日本と皇國の幻争正統記   作:坐久靈二

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第百十六話『獅子身中』 序

 十四時五十分、甲(きのえ)邸跡地。

 出撃の時を控えた岬(さき)守(もり)航(わたる)・麗(うる)真(ま)魅(み)琴(こと)・雲(くも)野(の)幽(ゆ)鷹(たか)・雲(くも)野(の)兎(と)黄(よ)泉(み)は、超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)の格納庫跡でカムヤマトイワレヒコの球形操縦室「直(なお)靈(ひ)彌(み)玉(だま)」を前にしていた。

 これから蛟(みずち)乃(の)神(かみ)賢(けん)智(ち)の手で機体を再生すると、耐宇宙装甲に改造されたカムヤマトイワレヒコが初のお披(ひ)露(ろ)目(め)になるだろう。

 

「愈(いよ)々(いよ)だな、魅(み)琴(こと)」

「ええ。航(わたる)、覚悟は出来ているわよね?」

「勿(もち)論(ろん)さ。それに、一つ思い出したことがある」

 

 航(わたる)は拳を握り締めた。

 

「虻(あぶ)球(く)磨(ま)の奴(やつ)に、神(じん)皇(のう)に一発かませって言われたけど、僕(ぼく)の方にもそうしなきゃいけない理由があったよ」

「あら、彼と貴方(あなた)の間に何かあったかしら?」

「何かあったも何も……!」

 

 航(わたる)の額に青筋が浮かぶ。

 平時の彼には珍しく、酷(ひど)く怒っていた。

 そう、彼には一つ、神(じん)皇(のう)がどうしても許(もと)せないことがある。

 

「あいつは僕(ぼく)から君(きみ)を盗(と)ろうとしたんだ! 僕(ぼく)にとって何よりも許せない暴挙だ! 絶対にぶちのめしてやる!」

 

 一人で盛り上がる航(わたる)を横目に、魅(み)琴(こと)は呆(あき)れた様子で溜息を吐いた。

 

「それは貴方(あなた)が十五年も『好き』の一言すら出せなかったどうしようも無いヘタレだからでしょう。これに限っては彼に罪は無いわよ」

「ある! 僕(ぼく)はNTR(寝取られ)ものの間男は無残に殺されるべきだと思っている! SとMの関係は強い信頼に依(よ)って成立するもので、それを踏(ふ)み躙(にじ)る輩(やから)には目に物見せてやらなくてはならない! 嗤(わら)われるのも莫(ば)迦(か)にされるのも軽蔑されるのも心を許しているからこそ受(う)け容(い)れられるんであって、その前提を穢(けが)されるのは違う! Mにこそ『舐(な)められたら殺す』の精神が必要なんだ!」

「前提として、あの頃だと貴方(あなた)のはNTR(寝取られ)じゃなくてBSS(僕が先に好きだつた)でしょう」

「BSS(僕が先に好きだつた)はNTR(寝取られ)の一部だよ。何を言っているんだ?」

「言い切ったわね。そういえば貴方(あなた)って偶(たま)々(たま)相手と両片想いだっただけのストーカーだったわ」

「ありがとう。その冷たい眼(め)がゾクゾク来るよ」

「この変態が。彼の求婚を受けなかったのは失敗だったかも知れないわね」

「またまた、ご冗談を」

 

 航(わたる)は思わずほんの少しの笑みを溢(こぼ)した。

 

「君(きみ)があの男に靡(なび)く器な訳ないだろう。君(きみ)は正真正銘のサディストだ。ザッヘル=マゾッホ曰(いわ)く、相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは本当のサディズムじゃない」

「絶対マゾッホそんなこと言ってないでしょう」

「言ったんだよ、知らないのかい?」

「あのなあ、君(きみ)達……」

 

 見かねてか、龍(たつ)乃(の)神(かみ)深(み)花(か)が止めに口を挟んだ。

 

「イチャ付く時間は充分与えたつもりだったんだが?」

「すみません殿下、この莫(ば)迦(か)が訳の解(わか)らないことを言って」

 

 とは言いつつ、龍(たつ)乃(の)神(かみ)も蛟(みずち)乃(の)神(かみ)も顔から程良く力が抜けている。

 最後に送り出す上で明るく冗談を言い合う二人を見ることが出来て、気持ちが楽になっただろう。

 

「じゃあイチャイチャ序(つい)でに真面目に言うと、君(きみ)があの男に奔(はし)る様な人間なら死を前提に戦いを挑んだりはしないさ。あの時も、これからもね」

「フ、成程ね……。ま、そう考えると貴方(あなた)の言うとおりかも知れないわね。確かに私(わたし)は誰にも平伏しない」

 

 二人は互いの絆(きずな)を確かめ合う様に微(ほほ)笑(え)み合った。

 覚悟は有る、後悔は無い。

 これから彼らは、死を前提にした戦いに赴(おもむ)くのだ。

 

