特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

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第33幕:ワッケーロ「いや~。やっと、出番っす」

 インスペクト・ボーダーの電磁ワイヤーで拘束されたハスキー達は抵抗の素振りを見せなかった。アレほど激しい戦いを繰り広げていたというのに、身体に負ったダメージは既に治り掛けていた。

 しかし、散々壁に擦り付けられた為、ハスキーのメイド服は焼け焦げてボロボロになっていた。アルはそっと目を逸らしていた。シュトラール形態となったアルの中にいるパルラは、そんな彼を許さない。

 

「やーい。変態! ハスキーさんの服を破った痴漢!」

「言わないでくれ」

「パルラ。全力で相対した相手を貶す物ではありません。私の体が気になるなら、これで良いでしょう」

 

 半裸の体が鱗に覆われて行く。ボディラインを浮かび上がらせるようにピッチリと張り付いていることだけは気になったが、大事な物が見えないなら。と、アルも納得した。

 

「さて、主様の下へと案内して貰いましょうか」

 

 特に何もしていなかったラビュリンスがこれでもかと言う位に図々し態度を取っていた。これには、既に捕虜となっていたユニゾンビもケチを付けていた。

 

「いや、アンタ。何もしてなくない?」

「そうだよ。まだ、そっちにいるインスペクト・ボーダーの方が役に立っているぞ」

「お黙り! 私は彼らを取りまとめる司令官なのです!」

 

 声だけは異様に迫力があるので、ユニゾンビも黙るしかなかった。

 だが、ドラゴンメイド達が要求を呑むかどうかはまた別だった。そもそも、主を危険に陥れる様な真似を彼女達がするとは思えない。エクレシアが歩み寄る。

 

「ハスキーさんでしたか? お願いです。貴方達の主人の下に案内してください」

「会って何をするんですか?」

「この浸食を止めたいんです。ここにあった森と住んでいた人達を助ける為にも」

 

 例え、封殺能力が無くとも。彼女が持っている優しさと真摯さが陰ったりすることは無い。改めて、彼女の凛然とした様子にアルは見惚れていた。

 そんなエクレシアの決意が伝わったのか。あるいは最初からそうするつもりだったのか、ハスキーは静かに頷いた。

 

「案内も何も。後は、この先を進めば良いだけですよ。私達はお越しになられたお客様が、主人に見合う相手に相応しいかを見極めていただけですから」

「前哨戦ですね。念の為に貴方達の力を更に奪わせて頂きます」

 

 ラビュリンスがハスキーとティルルに触れる。すると、彼女達は崩れ落ちた。全身から力が抜けたように転がっていた。唯一無事なチェイテが声を上げた。

 

「ティルル!? ハスキーさん!?」

「彼女達の力を吸収させて頂きました。私が全力を出すには2人分のエネルギーが必要だったので。アル、エクレシア、ボーダー。行きましょう」

「俺達は?」

「お役御免です。何処なりと行きなさい」

 

 目的の場所まで辿り着いたので、ユニゾンビ達は役目を終えて晴れて自由の身になった訳だが、今更戻る気にはなれなかった。かと言って、奥に進めば主人への謀反ともなりかねないので、彼らは膝を崩した。

 

「じゃあ、俺達はここで待つことにするよ。どっちが帰って来るか」

「待っているとするかな」

 

 流石に最前線で観戦する気はないようだが、結末は一早く知りたいらしい。

 ラビュリンスを先頭にした4人は奥へと進んで行く。進めば、進むほど。この領域を支配する主人の威容を示すように豪奢に華美に飾り立てられていく。

 

「何処から、こんな黄金が湧き出ているんでしょうか?」

「この大陸でも。やはり、黄金は希少ですか?」

「はい。そう聞いています」

 

 エクレシアが知る限り、金は非常に希少な物質だった。加工のし易さなどから儀礼品や高級品などに使われているとは聞いている。生活必需品と言う訳ではなく、関わりの無い者にはとことん縁がない物である。

 

「だが、こうも多量に使われているのは趣味が良くないな」

 

 先程までは急いていたこともあって周囲をあまり見ていなかったが、改めて見渡してみると、品が無いとすら感じられた。ラビュリンスが鼻を鳴らした。

 

「やはり、趣味が悪いと言わざるを得ませんね。アル! 私の城の方とどちらが美しいですか!」

「それは、貴方だが……」

 

 以前にも似たような問いかけをされたことがある気がしたが、指摘はしなかった。彼の回答に甚く満足したのか、ラビュリンスは高笑いを上げていた。

 

