日本と皇國の幻争正統記   作:坐久靈二

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第百十八話『時の彫刻』 破

 無(む)窮(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・アメノミナカヌシの内部は中心に向けて主に四つの層に分かれている。

 

 先(ま)ず最外殻から中心までの距離は約四〇六四米(メートル)であるが、最外壁から約一八四〇米(メートル)までの区域を「別(こと)天(あまつ)神(かみ)の層」、そこから約一四〇〇米(メートル)までの区域を「神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の層」、その内側五二六米(メートル)までの区域を「地(ち)神(じん)五(ご)代(だい)の層」と呼び、此(こ)処(こ)までの領域は実質的に兵器の格納庫である。

 神(じん)皇(のう)や彼に仕える者、謁(えつ)見(けん)を求める者が通るのは、その内側に設けられた直径四九六米(メートル)の中核部「人(じん)代(だい)の璽(じ)」である。

 其(そ)処(こ)へ入場すると廻(かい)廊(ろう)が二手に分かれており、それぞれ日本国と皇(こう)國(こく)の歴代皇(すめら)尊(みこと)を模(かたど)った彫刻が並べられている。

 何(いず)れの道を選んでも、進んだ先で最終的には中央制御室「高(たか)御(み)座(くら)の間(ま)」の扉へと辿(たど)り着(つ)く。

 

 扨(さ)て、「別(こと)天(あまつ)神(かみ)の層」、「神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の層」、そして「地(ち)神(じん)五(ご)代(だい)の層」と「人(じん)代(だい)の璽(じ)」――最後の二つを一つに纏(まと)めると、その深さの比率は約二十九:二十二:十三で、これは地球の内部構造によく似ている。

 アメノミナカヌシは小型の世界そのものを模(も)しているのかも知れない。

 

 航(わたる)と魅(み)琴(こと)、雲(くも)野(の)兄妹を載せた皇(こう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムヤマトイワレビコは、アメノミナカヌシの深(しん)淵(えん)へと向けて「別(こと)天(あまつ)神(かみ)の層」を落下していく。

 いつ重力操作が働くか分からないので、航(わたる)は機体の速度に神経を研ぎ澄まし、慎重に機体を下らせていた。

 

「それにしても、これは凄(すご)いな……」

 

 航(わたる)は息を呑(の)んだ。

 周囲に見えるのは、一つの壮大な物語を描いた壁画である。

 

「古事記に記された天(てん)地(ち)開(かい)闢(びゃく)の神話ね。世界の初めに顕(あらわ)れた天(あめ)御(のみ)中(なか)主(ぬしの)神(かみ)、続いて顕れた高(たか)御(み)産(む)巣(す)日(びの)神(かみ)、神(かむ)産(む)巣(す)日(びの)神(かみ)――この三柱を『造(ぞう)化(か)参(さん)神(しん)』と呼ぶ。続いて可(う)美(まし)葦(あし)芽(かび)彦(ひこ)舅(ぢの)神(かみ)、天(あめの)常(とこ)立(たち)神(のかみ)が顕れ、そしてすぐに隠れたと云(い)う……。この原初の五柱のことを『別(こと)天(あまつ)神(かみ)』と呼ぶのよ」

「日本神話か……。如(い)何(か)にも神(じん)皇(のう)が好きそうだな」

「私(わたし)も好きよ。御(お)爺(じい)様(さま)も好きだった……」

「そうか……」

 

 圧巻の光景だった。

 これを神(じん)皇(のう)が一人で造ったのだとすれば、神(じん)皇(のう)はおそらく芸術的な才能にも恵まれている。

 それらの天(てん)稟(ぴん)を建設的に、平和的に生かしていれば、彼の存在は間違い無く、皇(こう)國(こく)や日本のみならず、世界にとって大いなる福(ふく)音(いん)となったに違い無い。

 

「っと、落下は此(こ)処(こ)までか……」

 

 そろそろ地面に着く頃だ。

 航(わたる)の目の前を、カムヤマトイワレビコよりも一回り大きな神像の彫刻が通過する。

 足下には高さ五十米(メートル)程の台座が設けられており、神の名が記されている。

 