「魅(み)琴(こと)、今度は独りでは行かせないからな」

「ええ、一緒に行きましょう。貴方(あなた)と私(わたし)、二人で世界の畢(おわ)りまでも」

 

 そんな二人を微笑みながら一(いち)瞥(べつ)し、蛟(みずち)乃(の)神(かみ)が直(なお)靈(ひ)彌(み)玉(だま)の前へ出た。

 神(しん)為(い)を与え、機体を再生させる時が来たという訳だ。

 

「では、再生させよう。改造後の姿を見たことがあるのは僕(ぼく)だけだったね。刮(かつ)目(もく)すると良い。これが世界の命運を託される巨神の威容だ!」

 

 しかし、その時だった。

 彼らの許(もと)へ、慌てた様子の六摂家当主四人が姿を顕(あらわ)した。

 

「大変です、蛟(みずち)乃(の)神(かみ)殿下! すぐに皇宮へお向かいください!」

 

 焦燥に駆られた十(とお)桐(どう)綺(あや)葉(は)が蛟(みずち)乃(の)神(かみ)に駆け寄る。

 

「一体どうしたと言うんだ、十(とお)桐(どう)?」

「神(しん)為(い)が……皇宮から皇(こう)國(こく)全土への神(しん)為(い)供給が止まってしまいましたのじゃ!」

「なんだって!?」

 

 出撃を前にしてアクシデントに見舞われた彼らに緊張が奔った。

 現在でも皇(こう)國(こく)社会の要となる神(しん)為(い)供給は皇宮にある「宇(う)気(け)比(ひ)の間」から送られているが、神(じん)皇(のう)が静止軌道上のアメノミナカヌシへ移ってからはアメノミナカヌシから送られる神(しん)為(い)を一旦皇宮で受け、それから自動で全土へ送られている。

 今、皇宮でその機構の監視と保守を担っているのは紫(し)桐(どう)一派の青(せい)華(が)家貴族から二名、玖(く)我(が)麟(りん)子(こ)と花(か)鳥(ちよう)院(いん)夢(ゆめ)春(はる)の両侯爵である。

 

「玖(く)我(が)と花(か)鳥(ちよう)院(いん)が止めたのか? それともアメノミナカヌシからの神(しん)為(い)供給が止まったのか? 何方(どちら)にせよ、このままでは皇(こう)國(こく)が大変なことになる……」

 

 蛟(みずち)乃(の)神(かみ)は皇宮の方角を一瞥、また直(なお)靈(ひ)彌(み)玉(だま)を一瞥と、二つへ交互に眼を迷わせていた。

 龍(たつ)乃(の)神(かみ)が神(しん)為(い)を失っている以上、彼が対応しなければ皇(こう)國(こく)は全国的な停電に見舞われ、その電力で維持されている多くが破(は)綻(たん)して甚大な被害が生じる。

 例えば、全ての医療器具が止まってしまうと入院患者等の生命が失われるだろう。

 かと言って、彼がこの場を離れてしまうと航(わたる)達が出撃出来ない。

 

「神(しん)為(い)を皇(こう)國(こく)全土へ供給することは出来る。でもかなりの神(しん)為(い)を消耗してしまう。超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)を再生した上でとなると、おそらく完全に底を突く。今日一日、事が終わるまで力を失った無防備な状態で居なければならないことに……」

「賢(けん)智(ち)!」

 

 一喝したのは姉の龍(たつ)乃(の)神(かみ)だ。

 

「躊(ため)躇(ら)っている場合か! それしかないならそうするしかない! 無防備結構! この時の為(ため)にみんなの協力を仰いだんじゃなかったのか!」

「……そうだね。覚悟を決めるしか無い。みんなを信じ、命を預ける覚悟を……!」

 

 蛟(みずち)乃(の)神(かみ)は再び直(なお)靈(ひ)彌(み)玉(だま)に手を翳(かざ)した。

 球体が眩(まばゆ)い光を放ち、全高二十八米(メートル)の人型に姿を変えていく。

 

「おおっ、これが……!」

 

 航(わたる)は興奮を抑えられず声を漏らした。

 基本的には今までの超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムヤマトイワレヒコと変わらない。

 しかし装甲が厚くなった為か、全体的に逞(たくま)しくなっている。

 そしてそれ以上に、全身の輝く金色から迸(ほとばし)る威厳と迫力が大きく増していた。

 

「さあ、再生は完了した! 耐宇宙装甲を施されたこの機体は性能もまた大きく向上させている! 謂(い)わば『超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムヤマトイワレヒコ改』!」

「ならばこういう通称はどうかしら」

 

 魅(み)琴(こと)が一歩前へ出た。

 

