退魔のTS巫女。※なお、巫女服は着ない模様   作:掛け布団

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1 真央とレイ

「あー。見た感じ、今のところ何も悪いところはなさそうだな。ま、一応念のため、しばらくは来てもらうが、悪く思うなよ」

 

俺が変な怪物に襲われてから、3週間が経った。3週間前、俺のことを助けた真っ赤な髪のガサツ女、御共霊奈との交流は、いまだに続いている。

 

何でも、俺があの怪物に襲われたのは、『妖魔界』と呼ばれる場所らしく、普通の人間なら入って1分も経たないうちに死んでしまうものらしい。それを何故か、俺は1分以上『妖魔界』にいながらも、体に不調は起こらなかった。

 

そのことを訝しんだ霊奈……いや、レイが、毎日学校終わりに、この神代神社へ寄るようにと、俺に一方的に告げてきたのだ。一応、俺の体調に異常が起こる可能性もあるから、そのケアも兼ねている、と言っていたので、俺としても診てもらって損はないかなーって、そんなわけで最近は毎日、この神代神社に通うようにしている。

 

幸い、俺は帰宅部に所属しているので、放課後の時間には余裕があるのだ。

 

「結花ちゃんはまだ帰ってないのか?」

 

結花というのは、レイの妹のことだ。結花はガサツなレイと違って、優しく、穏やかな少女だ。ただまあ、元気で明るいってところは似てるし、そういう部分を見ると、レイと結花はやっぱり姉妹なんだな、とは思うが。

 

「結花は今日は友達と遊んでくるってさ。あーあ。前まではおれのこと気にして、早めに帰ってくれてたんだけどな。どっかの誰かさんが毎日ここに通うせいで、愛しの妹が不良少女になっちまった」

 

レイはニヤニヤしながら、そんなセリフを吐く。うん。やっぱり結花ちゃんとレイは全然似てないな。結花ちゃんと違って、やっぱりレイは性格が悪い。

 

「それは悪かったな。というか、俺って結花ちゃんに嫌われてるの?」

 

「ちげーよハゲ。結花は『真央さんが毎日来るから、お姉ちゃんは寂しくないよね』なんて意味不明な理論を展開して早く帰るのをやめただけだぞ。お前が結花の代わりになるわけないのにな」

 

「俺はハゲじゃねーよ! って、嫌われてないのか、よかったー」

 

「結花のやつ、勝手におれの彼氏かなんかだと思いやがって……違うってのに……」

 

「ん、なんか言った?」

 

「っ、何でもない! つーか、今日は何持ってきたんだ? つまらんもん持ってきてたら許さん」

 

まあ、こんな感じで、俺の体の状態を診てもらうついでに、俺はレイとこうして交流しているわけだ。で、今レイから何持ってきたのかって聞かれてるけど、これは俺とレイとの間の契約で、俺はレイに体の状態を診てもらう代わりに、俺はレイに何かお返しをするっていう約束をしたのだ。

 

で、その約束を果たすために、俺はレイの家にゲーム機やら漫画やらを持っていって、それらをレイに貸しているってわけだ。どうもレイの奴、生まれてからゲームとか漫画を触ったことがなかったらしく、俺が最初に持ってきた時は目をキラキラさせてたものだ。そういう顔ばかり見せてくれれば、可愛げがあるんだけどな。

 

「今日はオセロ。ルールはわかるか?」

 

「あーあれだろ? なんか挟むやつ。なんだ、あれだ、あれ」

 

この反応、多分こいつオセロ知らないな?

