特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第3幕:業火の結界像「悪いことはしていません。建っていただけです」

 ナーベルが放ったガジェットから送られてくる情報は手持ちの小型端末に表示されていた。丁度、鉄獣戦線の襲撃を危惧してか同胞達が収容されている施設の警備が増やされている様だった。

 非戦闘員である彼には突破をする為の術がない。そして、背後には自分を見逃さまいと追従して来る珍妙な生物ことパキケファロ。

 

「(ここまで来たのに)」

 

 何時、最大戦力がやって来るかも分からない。シュライグ達が来ていないことがバレたら、自分達は一網打尽にされてしまうだろう。

 どうにかして、目の前の施設に入り込むことが出来ればと歯噛みしていると、近付いて来る気配を感じた。見回りかと思い隠れると、やって来たのは騎士では無かった。

 赤黒い豪奢な衣装をまとった赤髪の少年。仮面に覆われた表情は読めないにしても、こんな場所には相応しくない存在だった。何者であるかということはさておき、見つからない様に息を殺して、様子を伺う。

 

「ナーベル。そこにいるのは分かっている。手を焼いているんだよね?」

 

 ナーベルに緊張が走る。声色は少年の物だったが、自分は彼のことなど知らない。面識もない筈だというのに、どうして自分の名前を知っているのだろうか。

 探りを入れているだけかもしれない。と、彼は潜伏を続けるが少年は一切迷うことなく、自分の所へとやって来た。懐から短剣を取り出し、突き付ける。

 

「君は誰だ?」

「そんなことはどうでも良い。ちょっと、僕としても困っているんだ。この筋書きはあり得ない。起きるべき出会いが捻じ曲げられている。本当はこんな早期に出てくるつもりは無かったんだけれどさ」

 

 何を言っているか全く分からないが、少なくとも自分を捕まえようとする手合いではないらしい。パキケファロも興味を示したのか少年を嗅いだりしていたが、突如として少年に顔面を殴られた。パキケファロは何が起きたか分からないまま崩れ落ち、目を回していた。

 

「ちょ。酷いよ!」

「こうしないと事態が進まないんだ。仲間達を解放したいんだろう? 僕に力を貸してくれ」

 

 気絶したパキケファロを隅に寄せた後、ナーベルは渋々彼に従った。

 自分と大して変わりないと考えていたが、直ぐに見当違いであったことを知る。彼は収容所に突撃すると、次々と騎士達を殴り倒していた。

 

「な、なんだお前!?」

「アディンが居たら不味かったけれど、問題無さそうだ」

 

 ナーベルは、彼の腕が人間の物から鱗を纏った異形の物へと変貌していることに気が付いた。

 

「君は……もしかして、竜人?」

「霊峰にいる彼らとは違うかな。お、あった」

 

 迷いなく進んでいく彼について行った先には多数の像が並んでいた。

 ある像は腕組みをした真っ赤な男の物であり、ある像は杖を掲げた青い両生類の像であり、ある像は鳥獣を象った緑の像であった。他にも多数の像が並んでいる。

 何かしらのモチーフを持って作られた物であるのだろうが、人間を史上としている教導国家が、この様な他種族を象った像を所有していることは意外だった。

 

「ねぇ、これは一体?」

「結界像。特定の者達の力を封じる力がある。覚えがあるだろう?」

 

 直ぐに思い当たった。まさか、シュライグ達が突如として力を失ったのにはコレらが関係していると言うのか。

 少年は迷うことなく結界像の破壊を始めた。次々と像が破壊されて行く光景に爽快感すら覚えていると、不意に彼の体が吹き飛んだ。何が起きたのか分からず、ゆっくりと振り向くと。そこには法衣を纏った大男が1人。

 

「う、嘘。でしょ?」

「ほぅ、そんな顔をしていたんですか」

 

 先の一撃で少年が被っていた仮面が割れて落ちた。中から現れたのは端正な顔立ちだった。そして、何処か既視感を覚える造詣をしていた。

 だが、誰かを思い出す余裕は無かった。何故なら、そこに居た大男は鉄獣戦線、いや。異種族全てにとっての怨敵。教導国家ドラグマの支配者『大神祇官(マクシムス・ドラグマ)』であったからだ。

 ナーベルには目もくれず、今しがた攻撃した少年の方へと詰め寄る。彼も負けじと攻撃を仕掛けるが、全て防がれていた。

 

「なるほど。僕をおびき寄せるトラップだった。ってこと?」

「そう言うことです。不穏分子は早めに排除するに限ります。過ちは二度と起こさぬ様に」

 

