機動戦士ガンダムSEED  ETERNAL SPIRITS   作:MIDNIGHT

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PHASE-07 吹き荒れる戦嵐

L4コロニー、アーモリー・ワンの宇宙港に向かって航行する一隻のシャトル。

 

ゲイツRらに随行されながら、ゆっくりと入港していく。港には、10隻近いザフトの軍艦が寄港し、その様子を一瞥した雫はやや表情を顰めた。

 

「警備が物々しいわね」

 

「仕方ないよ、セカンドシリーズのお披露目もあるし」

 

刹那はそう解釈するが、同じように表情は優れない。表向きはプラント所有のコロニーとはいえ、このL4宙域にアーモリー・ワンを含めたコロニーに建造するに至った経緯は、あくまでナチュラルとコーディネイターの共存という名目の中立コロニーだったはずだ。

 

だが、実際には内部に軍事工廠を抱え、未だコーディネイターの移民しか募っていない。無論、まだ時期早々ということもあろうが、これではプラントの軍事施設と変わらない。

 

「わざわざここへ私達を招いたのは、あくまで牽制なのかもしれないわね」

 

視線が僅かに細まり、雫は考え込む。

 

本国へ招かなかったのは、敵か味方かはっきりできない者である以上に、自国の力の程を示唆させ、交渉の機制を制する意味合いもあるかもしれない。口惜しいが、未だに国としての磐石は弱いのだ。

 

「でも、大分遅れちゃったね。本当ならとっくに着いてたはずなのに」

 

やや疲れを滲ませるように、刹那が肩を落とす。

 

彼らの乗っていたシャトルは、予定では一日早く到着するはずだったが、道中シャトルがトラブルを起こし、そのために到着が遅れてしまった。

 

雫も表情を欝気味に顰める。会談を申し込んだ側が出向いたとはいえ、時間に遅れたのは確かにいろいろと気まずい。

 

(これが、余計なトラブルを招かねばいいのだけど……)

 

不安を微かに滲ませつつも、雫は表情を引き締め、襟元のネクタイを締め直し、前を見据えるように背筋を伸ばす。

 

ここから先は言わば戦いの場――生半可な気持ちでは、踏み込むことさえ赦されない。自分の双肩には、祖国の命運が掛かっているのだ。

 

「それじゃ、参りましょうか、真宮寺曹長」

 

口調が先程までの親しいものではなく、どこか事務的なものに変わり、刹那も頷き返す。

 

「はい、では」

 

恭しく礼をし、刹那は控えていた他の兵士に指示を伝えると、雫をガードするように先導し、シャトルの搭乗口に移動する。

 

シャトルがゆっくりと港に接舷され、タラップが搭乗口へと伸び、接続されると同時にハッチが開放し、眩い光が一瞬差し込み、眼を閉じるも――次の瞬間には、港の風景が飛び込んできた。

 

視線を前へ凝らすと、タラップの先には出迎えの一団が佇んでいた。ピンクの髪を持つ女性が視界に入り、雫は表情を微かに和らげ、相手もそれに応じて微笑み返す。

 

「お久しぶりですね、斯皇院外交官」

 

「ええ、お久しぶりですクライン外務次官」

 

笑顔で雫と挨拶を交わすラクス。タラップを降りてくる二人を、ラクスの後ろに立ったリンはバイザー越しに見据える。

 

(斯皇院――確か、天乃宮家を補佐する十家の筆頭か)

 

日本の政治体系は独特だ。主権は帝を置く『天乃宮家』が行い、それを政治、軍事、文化と様々な方面で補佐する十家。どちらかと言えば、古い血筋を重要視する風習がある。

 

だが、あの帝が寄越した人物だ。彼女らが、デュランダルの人となりを少しでも見せてくれることを期待しつつ、握手を交わす二人を見詰める。

 

「到着が遅れると聞いて、心配しておりましたが、無事でなによりです」

 

「申し訳ありません。こちらが申したことなのに」

 

「いえ、構いません。議長も心配なさっておりました。貴方方の無事の到着を喜んでおいでです」

 

互いに挨拶もそこそこ、その隣では刹那が事務事項をキラと交わしていた。

 

「では、搭載機はMSが一機ですね?」

 

「はい」

 

「それでは、担当の者とともに工廠内へと移動させます。あと、くれぐれも気をつけてもらいたいのですが――」

 

「分かっています。コロニー内での起動は許可が必要、ですよね」

 

今現在、セカンドシリーズのお披露目という重大な矢先に、余計なトラブルを誘発する要素はなるべく防ぎたい。そんな相手の思惑も察してか、刹那は頷き返す。

 

「お綺麗な方ですね。斯皇院さんのご友人の女性ですか?」

 

刹那の容姿を見やり、そう漏らすラクスに刹那の表情が微妙なものに変わり、雫は笑みを噛み殺すように肩を竦めた。

 

「あの――僕、男なんです」

 

弱々しい声でおずおずと答えると、ラクスを含めその場にいたほとんどの者が、驚愕に眼を見張る。

 

真実かどうかを確かめるために雫を見やると、事実とばかりに頷き返す。その表情は無論、緩んでいたが。

 

「し、失礼しました。あまりにお綺麗だったもので――」

 

慌てて謝罪するも、それは女性なら褒め言葉になるのだろうが、生憎と刹那にとってはより傷つく言葉だった。

 

「いいんです、慣れてますから」

 

