特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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 お久しぶりです。色々あって10日程開けていました。
 その間に、何とかアートワークスを手に入れることが出来ました。ラビュリンス城の全容を見て、もっと書いておけばよかったと後悔しています。


第32幕:チェイテ「私の竜化形態は?」

「いや、よく思ったら。何処から突っ込めばいいか分からねぇから。お前は表で待機していてくれ。何かあったら呼ぶ」

「キュウ」

 

 王神鳥シムルグと共に城へと突撃しようとしたが、万が一の事態を警戒して表で待機させた。彼の背中から降りたルガルは、かつての故郷に足を踏み入れていた。

 彼を迎えたのは同胞達では無く、黄金像の群れだった。手にした刀剣で襲い掛かって来るが、瞬く間に破壊されていた。

 

「これだよ! 銀弾のルガルはこうでねぇと!」

 

 先程までの虚脱が嘘のように四肢に力が漲っていた。手にした銃剣を縦横無尽に振り回し、相手が振り回す武器ごと叩き割って行く。周囲に黄金の残骸が散らばるが、攻撃の手が緩まることがない。

 彼らは生物では無いので、死に対する恐れが無い。どれだけルガルが相手を蹴散らそうとも、絶えず襲い掛かって来られては体力が尽きるのは目に見えていた。となれば、判断は一つ。

 

「あばよ!!」

 

 彼は巨体に似合わぬ俊敏さで近くの樹に昇ると、また別の樹へと飛び移って行く。目指すは奥部に構えている城だ。きっと、アル達も向かったに違いない。

 地上で呆然としている黄金像達を置き去りにして、目標へと近付いていると。彼の目の前に白い女性の人影が立ちはだかった。アル達にスルーされたバンシーだった。

 

「行かせない」

「どけ!!」

 

 ルガルが銃剣で叩き潰そうとした所で、彼女は胸元に何かを掲げた。

 赤い花を咲かせた黒い球根の様にも見えたがサイズは異様に大きく、不気味なこと球根部には眼球が生えていた。

 もしも、コレを盾にしようとしているなら一緒に叩き潰してしまえば良いと思ったが、獣人特有の生存本能が激しく警鐘を鳴らしていた。

 

「(ヤバイ!)」

 

 大体、こういった時の勘にルガルは従っていた。途中で振り下ろすのを止めて、彼女達を無視して先に進んで行くが、後ろから追いかけて来る。

 

「勘の良い奴ね。でも、もう関係ないから。ブルーム。お願い」

 

 2体の姿が融けて行く。黄金に彩られた故郷が、不気味に鳴いた気がした。

 地面が震え、隆起する。先程とは比べ物にならない勢いで警鐘がガンガン鳴っている。黄金像達を跳ね上げ、地面を捲って巨体が姿を現した。

 

「遅いぞ!! サッカー! 何時まで待たせるつもりだ!!」

「キャハハ! ゴメン!! 本当はもっと早くドーハのことを呼ぶつもりだったんだけれどさ!」

 

 先程まで、バンシーだった存在は変容していた。赤みを帯びた肌に真っ赤な目。口内からチラリと見える獰猛な犬歯、背中に生えた羽毛に覆われた翼を突き破って、露出している骨格がグロテスクだった。

 ルガルも直感で理解していた。ドーハと呼ばれる怪物に自分は勝てない。周囲には変わらず、蠢く黄金像達。逃げ道すら封じられた。

 

「(進退。窮まったか)」

 

 大人しく待っていればよかったのか。いや、ここで戦う気概を見せねば自分は挫けたままだ。逃げ出そうとした自身の心に活を入れた直後、背後から雄叫びが響いた。木々を揺らして、現れたのは待機していたハズの王神鳥シムルグだった。ルガルは叫んだ。

 

「頼んだ!!」

「ギェエエエエ!」

「鳥如きが! 我を阻むな!!」

 

 ドーハスーラが掲げた杖から大量の怨念が吐き出され、シムルグの全身を絡め取る。彼の勇気を無駄にしない為にも、ルガルは駆ける。

 

~~

 

 黄金城の大広間では、アルとハスキーによる空中戦が繰り広げられていた。

 これはアルにとっても初めてのことだった。今まで、竜化したことは多数あれど、同種との対決は行ったことが無い。姿形、恐らくは筋力なども含めて同様だとすれば、経験がものを言う。

 

「同胞との戦いは初めてですか?」

「クソッ!!」

「目の前のことだけでなく、もっと周りを見なさい!!」

 

 アルが力任せに爪を振るうが、竜化したハスキーことシュトラールには全く当たらない。

 それ所か、回避と同時に放たれる尻尾での一撃が顔面へと命中し、的確に視界と思考を奪いながら、反撃を加えて来る。

 

「ハスキーさん! 痛いです! 痛い!! 手加減!!」

「パルラ。これは侵入者の迎撃も兼ねた、貴方への折檻でもあります。先日、ご主人様に出すケーキをつまみ食いしていましたね」

「いや、アレはティルルや皆の腕が鈍っていないかを確認する為であり」

 

 減らず口とはまさにこの事である。あまりに圧倒的な差を見せられ、折れかけているアルとは裏腹に、パルラの舌はよく回った。

 一方、竜化したティルルは劣勢を強いられていた。封殺能力を持っていた存在を追い出したハズだというのに、聖女が異常に強い。

 