 ナーベルは室内の映像を記憶して、部屋から出た。背後で交戦音が聞こえる中、記憶の中に在る映像を引っ張り出す。

 

「(確か。結構な像が残っていた。赤いのと水色のをどんどん破壊して、緑色のだけが残っていた気がする)」

 

 収容所は騒がしくなり始めていた。ナーゲルは次々とガジェットを解き放ち、施設内の構造や状況を一斉に把握し始めた。そして、早急に向かう場所を選択して、全速力で駆けた。向かった先は捕縛された者の処置を決める場所だった。

 

~~

 

 教導騎士団と獣人達の喧嘩が大体互角位で進んでいると、射手としての素養を持ち合わせているフラクトールは空気の変化を感じていた。

 何かがこちらに迫って来る。高速でなおかつ質量は人間ほど。本能が全力で警鐘を鳴らしていた。

 

「動ける者は直ぐに味方を抱えて、撤退を!!」

 

 フラクトール以外の獣人達も感じていたのか、皆が急いで撤退の準備をしていく。騎士団の者達は薄々感じており、特に繋がりが強かったのかエクレシアが声を上げた。

 

「フルルドリス姉さまが来ます!」

「お姉さま?」

「クソッたれ!!」

 

 ケラスが少年から手を引いた。間もなくして、1人の人間が現れた。

 獣人達よりは遥かに小柄であるが、それは内面に満ちる力を凝縮した故だと感じられた。

 

「誰一人として逃がさん」

「脅威度、最大と認定」

 

 先程からテオとフラクトールを相手取っていたインスペクトボーダーが彼女に襲い掛かる。スタンバトンを展開し、一切無駄のない動作で襲い掛かったが一瞬で返り討ちに遭って、地に伏せていた。

 迎撃に当たる一瞬を見計らい、フラクトールは巨大なクロスボウの引き金を引いた。だが、フルルドリスが手にしていた盾で易々と防がれていた。

 

「フラクトールか。シュライグの奴が貴様らだけを先行させるとは思い難いな」

「フルルドリス。貴方こそ随分と遅い登場でしたね。それに調子が悪そうに見えます。何かありましたか?」

 

 極力平静を装っていたが、フラクトールの心臓は早鐘を打っていた。

 聖女フルルドリス。教導騎士団最強の戦力であり、鉄獣戦線の怨敵。彼女と渡り合えるのは、リーダーのシュライグ位だろう。

 

「貴様らに話すことなど無い」

 

 彼の手にしていたクロスボウが可変し、展開した銃剣で刺突を放つ。

 しかし、フルルドリスを捉えるには至らない。頭部、上半身、下腹部を同時に打ち据えられ、堪らず崩れ落ちた。加減までされていたのか、尋常ではない程の痛みが走りつつも意識まで失わずにいた。

 教導騎士団の士気は大いに上がり、逃げ惑う鉄中戦線の者達を捕縛せんと迫る。もはや、彼らの命運もこれまでかと思われた。

 

「ギェエエエエエエエエ!!!」

 

 雄叫びが響く。影が覆ったかと思えば、頭上には巨大な翡翠色の体毛を持つ巨鳥が出現していた。

 

「あ! 私が捕まえた鳥が!!」

 

 エクレシアが叫んだ。そう、この巨鳥――王神鳥シムルグはエクレシアが捕縛した、この世界に非ざる者だった。

 あの時は、ホールに挟まった所を好き勝手に殴られたが、全身が使えるのならまるで話が違う。あの時の恨みを晴らす様に、二対の巨大な翼を羽撃かせた。豪風が吹き荒び、騎士団の者達が吹っ飛ばされた。

 

「危ない!!」

「うわっ」

 

 エクレシアは少年へと覆い被さった。彼女が背負っていた大盾により傷付くことは無かったが、起き上がることが出来ない。

 

「フラクトールさん! ケラスさん! 皆! 彼の上に乗って!」

「その声、ナーベルか!? 大した奴を見つけて来たな! おい! フラクトールを運べ!!」

 

 ケラスや仲間を背負った獣人達が次々とシムルグへと乗り込んでいく。この中で唯一動けたのはフルルドリスだけであったが、彼女は舞い上がったテオを含めた騎士団の者達を回収して、安全な所へと避難させていた。

 

「フルルドリス様! 私達のことなどは構いませんから!」

「お前達を犠牲にしてまで叩き潰す程の相手ではない」

 

 聖女の慈愛に感銘を受けながらも。邪教徒達に逃げられることに歯噛みしながら見逃す他なかった。豪風が収まった後には、獣人達の姿は無かった。

 

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