アンジュ・ヴィエルジュ 〜知らば輝く青玉の瞳〜   作:二面サイコロ

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 初めまして、二面サイコロです。この度は閲覧いただきありがとうございます。
 二次創作は初となります。至らぬ点あるでしょうがご容赦ください。
 
注意:セニアとアウロラが登場しません。物語を思いつけばいずれ登場させるかもしれませんが、あまり期待しないで下さい。全国のセニア・アウロラファンの皆さん、ごめんなさい。代わりにオリジナルヒロインを登場させます。


第一章 蘭色のプロローグ
第一弾 始動


 俺、東雲 慎(しののめ しん)がこの学園に来てから、初めての春がやってきた。

 まあつまり、それは今日が新たな入学式であることを意味する。

 正直、この島での生活にはだいたい慣れたと思う。この夢と希望と個性と異能(!)にあふれた学園生活はわりとあっという間に過ぎるのである。

 だが今までのその僅か数ヶ月は嵐のようなもので、あっという間に過ぎつつもそこを駆け抜けた俺は色々な経験を積めたように思える。

 目を閉じれば今でも思い出せる、出会い、闘い、涙、苦悩、喜び、荒事、荒事、荒事。

 あれ。俺、実は結構ろくでもない道を通ってきたのか?

 ま、まあとにかく、それらは確実に俺を成長させているのではないだろうか。

 俺に文才さえあれば本でも書いてぼろ儲けできる所だが、あいにくそんな文才も暇もないんだよな。

 今日は入学式。新しい(と言ってもエスカレーターだが)生活の幕開けを告げる儀式が行われるのである。

 

 シャアアアアア、とあまり人気の無い道路に自転車の車輪の摩擦音が響く。

 さて、俺がなぜ自転車をこぎつつ過去に想いを馳せいるのかというと。

 簡単な話、バスが混むのが嫌なのである。

 大概の生徒は普段、寮から学園を繋ぐバスを利用しているのだが、これがまた異様に混む。混みまくる。

 寮生がみんなバスで通学しようとすればバスがごった返すのは当たり前で、そのくせ学園側がバスの本数を増やすなどの対策をとってくれないのはいささか不満であるが、普通に歩いても遅刻にはならないので大した問題ではない。

 事実、爽やかな春の陽気にテンションが上がったのか知らないが、時折箒に乗って空を飛び学園へと向かう魔女らしき黒ローブの少女や、反重力なんたらとかいう装備で飛んでいるらしいアンドロイドなどの姿が真上に見られる。

 話が少し逸れたが、つまり移動手段なんていくらでもあるし、俺はバスが嫌で自転車で通学しているだけなのだ。

 近所のコンビニ、俺の寮とは違う寮の建物の傍を通り、街へと繋がるモノレールの下をくぐる。

 さらに遠くに見えるのは、様々な建造物の隙間から覗く、真っ青な水平線。

 ここ、青蘭島は、日本の南のはずれの離島である。

 元々、たしか名義上東京都の一部で、ほんとに周りに何も無い離島のくせに真水が湧いているくらいしか思う所の無い孤島だったのだが、数年前に起こったとある事象により大きな変化を遂げ、現在のような、ちょっとした都市並の景観になる。

 

 ーーー世界接続。

 数年前のある日、4つの世界が連結する。

 俺達の住む青の世界、地球。

 魔法と幻想が支配する黒の世界、ダークネス・エンブレイス。

 祈りと希望で満ちた赤の世界、テラ・ルビリ・アウロラ。

 全てが最適化された白の世界。システム=ホワイト=エグマ。

 時を同じくして、各世界を襲う異変。具体的には、異常気象、巨人(ギガント)や邪龍やアンドロイドの暴走、神様の浮気など。

 そして、青の世界の少年少女達に目覚めたチカラ。

 エクシードと呼ばれたその異能を持つプログレスは、世界を救う鍵として青蘭島に隔離、もとい保護され、エクシードを成長させるカリキュラムに従事。

 それが、青蘭学園。

 

 こんな立派な都市と学園がものの数年の内に建ってしまうのだから、割と現代の建築技術は侮れない。いや、侮れないのはこんなものを一瞬で造ってしまった行政だろうか。どちらも興味は無いので俺には関係無い話ではあるが。

 そして俺は、数ヶ月前までは本土の中学生。αドライバーの適性があるとしてここの中等部に編入してきたのである。

 

 シャアアアア、という断続的な音がビートを刻み、ペダルを踏む足をいっそう軽くさせる。

 こうしてみると、疲れるからと敬遠されがちな自転車も案外いいものである。

 程よく照らす春の朝日。それに応えるようにチチチチっと鳴く小鳥のさえずり。

 それらの合間に遠くから聞こえる、ぎょぉーーーっというオオハシの爽やかな鳴き声。

 いいね。実に平和だ。

 そうそう、あとたまに発生するイベントがあるんだ。

 今後ろから俺を猛スピードで飛びながら追いかけてる美少女型(青髪幼女)アンドロイドがそれだ。

 いやあ、自転車とはいえこの起伏の多い島を自転車で全速力で飛ばして逃げるのはけっこう疲れるもんだ。いい運動になるので丁度いいか。

 

 ーーーよし、明日からはビルの屋上を伝ってフリーランニングで通学しよう。

 

