日本と皇國の幻争正統記   作:坐久靈二

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第百十九話『君側の奸』 序

 超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムヤマトイワレヒコを降りた四人は、鸕(う)鶿(が)草(や)葺(ふき)不(あえ)合(ずの)尊(みこと)の神像に拵(こしら)えられていた階段を昇り、像の掌(てのひら)に止まっていた鸕(ろ)鶿(じ)の彫刻の背中に乗った。

 すると、頭上の巨大な球体から四人の眼(め)前に一羽の烏(からす)を模(も)した彫刻が降り立つ。

 

「三本足の烏、八(や)咫(た)烏(がらす)か……」

「これが私(わたし)達をあの『人(じん)代(だい)の璽(じ)』という球体に導いてくれるということだけれど……」

 

 八(や)咫(た)烏(がらす)の彫刻は空中で羽(は)撃(ばた)いたまま鸕(ろ)鶿(じ)の前に留(とど)まり、その両眼を光らせた。

 光に包み込まれた四人は、そのまま上方の「人(じん)代(だい)の璽(じ)」に向かってゆっくりと浮上していく。

 

「ふにゅぅ……」

「凄(すご)い技術です……」

「まるでファンタジーの神殿だな……」

「多分、そういうコンセプトなんでしょうね……」

 

 岬(さき)守(もり)航(わたる)と麗(うる)真(ま)魅(み)琴(こと)は、この無(む)窮(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・アメノミナカヌシを進む中で神(じん)皇(のう)の世界観を見た気がしていた。

 日本神話の物語を描いた絵画に、神々を模(かたど)った彫刻――それらへの愛着を余すことなく注ぎ込んだこの設備の造形は、おそらく自らの血筋へと繋(つな)がっていく。

 神(じん)皇(のう)にとって日本とは、おそらく一つの巨大且つ壮麗な幻想物語なのだ。

 彼が自らの絶大なる力を以(もつ)て行使しようとしている破壊と殺(さつ)戮(りく)は、その壮大な世界観を守ろうとしての凶行に違い無い。

 

「私(わたし)には少し解(わか)る気がする……」

「え?」

 

 魅(み)琴(こと)は悲しみを宿した眼で周囲の空間を見下ろしていた。

 この場所からだと、部屋の外に拵えられた神々の彫刻が能(よ)く見える。

 

「私(わたし)はこの世界に生まれた時、一匹の邪悪な獣(けだもの)だった。けれども貴方(あなた)を始め愛すべき人達と沢山出会って、世界の美しさを知ったの。そして素敵な人達を育んだ歴史と文化を持った日本のことも……。そんな世界で生きる私(わたし)の人生も、まるで夢物語の様で……」

 

 だから、何を犠牲にしても守りたかった。

 だから、己を犠牲にしてでも戦った――魅(み)琴(こと)が言いたいのはそういうことだろう。

 

「だが、それは神(じん)皇(のう)のしていることとは違う」

 

 航(わたる)は魅(み)琴(こと)の肩を抱き、静かに、しかし力強く言い聞かせる。

 

「君(きみ)は襲い来る脅威に立ち向かい、運命に抗(あらが)ったんだ。神(じん)皇(のう)は自らの物語にとって邪魔な異物を世界から取り除こうとしている。同じな訳が無い」

「そうね。それに、こんなことを許していては愛した人達に顔向け出来ないわ。私(わたし)は私(わたし)の守ろうとした国を古くから築き上げ、守り続けた人達に愧(は)じることの無い私(わたし)で居たい、最(さい)期(ご)まで……」

「ああ……」

 

 丁度、四人は超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムヤマトイワレヒコの顔の高さまで浮上した。

 

「カムヤマトイワレヒコ……」

 