「『天(あめの)常(とこ)立(たち)神(のかみ)』か。君(きみ)が先刻(さつき)言っていた神様だね」

「そうね。でも……」

 

 魅(み)琴(こと)は意味深に黙った。

 航(わたる)も同じく、嫌な予感を抱いている。

 どうして、彫刻は一柱分しかないのであろうか。

 航(わたる)にとって聞いたことのある、他の神々のことは忘れたのだろうか。

 

 航(わたる)はカムヤマトイワレビコを床に着地させた。

 彫刻の台座には扉が備わっており、脇に案内が書いてある。

 

『上:別(こと)天(あまつ)神(かみ)の層――下:神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の層』

「……成程ね」

 

 航(わたる)はすぐに状況を理解した。

 扉に迫った瞬間、辺りが赤く点滅し、三機の為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)がカムヤマトイワレビコを取り囲むように降り立ったのだ。

 何れもカムヤマトイワレビコよりも一回りも二回りも大きい、航(わたる)も知っている特別機だ。

 

「特(とつ)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・ツハヤムスビ、極(きよつ)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・タカミムスビ、絶(ぜつ)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムムスビか……。まさかこいつらを一遍に相手にしろと……。容赦無いぜ、全く……」

 

 嘗(かつ)て航(わたる)を苦しめた三機が再び襲い掛かろうとしていた。

 航(わたる)は日本刀様の切断ユニットを機体の手に持たせ、構えを取る。

 一見すると無(む)茶(ちや)な絵面――しかし、航(わたる)は落ち着いていた。

 

「大丈夫、航(わたる)? 手を貸しましょうか?」

「ありがとう。いざという時は頼むかも知れない。だが、多分行ける筈(はず)だ」

 

 三機の敵がそれぞれ動き出す。

 それを見て、航(わたる)は予感を確信に変えた。

 

「やっぱりな。思った通りだ」

 

 特(とつ)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・ツハヤムスビが胸の前で両腕を交差させ、背中から翼の様な兵装を拡(ひろ)げる。

 節目と先端に備わった十数もの光線砲がカムヤマトイワレビコに斉射される。

 しかし、航(わたる)はこれを悉(ことごと)く躱(かわ)した。

 

「喰(く)らうかよ。その兵器は輪(わ)田(だ)衛(ひろ)士(あきら)の超人的な操縦技能・射撃力があってこその脅威だ」

 

 日(ひの)神(かみ)回(かい)路(ろ)が発動し、カムヤマトイワレビコが金色の光を放つ。

 航(わたる)は金(きん)鵄(し)砲(ほう)をツハヤムスビに向け、二発を発射。

 一発は躱されたものの、二発目で見事ツハヤムスビに命中させ、光の奔流で呑(の)み込(こ)んだ。

 結果、ツハヤムスビは爆炎と共に大破。

 

「まず一体目!」

 

 幸(さい)先(さき)の良い滑り出しが出来た航(わたる)だが、突如機体の動きが取れなくなった。

 これも知っている。

 案の定、極(きよつ)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・タカミムスビが拳の光線砲で此方を狙っていた。

 重力崩壊で相手を縛って砲撃する必殺兵器「天(てん)鳴(めい)砲(ほう)」だ。

 

「束縛が甘いな。鯱(しやち)乃(の)神(かみ)那(な)智(ち)程の脅威は感じない」

 

 航(わたる)は冷静に、敵が砲撃を解き放つ瞬間を狙って光線砲を砲口に叩(たた)き込(こ)んだ。

 結果、タカミムスビの腕の砲口は暴発。

 その隙にカムヤマトイワレビコを肉薄させ、韴(ふつの)靈(みたまの)劔(つるぎ)でタカミムスビを一刀両断した。

 

「二体目!」

 

 残るは絶(ぜつ)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムムスビのみである。

 しかし、これは航(わたる)の敵になりようが無い。

 

「麒(き)乃(の)神(かみ)聖(せい)花(か)が乗ってなきゃ唯(ただ)の奇を衒(てら)った女神像だろ。仏作って魂入れずだよ」

 

