【金こそパワー】無能と追放されたけど【IT】スキルでベンチャー起業して金の力で魔王を撃破!   作:月城 友麻

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9. 輝ける違和感

「ま、負けるとは申しておりません! ただ、腕が拮抗するだけ、テトリスに対する想いの強さを競う戦いになるだけです!」

 

 タケルは胸を押さえながら必死に言葉を絞り出した。

 

「想い……?」

 

「そうです、本来ゲームとは想いと想いのぶつかり合い、どれだけ魂を熱く燃やせたかを競うものです! それをこの決勝戦での評価といたします」

 

「ほう?」

 

 王子は小首をかしげながら、タケルを鮮やかに輝く真紅の瞳でにらんだ。

 

「技ではなく、ハート。これが本決勝戦でのテーマとなります」

 

「考えたな……。これは誰の発案か? お主か?」

 

 王子はまるで面白いオモチャを見つけたような笑みを浮かべる。

 

「わ、私です……」

 

「いいだろう。対戦終了後もう一度ここへ来い。お前の小手先の策略が正しかったかどうか裁いてやる。くっくっく……」

 

 王子は嗜虐的な笑みを見せた。その真紅の瞳にはタケルの挑発に対する怒りと好奇心の混ざった炎が揺れている。

 

「み、御心のままに……」

 

 タケルは背筋を貫く悪寒にブルっと身震いをしながら頭を深々と下げた。

 

 

       ◇

 

 

 いよいよ決勝戦。タケルはクレアに事の次第を丁寧に伝え、最後の最後に上手く負けることをお願いした。接戦ののちに王子が勝てば丸く収まるはずである。

 

 しばらく口をとがらせ、うつむいていたクレアだったが、何かを決心するとグッとこぶしを握り、にこやかに笑った。

 

「分かったわ!」

 

「ゴメンね、王族に逆らう訳にはいかないんだ」

 

「ううん、いいの。私が全て解決してあげるわ!」

 

 クレアは美しい碧眼を光らせ、タケルをまっすぐに見つめる。

 

「あ、そ、そう?」

 

 タケルはそのクレアの瞳の輝きに違和感を感じたが、クレアはスタッフに呼ばれてしまう。

 

「じゃあ、行ってきまーす!」

 

 クレアはニコッと笑って手を振りながらステージの袖へと登って行った。

 

「が、頑張って!」

 

 タケルは不安を押し殺すように大きく手を振り返す。一体この違和感は何なのか、正体の分からないままタケルは眉をひそめた。

 

 

        ◇

 

 

「それでは、決勝戦、始まるよーーっ!」

 

 司会のお姉さんがノリノリで叫んだ。

 

 パッパラッパー!

 

 吹奏楽団がひときわにぎやかな演奏をスタジアムに響かせる。

 

「一般部門代表! テトリス界に舞い降りたブロンドの天使ーーっ! クレアー、アバローン!!」

 

 うぉぉぉぉぉ!

 

 割れんばかりの大歓声がスタジアムを包み込む。

 

 ピンク色のボディスに身を包んだクレアは、満面に笑みを浮かべ、手を振りながらステージへと上がっていった。

 

 クレアちゃーん! 頑張れー! ピューーイ!

 

 先の激戦の記憶が脳裏に蘇り、観衆は一様に情熱を胸に宿しながら、力強い声援を送った。

 

「続きまして、なんと、我が王国の輝ける太陽、ヴェンドリック王室より、第二王子、ジェラルド・ヴェンドリック殿下が参戦されております! それでは殿下の登場です!」

 

 おぉぉぉ……。

 

 会場はどよめいた。

 

 ロイヤルシードとの案内があったので、貴族が参加するのだろうというのは分かっていたが、まさか王族が参加するとは想像もしていなかったのだ。この国において王族は絶対である。一体どんな展開になるのか誰も想像がつかず、観客たちは周りを見回しながら不安そうに顔を合わせるばかりだった。

 

 純白のジャケットに金の鎖を揺らしながら王子は入場してくる。王子は上品な足運びで優雅にステージに上がると、手を高々と上げ、観衆を見回した。

 

 本当に王子が入場してきたことに皆、戸惑いを隠せない。絶対王政の王国において、王族が平民と戦う。その意味の不穏さをみんなの脳裏によぎっているのだ。

 

 運営側のサクラがパチパチと頑張って拍手を打ち鳴らすが、なかなか広がらず、散発的な力ない拍手がスタジアムに響く。

 

 クレアはスカートをつまみ、うやうやしく挨拶をした。

 

「王国の英知にご挨拶申し上げます」

 

「うむ。わざと負けたりは……するなよ?」

 

 王子は美しくピンと背筋を張った立ち姿で、余裕の笑みを浮かべながらクレアを見下ろす。

 

「はい、恐れながら勝つのはわたくしですので……」

 

「ほう……? この我に……勝つと申すか?」

 

 その意外な返事に王子はピクッと眉毛を動かす。

 

「もちろん、殿下の方が全てにおかれまして優秀でございます。ただ……、恐れながらテトリスへの想いには自信がございますので」

 

 クレアは澄み通った碧眼をキラリと輝かせる。

 

「想い……? 想いねぇ。いいだろう。蹂躙してくれるわ!」

 

 王子は嗜虐的な笑みを浮かべると、真紅の瞳をギラリと輝かせた。

 

 

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