特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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アリアス「ただし、EM五虹の魔術師は規制されます」


第31幕:白銀の城の執事アリアス 「ついにMDでも実装されましたよ」

 パルラを呑み込み、特異な竜へと変化したアル達は黄金卿の館を進んでいた。室内にも大量の黄金像は設置されていたが、いずれも動き出すことは無かった。

 

「なんで動き出さないの? アンタ達、何したの?」

「特に何もしてはいない」

 

 竜化したアルの口からは同口異音とでも形容する様子が繰り広げられており、同化したパルラも困惑するばかりだった。

 突如として取り込まれ、館内に設置された侵入者達を阻む罠達は何一つとして機能しない。その上、何故かメイド長と同じ威容をした竜がいる。

 

「騎士様に攻略されていた時は『おどりゃ、人の苦労を!』と思っていましたが、いざ自分がやる立場になってみれば、爽快と言う外ありませんわ!!」

 

 相手の意匠を踏み砕くというRTAめいたハックにラビュリンスは興奮していた。

 やられた時は堪ったモンじゃないが、やる側になった時は楽しいというのは何処の世界でも共通の認識であるらしい。

 

「本当に何が起きているんだ? ストライキか?」

「焦るなって。黄金卿の方でも対処してくれるはずさ。つーか、アンデッドでも走りつかれて来たよ」

 

 館内を駆け巡る彼らに合わせて、捕虜であるユニゾンビも同じ様に走らされていたが、欠損した足で走るのは多少しんどかったのでペースを落として欲しくはあったが、陳情できるような雰囲気でもない。故に、彼らは自分達の主人の対応に期待する外なかった。

 

~~

 

 アル達が敷地に入って来たからの出来事は全て観測されている。特に、館に入って来た時からの出来事に関しては、ハスキーは注意深く観察していた。

 

「ハスキー。あの小僧が変身した姿は?」

「私の竜化形態と同様の物ですね。パルラが囚われたことも気になります。そして、誰が封殺能力の持ち主であるかも」

 

 ラビュリンスやユニゾンビは違うだろう。アルと言う少年の能力も他者と共生融合する物であると睨んでいた。やはり怪しいのは聖女と呼ばれる者達の誰かである。

 

「封殺能力に頼っただけの連中ならば、我が直々に食らってやるばかりだが。あの竜化形態を相手するのは骨だ。ハスキー」

「承知しました。応対してまいります。ラドリーの方に業務を引き継がせますので」

 

 黄金像達も使えないとなれば、もはや迎撃を任せられるのは彼女達位だった。ハスキーは静かに部屋を出た。

 だが、それでさえ失敗する可能性は高いと踏んでいたが、黄金卿は焦る様子も見当たらない。

 

「下らん世界だと思っていたが、少しは面白い者達もいるようだ」

「ご主人様! 呼びましたか!」

 

 ハスキーから業務を引き継いだラドリーが屋敷わらしを伴って現れた。先程まで共に遊んでいたのか、2人の手にはトランプが握られていた。

 

「ウム。万が一もある、お前達も何が起きているかを知っておけ」

「分かりました!」

 

 不死者(アンデッド)が住まう館には相応しくない程に溌溂とした返事をすると。一旦、手札を置いた。優先する業務を切り替えたらしい。そんな彼女に対し、わらしがボソッと呟いた。

 

「さっき、革命返ししたのに……」

 

~~

 

「よし、アル。この館は拠点にする訳でもありませんし、このまま直進する為に壁を破壊しながら進むことにしましょう」

「イカれてんのか!!」

 

 ラビュリンスの発言にパルラが声を上げた。先程から館内を駆けずり回っているが、奥へと進んでいる感覚が湧かないことから痺れを切らしたらしい。

 

「ラビュリンスさん。流石に人の家に上がり込んで、破壊工作はやり過ぎです。どんな相手に対しても礼儀はあります」

 

 この期に及んで礼節を欠かないエクレシアの態度は尊敬に値する物であったが、アルとしてはラビュリンスの意見も採用したくなるところだった。

 何せ、この館はだだっ広い。闇雲に進めばロクでもない罠に遭遇するばかりであるし、ならば折角得た力を使って強行突破を試みた方が良いのではないか? と言う短絡的な思考も沸き上がって来る所だった。

 

「先程から、私も構造物をスキャンしたりはしているのですが」

 