いや、まあレイはこういう奴だ。変なところで見栄っ張りで、だけど嘘をつくのが下手である。でもまあ、俺としてはそんな彼女のことをいじめるつもりはない。俺はレイと違って性格が良いからな。

 

「あーそうそう。よく分かってるじゃないか。ルールは簡単。まずは白い石を持つ人と黒い石を持つ人にわかれる。そしたら、今度は交互に石を置いていくわけだ。で、最終的に自分の色の石が多い方が勝ちっていうゲームだな。で、例えば黒と黒で白の石を挟んだ場合は、白の石を黒の石に変えることができるんだ。レイが言ったのはそのことだな」

 

「お、おう。そうだな。も、勿論分かってたからな!」

 

「ま、流石のレイでも、オセロのルールくらいわかるよなぁ〜。いやぁごめんごめん、流石にレイのこと侮りすぎてた」

 

「ぐぬぬ……」

 

変なところで意地張るんだよなぁこいつ。別にオセロのルール知らなくたってそんなに悔しがらなくても良いと思うんだけどな。

 

「で、どっちの色がいい?」

 

「じゃあ、まあ、おれは白で」

 

てっきりかっこいいから黒! っていう風に答えるかと思っていたが、まあ、まだ出会って3週間。俺もまだまだレイのことを完全に理解しているというわけでもないらしい。

 

レイなんて風に呼んでるから、親しいのかと思われるのかもしれないが、レイって呼ばせてるのは、単純に霊奈って呼ばれるのが嫌なんだと。どうにも女の子って感じがしてむず痒い、とか何とか言ってた気がする。別に本当に女の子なんだし、気にしなくていいじゃないかとは思う。

 

俺も友達には苗字の方で呼ばせたりしているが、それは単純に名前だと女の子って勘違いさせることがちょくちょくあったから、面倒臭いし苗字で呼ばせてるってだけで、むず痒いとか、そういう動機とはまた違う。

 

まあ、多分まだしばらくレイとの関係は続く。レイのことを知るのは、別に今じゃなくたって良いだろう。

それに、俺は、レイのことを全く知らないままでだって、何の問題も、ないんだから。

 

「じゃあ、俺が先攻ってことで」

 

「おい待てずるいぞ! 何でお前が先なんだよ!」

 

「何でって、オセロって基本黒側からだろ? いやいや、まさかレイ、オセロのルール把握してないなんてことはないよな?」

 

「あ、あ、当たり前だろ! た、単純に忘れてただけだからな! ふーそうだったそうだった。黒側が先な。おーけーおーけー」

 

とりあえず、オセロの準備を進めながら、俺はレイに話しかける。

 

「そういえば何だけどさ」

 

「ん?」

 

「最初に会った時、レイは俺のこと助けてくれただろ? 何であの時は『妖魔界』に来てたんだ? 普段から『妖魔界』に行ってるってわけでもなさそうだし」

 

聞こう聞こうと思っていながらも、ずっと聞けていなかったことを、今日聞く。自分でも、何で今まで聞いてこなかったのか、いや、多分、怖かったんだろう。

 

今でこそこうして普通に話せているが、俺だってあんな化け物に襲われて何のトラウマもないわけじゃない。いつあんな非日常が訪れてもおかしくないなんて状況に、普通は耐えられるわけじゃない。だからだろうか、俺は無意識のうちに、非日常の話を頭に入れることを拒否していた。

 

今までレイのところにゲーム機や漫画を持っていっていたのも、多分、俺にとって非日常の象徴であるレイを、日常に馴染ませようと、そう思った結果だったのかもしれない。

 

でも、これからもレイと関わっていくなら、知っておかなきゃ行けない気がした。いつかきっと、非日常と向き合わなきゃ行けない時が来るんだって、何となくそう思ったから。

 

本当は、もっと先延ばしにしようと思っていたんだけど、何でだろうな。何で今、聞いたんだか。

 

「別に、たまたまだよ。『妖魔界』に何か用事があったってわけじゃないしな。あーそうだ。そう、近道だ。『妖魔界』は人気少ないし、現実世界とリンクしてるからな。『妖魔界』を経由すれば、人混みを回避しながら移動できるんだ。だからまあ、あの日もたまたま、おれが『妖魔界』経由で移動してた時に、お前がたまたま妖魔に襲われてるのを見たから、助けねぇのも寝覚め悪いしなって思って助けたってだけだ。特に深い意味はねーよ」

 

