特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第29幕:ユニゾンビ「なにも出来ねぇ!!!」

 エルドランド。魔石エリドリクシルに惹かれた者達を取り込み続けながら、成長する黄金の都には不死者(アンデッド)が溢れかえっていた。

 その多くは、魔石に呑み込まれた者達の成れの果てだが、彼らが織りなす死臭に惹かれた者達も少なくはない。

 

「来たぜ。ドゥ」

「今回のお客さんは随分と身軽らしいな。ジョン」

 

 先程まで、ご機嫌に歌を歌っていた二人三脚のゾンビ。他の物からはユニゾンビと呼ばれており、このエルドランドの番兵を任されている。

 彼らの背後には大量の黄金像が並べられているが、これらはエルドリッチから一部の権限を委譲された彼らの合図一つで兵隊となる。そして、また新たな手勢となって彼らの仲間に加わるのだ。

 客人達が姿を現した。1人は色黒の少年だった。もう1人は何かしらの生物の背に乗った少女であり、傍らにはメタリックな人形を連れている。最後の1人は白銀の雰囲気を纏った美女であったが、一歩引いた場所に居た。少年ことアルが声を上げた。

 

「お前達は?」

「ようこそ、エルドランドへ! 俺は門番のジョン。こっちのデブがドゥだ」

 

 緑色のガリガリの男は自らを指しながら言った。そして、ドゥは図体に相応しい程の大声量を持って命令を下した。

 

「侵入者を呑み込め! 盗人共(ワッケーロ)!」

 

 彼の合図と共に黄金像は動き出し、侵入者達を打ちのめさる……ハズだったが。黄金像達は微動だにしなかった。もしかしたら、何かの不具合だと思ってもう一度叫んだ。

 

「盗人共(ワッケーロ)! 奴らを仲間に加えてやれ!」

 

 ……だが、黄金像達は一つも動かなかった。そんな彼らの様子を見ながら、白銀の美女。ラビュリンスは高笑いをしていた。

 

「オーッホッホッホ!! 黄金卿もボケ倒したのでしょうか! 手勢とインテリの区別もつかなくなっているとは!! 2人共! やっておしまい!」

「俺達は貴方の手下ではないんだが……」

 

 アルが臨戦態勢に入った所で、いよいよユニゾンビ達は焦り始めていた。

 今まで、多数の侵入者達を迎撃して来たが、この様な事態は初めてだった。彼ら自身の戦闘能力はさっぱりだった。

 

「お、おい! ドゥ! どうするんだ!」

「チッ! こうなったら、俺達でぶっ殺してやるしかねぇ! 死ねぇ!!」

 

 三下フルコースのセリフを吐きながら、威勢よく二人三脚で突っ込んでいく姿はシュールでさえあったが、アルが出るまでも無くエクレシアが前へと出た。

 

「アル君。ちょっと、試したいことがあるから。良いですか?」

「何を?」

 

 エクレシアはパキケファロに提げていた荷物の中から大剣を取り出した。

 アルは似たものを見たことがある。フルルドリスと一緒に訓練をしていた際、彼女が使っていた神器と呼ばれる物と似ていた。

 

「ドラグマ……・パニッシュメント!」

 

 構えた大剣から放たれた雷がユニゾンビを焼いていた。

 それだけに留まらず、周囲の不浄の気までも焼き払おうと雷が唸り狂っていたが、不可思議な力場に遮られていた。

 

「驚いた。このフィールドまで焼き払おうとするだなんて」

 

 倒れたユニゾンビの直ぐ傍にある地面から出て来たのは、真っ白な女性だった。彼女は周囲を見て状況の異常さに気付いたらしい。

 

「コイツらが仕事をしくじるとは珍しい。エルドリッチもドーハも駆けつけていない。貴方達、何をしたの?」

「貴方達に勧告します。今直ぐ、この浸食を止めなさい。さもなければ、裁きが下ることでしょう」

 

 彼女の疑問に答えることは無く、エクレシアは一方的に言い放つばかりだった。

 目の前の女性も不利を悟ったのか、言い返すような真似もせずに一目散に逃げだした。……後には焼け焦げたユニゾンビが残されていた。

 

「こんなに趣味の悪い像を並べて、何がしたかったんでしょうか?」

「ふむ。コイツらは本来動き出すタイプの物なんだけれど、微動だにしなかったわね。故障かしら?」

 

 ラビュリンスが黄金像をガンガンと叩くが、特段変化は起きなかった。

 だが、アルは知っている。ドラグマには特定の者達の力を封じる存在があると。この黄金像達が動き出さなかったのも、それが原因だと。

 

「さっきの女の人は捕獲できませんでしたが、この顔色の悪い二人組は生きていますし、色々と聞き出してみましょう」

 