どこか泣きそうな表情で、哀愁を漂わせながら応じる刹那。だが、奇異な視線を感じ、大きく肩を落とす。

 

ラクスも含め、全員が信じられないといった様子だ。まあ、仕方ないだろう。蒼穹の長髪に女性に近い顔立ちと、軍服姿であることを差し引いても、一見しただけでは女性にしか見えないのだから。

 

だが、呆気に取られているラクス達に雫は内心、したり顔だった。やはり、刹那を同行させたのは正解だったかもしれない。うまく相手の意表を崩せたのだから。

 

「ラク――クライン外務次官、議長がお待ちです」

 

固まっていた一同のなかで、唯一平然としていたリンがそう話し掛けると、ラクスはハッと我に返り、慌てて取り繕う。

 

「あ、す、すいません。で、ではこちらへ…議長のもとまで御案内します」

 

上擦った口調で話しながら誘導し、雫もそれに応じて続く。キラや他の管理官達も慌てて職務に復帰し、その後に続いていく。

 

「そう言えば、随分と入港が遅れましたが、何かトラブルでも?」

 

正確に言えば、アーモリー・ワンに到着したのは数時間前なのだが、港口の管制からの入港許可が下りるのが随分時間が掛かった。

 

「申し訳ありません。式典準備に加えて、通信施設等でなにか不調があったようなので」

 

明日に控える式典に備えて、今現在入港整理で管制は大忙しで、なかなかスムーズに運ばないのだが、それに加えて数時間程前から機器の不調が相次ぎ、通信系等の回復に時間が掛かっている。

 

会話を交わしながら進む一行に、リンは最後に続こうとし、その視線が一瞬、シャトルから降ろされてくるモノに留まった。

 

ハンガーに固定された一体のMS。ネイビーブルーを基調としたカラーリングを持つ機体。だが、現存するどの機体とも違う形状。

 

(日本の新型か――セカンドシリーズの開発地にわざわざ新型機を持ち込むとは)

 

かの国は技術力が高い。なら、技術交換も兼ねているのかと――その真意を逡巡しながら、リンはその後を追った。

 

 

 

 

離れていくリンの背中を、何気ない視線で追う刹那。

 

(あの人、強い。それに――)

 

雰囲気からなんとなくだが分かる。あの身のこなしに気配は、間違いなく相当の修羅場を潜っている。そして、その視線が降ろされてくる刹那の機体を捉えたのを確認した。

 

(警戒しておいた方がいいかもしれない。吹雪の起動準備、進めておこう)

 

何も起こらないことに越したことはない。だが、どうやらそう穏便には進まないような気がする。

 

(斯皇院将軍がわざわざ吹雪を持っていけと行ったのは、もしかしてこの事だったのかもしれないな――)

 

不安が胸中に渦巻くも、それを抑え込み、刹那はスタッフに吹雪の起動準備を指示し、アーモリー・ワン内を見やった。

 

(雫、気をつけて)

 

交渉に赴いた雫の安否を気遣うように、刹那は表情を顰めた。

 

 

 

 

 

 

機動戦士ガンダムSEED ETERNAL SPIRITS

 

PHASE-07 吹き荒れる戦嵐

 

 

 

 

 

 

人々が大勢行き交うなかを溶け込むように混じり、歩みを進める3人の人影。

 

一番後方を歩く、白いドレスに見間違えるような洒落た服を着込んだライトブルーのショートボブの髪を掻き分け、その街並みを見入るレア。

 

何もかもが不思議で現実味がないような感触だった。いや、そもそもこんな服装でこうして出歩くことなど今まで無かったような気がする。あったかもしれないが――そんな『記憶』はない。

 

思考を振り払い、レアの視線は先頭を進む二人に向けられる。

 

モスグリーンの髪色と同じ革ジャンを羽織り、周囲を威圧するような、ガンを飛ばすような表情で歩くエレボスとそれとは逆にこちらは落ち着いた服装で、小さな本を読みながら器用に歩くステュクス。

 

彼らは、その容姿と服装が合いまり、コーディネイターしかいないこの街並みでも特に怪しまれることもなく、極一般的な一市民に見えることだろう。

 

だが、彼らの目的はこんな茶番に付き合うことではない。

 

「へっ、ID書き換えたぐらいで随分チェックも甘くなるもんだな」

 

ペラペラと右手に握るIDを振りながら、鼻を鳴らすエレボスに、ステュクスは読んでいた本を閉じ、一呼吸置いてから静かに呟いた。

 

「そのような不毛な発言は控えていただきたいですね。少なくとも、マイナス要素は極力抑えたいですし」

 

「んだとっ」

 

睨むように突っ掛かるエレボスだが、ステュクスは涼しい表情のまま、歩みを進め、愛想の無い奴と内心毒づき、舌打ちしながら後を追う。

 

粗暴なエレボスと理知的なステュクス――ある意味正反対な二人ではあるが、そんな部分がうまく補完しあっているからこそ、自分達はこうして一緒にいるのだろうとレアは何気に思った。

 

三人で行動するのはこれが初めてではない。だが、出逢った頃のことなど記憶にはない。気づいたら既に揃って行動していた。ただ、それだけが事実だ。それに―――二人はレアにとって、心許せる存在なのだ。自分の敬愛する『あの人』と…そして―――

 

(誰、だった…かな…―――?)