多分、嘘、だろうな。何か、隠してる? でも、普段みたいにあからさまに嘘をついてるみたいな雰囲気は感じない。多分、日常的に『妖魔界』を使って移動している部分は本当のことなんだろう。けど、きっと俺を助けた時、何で『妖魔界』にいたのか、その理由については、きっと何か、別の理由があるに違いない。

 

どうして、はぐらかすんだろうか。せっかく覚悟を決めて聞いたのに。

でも、まあ、『妖魔界』の話が多少なりとも聞けたんだ。今日はそれだけで、満足するべきなのかもしれない。

 

「あと、もう一個言いたいんだけどさ」

 

「ん? 何だよ」

 

「レイ、これ、挟めてないよ」

 

「は? いやいやいや! どう見ても挟んでるだろ! どう見てもお前の石はおれの石に挟まれてる!」

 

やっぱり、レイの奴、オセロのルールちゃんと把握してないっぽいな。

どうにもレイは端っこがひっくり返せないってことを知らないらしい。というか、普通にやってたらこれで挟んでるとはならないと思うんだが。

 

「あのなレイ。端っこは挟めないんだよ」

 

「も、も、も、勿論知ってたぜ!」

 

さっきまで挟めてる! ってはしゃいでた癖に、俺がルールの話をしだしたら、ルールを把握してないって思われたくないのか、あっさり挟めてないってことを認め出した。……切り替えだけは一丁前に早い奴だな。

 

「んでまぁ次の一手でレイは詰み、俺の完全勝利なわけだが」

 

「いやいやいや。お前馬鹿だな? 見ろよ、ここで4枚くらいひっくり返せるじゃねぇか。これで逆転だ!」

 

「2枚ひっくり返して………はい。駒の総数俺の方が多いから俺の勝利」

 

レイはとにかくいっぱいひっくり返せば勝ち! って思ってるらしく、そのせいか誘導が滅茶苦茶簡単だった。俺がちまちま駒をひっくり返すたびに、たくさん駒をひっくり返せる場所においてはドヤ顔で俺のことを見てきたレイだったが、結局のところ俺の手のひらの上だったわけだ。

 

初心者相手に大人気ないって? 甘いな。勝負の世界ではそんな戯言は通用しないのだ。

何より、初見のレイに負けて彼女に勝ち誇った顔をさせるのは俺のプライドが許さない。

 

「く、くそ〜! もう一回! もう一回だ!!」

 

「いいぜ。何度でもかかってきやがれ!」

 

その後もレイは俺に勝負を挑んできたが、10回ほどやって、10連勝した。

流石にしょぼんとしていて可哀想だったので、手加減して勝たせてやったらめちゃくちゃ勝ち誇った顔をしながら煽ってきた。

 

ムカついたのでその後3戦して調子に乗ってるレイをぶちのめし、涙目になったレイを勝ち誇った顔で見下しながら優越感に浸った。

 

ちなみにその後、涙目になったレイを見た結花ちゃんに殺されそうになったが、何とか誤解(?)を解いて難を逃れた。

次やる時は程々にしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ったく、あの野郎ちょっとは手加減しろっての。

ま、それはそれとして、オセロは楽しかったけどな。ただ挟んでひっくり返すだけのゲームなのに、あんなに熱中するとは。あいつも中々面白いものを持ってくる。

 

「レイ姉最近楽しそうだね」

 

「まあ、そうだな」

 

ゲームとか漫画なんて、前世から全く触れてこなかった。オセロだって初めてだったし、昨日はトランプにも初めて触れた。

今までおれがやったことのある遊びなんて、せいぜい前世の幼少期に鬼ごっこをやったり、学校行事で百人一首をやったりしたくらいだったもんだから。

 

「やっぱり、真央さんが来るようになってから、変わったよね」

 

「まあ、あいつ色々面白いもの持ってくるからな」

 

「本当にそれだけかな? 真央さんが来るようになってからのレイ姉、表情明るくなった気がする」

 

「そうかぁ?」

 