『皇(こう)級(きゅう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムヤマトイワレビコ』

 

 今、新たなる航(わたる)の愛機がその全容を顕した。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 無(む)窮(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・アメノミナカヌシ中央制御室「高(たか)御(み)座(くら)の間」、玉座の神(じん)皇(のう)の側には二人の男女が控えていた。

 近衛侍女・貴(き)龍(りゆう)院(いん)皓(しら)雪(ゆき)と侍従長・紫(し)桐(どう)玄(ひろ)貴(たか)である。

 更に、其(そ)処(こ)へ続く皇祖皇宗の廻(かい)廊(ろう)には二人の配下や同志が敵襲に備えていた。

 神(しん)瀛(えい)帯(たい)熾(し)天(てん)王(のう)の一人・閏(うる)閒(ま)三(みつ)入(なり)のもそんな者達の一人である。

 

『媛(ひめ)様(さま)、既にいつでも準備は整っております』

 

 貴(き)龍(りゆう)院(いん)の脳内に閏(うる)閒(ま)が通信してきた。

 彼はこの最終日、岬(さき)守(もり)航(わたる)や麗(うる)真(ま)魅(み)琴(こと)が最後の出撃を迎える寸前にそれを妨害すべく、一つの手を打っている。

 貴(き)龍(りゆう)院(いん)は白い歯を見せて笑い、閏(うる)閒(ま)に命じる。

 

『やりなさい、三(みつ)入(なり)君。陛下に刃向かえるなどと思い上がっているお莫迦さん達の出鼻を挫(くじ)いてやるのよぉ』

『承知いたしました。では、受給を遮断いたします』

 

 程無くして、紫(し)桐(どう)に一本の電話が入る。

 

「玖(く)我(が)卿(きよう)、どうした?」

 

 紫(し)桐(どう)一派の紅一点、侯爵・玖(く)我(が)麟(りん)子(こ)からだ。

 皇(こう)國(こく)でも六摂家に次ぐ家格を持つ「青(せい)華(が)家」は紫(し)桐(どう)の同志に四人の侯爵が名を並べているが、その内彼女と花(か)鳥(ちよう)院(いん)夢(ゆめ)春(はる)は皇(こう)道(どう)保(ほ)守(しゆ)黨(とう)による皇(こう)國(こく)の内政を補助する為に皇宮に控えているのだ。

 紫(し)桐(どう)の下に、その玖(く)我(が)から緊急の連絡が入った。

 

「何? それは本当か?」

 

 紫(し)桐(どう)は眉根を寄せ、貴(き)龍(りゆう)院(いん)を一瞥した。

 玖(く)我(が)の連絡は神(じん)皇(のう)にとって、そして皇(こう)國(こく)にとって一大事である。

 澄ましながらも邪悪な笑みを湛(たた)える彼女が、何か良からぬことをしたことは間違い無い。

 

「解った、陛下には私から伝える。其(そ)方(ちら)は花(か)鳥(ちよう)院(いん)卿と共に壬生(みぶ)殿と合流し、逆賊共の叛(はん)乱(らん)に備えてくれ」

 

 一(ひと)先(ま)ず、紫(し)桐(どう)は事態の収束を図る。

 

「紫(し)桐(どう)よ、何かあったか?」

「は、畏れながら申し上げます」

 

 紫(し)桐(どう)は一瞬、この機に貴(き)龍(りゆう)院(いん)のことを諫(かん)言(げん)するか迷った。

 神(じん)皇(のう)の大望にとってこの女は孰(いず)れ大きな憂(うれ)いとなるだろう。

 しかし、やはりそれは出来ない。

 楼(ろう)染(ぜん)襟(えり)印(いん)・絵(え)駈(かる)都(と)繁(しげる)の両帰化男爵による暗殺が失敗に終わった今では、貴(き)龍(りゆう)院(いん)に対して若干の政治的優位を許してしまっている。

 

(これが終われば愈々貴(き)龍(りゆう)院(いん)との争いが本格化する。今の内に次の手を考えておかなくては……)

 

 そんな訳で、紫(し)桐(どう)は貴(き)龍(りゆう)院(いん)排除を諦めた訳ではないが、今はただ神(じん)皇(のう)にありのままを伝えるのみだ。

 

「皇宮の玖(く)我(が)卿より、つい今し方よりアメノミナカヌシからの神(しん)為(い)供給が止まってしまった、と」

「何? どういうことだ。アメノミナカヌシには既に今日までの皇(こう)國(こく)に必要な神(しん)為(い)の十倍を蓄積し、皇宮は『宇(う)気(け)比(ひ)の間』へと自動で供給されるようにしてあるのだ。神(しん)為(い)は皇(こう)國(こく)社会の要、アメノミナカヌシの制御に関する防御も其処は特に厳重に固めてある」

