特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第27幕:コンキスタドール「長い、幽閉生活でした」

 ホールの影響により荒廃してしまった場所も多数あるが、深淵大陸は自然を残している場所も多い。

 多数の緑や生物達が住まう森の奥には、そんな豊かな自然の景観や生態系を蝕むようにして、黄金の都が広がっていた。

 この領域内においては木々も黄金や虫達も黄金へと変わり、逃げ遅れた生物や獣人達も恐怖に染まり切った表情のまま、黄金像へと変わり果てていた。悪趣味。としか言いようが無い光景の中で、襤褸を着た2人が陽気に歌っている。

 

「目を覚ませ、僕らの世界が何者かに侵略されているぞ!」

 

 全身緑肌の男は肋骨に皮が張り付いているレベルに全身が痩せ衰え、左足を欠損していた。だというのに、悲壮感は一切見当たらない。ただし、歌の方は音痴と言う外なかった。

 

「これは訓練でもリハーサルでもない!」

 

 もう、片方は全身の皮膚が青白く染まっており、先の男とは対照的に肥満体とも言える体躯をしていた。こちらは右足が欠けており、互いに互いを支え合う様にして肩を組んでいた。こちらの歌声は綺麗だった。

 音痴と美声のデュエットが跳ね回るが、称賛を飛ばす者も居なければ、ヤジを飛ばす者もいない。誰一人遮る者が居ないので、延々とリサイタルが続くかと思いきや地中から伸びた腕に足を掴まれて、仲良くすっ転んだ。

 

「うるさい」

 

 実在する肉体を持っていないのか。地面をえぐり返すことなく浮かび上がって来た女性の肌は、青白く透き通っていた。

 すっ転んだ二人組は、そこら辺に建っている黄金像に掴まって立ち上った後、自分達を転倒させた彼女に抗議をしていた。

 

「バンシー! 何しやがる!! 折角、気持ちよく歌っていたのによ!」

「黄金卿から連絡。何者かが、こちらに近付いてきている。ジョン、ドゥ。ワッケーロ達を連れて準備を。それと、ドーハの機嫌取りも」

 

 ジョンと呼ばれた痩せぎすの男はしかっめ面をして、ドゥと呼ばれた肥満体の男は溜息を吐いていた。反論の余地は許さないとばかりに、バンシーは地面に溶けて行った。

 すると、どうだろうか。黄金の像によって悪趣味なほどに煌びやかに彩られていた周辺は、瞬く間に陰気な雰囲気に覆われて行き、青い魂が漂い始めていた。

 

『出してくれぇ。出してくれぇ』

『狭い。苦しい。助けてくれ』

『俺が。俺が悪かった』

 

 辺りが苦渋の声で満たされて行く。黄金の像達はまるで意思を持つかのようにして、動き始めていた。

 これらの様相は、エルドラドの屋敷の最奥部。この都の主であるエルドリッチの私室に設置された金鏡に映し出されていた。

 

「ムハハハ! また、黄金に惹かれた愚か者共がやって来るか!」

 

 玉座に腰掛けた彼は高笑いを上げていた。彼の傍に控えていたのは、クラシックなメイド衣装に身を包んだ女性であったが、人間では無かった。

 頭頂部から2本の角が生え、後ろに向って同様の物が4つ。背中に生えた翼はエプロンの前面にピタリと張り付いており、大腿部付近からは鱗に覆われた太く長い尾が伸びていた。

 

「つい、先日。偵察に出していたコンキスタドールから白銀の迷宮城が攻略されたという話を聞いていましたが」

「ふん! あの小娘のことだ。どうせ手緩いやり方をしていたから潜り込まれたのだろうよ。ドラグマだかトライブリケードだろうが関係ない。返り討ちにしてくれる! ハスキー!」

「既にバンシー様と我々ドラゴンメイドの方にも手配は済ませております。それと、念の為に屋敷わらし御嬢様とラドリーもここに」

「うむ。苦しゅうない。瀟洒であるぞ」

 

 エルドリッチはハスキーに賛辞の声を掛けて見送った。

 暫し後、この部屋に2人の少女が入って来た。片方はゴスロリファッションに身を包みながら、青白い肌をした人形の様な少女だったが。あからさまに不機嫌な顔をしていた。

 

「さっきま、でラドリーと遊んでいたのに」

「仕方ありませんよ、わらし御嬢様。私達がしっかりとお守りしますので!」

 

 ラドリーと呼ばれた蒼髪の少女は、先のハスキーと同じく竜が主人に仕えるべく召使へと変身したドラゴンメイドであった。

 しかし、頭頂部に生えた角は短く、大腿部付近から生えている尻尾もフワフワの毛に覆われており、荒事には向いて無さそうだった。

 

「うむ、愛い奴らよ。さて、愚か者共の末路でも見届けるとするか」

 

 金鏡には侵入者達の姿が映し出されていた。片や獣人を引き連れた色黒の少年。片や見たことも無い生物の背中に乗った少女と随伴する人形。

 特に、少年たちの方は白銀の迷宮城を攻略したらしい。とすれば、この少年達を落としてしまえば、自分はあの憎たらしい姫を上回ることになる。2人の少女を侍らせながら、エルドリッチは興奮を隠せずにいた。

 

~~

 

 話は少し遡る。白銀の城を拠点とし、生活に多少の安定感を見出したアル達は、エルドリッチ達が支配するという領域に向かう為のメンバーを選出していた。

 

「俺が行く。あの場所は……俺が元居たコミュニティがあった場所だ」

 

 真っ先に立候補したのはルガルだった。

 トライブリケードはシュライグの活躍ばかりが目立っているが、地上部においての切り込み隊長としての活躍は幹部として数えられるだけの物がある。

 