 入学初日から凄まじい決心である。

 

 「なんでこうなるんだよおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」

 

 悲痛な本心を大声で暴露しつつ、俺は自転車の進路を変え、人気のない方向へと向かう。

 

 ことの起こりはこうである。

 今朝、学校から一通の周知メールが届いた。

 内容は「白の世界のアンドロイドが一体暴走した。危険なのでプログレス以外は近づかないこと」といったものであった。

 うわー大変だ、やっぱり世界の異変って怖いなーとか思いつつどこか他人事のようにさっさと登校の準備をして登校する俺。

 その結果、運悪くその暴走アンドロイドに出くわし、なぜか追いかけられている。

 全国の一般高校の男子諸君は、眉目麗しい美少女に凄い勢いで追い回される夢想を一度はするだろう。もしそんなシチュに遭ったら、泣いて喜ぶに違いない。

 俺だってそういうシチュにあこがれが無いとは言わない。むしろ俺を追いかけてくれる美少女がいるならば今すぐここで名乗りを上げて欲しい。

 

 ーーーただし、一般人に限る、な?

 

 だってさあ! 聞いてくれよ!

 俺を追いかけ回してくれるのは、決まって超能力危険少女だったり、おっそろしい魔女だったり、バッチリ武装したアンドロイドだったり、はたまたむさ苦しい男どもだったりなんだよ!

 本気で死ぬかと思ったことが何度あったか……。いや、今まさにその状況なんだけども。

 

 「何でこんなになるんだよ……ちきしょおおおおお!」

 

 今までの不満も何もかも、全てをペダルにぶつけ、俺は全速力で自転車をこぐ。

 ひとつ誤算があるとすれば、俺が単なるαドライバーの男子ではなく、プログレス科所属のαドライバーなことだ。

 つまり俺には、 戦 闘 力 が あ る 。

 

 こいつで追い払うかーーー?

 

 俺は制服のジャケットの中にしまってある拳銃に少し触れる。

 いや、ダメだ。こんなところで発砲したら流れ弾が人に当たる可能性がある。それに、もし追い払えてもその後こいつが一般人を襲う可能性だってある。

 こんな街中でドンパチなんかやったらどうなることか分かったもんじゃない。恐らく学園側が回収係をよこしているはずだ。俺が鎮圧はできなくとも、少なくとも人気のない場所に誘導するのは絶対だった。

 とにかく人気の無い方向へ、方向へと進んでいた俺は、ついに全く人気のない路地に出る。

 やるなら今だ。

 

 「おらっ!」

 

 ガガガンッ!

 

 俺は自転車を片手運転しつつ振り返り、ホルスターから拳銃ーーーSTIタクティカルを抜きざまアンドロイドに向けて発砲した。

 狙いは胸の中央と、背中の動力っぽい左右の機械。だがーーー

 

 (避けやがったか)

 

 アンドロイドはひらりと身を躱し、銃弾の射線から逃れた。

 亜音速の銃弾が虚しく空を切りコンクリートの壁にめり込む。

 やはりアンドロイド相手に銃弾は通じない、か。

 ならば、取っ組み合いに持ち込んで体格で圧倒するしかない。

 バッ! と、向こうが銃弾を避ける間に自転車から飛び降りていた俺は、拳銃を持っていない方の手で掴み掛かろうと接近する。

 だが、飛び道具を持っているのは俺だけではないようだった。

 アンドロイドが白い拳銃のようなものをこちらに向け、続けざまにトリガーを引いた。

 狙いはーーー俺の胸の高さを横薙ぎに、同じく三発。

 緑色に輝くビームのような弾が、空気を切り裂き飛来する。

 両側の二発は躱せる。だが、真ん中の一発は躱せない。

 だから俺はーーー

 

 ガウンッ! ビシッ!

 

 銃弾を、ぶつけた。

 向こうが発砲したビームを、俺が発砲した鉛玉で。

 別に驚くことじゃないだろ? アメリカのSF映画では銃弾を剣だの同じ銃弾だのでバシバシ弾いてる。ほら、ライトセーバーのアレとか。

 俺はそのまま流れるような動作で銃をホルスターに戻し、まずは相手の動きを止めようと掴み技(ホールディング)でーーー

 

 その刹那。

 

 バアアアアアン!

 

 どこからともなく飛来した紫色の極太ビームが、俺とアンドロイドの間に炸裂した。

 この色のビーム。どこかで見た事がーーー

 

 「学園がどうしてもって頼んでくるから来てみたもののーーーあんたがいるなら、来なくてもよかったかもしれないわね」

 

 ふわり、と斜め上から浮遊してきたのは、どう語彙を働かせようと「魔女」としか形容できないような人物だった。

 地球では存在し得ない紫色の髪。大きなフリルで飾りつけられた黒いドレス。どう見ても、黒の世界の魔女のそれだった。

 

 理深き黒魔女・ソフィーナ。

 

 それが彼女の名である。

 彼女はどうやら学園側に頼まれてこの暴走アンドロイドを止めに来たらしい。で、来てみたら既に俺とドンパチやっていたと。

 俺は少しでも気を抜けば「げぇー」となってしまいそうな表情筋を無理矢理抑えつつ

 

 「お、おはようソフィーナ、奇遇だな」

 

 と、かろうじて挨拶をするのであった。

 

 




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