特殊召喚がメタられた烙印世界 ~おい、EXデッキから召喚させろよ~   作:ゼフィガルド

6 / 33
第6幕:ニビル「私は悪いことはしていません。ただ、落下の衝撃で周りを吹っ飛ばしただけです」

 マクシムスに連れて来られた場所は、今まで自分達が見て来た教団内とは打って変って、暗く淀んだ場所だった。あまりの空気の変貌ぶりにエクレシアはアルに声を掛けた。

 

「大丈夫ですか?」

「あまり気分は良くないが」

「無理もありません。ここにいる者達は存在だけで周囲を変化させかねない者達も多い。彼らの気に充てられて体調を崩した者もいます。引き返しますか?」

「いや、進んで欲しい」

 

 マクシムスの気遣いを遠慮して、アルは更に奥へと進んでいく。先日の一件で鉄獣戦線に捕虜達を奪還されたこともあり、収容所には空きが多く見られたが、未だに収監されている者達も多かった。……と言うか、人型をしていない物も多かった。

 

「マクシムスさん。檻の中にデカイ石ころが置かれているんだが。これは何か、崩落事故があった名残で?」

「いえ、これもホールから落ちて来た物です。無機物の様に見えて意思らしき物も確認されています」

 

 見た目はデカイ石だが、表面に浮き出た水晶が自らの意思を視聴するかのように点滅を繰り返していた。まるで、意味の分からない挙動だったので無視して進むことにした。

 実際、収容されている者達を見れば体調を崩しかねないという言葉の意味も分かった。自身の常識を揺るがされる様な存在が多すぎた。

 例えばだ。次に見た檻の中に居たのは人の形はしていたが肉が付いていなかった。まるで、骸の様に骨しか残って居ないというのに普通に動いていた。

 彼はパキケファロの方を見ると手招きをしたので、彼も応じる形で檻に近付くとツルツルの頭部を撫でられていた。

 

「何。コレ、何?」

「多分、パキケファロさんのお友達だと思います」

 

 エクレシアは微笑ましそうに見守っているが、傍から見ているアルからすれば不気味と言う外ない光景だった。

 他にも、1つの体に2つの顔を持つ巨鳥や白銀の鎧を纏った馬、竜の様な剛翼を持つ馬等も居た。

 

「ホールの向こう側からは、私達の常識が通じない者達がやって来ます。獣人共は彼らが捕まっている。等と言いますが、この深淵の大陸に放てば不幸な出来事しか待ち受けていないことは明白です」

 

 外に出て暴れる可能性も考えれば、この様に捕まえておくというのは決して間違った考えではないという話も理解できる気がした。

 ただ、気になったのはいずれも意思疎通を交わせない物ばかりだったということだ。自分と同じ様に話せる存在が来たら? と考えるのは自然なことだった。

 

「マクシムス様。俺みたいに話したりすることの出来る者達もやって来たりはしているんでしょうか?」

「はい。そう言った方達には協力を求めています。大抵は快く協力してくれて、今も教団内で働いていますよ」

「その人達と会うことは出来ますか?」

「すみません。彼らは大抵の場合、能力が重宝されて忙しい物でして……」

 

 これが建前であることは彼も察していた。要するに、そう言った者達とコミュニケーションを取りたければ自分達に協力しろと言っているのだろう。

 元より、身寄りもなく、無頼でやっていくアテも無い。第一、自分には関係者に命を救われた恩もある。

 

「あの。それなら、俺も協力することは出来ないでしょうか? エクレシアや皆には良くして貰っていますし。俺も何かを返せないかと」

 

 彼の言葉を待っていたと言わんばかりに、マクシムスは彼の両肩に手を置いた。マスクに隠れて分からないが、きっと大きな笑顔を浮かべているに違いない。

 

「とても嬉しい言葉です。私達は来る物を拒みません。施した恩に報いたいという気持ちは汲み取りましょう」

「では、アル君に聖痕を?」

「はい。このまま儀式を執り行います。テトラドラグマへとお越しください」

 

 言われるがままに付いて行った先。先程、エクレシアから書庫で聞いた伝承を模ったと思しき像が見えた。1人の少女を護る様にして2匹の竜が寄り添っている。そう見えた。

 

「アル君。片膝を着いて下さい」

 

 彼女に言われた通り、マクシムスの前に跪くと額に指を当てられた。

 アルにとっては意味の分からない詠唱が始まり、全身の体温が上昇していく様な気がした。視線を右腕に向けると、表皮に模様が浮かび上がっていた。

 聖痕が浮かび上がる場所としては一般的だったが、次第にブスブスと焼ける様な音が聞こえた。そして、異変は起きた。

 

「!?」

 

 右腕だけかと思われていた聖痕は左腕にも出現し、両足にも浮かび上がった。それらの聖痕は頭部へと向かって進んでいくように、アルの全身へと広がり始めていた。マクシムスが震える中、エクレシアとパキケファロは彼に駆け寄った。

 

「アル君!?」

「エクレシア! 落ち着きなさい! おぉ。まさか、こんなことが起きるとは!」

 