「メイドを雇ったので少しは見られることも意識したのかと思いましたが、やはり悪趣味は悪趣味のまま! 対面したら、なんて罵ってやりましょうか!」

「品性を疑う」

 

 竜化したアルの口からパルラの声が出た。実際、アルとしても同じ感慨を抱いていたが、余計なことを言わないようにした。

 

「駄目ですよ。ラビュリンスさん。痛罵を吐く者は、相応に自らの魂も穢して行くんです。悪口は慎むべきです!」

「私は悪魔なんで関係ありませんわ!」

 

 子供か。と言い掛けたが、通路にも終わりが見えた。この先に、エルドランドの主がいるのかと思うと緊張が走る。ゆっくりと扉が開かれた。

 

「よくぞ参った。ここまで来た者は久しぶりだ。白銀の小娘と見ない顔共だ」

 

 玉座に座っている男は鎧を纏っている様に見えた。金属としては柔らかい黄金製の防具は実用性に乏しく、観賞用の品でしかない。だが、実際に装着している者がいる。

 彼の背後には異様な黄金像があった。巨大な巻き角を生やした悪魔としか形容することが出来ない異形が苦悶の表情を浮かべて、両手を掲げていた。まるで、何かを奪われている様な仕草だった。

 

「エルドリッチ。この世界でも貴方と会う羽目になるとは思っていませんでした。今日こそ、決着を付けさせて貰いましょうか――エクレシア! 早く、大剣を起動させなさい! ついでにアイツの後ろにある像の破壊を!」

「させぬわ!!」

 

 エクレシアの反応は非常に早かった。ラビュリンスに言われた通り、大剣を掲げてエルドリッチと彼の背後にある像に狙いを定めた瞬間に、黄金の鎧が崩れ落ちたのだ。すると、神器のレプリカが砕け散った。

 

「嘘?!」

 

 黄金の鎧の中に人は入っていなかった。すると、中から真っ赤な石が浮かび上がった。同時に背後にあった苦悶の表情を浮かべていた像が鳴いた。

 

『アァアァアアア!!』

 

 全身から何かが抜け落ちて行く感覚。アル達はこれに近しい物を知っている。

インスペクト・ボーダーが周囲を制圧する際に使う能力と似ている。

 各々が持っている特技が発動できなくなる。感じはないが、撃ったところで霧散しそうな気がした。

 

「ラビュリンス。これは?」

「スキルドレイン。奴の得意技です!」

「こちらは特に戦闘に支障はありません!」

 

 アルもエクレシアも戦闘においては不便になることは無いが、インスペクト・ボーダーは明らかに影響を受けていた。

 

「不味いですね。制圧用の電磁波が使えません。相手に効果の発揮を許してしまいます! 警戒を!」

 

 あの黄金の鎧から現れた石を砕こうとシュトラールが駆けるよりも早く、石は部屋内にあった黄金像に憑り着いた。すると、黄金像は形を変えていき、先程。エルドリッチと呼ばれていた男の姿になっていた。

 ただ、復活しただけではない。黄金像を自分の形へと作り替える際に吸収した乏しき怨念などの類を受けて、彼の力は強化されていた。

 

「我は黄金卿エルドリッチ! 精々抗え! 土人共!!」

 

 彼の拳がラビュリンスへと突き刺さろうとした瞬間、アルが代わりに爪を振るっていた。エルドリッチの体を引き裂いたが、中の石は無事だった。

 一方、強化されたエルドリッチの一撃を受けた衝撃で、アルは元の体に戻っていた。同時に吸収されていたパルラも放り出されていた。

 

「痛っ。あ、出られた! って、ちょっと待って!? 私は巻き込まないで!?」

 

 復活したエルドリッチに呼応するように周囲の黄金像達も動き出した。

 本来は表でこの様な歓迎を受けるはずだったのだろうが、パキケファロのお陰で難を逃れていたらしい。

 アル達はこれらに対応していたが、こんなタイミングで解放されると思っていなかったパルラは逃げ惑っていた。加えて、先程の部屋に戻れないように入り口には鍵がかかっていた。

 

「ご主人! 私は無実です! 助けて!」

「貴様も我に仕える身だろう。生き延びてみせよ!!」

「逃れられない!!」

 

 スキルドレイン化では彼女も竜化が使えないらしく、逃げ惑う外なかった。

 無尽蔵とも言える戦力による圧殺。タクティカルも何もないが、底なしの欲望を持つ男が蓄えて来た物による濁流の如き戦い方は、アル達を呑み込もうとしていた。

 

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