 韴(ふつの)靈(みたまの)劔(つるぎ)がそのまま返す刀でカムムスビを貫いた。

 終わってみれば三機とも瞬殺。

 おそらく人工知能による自動操縦だったのだろうが、極めて特別だった三人の操縦士が悉く居ないでは、航(わたる)の相手になる訳も無かったのだ。

 

「輪(わ)田(だ)衛(ひろ)士(あきら)・鯱(しやち)乃(の)神(かみ)那(な)智(ち)・麒(き)乃(の)神(かみ)聖(せい)花(か)、どれも恐るべき相手だった。自動操縦なんかじゃ百機揃(そろ)えようが代わりになりやしない」

 

 しかし、カムヤマトイワレビコの背後に一機の敵が迫っている。

 

「そうそう、当然居るよな?」

 

 航(わたる)は振り向き様に金(きん)鵄(し)砲(ほう)でその機体を跡形も無く消し飛ばした。

 原(げん)級(きゅう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・ウマシアシカビヒコヂ――アメノミナカヌシの外周でも襲い掛かってきた、タカミムスビの分身である。

 だがこれも、鯱(しゃち)乃(の)神(かみ)那(な)智(ち)の神(しん)為(い)が無ければ大した相手ではなかった。

 

「良し、終わり」

「お見事」

 

 終わってみれば呆(あつ)気(け)ない戦いだったが、これも偏に航(わたる)がこれまでに経験した戦いの質がものを言った結果だ。

 彼は今や向かうところ敵無し、史上最強の為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)操縦士に成長していた。

 

「扨(さ)て、と。特別機を全部斃(たお)したが……」

 

 航(わたる)が機体を先程の扉の方へと向けると、視界に下の層へと続く道が開けていた。

 どうやら三機とも撃破すると扉が消える仕掛けだったらしい。

 

「さあ、行こうか」

 

 航(わたる)はカムヤマトイワレビコを台座の奥へと進ませた。

 四人は更なる下層――「神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の層」へと突入する。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 中核部「人(じん)代(だい)の璽(じ)」には「高(たか)御(み)座(くら)の間(ま)」と「皇(こう)祖(そ)皇(こう)宗(そう)の廻(かい)廊(ろう)」の他に、神(じん)皇(のう)に仕える者達の為(ため)に用意された控え室がある。

 その一室で、二人の男が電視(ディスプレイ)表示された「金(こん)色(じき)の機体」の様子を眺めていた。

 

「まさか三機の特別機が破れ、『別(こと)天(あまつ)神(かみ)の層』が突破されるとはな」

「まだ『神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の層』と『地(ち)神(じん)五(ご)代(だい)の層』が残っているとはいえ、我々の出番も遠くないかも知れん……」

 

 頭を丸めた力士を思わせる巨漢と、極端な長身痩(そう)躯(く)の男――この凸(でこ)凹(ぼこ)コンビは何れも「紫(し)桐(どう)一派」の青(せい)華(が)家(け)当主・榊(さかき)御(み)門(かど)飯(い)降(ぶり)と菊(きく)屋(や)敷(しき)師(もろ)継(つぐ)である。

 この二人の侯爵は盟主の侍従長・紫(し)桐(どう)玄(ひろ)貴(たか)から、留守中の側(そば)仕(づか)えと貴(き)龍(りゆう)院(いん)の監視を任されていた。

 とはいえ、神(じん)皇(のう)に忠誠を誓う身として侵入者が見す見す素通りさせるなどあり得ない。

 

「覚悟の準備をしておいた方が良いかも知れませんな」

「ええ。今の内に『皇(こう)祖(そ)皇(こう)宗(そう)の廻(かい)廊(ろう)』入り口に向かいましょうぞ」

 

 アメノミナカヌシに仕掛けられた「時の彫刻」と呼ばれる防衛機構と、貴(き)龍(りゆう)院(いん)率いる「神(しん)瀛(えい)帯(たい)熾(し)天(てん)王(のう)」と呼ばれる朝敵に加え、神(じん)皇(のう)に絶対の忠誠を誓う「紫(し)桐(どう)一派」――六摂家に次ぐ家格を持つ「青(せい)華(が)家(け)」の大貴族もまた、航(わたる)達の行く手を阻もうとしていた。

