジットが箱を隅々まで調べ、何時でも後方に跳べる態勢を取りながら開いた。中に入っていたのは鉤爪型のガントレットだった。

 

「え? これだけ?」

 

 フェリジットは箱の底まで調べていたが、この鉤爪以外には何も入っていなかった。皆が渋い顔をしていた。アル以外は既に得物を手にしていたし、今更こんな使い難い物を装備する気にもならなかった。

 

「ねぇ、アル。これ使う?」

「そうだな。貰っておこう」

 

 竜化する能力を持っていることもあって、鉤爪は良く似合っていた。変身すれば、こんな物も必要なくなるのだが。

 来た道を引き返して、今度は選ばなかった方の道を行く。大広間では火吹炉や竜飾灯による歓迎を受けたが、通路でも釣り天井、落とし穴、アロートラップなど。古典的な罠の数々が待ち構えていたが、城内に入るまでの罠と比べれば優しい物だった。

 

「なんか。トラップが単調と言うか、パワー押しみたいなのが無くなって来たね」

「城に被害が出るレベルの大規模な物が使えないのだろう」

 

 モルモラットの緊張も少しは解けて来たのか、口数が増えていた。

 アルも言う通り。表のトラップは大規模で豪快な物が多かったが、城内のトラップは閉鎖的環境を上手く使う罠が多かった。だからこそ、彼らは次に自分達に起こることに対処できなかった。

 

「え?」

 

 あまりに唐突だった。先程まで遭遇して来た罠群の様に命を奪う類の物ではない。周囲の壁や天井から一斉に泡が噴射され、彼らに降り注いだ。

 だが、皮膚が焼けたり、意識が酩酊することも無い。何も変わっていない様に思えるからこそ、逆に不気味だった。そして、少し進むと開けた場所に出た。部屋の中央には2人の少女が立っていた。

 

「ウェルカム・ラビュリンス! ようこそおいで下さいました、客人! 私、白銀の城の召使(ラビュリンス・サーバント)・アリアーヌと申します!」

 

 桃色の翼と尻尾を使って、全身で存在感を誇示していた。彼女の隣にいる姉妹と思しき少女は軽く頭を下げた。

 

「私はアリアンナと申します。貴方達の御様相は拝見させて頂きました。この世界に来てから、ここまで来れたのは貴方達が初めてです」

「そう。ということは、先に侵入していた子達も居たんだよね? その子達はどうなったの?」

 

 フェリジットの気配が剣呑な物に変わった。元々、この場所はフェリジット達のコミュニティがあった場所である。紆余曲折があって追い出された物の、やはり同胞達のことは気になっていたのだろう。彼女の質問にアリアンナが答えた。

 

「力尽きた侵入者達は地下にて幽閉しております。最奥部まで辿り着き、姫様のお眼鏡に適えば、解放されるかもしれませんね」

「その前に。私達を突破できるかだけれどね! さぁ、客人! ご照覧あれ! 白磁の乙女(アリアドネ)達が織りなす悪魔の技(デーモン・グリッチ)を!」

 

 アリアーヌの手には、キャンドルを模した穂先が特徴的なトライデントが握られ、アリアンナの手には、鉄球の代りに3枚の刃が取り付けたリングを垂らしたフレイルが握られていた。

 ドランシアが先手を打ち、武器を構えて破砕の効果を起動させようとするが何の反応も見せなかった。

 

「(そうか。さっきの泡か!)」

 

 彼女はこれとよく似た状況を知っている。以前、アル達と戦った時に起きた、特殊能力が無効化されるという現象だ。

 完全に虚を突かれ、ドランシアに一撃が入る刹那。このチャンスを逃さまいとしていたアルの装備品による爪撃が入り、アリアンナの頬が割れた。

 

「!?」

「だから言ったでしょう。白磁の乙女だと」

 

 陶磁器の様に白い肌をしているから自称していたかと思いきや、本当に彼女達は陶磁器だったのだ。カウンターによって止めることは出来ず、ドランシアは一撃を貰っていた。

 

「ドランシア!」

「平気だ! 掠っただけだ!」

 

 咄嗟に身を捻ったことにより串刺しになることは避けたが、脇腹を掠めており、彼女の衣服は赤く染まっていた。

 