「そうよぉ。何か失敗を隠す為にそう言っているに違い無いわぁ」

 

 眉(み)間(けん)に皺(しわ)を寄せる紫(し)桐(どう)と、勝ち誇る貴(き)龍(りゆう)院(いん)の視線が交錯する。

 

(白々しい女め。しかし証拠が無いまま告発することも出来ん)

 

 とはいえ、神(じん)皇(のう)は紫(し)桐(どう)の報告に聞く耳を持たない程愚かではない。

 

「或(ある)いは受信側の皇宮で何か不具合があったのかも知れんな。俺(おれ)は此(こ)処(こ)を離れる訳には行かぬ以上、誰かに点検・復帰を委ねねばなるまい」

「それならば三(みつ)入(なり)君にやらせましょう。彼はこういうのに詳しいですわ」

 

 貴(き)龍(りゆう)院(いん)の言葉で紫(し)桐(どう)は凡(おおよ)その事態を察した。

 間違い無くこれは貴(き)龍(りゆう)院(いん)の配下・閏(うる)閒(ま)三(みつ)入(なり)の仕業だ。

 ならば、その張本人に任せるなど愚の骨頂である。

 

「陛下、玖(く)我(が)卿は私(わたくし)を手伝ってくれているのです。ですからこの場は私(わたくし)が皇宮へ向かい、対応いたしましょう」

「そうか。汝(なれ)に出来るか?」

「はい。宇(う)気(け)比(ひ)の間に置かれている神(しん)為(い)供給装置の構造は侍従長着任時に全て把握しましたので」

 

 貴(き)龍(りゆう)院(いん)の表情から笑みが消えた。

 やはり間違い無く彼女が何かをやったのだ。

 神(じん)皇(のう)に閏(うる)閒(ま)を指名させようとしたのは、事態を解決させない為か。

 

(何(ど)方(ちら)にせよ、私(わたくし)には地上でやることがある。今の内に戻っても問題あるまい)

 

 彼は最初からアメノミナカヌシの防衛に参加するつもりなど無かった。

 どうにか理由を付けて持ち場を離れるつもりだったが、貴(き)龍(りゆう)院(いん)は格好のそれを与えた形になる。

 

「それは頼もしいな。では紫(し)桐(どう)、任せたぞ」

「は、行って参ります」

 

 紫(し)桐(どう)は神(じん)皇(のう)に一礼すると、貴(き)龍(りゆう)院(いん)を一瞥し、二人の許を去って行った。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 十五時過ぎ、龍(たつ)乃(の)神(かみ)邸に残っていた皇(こう)國(こく)正統政府の面々は慌ただしく動き始めていた。

 皇宮からの神(しん)為(い)供給が途絶えたとの報を受け、蛟(みずち)乃(の)神(かみ)賢(けん)智(ち)を皇宮へ移す必要に駆られた為、彼らもまた拠点を皇宮に移そうとしているのだ。

 

「良いんでしょうか、私(わたし)達なんかが皇宮に足を踏み入れて……」

 

 混乱しているのは、正統政府と行動を共にしている新華族令嬢達だ。

 鬼(き)獄(ごく)東(あ)風(ゆ)美(み)・枚(ひら)辻(つじ)埜(の)愛(あ)瑠(る)・別(びゅ)府(う)幡(まん)黎(れい)子(こ)の三名は、これまで皇宮に招かれたことなど一度も無い。

 如(い)何(か)に貴族といえど、彼女達にとって今から行こうとしている場所は別世界だった。

 

「気後れしている場合ではありません。今はまだ全国で予備電源が動いていますが、四半日もすれば停止してしまうでしょう。それまでに事態が解決しなければ大惨事になる!」

 

 その中でも、皇族の侍女を経験しているだけあって水(み)徒(と)端(はた)早(さ)辺(え)子(こ)は肝が据わっていた。

 彼女の脇では、姉の敷(しき)島(しま)朱(と)鷺(き)緒(お)――水(み)徒(と)端(はた)早(そ)芙(う)子(こ)もまた刀を手に鋭い眼光を湛えている。

 

「皇宮には今、青(せい)華(が)家の華族が控えている筈(はず)だ。場合によっては戦闘になるかも知れん。心して行くぞ」

「姉さん……!」

「早(さ)辺(え)子(こ)、後で話がある。だが今は事態の解決に全力で臨むぞ」

「はい!」

 

 彼女達は続々と龍(たつ)乃(の)神(かみ)邸の門から出て行く。

 そんな令嬢達に続き、日本国の面々も皇宮を目指す。

 

「岬(さき)守(もり)君・麗(うる)真(ま)君……頼んだぞ」

 

 根(ね)尾(お)弓(きゅう)矢(や)は空を見上げて呟(つぶや)いた。

 航(わたる)達のアメノミナカヌシ到着予定時刻は二十二時、約七時間後である。

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