 

もう一人――自分が知っている人間がいたような気がするが、思い出せない。まるでそこだけが抜け落ちたように、分からない。思い出せないなら、単なる勘違いとレアはどうでもよくなり、思考を止めた。

 

「レア、ボケっとするな、置いてくぞ」

 

遅れていたレアに声を掛け、二人はさらに歩みを速める。それに追いつこうとしたレアだったが、ふとショーウィンドウのガラスに自分の姿が映る。

 

人形のような顔立ちと、それを際立たせる白い服に胸元も青いスカーフがいいアクセントとなり、綺麗というよりも可愛らしさを強調させている。この服装を褒めてくれた上司の顔が過ぎり、レアは口元を緩め、ニヤニヤと笑いながらショーウィンドウの前で佇む。

 

「何やってんだ、あいつ?」

 

その様子を離れた場所から見詰めていたエレボスは、呆れにも似た溜め息を零した。ショーウィンドウの前でニヤつく姿は傍から見るとかなり怪しい。

 

「大方、大佐のことでも思い出しているのでしょう。レアは大佐にご執心ですしね」

 

眼鏡を持ち上げ、口元を緩めると、エレボスはつまらなさ気に舌打ちし、ステュクスの肩に肩をぶつけ、そのまま進んでいく。

 

その様子に怒ったかと愉しげに鼻を鳴らし、閉じていた本を開き、読書を再開しながらステュクスも己の世界に沈んでいく。

 

このアーモリー・ワンに来てから既に数日――普段からではあり得ないゆったりとした時間に、エレボスは退屈気に、ステュクスは満喫するように堪能していた。

 

暫しショーウィンドウの前に佇んでいたが、やがてレアは再び歩き出す。だが、その視線は未だショーウィンドウに張り付き、くるりと身体を回転させながら背中を向けて進んだ瞬間、軽い衝撃がレアに掛かり、レアは体勢を崩す。

 

レアの視界に入ったのは地面。このままぶつかるとなんとなしに思ったが、その衝撃はこず、レアの身体は何かに支えられた。

 

「だ、大丈夫か?」

 

唐突に背後から掛かった声に振り返ると、レアとさほど年齢が離れていない少年がやや驚きに包んだ表情でこちらを心配そうに見詰めている。

 

「…誰……―――?」

 

その漆黒の瞳―――レアが、一番嫌いな色だった。

 

 

 

 

 

数十分前――繁華街にマコトはカスミ、シン、ステラと彼らの同僚であるミネルバの技術スタッフの一人であるヨウラン・ケントと共に繰り出していた。

 

「あ~あ、こうやってゆっくりできるのも暫くお預けか」

 

背伸びをし、やや大仰に溜め息を吐くヨウランにマコトは苦笑を浮かべて、シンを見やる。

 

「確か、もうすぐ就航だもんな?」

 

「ああ。これから式典パーティーに出なきゃいけないし、その後はセカンドシリーズでのデモンストレーションだから、すぐ機体の調整に入らなきゃいけないしな」

 

数日後にはミネルバが竣工を迎え、セカンドシリーズもその全容を正式公開される。そうなれば、シン達ミネルバ正規クルーは仕事に忙殺され、ゆっくり休む間もなくなるだろう。

 

これが最後の非番なのだ。この数時間後には披露パーティーにシンとステラは出席、その足ですぐさまデモ演習の準備に入らねばならない。

 

「そっか、シン達とも当分会えなくなるな」

 

そう考えると寂しいものがある。マコトも元々は招待客の一人でしかない。彼らの好意でこうして親しくはしているが、立場の違いがある。

 

数日後には、シン達はプラントにとって代表たる立場に就く。そうなるともう今までのように付き合うのは無理だろう。

 

いや、それ以前に滞在期間が終わり、マコトがここから離れる方が早いだろう。それを察しているのか、シン達も苦い表情で無言のままだ。

 

「ほーら、なに暗い顔してんだよ、せっかくの非番なんだからもっと楽しくしろって」

 

そんな雰囲気を払拭するように、ヨウランが陽気に声を掛け、それに応じてぎこちないながらも笑みを浮かべる。

 

「そうだな、いくか」

 

残り少ない非番ではあるが、楽しまなければ損だ。

 

一同はアーケード街を物色するように歩みを進める。そんななか、マコトはふとカスミを見やる。いや、その視線はカスミの髪に留められた錠に向けられていた。

 

数日前の演習が終わり、帰還したマコトがカスミを探し出したとき、カスミの髪に留められていた錠が気に掛かり、問い掛けたものの、カスミは分からないとばかりに言葉を濁すだけ。

 

だが、女の子がするアクセサリーにしては不似合いなため、取り外そうとしたが、カスミはそれを拒み、頑なに取ろうとはしなかった。

 

大切に錠を撫でるカスミに不可解なものを憶えながらも、当人が拒んでいる以上、無理に外すのもできず、結局はするままにさせている。

 

それから数十分、路地裏のアーケードで少しばかりの買い物を終え、そろそろ宿舎に戻ろうと大通りに出ようとし、先頭を進むマコトが身体を出した瞬間、突然眼の前に影が飛び出し、それが認識される前に衝撃が身体を襲った。

 

前のめりに倒れそうになる少女の身体を、マコトは慌てて手を伸ばし、その身体を抱き寄せるように支えた。

 

「だ、大丈夫か?」

 

支えたのは華奢な身体つきのライトブルーの髪の少女。相手もやや驚いた面持ちでマコトを見上げていた。そのこげ茶に近い瞳が印象的な儚げな雰囲気の少女だったが、少女の眼が微かに細まる。

