【金こそパワー】無能と追放されたけど【IT】スキルでベンチャー起業して金の力で魔王を撃破!   作:月城 友麻

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70. 白雪姫?

「ク、クレア……? おい!」

 

 必死に声をかけるタケルだったが反応がない。

 

「これはキス待ちじゃな。カッカッカ」

 

 ネヴィアはつまらない冗談を言って笑う。

 

「な、何をふざけたことを!」

 

 真っ赤になって怒るタケル。

 

「いやいや、太古の昔からお姫様はキスで目覚めるって決まってるんだゾ!」

 

 シアンもニヤニヤしながら、唇を突き出してキスのしぐさを見せる。

 

「えっ!? 本当……なんですか? 嘘だったら怒りますよ!」

 

「あっ! 急がないとクレアちゃん消えちゃうよ! 早く早くぅ!」

 

 いたずらっ子の笑みを浮かべてシアンは煽った。

 

「えっ!? ちょ、ちょっと!」

 

「キース! キース!」「キース! キース!」

 

 ネヴィアもシアンもニヤニヤしながら手拍子で煽った。

 

「ちょっともう! 嘘だったら怒りますからね?!」

 

 タケルは何度か深呼吸し、じっとクレアの整った小さな顔を見つめる。愛おしいクレア……。

 

 目をつぶるとそっと、クレアの唇に近づいて行くタケル……。

 

 そのぷっくりと赤く熟れた唇に触れようとした時だった。

 

「あれ? タケル……さん?」

 

 いきなりクレアが目を覚ます。

 

「うぉっとぉぉぉ!」

 

 タケルは焦ってのけぞった。

 

「ど、どうしたんです……か?」

 

 クレアはタケルに抱かれている事に焦り、真っ赤になって聞いた。

 

「い、生き返った……。よ、良かった……」

 

 タケルは冷や汗を流しつつも、生き返ったことにホッとしてへなへなと座り込んでしまう。

 

「なんじゃ、早くやらんから……」「つまんないの!」

 

 ネヴィアとシアンはつまらなそうな顔をしたが、タケルは真っ赤になってそんな二人をジト目でにらんだ。

 

 

        ◇

 

 

「えー、では! タケル君が僕の弟子になったお祝い、アーンド! クレアちゃんの復活を祝って、カンパーイ!」

 

 シアンが楽しそうにジョッキを掲げた。

 

「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」

 

 一同は東京の恵比寿にある焼き肉屋の個室でグラスをぶつけ合う。

 

「カーーーーッ! 美味い!! ビールってのはなんでこんなに美味いんだろうね?」

 

 シアンは上機嫌にタケルの背中をバンバンと叩いた。

 

「師匠、痛いっす!」

 

 タケルはウーロン茶をちびりちびり飲みながら、口をとがらせる。

 

「明日からみっちり修行に入るからね。今のうちにゆっくりしておきなさい、くふふふ……」

 

 シアンは嬉しそうに笑うとグッとジョッキを空けた。

 

「あ、明日!? でもOrangeのサーバー群の復旧が……」

 

 タケルは焦った。システムが落ちたままでは大混乱になってしまう。

 

「そんなの瀬崎がやってくれるよ。な、ユータ?」

 

「えっ!? ぼ、僕ですか!?」

 

 瀬崎はいきなり振られて、思わずブフッとビールを吹きだした。

 

「チャチャっとやっちゃって。魔王ならすぐでしょ?」

 

「すぐじゃないですよ! でもまぁ、分かりました……」

 

 瀬崎は渋い顔でジョッキをグッとあおった。シアンに逆らうとロクな目に遭わないことは、今まで嫌というほど思い知らされているのだ。

 

 ガラララ……。ドアが開き、店員の元気のいい声が響く。

 

「お連れ様お見えでーす!」

 

「ちょっとあんた達! なんでもう始めてんのよ!」

 

 チェストナットブラウンの髪を揺らしながら登場した美しい小顔の女性が、みんなを睥睨(へいげい)して口を尖らせた。

 

「美奈ちゃん遅いよー! 七時からって言ってたじゃん。きゃははは!」

 

 すっかり赤くなったシアンが楽しそうに笑う。

 

「五分くらい待ちなさいよ! なんでこうリスペクトがないのかしら……もうっ!」

 

 美奈ちゃんと呼ばれた女性はプリプリしながら席に着く。ネヴィアは緊張した様子でビシッと立ち上がると、ピッチャーを持って美奈のジョッキにビールを注いだ。

 

「じゃあ改めて……、カンパーイ!!」

 

 美奈はにこやかにジョッキを高々と掲げる。

 

「カンパーイ!」「カンパーイ!」「カンパーイ!」

 

 美奈はタケルのグラスにカチッとジョッキを合わせると、にこやかに言った。

 

「タケルくん、随分いい顔になったじゃない」

 

「や、やっぱり女神様ですよね? いろいろとありがとうございました。おかげで納得いく人生がつかめそうです」

 

「ふふっ。私の目に狂いはなかったようね」

 

 女神は琥珀色の瞳をキラリと輝かせながら嬉しそうに笑った。

 

「ハーイ! トモサンカク二十人前です!」

 

 店員がデカい皿をドンドンと置いていく。

 

「キターーーーッ!」

 

 シアンは皿をそのままロースターの上でひっくり返し、一気に全量投入した。

 

「ちょっとアンタ! 全部入れるなっていつも言ってるでしょ!」

 

 女神は青筋たてて怒る。

 

「そうだったっけ? いただきマース!!」

 

 シアンはまだ冷たいままの生肉を、箸でゴソッと取るとそのままほお張る。

 

 この宇宙で一番偉いはずの女神をナチュラルに怒らせる師匠の豪胆さを、タケルはハラハラしながら見守った。

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