 共に戦ってきた愛機と対面し、航(わたる)は言い知れぬ感慨に襲われた。

 思えばこの機体には何度も助けられてきた。

 先代神(じん)皇(のう)を相手に決死の戦いを挑んだ魅(み)琴(こと)を迎えに行くことが出来たのも、その御(お)陰(かげ)で微(かす)かに繋がった希望を守って戦い抜けたのも、そして今再び戦う為(ため)にこの場所まで辿(たど)り着(つ)けたのも、全てこの日本国産超(ちよう)級(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・カムヤマトイワレヒコがあってのことだ。

 

「ありがとう。最後まで一緒に来てくれて、此(こ)処(こ)まで連れて来てくれて、本当にありがとう……」

 

 航(わたる)は心に湧き上がった言葉をそのまま口にした。

 この先、彼らに帰る術は無い。

 彼の愛機もまた、この場所で彼らと運命を共にするのだ。

 

「どうか見届けてくれ。立派に戦って来るから……」

 

 四人はカムヤマトイワレヒコの頭を越え、更に高く浮上していく。

 気が付くと、「人(じん)代(だい)の璽(じ)」と呼ばれる球体の外壁がもう目の前まで迫っている。

 カムヤマトイワレヒコを見下ろす航(わたる)は、ふと愛機が微(ほほ)笑(え)んだ気がした。

 表情などある筈(はず)も無いが、それでも航(わたる)は彼に見送られた気がしたのだ。

 

 四人は軈(やが)て、「人(じん)代(だい)の璽(じ)」の壁にそのまま入り込む。

 宛(さなが)ら、彼らを包む光の球が霧の中へと突入したといった様相だった。

 そのまま、暫(しばら)く上昇していくと共に、彼らの視界は徐々に闇に包まれる。

 そして周囲が完全に見えなくなると、航(わたる)達を包んでいた光も霧の様に消えてしまった。

 

「着いたみたいだな」

 

 航(わたる)達は足で床を踏み締めている。

 どうやら「人(じん)代(だい)の璽(じ)」内部の階層に辿り着いたらしい。

 目の前がゆっくりと開け、外の光が見えてくる。

 

「さあ、行こうか」

 

 四人は光の下へと歩き出した。

 

⦿

 

 無(む)窮(きゆう)為(い)動(どう)機(き)神(しん)体(たい)・アメノミナカヌシへの正規の入場方法は、神(じん)皇(のう)の許可を得た上で巫(ふ)璽(じ)山頂から此処「人(じん)代(だい)の璽(じ)」へと転移するに限られている。

 正規入場者は転移の最中に天(てん)地(ち)開(かい)闢(びゃく)から神(じん)武(む)東征までの記紀神話を短時間の走馬灯に見せられ、映像が終わると共に「人(じん)代(だい)の璽(じ)」の玄関口となる場所へと転移を完了する。

 

「また彫刻の像か……」

 

 航(わたる)達が辿り着いたのは、まさにそんな「人(じん)代(だい)の璽(じ)」の入り口、「皇(こう)祖(そ)皇(こう)宗(そう)の廻(かい)廊(ろう)」と呼ばれる広々とした廻(かい)廊(ろう)の開始地点である。

 その壁際には、無数の立像が並べられている。

 最初に目に付いた像には、名札として「初代・神(じん)武(む)天皇・神(かむ)日(やま)本(と)磐(いわ)余(れ)彦(びこの)尊(みこと)」の文字が台座に彫られている。

 両隣に目を遣(や)ると、非常によく似た像が二つ――それぞれ「二代・綏(すい)靖(ぜい)天皇・神(かむ)渟(ぬ)名(な)川(かわ)耳(みみの)尊(みこと)」「二代・綏(すい)靖(ぜい)天皇・神(かむ)八(や)井(い)耳(みみの)尊(みこと)」との名札が付けられている。

 

「御(お)爺(じい)様(さま)の言っていた通りね。日本と皇(こう)國(こく)では、二代天皇の時点で歴史が分かれていた」

「成程、二つの日本の分岐はそこだったのか。やっと謎が解けたよ」

 

 二つの像の先にはそれぞれ、更に三代・四代……と、日本と皇(こう)國(こく)それぞれの歴代天皇の像が並べられている。

 