 

「…誰……―――?」

 

その可憐な容姿からは想像できない、どこか冷たい声。少女は表情が強張り、面を喰らうマコトの手を振り払い、その豹変振りに唖然となるマコトをよそに、そのまま背を向けて走り去っていった。

 

呆然となっていたが、マコトは表情を顰め、素っ気無い態度に溜め息をつくが、そんなマコトにヨウランがニヤリと笑みを浮かべて顔を突き出す。

 

「あらら? せっかく助けたのに素っ気無くされちゃったな」

 

「いや、別に――」

 

図星を指されたせいか、マコトの口調もどこか硬い。いや、確かにそんな不純な期待があったわけではないが、この場合ぶつかれば悪いのはどちらかと言えば男の方だろう。

 

「不貞腐れるなよ」

 

「だから違うって」

 

なおも小突くヨウランにマコトは取り繕うように弁解するも、一向に聞き入れず、去ろうとし、慌てて後を追う。

 

その後をカスミが首を傾げながら追い、シンも続こうとしたが、ステラがあさっての方角を見やっているのに気づき、声を掛けた。

 

「ステラ、どうした?」

 

「あ……ううん、なんでもない――」

 

肩を竦めながら歩み出すシン。ステラもその後を追おうとするも、その足が止まり、再び視線を先程の少女が去った方角へと向ける。

 

頭のなかに、先程の少女の姿が引っ掛かるも、その答が分からず、ステラは困惑した。

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくしてアーモリー・ワンのザフトの軍事工廠は、喧騒に満ちていた。

 

【軍楽隊最終リハーサルは14:00より第3へリポートにて行う】

 

アナウンスが工廠内に響くも、その放送に耳を傾ける者は少ない。皆、各々の作業に集中しているためだ。

 

何十というザフトのMSが、工廠内の至るところに立ち並び、その足元では作業員や軍服を着た兵士達が何百人と走り回っている。

 

「違う違う! ロンド隊のジンはすべて式典用装備だ! 第3ハンガーと言ったろ!!」

 

「マッケラーのガズウートか? 速く移動させろ!」

 

「ライフルの整備しっかりやっておけよ、明日になってからじゃ遅いんだからな!」

 

【ガトー隊、第2整備班は第6ハンガーに集合せよ】

 

怒号に近い声が幾度も飛び交い、広大な敷地内に響き渡っている。雑然となるなか、指示に従って全高20MはあるMSが歩き回る眺めは圧巻の一言に尽きる。そんな騒動も、全ては明日に控えたザフトの最新艦:ミネルバと新型機、セカンドシリーズの進水式と軍事式典のためだった。

 

式典用の装飾を施されたジンにゲイツR、ディンのガズウートと旧式機の改良型や最新鋭機のザクなど、博覧会なみの壮観な光景だ。

 

それを大々的に宣伝するために各種メディアも多く招待されている。それらの喧騒の中でバギーに乗って移動している緑の作業服を着た少年と赤の軍服を着た少女の姿があった。

 

進んでいたバギーの進路上にあった建物の陰から突如ジンの足が見え、運転する少年は慌ててハンドルを切った。

 

「うわっ」

 

寸でのところでジンの足をすり抜け、助手席に座っていた少女は、ゾッとした表情で座席に仰け反った。

 

「ちょっとっ、気をつけなさいよねっ」

 

「ごめんごめん!」

 

危うくぺしゃんこにされるとこだったのだ。怒り心頭に睨む少女に少年は頭を下げる。

 

「はぁ、なんかもうごちゃごちゃね。こんなんで明日の式典、間に合うのかしら?」

 

溜め息を大きく零し、少女はシートに身を預ける。

 

赤服に身を包んだ少女:ルナマリア・ホークに、運転する作業員:ヴィーノ・デュプレは苦笑を浮かべた。

 

「仕方ないよ、こんなの久しぶり――って言うか。初めての奴も多いんだし。俺達みたいに」

 

事実、これ程大規模な軍事式典は数年振りだ。ザフトが設立されてからまだ10年も経っていないが、その間に軍事式典が行われたことはほんの数える程度だ。

 

ルナマリアも前大戦は経験しているが、現在のほとんどの若い兵士は、先の大戦終結と同時に入隊し、まだ軍歴は浅い。

 

「でもこれで、ミネルバもいよいよ就役だ。配備は噂通り月軌道なのかな?」

 

弾んだ声で見やる先には、ザフトの最新鋭艦。女神の名を冠する戦艦が、その威容を漂わせながら鎮座するのであった。

 

 

 

 

工廠内のヘリポートに、一機のジェットファンヘリが着陸しようとしていた。ヘリポート周辺には幾人もの軍人や補佐官らが立ち並び、その来訪を待ち構えている。

 

その爆音に、愛機であるザクが整備を受けるハンガー前に佇んでいたレイとセスも気づき、そのヘリを視界に収めると、レイは滅多に見せない笑顔に表情を緩め、小走りにヘリが着陸する方へ駆け寄り、セスは変わらずの表情で後を追った。

 

着陸したジェットファンヘリのタラップから、長い裾を揺らし降り立つ長身の男。長い黒髪と端正な顔立ちに柔和な笑みを浮かべ、一斉に敬礼する者達に手を振るのは、現プラント評議会議長:ギルバート・デュランダルだった。

 

身軽に降りるとともに数人の補佐官を伴い、会話しながら移動していった。

 