「……いいのか? あの場所は」

 

 と、シュライグが言い掛けて止めた。彼の視線が一度アルへと向けられた後、ルガルへと戻って来た。きっと、聞かれたくないことなのだろう。

 

「席を外そうか?」

「いや、良い。むしろ、聞いてくれ。……俺は同胞殺しとして追い出されたんだ」

 

 フェリジットがかつて姉妹で生きていく為に窃盗を働いた末に追い出されたというのは聞いていた。彼女が、かつてのコミュニティや仲間達を助けに行ったのは、窃盗を働いたことに対する贖罪のつもりでもあったのだろう。現に、解放したヤマネコの獣人達からは大いに歓迎されていた。

 だが、同胞殺しともなれば罪の重さが違う。ルガルと言う男は粗暴な面もあるが、理由も無く誰かを手に掛ける者ではないということ位、付き合いの短いアルにも分かっていた。

 

「何があった?」

「正直言うと。俺も何が起きたか分からない。……急に仲間達を殺し始めたんだ。何があったかなんて俺も分からない。訳の分からないことを叫んでいた」

「一体何を?」

「この世界は滅びる。その前に、終わらせてやる、と。明らかに正気じゃなかった。誰にも信じて貰えなかったが」

 

 ルガルが生きているということは何があったかは概ね想像が着いた。

 突如として仲間達を殺し始めた同胞を返り討ちにしたが、生きていたのは彼だけだった。とすれば、仲間はどう思うだろうか? 俺がやったんじゃない。と言っても、信じて貰えるだろうか?

 

「その。聞くのは心苦しいが、その友人は普段は普通だったのか?」

「俺よりも頭も回るし、リーダーとして期待されていたほどの男だった。本当に訳が分からなかった」

 

 彼の話が真実であるという証拠は何処にもない。だが、ここに居る者達はルガルの無罪を信じていた。

 

「正直、これだけホールとか色々とあると、何が起きてもおかしくはないと思える。だが、大抵の者は何が起きているかなんて分かる訳も無い」

 

 アルはドラグマと言うホールの研究に関しては最先端を行く場所にいるからこそ、今日に至るまでの出来事を呑み込むことが出来ていた。

 だが、外にいる獣人達にその様なことを理解しろと言うのも難しいだろうし、同胞殺しにしか見えなかったルガルがコミュニティを追い出されたのも、集団が生存する為にも必要なことだったのだろう。

 

「今更、誤解を解きたいなんて思わないし、元の場所に戻りたいとも思わない。俺にとってはここが一番だ。……でも、かつて一緒に過ごして来た奴らが居た場所は取り戻したい」

 

 戻れないにしても。かつて、自分が居た場所を蔑ろにしていい訳ではない。

 その上、ラビュリンスも知っている相手となれば、相当な力を持っているのだろう。是非とも手を結びたい相手ではある。

 

「だったら、ルガルは確定として。何かがあった時の為にもアルも一緒に。シュライグと私は残るとして。他には誰に行って貰おうかな」

 

 フェリジットが人選に悩んでいると、遠方から高笑いが聞こえて来た。どんどんと近付いて来るに連れて、声は大きくなって来る。ラビュリンスだった。

 

「貴方達、黄金卿の下へと向かうのですね。単刀直入に言います。私も連れて行きなさい」

 

 この場に居た者達が固まった。突っぱねたい所であるが、彼女の城を間借りしている手前、強気には出られない。皆が言い難そうにしているので、代表してアルが言った。

 

「大丈夫なのですか?」

「むしろ、貴方達だけに生かせる方が危険ですから。彼の領域は、初見殺しが多いですから。彼の手の内を知っている、私を連れて行った方がよろしくてよ?」

 

 単なる思い付きではなく、自分達のことを心配してくれた上での提案であるらしい。今から行く場所のことを少なからず知っている彼女が付いて来てくれるのは有難いのだが。

 

「城の方は。大丈夫なのか?」

「その為に、貴方達がいるのでしょう? 私が居ない間に乗っ取られたりでもしたら、承知しませんからね?」

 

 獣人達による警備もまた間借りする為の条件であった。とは言え、メンバーは決まった。多くなり過ぎても動きが鈍くなるだけだ。

 

「なら、メンバーはこの3人で決まりだね。姫サマ、念の為に聞くけれど。その黄金卿って言うのは、空にいる奴を落としたりとかは出来る?」

「私が知っている限りでは無理だと思います」

「なら、決まりだね」

 

 フェリジットが指を鳴らすと。上空から巨大な王神鳥シムルグが降りて来た。

 3人を乗せる程度なら容易であり、陸路を進むよりかは遥かに早く進める。荷物なども徹底的に減らせる。

 

「この城に拠点を構えたからこそ出来ることだな」

 

 シュライグが感慨深そうに述べた。特定の拠点を持たなかった時は、王神鳥は目立ち過ぎる為、少し離れて行動をしていたが、今は行動を共にできていた。

 アル達は短期間でのミッションになると考え、装備品はかなり軽量にまとまっていた。シムルグの背中へと飛び乗る。

 

「アァ”アアアア!」

「行先は俺が説明する。向かってくれ」

 

 ルガルの説明を受けながら、シムルグは曇天の空を進んで行く。

 今にも何かが這い出て来そうな不安を押し殺しているアルに対し、ラビュリンスは暢気にしていた。

 

「はー、一面クソ荒野」

「遊びでも旅行でもないということは分かって欲しい」

 

 自分と相対した時の凛々しく気品に溢れた彼女は何処に行ったのか。別ベクトルの不安もわきつつ、アル達は目的地に向かっていた。

 

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