「勿論、私達の技だけじゃなくて。お待ちかねの! トラップもキチンと用意してありますよ!!」

 

 アリアーヌが指を鳴らすと、ドランシアが居た個所の床が大きく跳ねた。もはや、この城に来てから何度目になるか分からない強制脱出トラップだった。

 ただ、これは室外で使われる場合は全く意味が違って来る。打ち上げられたドランシアは天井に激突して、落ちて来た。すっかりと目を回していた。

 

「ドランシアーッ!!」

「アンタ達の主さん。このトラップ好きなの?」

「はい。かなり」

 

 モルモラットが悲痛な叫びをあげている中、フェリジットとアリアンナは冷静にやり取りをしていた。

 ドランシアが戦闘不能になった以上、アルだけでアリアーヌ達に対応していたが、数の不利を物ともしない健闘ぶりを見せていた。

 

「お兄さん強いね! その爪、気に入った?」

「肌に馴染むようだ」

 

 人間的な武器を握るよりも、獣的な戦い方の方が性に合っているのは道理だった。むしろ、変身していなくとも本領的な動きが出来るということは、アルには非常に有利に働いていた。

 姉妹達も防戦一方となり、攻撃が掠った箇所が欠け落ちて行く。得物も悲鳴を上げている。想像以上の膂力の持ち主であるらしい。

 

「なら、アリアンナ! もう一度行くよ!」

「うん」

 

 先程、ドランシアに一撃を食らわせたコンビネーションの構えを取った。アルもまた両手の鉤爪を構える。

 アリアンナが先に掛けた。フレイルの先端に取り付けられた3枚の刃が躍る。巧みな動きによって、正面と側面から同時に3枚の刃が襲い掛かった。

 

「(どう動く!)」

 

 アリアンナの牽制攻撃によって、相手の動きを制限した所でアリアーヌが必殺の一撃を放つという。この城でも行われているトラップによる別箇所へのトラップへの誘導にも近しい動きが繰り広げられていた。

 もしも、アルがこの3枚の刃を弾けば隙だらけの胴体に一撃が。距離を取れば、投擲されたトライデントが彼を貫き、懐に潜り込んで来るなら柄での一撃をお見舞いする。と、あらゆるシチュエーションを想定していたが。

 

「うぉおおおおおお!」

 

 アルは突っ込んだ。相手の武器を弾きながらアリアンナを轢き倒し、彼女の後ろに控えていたアリアーヌも吹っ飛ばしていた。まるで猛牛の如き勢いに、2人は目を回して倒れていた。

 

「ゴリ押しも突破方法の一つではあるけれどさ」

「レベルを上げて物理で殴る。ある意味、古典的ですね」

 

 雑ではあるが順当な突破方法でもある。彼女らを倒したことがスイッチになったのか、部屋の奥にある扉が開いた。ここを進んで行けば、恐らく城主に会えるということなのだろう。アルが一息入れた所で、フェリジットがやって来てアリアーヌ達を拘束しようとしていた。

 

「あの。私達、この後。色々と城の片づけとかがあって」

「駄目。アンタらが居たら、この先にある罠も分かる訳だし、連れて行く」

「そう言うメタ的な攻略方法をする人は嫌いです」

 

 アリアンナが床を押し込むと彼女達が居た個所の床が抜けて、落ちて行った。最初からキッチリと逃げる手段も確保していたらしい。

 

「一般的に考え付くことは彼女らにも想像出来ているらしい」

「クッソ。いざと言う時に人質に使おうと思っていたのに」

 

 普段は気さくな姉御肌であるが、これでもトライブリケードの幹部として活躍する女傑でもある。彼女が持つ冷徹さが少しばかり顔を出していたが、ドランシアが目を覚ましたので直ぐに引っ込めた。

 

「うぅ。奴らは?」

「撃退した。このまま進もうと思っているが。無理そうなら休んでいて欲しい」

「平気だ。獣人の回復能力を嘗めないでもらいたい」

 

 フラフラとして立ち上がったが、ほんの数分ほど休んでいると。脇腹の傷も塞がったのか、呼吸も落ち着いた物になっていた。

 先程から、各所に設置してある伝声管から何も聞こえてこない。もう使う必要も無い位に近い場所に来ているからということもあるかもしれない。一息ついた所で、彼らは決意も新たに進むことにした。

 

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