俺の名前は春日アラタ。
魔道の学園である王立ビブリア学園に通う魔道士だ。
俺は従妹の春日聖を救うため、この学園に編入して魔道士になった。
そして、つい数日前に聖と戦った。仲間の力を借りて勝利することはできたが、聖のことはまだ救えていない。
そして俺は現在、学園都市と呼ばれる場所にやってきている。
「というわけで……だ。ここに来てもらったのは他でもない。」
そんな俺の言葉に返事をしたのは赤いロングヘアーにベレー帽をかぶった少女だった。
「はい?どこに行くんですか?」
彼女は浅見リリス。俺と同い年の17歳でありながら飛び級して教師となった天才少女だ。
「実はこの学園都市って来てからまともに外出してないし、よく知らないんだよな。リリス案内してくれないか?」
「あっ、そうなんですね。それでしたら-」
リリスは俺の頼みを快く承諾してくれた。
「それにしてもアラタ、どうして買い物を?」
「いや、リリスにはこっち来てからずっと世話になりっぱなしだろ?だからさ―何かお礼ができないかなって思ってさ。」
「えっ……あっ……いえっ……!!わっ……私がアラタをお世話するのは教師として当然なので……」
俺の返答になぜかリリスが赤くなった。
「目の保養もいっぱいさせてもらってるしなっ!!」
「ってアラタっ!!」
調子にのって冗談を言ったら怒られてしまった。
「あっ、そうだリリス。なんかたまーに机の上にお金が届くんだがあれは?」
俺は自分の机の上に1万円札が大量に入ったアタッシュケースが届いていた時のことを思い出しながらリリスに質問する。
「ああ。学園の魔道士になりますと事件解決の度合いによって学園からお金が支給されるんです。アラタの場合、今まで結構解決してきてますからそれなりにあったのでは?」
「うむ……なんか諭吉さんがいっぱいいて正直ひいた。」
俺はリリスに素直な感想を伝えた。
「ふふっ。そこから魔道研究に必要な魔道具だったり、魔術触媒であったりを買うのでみんなすぐになくなってしまうんですよ?」
「へぇ、そうなのか。」
魔道というのは金がかかるんだな。それならあれだけの大金が届くというのも納得だ。また1つ勉強になった。
「なのでお金はやはりアラタ自身のために使うべきかと-」
そんな言葉を遮るように俺の気持ちをリリスに伝える。
「いいんだよ、リリスに買うって決めたんだから。」
「はうっ!?」
「しかし、そう決めたのはいいとして……実は何を買えばいいのかさっぱりわからん。そして何がどこに売ってるのかも……」
せっかくかっこいいセリフを言ったのにこれではなんともしまらない。
「まあ、そうですよね。でしたら、美味しいものをおごってくれる……というのはどうでしょう?」
「おおっ!!そんな手もあるんだな!!」
俺はリリスの提案に乗ることにし、近くにあったレストランに2人で入ることにした。
「あっ……!!いらっしゃいませー!」
入店すると金髪の少女-山奈ミラがウェイトレスの格好で出迎えてくれた。
「……ってななななななっ!?あ アラタさんとリリス先生!?何故ここに!?」
「いや、リリスと飯を食いに来ただけなんだが……」
ミラから投げかけられた疑問に返答する-が、今度は見知らぬ2人の少女から話しかけられた。
「あのっ!あなたが春日アラタさんですか!?」
「お願いです。私たちの話を聞いてください!」
次の瞬間、リリスたちと一緒にレストランにいたはずがいつの間にか大自然の中にいた。
「なんだ!?また魔道か!?」
俺は魔道士の少女-リーゼロッテ・シャルロックによって学校の図書室から永劫図書館という場所に転移させられた時のことを思い出し、敵の魔道である可能性を考える-が、そんな俺の耳に先ほどの少女の声が届く。
「やった!!ついに男子が!!」
振り向くとそこには先ほどの2人の少女と、そして聖がいた。
突然知らない場所に来たのは魔道ということで納得できる。しかし、あの戦いで消耗して今は肉体を保つことすら難しくなっているはずの聖が目の前にいるのは信じられない-そこまで考えた俺はある1つの結論に至った。
「カモーン、美少女たち!」
俺は寝転がって美少女たちを呼ぶ。
「カモーンじゃありません!」
しかし、聖にツッコまれてしまった。
「え?これ俺の夢じゃないのか?」
「夢じゃありません!」
「夢じゃない……?ということはつまり-ついに俺も異世界転生してチートでハーレムなモテモテ主人公になってしまったわけか-!?」
「とにかく、これから顔が半分の変態が出てくるけど慌てずに話を聞いて」
俺の疑問に2人の少女のうちの1人が呆れたような表情で答える-次の瞬間、背後から男の声が聞こえた。
「初めまし。こんにち。ゲームマスターと申しま。以後お見知。」
「おわっ!?」
振り返るとそこにいたのは顔が半分の変態としか表現しようのない存在だった。
「ルールの説明をはじめま。」
「ルール?」
「これから“今回の新人”である君に指令を出しま。それをみんなでクリアしてね!」
「ふむ、なるほど。」
「クエストはこち。『村長の依頼をこなす』こと。制限時間は14日間でござ。」
「そうなのか。」
「この世界では魔物たちが君たちをバンバン殺しに来るよ!」
「マジか!?」
俺は顔が半分の変態-ゲームマスターの話を聞く。
「待って待って!落ち着きすぎじゃない!?」
「ん?お前が慌てずに話を聞けって言ったんだろ?」
「だとしても落ち着きすぎじゃない!?普通パニくるとこだよ!?」
言われたとおりにしたのにツッコまれてしまった。
「でも全員死ぬまで本当の死は訪れないから安心してね!!しかも1人1人は30秒で生き返るから全然安全だよね!!“完全攻略”まで“あと9周”!!周回ごとに1人増えていって最終的に13人でクリアしてくださ。周回ごとのクリア報酬は後で3人に聞いてね。」
クリア報酬として何かもらえるらしい。だとしたらクエストのモチベーションも上がるな。魔道士のようにお金が貰えるのか、それともファンタジーらしく強くてかっこいい武器でも貰えるのだろうか……。
「“魔術師(風)”新堂衣宇。“戦士(剣)”箱崎紅末。“戦士(剣)”春日聖。」
ゲームマスターがそう言うやいなや衣宇はファンタジー作品の魔術師のような服装に、紅末と聖は鎧を身につけた服装にそれぞれ変わった。
「そして4人目のプレイヤー春日アラタの職業は-!?ドルルルルルル!」
そう言いながらゲームマスターはルーレットを回しはじめた。
「戦士来い!戦士!」
3人が必死に祈っている様子から察するに戦士というのが出た方がいいのだろう。そう考えて俺も戦士が出るように祈ることにする。
「戦士!戦士来い!」
「農民!!」
結果は農民。現実は非情である。
「それではまたお会いしま。」
かくして、異世界に来たにもかかわらずチート職業ではなく農民となった俺と3人の美少女の物語が始まったのであった。