「彼の言う事も分かるがね――だが、ブルーユニオンは組織というよりも主義者だろう?」

 

会話を交わしつつ、視界の端にレイが入ったのに気がつき、微かに微笑むと笑顔をレイに向けた。

 

レイも頬を緩めたまま敬礼し、その後ろでセスも他の兵士達と同じように静かに敬礼する。それを一瞥すると、デュランダルは補佐官との会話に再度耳を傾ける。

 

「いくら条約を強化したところでテロは防ぎきれんよ」

 

デュランダルが宿舎に入ったと同時にレイは表情を再び無感動に戻し、セスと共に立ち去っていった。

 

「議長」

 

宿舎内に足を踏み入れると、一人の補佐官がデュランダルに駆け寄ると耳打ちをした。

 

「日本よりの使者がご到着です。クライン外務次官がお出迎えに」

 

その言葉に、一瞬鋭い眼差しを浮かべるも、それを悟られることなくすぐに笑みを浮かべた。

 

「やれやれ、忙しい事だな」

 

肩を竦めるように衣の裾を翻し、補佐官らを率いて、足早に司令部へと会見の用意を始めるために向かうのであった。

 

 

 

 

 

軍工廠司令部にある執務室へ向かい、VIP用の通路を無重力用のラダーに掴まり、移動する雫とラクスらの姿があった。

 

「申し訳ありませんが、パーティーの方へは欠席とのことで」

 

「いえ、構いません。遅れたのはこちらの非ですし」

 

既に式典前パーティーとして行われたミネルバとセカンドシリーズの正式パイロット公開。だが、そのパーティー自体も既に終わりに入り、今から出席というのはかなりの間抜けになるだろう。

 

相槌を返しながら、雫は通路のガラス越しに映る港内の軍艦、そして片方のプラントからの招待客らを交互に見やる。

 

「お気になりますか?」

 

「え、ええ」

 

「申し訳ありません。明日は新造艦の進水式でして、そのための軍事式典が予定されてまして――」

 

表情を曇らせるラクス。その表情から、この式典自体、ラクスにとってはあまり好ましくないものであると察せられた。

 

自国の軍事力を誇示するというのは、ある意味では政治手腕の一つだ。各国への牽制にもなるし、交渉のいいカードになる。

 

(そう言えば、クライン外務次官は前大戦で戦場にいたと聞きましたね)

 

今は外務次官という立場に就いているラクスが、前大戦時には戦場で戦っていたというのはある種有名な話だ。プラント側のメディアからも『勝利の女神』と称えられる程だ。戦場にいた者がそうした軍事的な誇張を拒むのはある意味仕方ないかもしれない。ましてや、ラクスがそんな好んで戦うような人物にも思えない。

 

「いえ、内々かつ早々に会見を行いたいと申し出をしたのはこちらの方なので」

 

そんなラクスの心情を少しでも和らげようと、そう気遣うとラクスは微かに微笑み返した。

 

一同はそのままエレベーターに乗り込む。独特の形状を誇るプラントコロニーの支点に設置された港口から居住区である底部への連絡は高速エレベーターしかない。円形に近いエレベーターに乗り込むと、ラクスに促され、シートに腰掛ける。その隣にラクスも座ると、ドアが閉じられ、エレベーターは薄暗いパイプライン内を降下する。

 

「こちらからの用件は先日お伝えした通り――例の交易に関しての事項、及び軍事技術交換に関して。それに伴う、我が国との国交の件で」

 

既にこの会見にあたっての内容はラクスと雫の間で交わされ、それぞれの損益を考えたうえでの双方の代表からの意見を取り入れ、プラントと日本の国交発展を盛り込もうというのが今回の会見の目的だ。

 

「私はこの件で、帝から全権を任せられています。お聞きしたいのは、此度の会見においてこのアーモリー・ワンを選ばれたのは、本国よりは目立たぬというご配慮でしょうか?」

 

言葉遣いは丁寧だが、その内容にはかなりの欺瞞が含まれている。これが帝自身赴いたなら、かなり問題になったものだが。何度か会話を交わしたラクスも、さして年齢に差がない雫に呑まれそうになるときがある。だが、それを表面には出さず、ラクスもまた涼しい表情で応じる。

 

「はい。失礼かと思いましたが、今現在プラントも立場がありまして、表立っての会見が難しく、このような形を取らせていただきました」

 

戦後2年。プラントの立場は一定の自治権は得ているものの、それも高い工業製品を生み出せる製造工場として見ている国家も多い。言わば、プラントを押さえ、その利権を得ようとする者も少なくない。

 

そんななかでプラント自体もその位置を危うくするような迂闊な外交はできない。たかが一国との会見とはいえ、それを衝く国がないわけでもないのだ。

 

キラを含め、随行員達が緊張した面持ちで見守るなか、ラクスと雫は黙り込む。リンは無言のまま二人の様子を見やっていたが、エレベーターが底部に到達したのか、薄暗かったシャフト内から開けたコロニー内部へと入り、眩い光が差し込む。

 

次の瞬間には、一同の視界に雄大な光景が飛び込んできた。ガラスの壁面の向こうには、眼下に青い海を思わせる水面が在り、光を反射させて煌いている。その周囲に浮かぶ島々。それらが全て人工物であることに、雫は感嘆するような思いだった。

 

「やはり、凄いですね。こうして宇宙に自分達の世界を造れる、プラントは」

 