「皇(こう)國(こく)の方も昔は『天皇』だったんだな」

「『神(じん)皇(のう)』と称し始めたのは先代が帰還してヤシマ政府を斃(たお)し『神(しん)聖(せい)大(だい)日(にっ)本(ぽん)皇(こう)國(こく)』を建国してからだから、それはそうでしょうね……」

 

 この様な何気ない細部にも、両の日本が辿(たど)った歴史の差異が顕(あらわ)れている。

 

「扨(さ)て、行こうか」

 

 四人が廻廊を先へ進もうとした、その時だった。

 

「そこまでだ、侵入者共」

 

 航(わたる)達が進もうとした反対側、皇(こう)國(こく)の歴代帝(みかど)像が並ぶ側の通路から二人の男が現われた。

 頭を丸めた力士を思わせる巨漢と、極端な長身痩(そう)躯(く)の男――如(い)何(か)にも凸凹コンビと言った二人組だ。

 

「榊(さかき)御(み)門(かど)侯爵家当主・榊(さかき)御(み)門(かど)飯(い)降(ぶり)」

「菊(きく)屋(や)敷(しき)侯爵家当主・菊(きく)屋(や)敷(しき)師(もろ)継(つぐ)。神(じん)皇(のう)陛下の御(ご)大(たい)望(もう)を阻もうとする不届き者共、此処で余さず始末してくれよう」

 

 思わぬ敵襲――航(わたる)と魅(み)琴(こと)は咄(とつ)嗟(さ)に振り向き、雲(くも)野(の)兄妹を庇(かば)う様に立(た)ち塞(ふさ)がる。

 兄・雲(くも)野(の)幽(ゆ)鷹(たか)は魅(み)琴(こと)の、妹・雲(くも)野(の)兎(と)黄(よ)泉(み)は航(わたる)の背中に隠れ、怯(おび)えて震えていた。

 

「二人共、少し離れていてくれ。でも、余り遠くには行き過ぎるなよ」

「安心しなさい、すぐに終わらせるわ」

 

 雲(くも)野(の)兄妹は無言で頷(うなず)くと、航(わたる)と魅(み)琴(こと)から離れて天皇像の陰に隠れた。

 二人切りとなった航(わたる)と魅(み)琴(こと)は改めて榊(さかき)御(み)門(かど)飯(い)降(ぶり)・菊(きく)屋(や)敷(しき)師(もろ)継(つぐ)の二人と対(たい)峙(じ)する。

 

「時間が無いんでな。やるならさっさと始めよう」

 

 航(わたる)が力士然とした巨漢・榊(さかき)御(み)門(かど)と、魅(み)琴(こと)が長身痩躯の拳法服男・菊(きく)屋(や)敷(しき)と、それぞれ向き合った。

 対する二人は不気味な笑みを浮かべる。

 

「まさか貴様ら、我々をやられ役の雑魚(ざこ)とでも思っているのか? 青(せい)華(が)家(け)当主の我々を」

「見(み)縊(くび)るなよ。我々は皇(こう)國(こく)でも指折りの『精神系能力』の使い手なのだ。如何に貴様らが強かろうが、心が屈してしまえば此(こ)方(ちら)のものよ」

 

 両者の間の空気が張り詰める。

 戦いの火蓋が早くも切られようとしていた。

 

「さあ、先(ま)ずはそこの優男! 貴様から捻(ひね)り潰(つぶ)してくれる!」

 

 最初に動いたのは巨漢・榊(さかき)御(み)門(かど)だった。

 彼の両眼が妖しい光を放つ。

 

「私(わたし)の術(じゆつ)識(しき)神(しん)為(い)は、敵に自分の姿を『過去最も恐怖した対戦相手』に錯覚させるというもの! 更に、私(わたし)の攻撃の痛みもまたその対戦相手の攻撃と同じ痛みを発生させる! さあ、恐怖に慄(おのの)きながら為(な)す術(すべ)無く死ぬが良い!」