 インスペクト・ボーダーがユニゾンビを拘束させた後、電流を流して無理矢理に意識を覚醒させていた。

 

「は!? 何だ、こりゃ!? おい、ドゥ! 何が起きていやがる!」

「見りゃわかるだろ! 捕まったんだよ!」

 

 先程まで焼け焦げていたとは思えない程に元気だった。不死者(アンデッド)と言うのは、伊達ではないらしい。エクレシアが尋問しようとした所で、ラビュリンスが彼女を制して、前に出た。

 

「目を覚ましましたね。これから幾つか聞きたいことがありますが、よろしいでしょうか?」

「馬鹿め! 俺達の口をふさがなかったことを後悔するが良い!」

「さぁ、来たれ! 我が同胞達よ!」

 

 2人が口を揃えて叫び声を上げた。まるで、何処から同胞達を呼び寄せんとする不吉さを伴った物だったが、何も起きなかった。

 

「おい! デブ! なんで、誰も来ねぇんだよ! 馬頭鬼は何処だ! ブルームは! ドーハは!? バンシーの野郎! 本当に声掛けたのか!?」

「あのブス! 死んじまえ!!」

 

 聞くに堪えない低レベルな罵詈雑言が繰り広げられていたが、ラビュリンスは尋問の手を緩めたりはしなかった。

 

「そうです、貴方達は見捨てられたのです。私と黄金卿は知り合いですが、貴方達の話は聞きませんでしたからね。彼のことです。貴方達の様な存在は居ても居なくても変わりないと思っていたのでしょう」

「バカ言うんじゃねぇ! 俺達は、このエルドランドを守る門番なんだぞ!」

「その割には誰も助けに来てくれませんね? きっと、貴方達の無能ぶりに呆れてしまったのでしょう。彼が酷薄な男であることは、この場に並べられている黄金像達を見れば分かることですから」

 

 執拗に相手の精神を嬲る尋問を見て、アルがラビュリンスのサディストぶりに身震いしている中、彼女の後ろに控えていたエクレシアが前に出た。

 

「ラビュリンスさん。言い過ぎです。どんな相手にも敬意を持って接するべきです」

「敬意? 私は事実を述べたまでですが」

「でしたら、事実誤認があると言わざるを得ません。門番と言うのは、客人を最初にもてなす方達。つまり、主人の顔とも言える存在です。これらを任されているということは、彼らは信を勝ち得ている方達です」

 

 まるで、ユニゾンビ達の尊厳を庇う様にして弁護を始めた。

 これにはアルも彼女の優しさに感動するよりも先に疑問が湧いていたが、いつの間にか隣に移動して来たインスペクト・ボーダーに囁かれた。

 

「(黙ってみていましょう)」

 

 2人の口論を止めなくていいのかと考えたが、何かしらはあるのだろう。事実、ユニゾンビ達は戸惑っていた。精神を揺さぶられているのは間違いなかった。

 

「信を勝ち得た存在がこの程度ならば、黄金卿の耄碌ぶりが分かりますわね! どうせ、この都に漂う力に胡坐を搔いていたのでしょうね。これだから悠久の時に甘える不死者共は!」

「それだけ彼らが閉ざされた世界に身を置いてしまっているということです。悪しき敵として焼き払うのではなく、彼らもまた世界に目を向けるべきです。……だから、お二人共。悪しき行いを改めて、私達ドラグマと共に未来に目を向けてみませんか?」

 

 酷い茶番を見た。片方が相手の尊厳を否定する暴言を吐き、片方が弁護するふりして本題の要求を通そうとする。

 アルはこの手法を知っている。教団内でも行われている他種族に対する基本的交渉スタイルだ。コレを考えた奴はきっと哄笑している事だろう。

 

「いや、急にそんなことを言われても……」

「ほら、見なさいな! 何時まで経っても、こんな古ぼけた悪趣味な都に身を置く者達に意識の更新なんて無理に決まっていますわ」

「どうして、何時も否定から入るのですか! 相手を信じなければ何も始まりませんよ!!」

 

 ラビュリンスの口からは激流の如く痛罵が飛び出て、対するエクレシアの優しさもまた聖歌の様に心地良く吐き出されていた。

 傍から見れば、奇妙な演劇を見せられている様な気がしたが、果たしてこれで相手を翻意させられるかどうかは疑問だった。ただ、一つだけ分かることがある。

 

「ラビュリンスが楽しそうだ」

「えぇ。エクレシア様を気に入られている様ですね」

 

 演劇の様な物を見せられている気がしたが、2人共本心から言い合っているおかもしれない。そんな彼女達の遣り取りを間近で聞いているパキケファロは、黄金像を齧っていた。

 

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