 

 

 

⦿⦿⦿

 

 

 

 闇の中を少し下ると、航(わたる)達の視界が開けた。

 どうやら次の層に到達したらしい。

 下方の床には何体かの彫刻の神像が並べられている。

 また、カムヤマトイワレビコが通った出口も一体の神像の台座であったらしい。

 

「また神様の彫刻か……」

「『神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の層』の名前からして、おそらくは伊(い)弉(ざ)諾(なぎの)尊(みこと)と伊(い)弉(ざ)冉(なみの)尊(みこと)以前の神々ね。何柱かは男女が背中合わせのセットになっているでしょう?」

 

 魅(み)琴(こと)の指摘通り、床に立てられた八柱の神像のうち、六柱は男女が合わさった形をしている。

 それらの彫刻にはそれぞれ「泥(う)土(ひぢ)煮(にの)神(かみ)・沙(す)土(ひぢ)煮(にの)神(かみ)」「大(おほ)戸(と)之(の)道(ぢの)神(かみ)・大(おほ)苫(とま)邊(べの)神(かみ)」「面(おも)足(だるの)神(かみ)・惶(かしこ)根(ねの)神(かみ)」の表示がある。

 また、一柱ずつとなっている残り二つの神像にはそれぞれ「國(くに)狹(さ)槌(づちの)神(かみ)」「豐(とよ)斟(くむ)渟(ぬの)神(かみ)」の表示が見られた。

 

「先刻(さつき)通った天井の神像はおそらく國(くにの)常(とこ)立(たち)神(のかみ)ね。別(こと)天(あまつ)神(かみ)最後の一柱・天(あめの)常(とこ)立(たち)神(のかみ)の次に生じた神で、神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の初代とされているわ」

「本当、博識だな……」

 

 更に、床には五(ご)芒(ぼう)星(せい)が描かれており、それぞれの頂点には青・赤・黄・白・黒に塗られた円が描かれている。

 

「あれは何だ? というか、次の層へは何処(どこ)から行けばいいんだ?」

「そうね。本来なら床をぶち破ってしまえば良いと言いたいところだけど、神様を前にしてそれは一寸(ちよつと)憚(はばか)られるわ」

「ああ、そういえば君(きみ)は神社巡りが趣味だったな……」

 

 そんなことを話しているうちに、カムヤマトイワレビコが着地した、その瞬間だった。

 再び、辺りが赤く点滅する。

 天井に備わった、航(わたる)達がこの層へ入ってきた出口の備わった神像が天井に呑み込まれていく。

 

「退路を断たれた!」

 

 そして、床に備わっていた八つの神像が動き出す。

 

「今度は何が来る?」

 

 航(わたる)は神像の動きを警戒し、空中へと機体を回避させた。

 結果的に、この行動は正解だったと言えるだろう。

 八つの神像の眼(め)が光り、幾多の光線が解き放たれたのだ。

 

「うおおおおおっっ!?」

 

 航(わたる)は咄(とつ)嗟(さ)に光線を躱した。

 しかし、神像はカムヤマトイワレビコを狙って動き回りながら眼から光線砲を乱射する。

 更に、光線は壁面に反射し、跳弾となって再び襲い掛かってくる。

 

「こりゃ洒(しや)落(れ)にならないぞ!」

 

 航(わたる)は焦燥を覚えた。

 確かに、彼には卓越した回避技術がある。

 しかし、このまま敵の光線が反射し続け、更に次弾・次々弾と矢継ぎ早に光線砲を連射されるとなると、すぐに敵の射撃で部屋が埋め尽くされてしまう。

 つまり、躱そうにも物理的に躱す空間が無くなってしまうのだ。

 

「駄目だ! 魅(み)琴(こと)、悪いが時間が無い! 床をぶち抜かせてもらうぞ!」

 

 日(ひの)神(かみ)回(かい)路(ろ)を発動させた航(わたる)はカムヤマトイワレビコの拳を床に向け、砲口から金(きん)鵄(し)砲(ほう)を発射した。

 が、航(わたる)が撃った光線は床に当たった瞬間に吸収されてしまう。

 しかも、吸収された瞬間に航(わたる)は強烈な反重力に襲われ、機体を高々と打ち上げられてしまった。

 