「え?」

 

 榊(さかき)御(み)門(かど)の言葉に航(わたる)は表情を引(ひ)き攣(つ)らせた。

 航(わたる)にとって「過去最も恐怖した対戦相手」は自明である。

 航(わたる)の見る榊(さかき)御(み)門(かど)の姿が徐々に変貌していく。

 

「みっ、みみみみみ……!」

 

 航(わたる)の眼に映っているのは、邪悪な笑みを浮かべる魅(み)琴(こと)の姿だった。

 

「ひ、ひいいいいっっ!!」

 

 航(わたる)は恐怖で固まって動けない。

 彼の眼に映っている魅(み)琴(こと)の幻影は一瞬で距離を詰め、航(わたる)の顔面に強烈な拳の一撃を叩(たた)き込(こ)んだ。

 

『アハハハハ! 私(わたし)の拳の味はどうかしら? 強く激しく壊してあげるわ!』

 

 航(わたる)は顔面に凄(すさ)まじい激痛を感じていた。

 榊(さかき)御(み)門(かど)の言葉も、魅(み)琴(こと)の声と言葉に変換され、幻聴となって頭に鳴り響く。

 だが、航(わたる)は全く堪えていなかった。

 

「これが……魅(み)琴(こと)の拳? この程度が?」

 

 航(わたる)は榊(さかき)御(み)門(かど)の腕を掴(つか)み、捻り上げた。

 彼の瞳には既に、目の前の敵が正しい姿で映っている。

 

「ぐああああっっ!」

「確かに、この痛みは魅(み)琴(こと)の拳そのものだ。あいつの拳は威力以上に異常に痛い、それは確かにそうだ」

 

 魅(み)琴(こと)の恐ろしさは、超絶の身体能力も然(さ)る事(こと)ながら、人体構造を天(てん)賦(ぷ)の才で知り尽くしているが故に最も効果的に苦痛を与える拳の打ち方をするところにある。

 彼女との戦いはそれ自体が拷問に等しい。

 だがそれでも、そんな彼女の拳そのものの痛みを以てしても、航(わたる)は全く揺るがなかった。

 

「でも全然違うんだよ。拳から伝わる『痛み』の説得力が。この拳は自分を確実に壊す力がある、にも拘(かか)わらずギリギリ命運を繋がされている、そんな嗜(し)虐(ぎやく)の説得力が全然足りない。更に、はっきり言って間合いを詰める速度も全然なっちゃいない。つまり、見た目と痛み以外の全てが魅(み)琴(こと)からは程遠い、似ても似つかない!」

 

 この相手は魅(み)琴(こと)の真赤(まっか)な偽物である――そう認識してしまったが最後、榊(さかき)御(み)門(かど)の能力は航(わたる)に幻覚を見せ続けることが出来なくなってしまったのだ。

 彼は持ち前の怪力で捻られた腕を振り払い、体勢を立て直す。

 

「ならば仕方が無い! この榊御門自らの剛力を以て貴様の生白い肉体を挽肉にしてくれるわ!」

 

 榊(さかき)御(み)門(かど)は皇(こう)國(こく)でも有数の大貴族である。

 それ故、神(しん)為(い)そのものも非常に大きい。

 加えて、力士にも似た彼の体型はそれに違わぬ剛力を備えているのだ。

 しかし、そんな榊(さかき)御(み)門(かど)の拳を航(わたる)は軽々と受け止めた。

 

「な、何……?」

 

 航はこの一箇月、魅琴を相手に格闘の鍛練を積んできた。

 そんな彼にとって、榊御門の剛力など既に物の数ではないのだ。

 

「時間が無い、一気に決めてやる!」

 

 今度は航(わたる)が拳を振るった。

 

 

⦿

 

 一方、長身痩躯の男・菊(きく)屋(や)敷(しき)もまた魅(み)琴(こと)を相手に精神系の能力を行使しようとしていた。

 彼の両眼が妖しい光を放つ。

 