揶揄するでもない。純粋な驚きと感動を込めた声にラクスの表情も和らぐ。自分達の世界が褒められたのか、他の随行員も表情を緩めている。

 

だが、リンは一人だけその風景の向こう側に見える外殻の強化ガラスの奥に見える宇宙を見据えた。

 

エレベーターが底部に到着し、降りると同時に一同は宿舎内へと足を踏み入れる。やがて、執務室へと到着し、ドアが開かれ、ラクスが促すと、雫は決然とした面持ちで足を踏み出した。

 

入室に気づいた、秘書官らしき随員と言葉を交わしていたデュランダルがこちらを見やり、雫の顔を認めると、柔和な笑みを浮かべて歩み寄る。

 

「やあ、これは斯皇院外交官。遠路はるばるお越しいただき、申し訳ございません」

 

「いえ、議長にもご多忙の所、こうしてお時間を頂き、ありがたく思います」

 

デュランダルに応じるように雫も笑みを浮かべ、歩み寄り、手を差し出すと、デュランダルは恭しい手つきでその手を握った。

 

リンはその様子を見詰めながら、デュランダルに視線を向ける。

 

(この男が、現最高議長、ギルバート・デュランダルか――)

 

デュランダルの視線が雫から僅かにずれ、その背後にいるラクスの傍にいた人物。幅の広いサングラスをかけた女性:リンに気づいた。リンは一瞬で部屋を一瞥し、異常がないかを確認していたのだが、その視線に気づき、微かに眉を寄せる。

 

「クライン外務次官、そちらは?」

 

見慣れぬ人物にラクスは内心、微かな後ろめたさを憶えるも、静かに息を吐き、真っ直ぐに見据えるように答えた。

 

「私の友人で、護衛を兼ねていただいております。私が保証します」

 

周囲を制するように呟くラクスに、デュランダルは特に気にした素振りもなく頷く。だが、リンにはその視線が気に掛かった。あの値踏みするような視線―――

 

いくら自分が見慣れぬ存在とはいえ、たかが随員の一人に注意を払うだろうか。今は偽名でこのコロニーにいるが、リン自身、顔を知られているということもある。前大戦中に脱走し、戦後のゴタゴタに紛れて身を隠した。

 

ある意味、プラントにとっては恥で厄介者の自分だ。余計な警戒をされたかと内心構えるも、デュランダルはそのまま雫に視線を戻し、ソファに掛けることを勧め、自分もソファに腰掛けた。

 

「お国はいかがですか? かの国の独立に伴い、実に多くの問題を解決されて――その行動に我々も感銘を受け、また羨ましく思っておりますが」

 

「ありがとうございます。帝もその言葉をお聞きになれば、大変喜ばれるでしょう」

 

それが挑発なのか、それとも牽制なのか、意図を推し量るように雫は答え返す。政治家が何の打算もなしに相手を称賛するというのはまずあり得ない。なら、その真意を探るのも外交官の腕の見せ所だ。

 

にこやかに返す雫に、デュランダルも笑みを崩さない。

 

デュランダルの言う通り、傍から見れば日本が『大日本帝国』として独立し、僅か一年程度で国として高い評価を得ていることには確かに称賛に値するだろう。

 

元々は、大西洋連邦の一属国家でしかなかった国。だが、それが日本の後の命運を分けたと言ってもいい。

 

その立地上、当時の日本は大西洋連邦とユーラシア連邦に挟まれた状態であったが、両国は一応の連合組織内の国家として、表面上は同盟関係を結んでいた。そのために、戦争の脅威に国内が晒されなかったというのがある。

 

身内の恥を晒すようだが、当時の日本は属国でありながらも、その政治体系は腐敗していたと言っていい。当時の政治を取り仕切っていたのは旧財閥の老人達。家柄にしがみつくだけの連中だ。政治を行うのも大西洋連邦に指示を仰ぐばかり。そんな政治体系に国民が何の不満も持たないかと問われればそうではない。

 

一向に回復しない経済状況に、戦争による社会不安等、直接に巻き込まれていなくても不安はすぐ傍に在った。

 

そして戦争終結後、もはや廃れ、ただのお飾りとなっていた旧天皇家であった天乃宮家から新たな帝が選出された。

 

日本の軍部、そして若手政治家等の若い力に後押しされて帝位に就いたのが現帝:天乃宮光。天皇本家ではなく分家出身の者だったが、その手腕は高く、彼は京都を首都にし、旧体制の政治家を拘束し、その後大西洋連邦と交渉を交わし、独立を勝ち取った。

 

無論、戦後の大西洋連邦の混乱につけ込んだとも言えなくはないが、機を待ったのは決して卑怯でもない。

 

その後も、国内が戦火に晒されずに済んだために、国として独立は成功したものの、それを存続、発展させていくのが今の最大の課題なのだ。

 

「それで、この情勢下――お忍びで、それも火急に私と会談とのことでしたが?」

 

そうデュランダルは訊ねるが、この質問は全くの無意味だろう。

 

(既にご存知のはずなのに――私を試しているのでしょうか?)