「ガッ!? 糞(くそ)! これじゃ先へ進めない!」

 

 拙い事態である。

 此方の攻撃がアメノミナカヌシの床や壁面に当たると、その瞬間侵入者に対して反重力が作用するようになっているらしい。

 つまり、仮に魅(み)琴(こと)を外へ出して床を破壊するよう頼んだとしても、床に攻撃を加えた瞬間にカムヤマトイワレビコが天井目掛けて吹き飛ばされてしまうのだ。

 これでは、仮令(たとえ)魅(み)琴(こと)が床を破壊しても一人でしか先へ進めない。

 

「どうすれば良い? これはどうすれば良いんだ!」

 

 敵の光線は物(もの)凄(すご)い勢いで部屋を埋め尽くしていく。

 そんな中、後部の副操縦席「和(にぎ)魂(みたま)座(くら)」から魅(み)琴(こと)が身を乗り出してきた。

 

「航(わたる)、私(わたし)の言うとおりに機体を動かしてみて」

「何か判(わか)ったのか?」

「根拠は無いけれど、多分こういうことじゃないかと思うのよ」

 

 魅(み)琴(こと)の指示を受けた航(わたる)は、その通りに機体を動かす。

 その動きに釣られ、此(こ)方(ちら)を狙う神像もまたそれぞれ床を這(は)うように動く。

 

「後少し! このままそれぞれの神像を色の付いた床の上まで持って来て!」

「了解!」

 

 航(わたる)は光線を回避しながら、八柱五組の神像を五芒星の頂点へと誘導していく。

 そして、遂(つい)に「國(くに)狹(さ)槌(づちの)神(かみ)」を黒、「豐(とよ)斟(くむ)渟(ぬの)神(かみ)」を赤、「泥(う)土(ひじ)煮(にの)神(かみ)・沙(す)土(ひじ)煮(にの)神(かみ)」を黄、「大(おほ)戸(と)之(の)道(ぢの)神(かみ)・大(おほ)苫(とま)邊(べの)神(かみ)」を白、「面(おも)足(だるの)神(かみ)・惶(かしこ)根(ねの)神(かみ)」を青の円上へ持ってきた時、神像は光線砲の連射をぴたりと止めた。

 また、反射していた光線も壁面に吸収されて消えてしまった。

 

「ふう、助かったか。しかし、能(よ)く判ったな」

「北(きた)畠(ばたけ)親(ちか)房(ふさ)の『神(じん)皇(のう)正(しょう)統(とう)記(き)』に拠(よ)ると、國(くにの)常(とこ)立(たち)神(のかみ)の後から伊(い)弉(ざ)諾(なぎの)尊(みこと)・伊(い)弉(ざ)冉(なみの)尊(みこと)の前の神々はそれぞれ五行の徳を司(つかさど)ると云われているらしいのよ。木・火・土・金・水の徳はそれぞれ青・赤・黄・白・黒に対応している。だから、それぞれに対応する色の円上に移動させれば何かが起こると考えたの。思った通りだったわ」

「そうか。君(きみ)の知識に助けられた形だな」

「フ、私(わたし)は文武両面で貴方(あなた)の遙(はる)か上を行くのよ」

 

 そんな話をしていると、五芒星の中央から新たに二体の神像の彫刻が迫(せ)り上(あ)がってきた。

 それぞれ「伊(い)弉(ざ)諾(なぎの)尊(みこと)」「伊(い)弉(ざ)冉(なみの)尊(みこと)」の表示が台座に彫られている。

 また、二つの台座にはそれぞれ次の層への入り口が開けられていた。

 

『上:神(かみ)世(よ)七(なな)代(よ)の層――下:地(ち)神(じん)五(ご)代(だい)の層』

「どちらかの道を選んで先へ進めということらしいわね」

「なんだかゲームのダンジョン攻略みたいだな。まあ此処は伊(い)弉(ざ)諾(なぎの)尊(みこと)だろうな」

「そうね。私(わたし)でもそっちを選ぶわ」

 

 カムヤマトイワレビコは更に次の層へと進んでいく。

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