 インスペクト・ボーダーもスキャン機能を使って周囲を探索したりしているが、出来る範囲は限られている。

 このまま遅々として探索が進まなければ、自分達は消耗していくばかりだ。疲れを知らない不死者(アンデッド)達からすれば、待てば待つほど有利になって行く。

 

「ラビュリンスの言う通りかもしれない。何処にあるか分からない罠に怯えるより、この力で突破していった方が、結果的に損耗も少なくて済む」

「ちょっとま」

 

 竜化状態のアルが助走を付けて突撃する。周囲に破片をばら撒きながら、壁には穴が空いた。

 

「アル君!?」

「これなら最短経路で進める」

 

 エクレシアが戸惑う中、アルは次々と壁をぶち破って行く。

 普段の彼ならば考えられない位に暴力的な方法だったが、力を手にして酔いしれている部分もあったかもしれない。

 

「止めろ! この館をアリ塚にでもする気か!」

 

 堪らずパルラが声を上げた。だが、一度勢いが付いた物は簡単に止まらない。彼が空けた穴を通って皆と一緒に進んでいくと、広い空間に出た。

 迷宮上でも見覚えのある造りであり、こういった場所には誰かしらが待ち構えているのが常であった。

 

「随分と野蛮な方法でやって来たのね。本当にハスキーさんと同じ姿をしているのね」

 

 アル達を出迎えたのは、腰元まで届く赤髪ロングに翡翠色の角を持つドラゴンメイドだった。彼女から漂う甘い匂いから、パティシエの類であるという想像は着いた。

 

「あ! ティルル! 気を付けて! コイツらマジで蛮族だから!」

「知っている。だから、少しお見送りとお片付けをさせて貰うから」

「キャッ!?」

 

 瞬間。パキケファロの体が吹っ飛び、エクレシアが振り落とされた。

 部屋から叩き出された彼が何処まで吹っ飛ばされたかは分からないまま、ティルルが叫んだ。

 

「チェイム!!」

 

 パキケファロがお片付けされる様子を見送った後、彼女の背後に控えていた扉が開いた。すると、真っ黒なドレスを身にまとったドラゴンメイドが現れた。

 

「行けるわ。お召し変えの時間よ」

 

 ティルルの肉体が竜化していく傍ら、チェイムは手招きをしていた。すると、3人目となるドラゴンメイド、ハスキーが現れた。

 

「やはりでしたか。あの、移動用の足こそが封殺能力の持ち主だったんですね」

 

 エクレシアは無言で月鏡の盾とレプリカの神器を構え、インスペクト・ボーダーも臨戦態勢を取ったが、この場においては心許なく見えた。

 パキケファロが追い出されて調子を取り戻したのか。ラビュリンスもまた銀の戦斧を構えて尋ねた。

 

「あら、どうしてそう思ったのですか?」

「移動用の足なんて潰されて困る物をここまで持って来る不自然さが引っ掛かりまして。見た所、戦闘に関して活躍していた訳でもない。とすれば、別の目的があると睨んでのことでしたが、正解だったようですね」

 

 考えてみれば、パキケファロがここまで来ている時点で不自然だった。

 移動用の足として活躍している彼が戦闘に巻き込まれて負傷した場合は、エクレシアも帰還が困難になる。普通、こういった存在は戦闘から遠ざける物だというのに、ここまで共にする。ということは事情があると推測されるのも無理からぬことだった。エクレシアがハスキーに問う。

 

「聞いて良いですか? どうして、貴方達は黄金卿に従っているのですか? 彼が何をしているのかご存じで?」

「はい。ですが、これがご主人様の望みであるならば意に沿うまで」

 

 ここに至るまでに見て来た黄金像やルガルの故郷を浸食したことも含めて、止めるつもりが無いというなら、アル達もまた戦わないという選択は無かった。両者に一触即発の空気が漂う。

 

~~

 

 郊外で待機していたルガルとシムルグはこちらに向かって何かが飛んで来るのが見えた。咄嗟のことなので避けてしまい、地面に数度バウンドして目を回して気絶しているのが見えた。聖女が乗っていた謎の生物ことパキケファロだった。

 

「何が起きていやがる?」

 

 ふと、ルガルは自分の体が軽くなっていることに気付いた。平生と同じ様に動ける状態であり、諦めていた戦線への参加が期待できる状態にあった。

 

「ゲェエエエエエ!!」

「俺も行く!」

 

 王神鳥シムルグも同様だったらしく翼を広げていた。ルガルは彼の背中に乗り込み、共にエルドランドへと乗り込もうとしていた。

 

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