 彼を解放するべく、エレクシアが手を差し伸べた。だが、反射的に手を引っ込めてしまった。代わりにパキケファロが彼の体を支えていた。

 

「マクシムス様! アル君に何が!?」

「エクレシア。見なさい。彼の全身に走る聖痕を」

 

 恍惚とした声でマクシムスはアルを指差していた。両手両足の先端から首元に掛けてまでビッシリと聖痕が刻まれていた。まるで、額に聖痕を持つ彼女と対を為すかのようであった。

 

「これだけの規模。お姉さまでしか見たことが無い……」

「いえ、彼女でも胴体部分にまでは及んでいませんでした! 間違いありません! これは、我々が深淵大陸を治め! 人々に恒久的な平和をもたらすべく吉兆に違いありません!」

「うぅ。何が……」

 

 パキケファロに支えられながら立ち上ったアルが見たのは哄笑を上げるマクシムスと心配そうな顔をしたエクレシアだった。

 

~~

 

 鉄獣戦線。アルベルの言うことを全て信じるつもりも無かったが、このままでは碌にドラグマと戦うことも出来ない。どの様に対処するべきかと言う議題は何度も上げられていた。

 

「アルベル君の言う通りだとすれば、ドラグマ内には強力な者達を封じる聖具が幾つも設置されていて。それを破壊すれば、晴れてシュライグ達も攻めることが出来るという訳ですね?」

 

 フラクトールの質問にアルベルは頷いた。実際、彼が収容所内の結界像と呼ばれる物を破壊しまくったお陰で、ナーベル達は多数の捕虜を引き連れて撤退することが出来たのだから。

 

「問題はどうやってその聖具達を破壊するかだ」

 

 自分達が襲撃したこともあって、警備はより強化されている事だろう。

 手をこまねいている間にも着々とドラグマも戦力を蓄えている。手の打ちようが無くなる前に先に動き出さねばと考えていると、アルベルが手を挙げていた。

 

「潜入に関しては僕が行く。多分、ここにいる誰よりもそう言った位置には詳しいと思うから」

 

 先の作戦でも真っすぐ結界像へと向かったのだから間違いないだろう。ただ、問題は彼のみを向かわせる危険性についてだった。

 

「アルベルだけに向かわせるのも危ない。この間の作戦も一緒だったし、ナーベル。随伴して上げて」

 

 フェリジットから指名され、彼は頷いた。普段から仮面を付けていることもあり、装いを変えて素顔になればバレる可能性は下がると踏んでのことだった。

 

「分かりました。ただ、呼吸器を持って行けないとなると。激しい運動は出来なくなりますが……」

「呼吸器?」

「僕。生まれつき体が小さくて、そのせいで一族を追われたこともあって」

 

 獣人達の大半は屈強な体躯を持っているが、ナーベルはアルベルよりも小さい。マスクを外して露わになった素顔も中性的な物であり、全体的に女性と見間違わんばかりの華奢さだった。

 

「むしろ、連中に保護して貰うっていう体を出す上では使えると思う。私達は近隣の勢力に協力を呼び掛けて行くから。2人共、頼んだよ」

 

 フェリジットと約束を交わすと、早速二人は変装した後、ドラグマへと向かった。

 検問所には番兵が立っており、厳しい検査が行われている。今も表では1人の獣人が拘束されていた。

 

「なんでだよ! 俺は一族を追われて、アンタらに恭順しに来たんだ!」

「貴様が一族内で犯した罪を知らんと思ったのか。私達は隣人ならば迎え入れるが、獣を呼び込むつもりはない」

 

 本性を知られた獣人は牙を剥き出しにして、番兵へと襲い掛かった。

 聖痕による加護を受けていたが、相手は獣人達から生き延びる程の力量を持った者だったということもあり、数の不利を物ともせず立ち回っていた。

 ナーベル達が離れた所から見ていると。門の奥から鎧を纏った小柄な人間が出て来た。自分も街中に押し入るチャンスだと思ったのか、獣人が駆ける。

 

「どけ! ぶっ殺すぞ!」

 

 大口を開き、鎧ごと噛み砕こうとした。気づけば、獣人の体は宙に浮いていた。少し遅れてから走った腹部への衝撃から、蹴り飛ばされたことに気付いた。

 肺の空気が叩き出され呼吸も絶え絶えになる中、ゆっくりと首を傾けた先。自分の頭上へと跳び上がっていた人影を見て絶句していた。

 

「落ちろ」

 

 蹴り上げられ、叩き落され。瞬く間に獣人の男は気絶をしていた。

 彼を撃破した人物は、着地の際に兜がずれたのか素顔が露わになる。そこには、アルベルト似通った雰囲気を持ち、先日の騒ぎで見たはずの少年が居た。

 

「……アルベル君。彼は一体?」

「なるほど。そう言うことか」

 

 ナーベルの疑問を他所にアルベルは歯噛みしていた。コレが何を意味していたかは分からないが、ナーベルが獣人として持つ生存本能は全力で警鐘を鳴らしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。