「(どうして、人間の膂力で私の攻撃が!!)」

 

 竜化したティルルことフランメの攻撃は相当に重い。現在の主人である黄金卿ですら受け止められない一撃だというのに、エクレシアは受け止めていた。

 彼女が掲げている月鏡の盾が、フランメの一撃に応じて強度を変え、使用者にまで負担が行かないように威力を分散して周囲に受け流していた。状況に応じて最適な機能を発揮する武具には一種の美しささえ感じていた。

 

「今度はこっちの番!!」

 

 もはや、槌は不要と言わんばかりに投げ出し、エクレシアはシールドバッシュを放って来た。フランメの瞳孔が引き絞られ、強化された感覚が周囲をスローモーションにしてみせた。

 彼女が手にしていた盾が変形し、先端部分にスパイクが形成されていた。咄嗟に翼と両腕をクロスさせて、防御の構えを取った瞬間。更に盾は変形して両サイドにブースターの様な物が形成されていた。

 

「嘘……」

 

 金色の粒子を放ちながら、速度を上げた突撃は両翼を貫き、両腕を跳ね上げ、がら空きになった胴体に向けて、加速を乗せたエクレシアの蹴りが突き刺さっていた。鱗と筋肉に覆われた天然の鎧を貫いて、臓器が揺さぶられる。

 たった、一撃で想像以上のダメージが入り、フランメは地に落ちると同時にティルルへと戻っていた。すると、直ぐにエクレシアは上方を確認した。

 

「アル君! これを受け取って!!」

 

 先程まで使っていた月鏡の盾をアルに向って投擲した。竜化した手で取るには小さい気もしたが、彼が手に取ろうとした瞬間。シュトラールは裂帛の気迫と共に肉薄して来た。

 

「ここで落とさせて貰います」

 

 彼女的にも、月鏡の盾と言うアーティファクトが状況を一転させかねない代物だということを理解していたのだろう。月鏡の盾を取ろうとしたアルの腕を掴み取り、握撃とでも言わんばかりの力を込めた。

 

「うっ!?」

 

 爪が肉体を突き破り、血を流す程の一撃を前にしてはアルも掴み取ることが出来ない。しかし、この戦いでシュトラールの動きを見続けた彼は一つの仕草を覚えていた。垂れていた尻尾が跳ね、月鏡の盾を彼の元まで打ち上げていた。

 腕が使えないなら、空いていた口で盾を銜えた。いかなる形でも、手にした物に力を宿さんとする光が輝き、シュトラールの拘束を剥がさんとした時。彼女の体もまた眩い光に積まれていた。

 

「させるかァ!」

「盾が!!」

 

 放たれた光の余波が月鏡の盾を割った。しかし、この一撃で相当にエネルギーを費やしたのか、彼女の竜化は解けて人間体へと戻っていた。

 

「勝負ありましたね」

 

 傍観していたラビュリンスが淡々と告げた。幾ら経験の差があろうと、元のスペックが違えば覆すのは困難と考えてのことだ。幾らハスキーとは言え、シュトラール形態のアルには勝てないだろう。

 

「最後まで果たしてこそ」

 

 だが、彼女は諦めていなかった。自暴自棄でも無ければ玉砕覚悟でもない。人間形態のまま竜化したアルから勝利をもぎ取ろうとしていた。

 降伏勧告が通じる相手ではない。この戦いを通して、アルの動きも変わっていた。力任せに攻撃するのではなく、全身を武器にする心構えを持って対峙する。

 翼は空を飛ぶ為だけの物ではなく、相手を打ち据える巨大な掌として。尻尾もまた鞭のように使っていた。

 

「中々筋が良いですね」

「全部、貴方に教えて貰ったことだ」

 

 同じシュトラール形態なら相手に上回られていたのだろう。

 しかし、彼女は人間体のまま羽の一撃を潜り抜け、尻尾の一撃も耐えた。それ所か、尾を伝ってアルの体を這って来た。

 以前までの彼ならば振り落とそうと身じろいでいただろう。だが、この戦いで得た観察眼を用いて、部屋の隅まで移動すると彼女を壁に押し付けた。

 そして、そのままハスキーをすり下ろすようにして壁際を爆走した。壁とアルの間に挟まれて、彼女の体がガリガリと削られて行く。

 

「くたばって堪るかァ!!」

 

 げに恐ろし気は忠義か闘争心か。彼女はこの状況に及んでもアルの体を這おうとしていた。

 しかし、限界はあった。部屋を一周した所で体力が尽きたのか、ハスキーは地に落ちた。衣服も削り取られて、メイド長にあるまじき姿となっていた。

 

「ティルル! ハスキーさん!」

 

 戦いが収まったのを見計らってか、今まで隠れていたチェイテが2人に駆け寄った。そんな彼女にインスペクト・ボーダーが拘束用のワイヤーを巻き付けていた。

 

「動かないで下さい。貴方達を含めて拘束させて頂きます。その後は、治療させて頂きますので。どうかご安心を」

「……分かった」

 

 チェイテは下唇を噛み締めながら、インスペクト・ボーダーからの脅迫にも近い提案を受けいれた。

 

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