 

一国の代表ともあろう者が、わざわざこうして訪問してくる者の用件を知らぬはずなどないのだから。この問い掛けは、相手に僅かなりとも考える時間を与えるための方便のようなものだった。

 

「クライン外務次官からお聞きした限りでは、我が国との条約の件で――大分複雑な案件のご相談、との事ですが?」

 

「はい。議長も我が国の現在の状況はご存知のはず」

 

今現在、日本は微妙な立場に立たされている。隣国の東アジア共和国――いや、大東亜連合からの執拗な同盟申込だ。独立してから一年で整えた日本の軍備。独立を維持するためには軍事力も必要ということは分かっているが、短期間での再編が仇となった。

 

他国の軍事介入を牽制するために再編を早めたため、その技術力と実務能力を皮肉にも他国へ高く評価させる要因となってしまった。

 

かの技術向上には、日本が極秘裏に秘匿していたコーディネイター達の存在がある。大西洋連邦の本拠から遠く離れた地であるため、少数のコーディネイターも戦前から居住していた。無論、それは存在を隠した上でだ。それ以外にも開戦とともにプラントから亡命した者やオーブからの技術難民など、そういった要因があった。

 

「無論、帝は独立を維持するお考えです。無為に敵をつくりたくはない。ですが、それは今の情勢では叶わない。故に、貴国との国交を望んでおいでです」

 

民を戦火に巻き込みたくないのが帝の考えであっても、現実はそううまくいかない。なら、少しでも敵となる者を減らそうとするのが日本の取った道だ。もし世界のなかで孤立してしまえば、日本は瞬く間に衰退するだろう。

 

なら、後の発展と自国の安全を踏まえて、それが望める国と国交を持とうとするのは当然の選択だった。

 

コーディネイターの居住率等の問題も含めると、プラントを好ましく思っていない大東亜連合とはどの道国交が難しい。なら、自国の現在の情勢を鑑みれば、選択肢はない。

 

「かねてより、クライン外務次官と交渉し、こちらからの希望はお伝えしているはずですが?」

 

射抜くような視線を向ける。一国の代表に対し、そういった視線を向けられるのはある意味では感嘆ものだ。デュランダルも考え込むように顎に手をやると、一拍置いて話し出す。

 

「斯皇院外交官、我々も同じ考えです。我々も無闇に敵をつくりたくはない。そして、地球の方々にもそれを分かってもらいたい」

 

相手との見据える先が同じであることに、雫も微かに表情を和らげる。

 

「無論、私もかの国と友好を築くことに異論はありません。ですが、早々にという訳にはまいりません」

 

当然とばかりに雫も頷き返す。

 

そう簡単に国交が結べるのなら、苦労はしない。当然、国交を結ぶにあたっての互いの利権を考えた条約を交わさねばならないだろう。

 

今の日本が欲しているのは、国としての磐石と支援国だ。果たしてどれだけ祖国に対して有利な条約を結ばせられるか、雫は再度気を引き締めて会談を続ける。

 

そんな会談を横に見詰めるリンは、内心狸と狐の化かしあいだなと思った。

 

どちらも本心を見せず、そして自分の話術に引き込もうとしている。危ういバランスのなかでどちらの国も不安定な位置にある。

 

そうしたなかで、互いにバランスを保ちたいと考えるのはある意味当然かもしれないが。だが、そこまで見てもリンの眼にはデュランダルも決して実力が伴っていないというわけではないと考えた。

 

(だけど、この違和感はなにかしらね――)

 

確かにデュランダルはラクスの評通り、善い為政者に部類されるかもしれないが、リンはそのデュランダルの内に何か言い知れぬ違和感のようなものを感じ取っていた。

 

見えぬ本心――それが曖昧なことにリンは内心、苛立ちを憶えていた。

 

 

 

 

 

 

 

会談が行われている頃、エレボス、ステュクス、レアら3人は街外れの大きなビルボードの前にいた。

 

ここが、待ち合わせの場所のはずだ。時間と日時が間違っていなければ、だが。

 

レアは無言のまま大きなビルボードを見上げている。ザフトの徽章の映像が大きく映し出されたあと、L5のプラント本国の映像に切り替わる。映像を暫く見上げていたが、その映像が同じものの繰り返しだと気付くと、その視線を空に向けた。

 

この空には、太陽がない。

 

ただ青く拡がる擬似映像の空。だが、レアは嫌いではない。この髪と同じ青い空がどこまでも続くようでレアはずっと見上げている。

 

ステュクスは芝生に腰掛け、読書に読み耽っている。エレボスはやや顰めっ面で、時計を何度も確認していた。

 

何度目かになる時間を確認した瞬間、こちらに近づいてくる1台の車が視界に入った。ここに来るまでに何度か目にしたものと同型のものであった。

 

「来ましたね」

 

最後のページを読み終えたステュクスが本を閉じ、もう興味はないとばかりに本を芝生に投げ捨て、立ち上がる。

 

「ああ、ようやくだ――レア、行くぞ」

 

声を掛けられ、我に返ったレアは跳ねるように駆け寄っていく。

 

彼らの前に停まった軍用バギーの前部座席には、ザフトの軍服を着込んだ軍人が乗っていた。エレボスの視線に気づいたその軍人達が頷くのを見て、3人はバギーの後部座席に乗り込んだ。

 

彼らを乗せたバギーは街から離れ、そのまま軍工廠に向かい、入り口のゲートで運転する男がIDを見せると、守衛は特に不審に思わずに彼らを敷地内に入れた。

 

より市民の理解を得るために行われているこの式典もイベントのようなもののため、こうしてチェックも甘いのだろうが。

 

大方VIPを案内するイベントと勘違いしたのだろう。事実、軍人らしくない彼らに不審を抱く者はいない。式典準備の忙殺、そして施設を見学する一般市民とカムフラージュするまでもなかった。