まあ結花が言うなら、そうなんだろう。

でも、勘違いしちゃいけない。おれは前世でも、失敗してる。

 

あいつは、ただ『妖魔界』にいた影響で体に異変がないか、それが気になって毎日おれのところに来ているだけだ。

おれだって、今まで『妖魔界』に1分以上滞在していて平気だって男を見たことがなかったから、一応監視しておいた方がいいかもしれないって、ただそれだけの話なんだ。

 

別にあいつは、友達じゃない。ただ、おれの暇潰しの相手をしてくれるってだけの、それだけの相手だ。

 

「まあ、そんな話はさておき。結花、あいつは無事に帰れてそうか?」

 

「レイ姉、やっぱり真央さんのことが心配なんだ。照れちゃって。真央さんは無事だよ。私の『呪符』で守ってるからね」

 

「ちげーよ。おれがここにとどめたせいで死なれたら寝覚が悪いってだけだ」

 

あいつは一度、『妖魔界』に引き込まれてる。妖魔に目をつけられたことがある。妖魔が好む人間っていうのは大体決まってる。だから、同じ人間を別の妖魔が襲う可能性は結構高い。だから、結花に『呪符』を作らせて、あいつのことを守ってもらっているのだ。

 

「そんなに心配してるなら、レイ姉が『呪符』作ってあげればいいのに」

 

「おれは神代の人間じゃないからな。そんなことする義務はない」

 

退魔士は自身に宿っているその妖力を用いて妖魔を退治するのが仕事。だが、おれは別に退魔士じゃない。妖力はあるし、妖魔を退治することができる。けど、おれには人々を妖魔から守る義務も責務もない。

 

だから、口が裂けても言えない。

 

『最初に会った時、レイは俺のこと助けてくれただろ? 何であの時は『妖魔界』に来てたんだ?』

 

あの時は、『妖魔界』を移動手段として使っていると答えたが、当然そんなものは嘘だ。普段から移動手段として使っていることは事実だ。といっても、それはおれが普通じゃないからできることなんだが。

 

おれは、中途半端なんだ。妖魔に引きずり込まれていく奴が見えて、もう『妖魔界』に引き込まれてるっていうのに、それでもまだ助かるかもしれないなんて、退魔士の真似事をして……。

 

こんな、退魔士のなり損ないが、退魔士の真似事をしたなんて、言えるわけがない。

 

だってそうだろう。

おれは、『忌み子』なんだから。

 

おれの役目は、結花を守ること。ただそれだけだ。

だから、あくまでおれは結花の代わりに、妖魔を退治する。そこに、間違っても人助けが混じってちゃいけない。

おれは、求められていること以上はしてはいけないんだから。

 

だから、そう。おれがあいつを助けることになったのは、たまたまだ。

たまたまでなくちゃいけない。あいつのことを監視するのだって、もし万が一、結花に害を与えるような存在で、実は裏で結花を暗殺する計画を立ててました、なんてことが起こらないようにするためであって、決して人助けのためじゃない。

 

それに、どうせおれは長くは生きられない。

詳しくは知らない。ただ、おれの寿命は、18歳の誕生日を迎えた時に尽きるらしい。

 

それも、『忌み子』だから。

 

ああ、わかってる。これは、なるべくしてなった。決して不幸なんかじゃない。

 

だからおれは、その時が来るまで、しっかり結花を守り抜く。

 

そして、もし、その時が来たら。

18歳の誕生日を迎える日まで、ちゃんとおれの役割をこなしていれば……。

 

もしかしたら、皆、おれのこと……。

 

「はぁ。やめだやめ。めんどくさいことは考えるな。まだ2年はある。終わりの話をするには、まだはやい」

 

ああそうだ。本番はこれからなんだ。何達成した気になってるんだか。

後2年。そう、後2年、妹を守り抜かなくちゃいけないんだ。

 

何が何でも、おれはおれの役割を全うしなきゃいけない。

たとえ、誰からも愛を貰えないのだとしても。おれは……。




なんでシリアスさんが顔を出してるんですか…
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