「私(わたし)の術(じゆつ)識(しき)神(しん)為(い)は催眠洗脳! 常識改変・人格上書き――汎(あら)ゆる手法で対象の精神を書き換える! 相手に合わせて最も適切な手段を自動で選択し、一瞬にして御(お)手(て)軽(がる)催眠洗脳を完成させる! 如何に強かろうが、この能力に掛かれば抑(そもそ)も戦いにすらならん!」

 

 魅(み)琴(こと)の両眼から光が消えた。

 菊(きく)屋(や)敷(しき)の能力が選択したのは「人格の完全消去と新しい人格の植え付け」である。

 魅(み)琴(こと)は構えを解き、両腕両脚そして背筋を真(まつ)直(す)ぐに伸ばした姿勢を取った。

 

「くくく、さあこれで貴様は私(わたし)のものだ。これからは私(わたし)の、神(じん)皇(のう)陛下の忠実な奴隷戦士として働くのだ。手始めに侵入者をその手で鏖(みなごろし)にせよ」

 

 菊(きく)屋(や)敷(しき)は魅(み)琴(こと)に無慈悲な命令を出す。

 だが、魅(み)琴(こと)は微動だにせずただ不敵な笑みだけを浮かべた。

 

「悪いけれど私(わたし)、そういうのは通用しないのよ」

「な、何!?」

 

 魅(み)琴(こと)の両眼には光が戻っていた。

 想定外の事態だったのだろう、菊(きく)屋(や)敷(しき)は焦燥の表情で後(あと)退(ずさ)る。

 

「簡単に言うと、私(わたし)は抑も本来の自分を自分で洗脳して今の自分を作り上げているの。本来の邪悪な獣(けだもの)を今の淑(しと)やかな手(た)弱(おや)女(め)の人格に自ら塗(ぬ)り潰(つぶ)している」

 

 一体どの口で「淑やかな手弱女」と言うのかは扨(さて)置(お)き、確かに魅(み)琴(こと)には菊(きく)屋(や)敷(しき)の能力が全く通じていない様だ。

 本来の自分を己で洗脳している――物は言い様だが、確かに彼女にはそういう側面もあるだろう。

 尤(もつと)も、宇宙空間を生身で暴れ回る麗(うる)真(ま)魅(み)琴(こと)という女は抑も常識で測れないのかも知れないが。

 

「同時に、精神の根の部分では本来の邪悪な獣(けだもの)が主導権を取り戻し、いつでも表に出て来られる状態にある。謂(い)わば私(わたし)には汎ゆる洗脳に対し既に耐性を持っているのよ」

「ば、莫(ば)迦(か)な……!」

 

 更に後退る菊(きく)屋(や)敷(しき)だが、追い詰められた彼は拳法の構えを取った。

 

「こ、こうなれば己の拳で通すのみ……!」

「そ、話が早くて助かるわ」

 

 対する魅(み)琴(こと)も拳を握り締めた。

 すぐ側では航(わたる)が拳を振るっている。

 魅(み)琴(こと)もまた、襲い掛かってきた菊(きく)屋(や)敷(しき)を拳で迎え撃とうとしていた。

 

「退(ど)いてもらうぞ!」

「とっとと消えなさい!」

 

 航(わたる)と魅(み)琴(こと)、二人の攻撃がそれぞれの相手を同時に激しく打ち付けた。

 榊(さかき)御(み)門(かど)と菊(きく)屋(や)敷(しき)は宙空に高々と舞い上がる。

 

「ふにゅ、凄い……」

「瞬殺です……」

 

 雲(くも)野(の)兄妹が嘆息するのも無理は無い。

 岬(さき)守(もり)航(わたる)と麗(うる)真(ま)魅(み)琴(こと)――この二人は今や日本国でも並び立つ者が居ない最強コンビだろう。

 床に叩(たた)き付(つ)けられた榊(さかき)御(み)門(かど)と菊(きく)屋(や)敷(しき)は意識を失い、再び起き上がってくることは無かった。

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