 

「で、問題のブツは?」

 

「6番ハンガーにある。既に起動可能状態だ」

 

何気ない問い掛けに答え返す男。このアーモリー・ワンに潜入したエレボスらを補佐するためにいる彼らの詳細を知らない。知る必要もないからだ――すぐに『いなくなる』人間のことなど。

 

多くのMSが歩き回る軍施設内を走り抜け、程なくしてバギーはある格納庫前に停車した。

 

キースリットにカードを通すと、ロックが解除され、重々しい音とともに重厚なハッチが開かれていく。薄暗い格納庫へと続く通路に光が差し込み、彼らの影に逆行する。

 

施設内に入れたIDといい、一格納庫のロックを解除するキーといい、ザフトの軍事機密をいとも簡単に崩す段取りを組んだこの案内役の男達には敬服する。

 

素早く一同は中に駆け込み、格納庫へと続く通路の壁に身を隠す。そして、窺うように内部を覗き込むと、何人ものザフト兵や作業員が行き交っている。その中央に横たわるハンガーに固定された灰色の巨大な四肢。

 

アレが目的のセカンドシリーズ――『自分達』の機体だ。確認すると同時に、男達が持ち込んだ大型バックから取り出した銃やライフル等の武器がエレボス達に手渡された。

 

エレボスは慣れた手つきで渡されたサブマシンガンに弾倉を装填し、ステュクスは大型スナイプライフルを組み上げ、砲身をセットすると同時にスコープを覗き込む。レアはナイフを鞘から抜き放ち、その光沢を眺め、刀身に己の顔を映す。それが引き金ともいうように何かのスイッチがレアに入り、視線が鋭く細まる。

 

「では…お疲れ様です」

 

各自が武器を確認すると、ステュクスは唐突にそう告げ――次の瞬間には、男の胸にナイフを突き立て、心臓を抉った。苦痛もなく一瞬で絶命する男。同僚の死に混乱する男に向かってエレボスが銃を構え、引き金を引いた。

 

サイレンサーが取り付けられた銃は音を発することもなく男の眉間を撃ち抜き、鮮血が周囲に散らばる。

 

「わりいな、お前らをバスに乗せてやれねえんだ」

 

「不確定要素は排除するに限ります」

 

冷徹な視線で、ここまで彼らを案内してくれた男達の死体に対しそう言い捨てると、改めて内部を確認する。

 

ここからがパーティーの本番だ。彼ら3人はもはや先程までののどかな一市民ではなく、獲物を狙うハンターのような鋭い視線を浮かべ、奥を見透かす。

 

MS運搬用のクローラーが3基並んでいる。その周囲にはざっと確認しただけで30人程度。この程度ならいける――そう確信した瞬間、エレボスは眼で合図を送り、一斉に駆け出した。

 

 

 

 

 

その数分前――6番格納庫で搬入の準備が進む3機を見上げながら、マーレは悪態を衝いていた。

 

「ちっ、インパルスやセイバーだけ先にミネルバに搬入されたか。特別扱いしやがってっ」

 

先の試験を終え、テストパイロットから正式パイロットに任命されたものの、マーレの搭乗機はテスト通りのアビスだった。カオス、ガイアの2機はコートニー、リーカから別のパイロットに代わったのを考えれば、出世コースだろうが、マーレには納得いかない。

 

先の発表パーティーで正式パイロットに任命されたシンに浴びせられる脚光に、またもや屈辱を味あわされた気分だった。

 

そして、インパルスとセイバーの2機のみが早々とミネルバへと搬入され、それも特別扱いのように感じていた。

 

先の模擬戦で多少態度は軟化したものの、やはりインパルスのパイロットへの渇望は尽きなかった。

 

(だがまだ諦めん。チャンスは必ずある…いつか俺がインパルスを……)

 

そう――まだ機会が完全に失われたわけではない。少なくともミネルバに正式配属になった以上、まだインパルスのパイロット候補として伸し上がるチャンスはある。あの小生意気なシンを打倒し、誰がナンバー1か思い知らせてやる。

 

そんな野望じみた考えに耽っていたが、突如耳に聞こえた爆音にハッと振り返った瞬間、マーレの視界に銃声と鮮血、悲鳴が飛び込んできた。

 

物陰から飛び出したエレボス、レアの二人が一斉に銃を乱射し、突然の奇襲に反応が遅れた軍人達が銃声が木霊した瞬間、弾丸の連射を身体に喰らい、鮮血を飛ばしながら薙ぎ倒される。

 

兵士の声は銃声に掻き消され、慌てて応戦しようと侵入者達に銃を向けたが、遠くから飛来した弾丸がその兵士達の頭部を撃ち抜き、一瞬で絶命させる。物陰から大型ライフルを構え、スコープを覗きながらステュクスは小さく舌を舐め回し、笑みを浮かべながらトリガーを引く。

 

放たれた弾丸は真っ直ぐに兵士に襲い掛かり、成す術もなく撃ち倒されていく。エレボスは撃ち抜いた男の身体を蹴り、身を跳躍させる。宙で弧を描くように側転しながら両手のサブマシンガンを乱射する。その異様な動きに反撃の手が一瞬止まり、兵士達は一斉に身を撃ち抜かれ、命を刈り取られた。

 

その動きは、コーディネイターの彼らから見ても不可解で、非現実的なものだった。

 

着地したエレボスに向けて、クローラーの上で銃を構える兵士だったが、別方向より撃ち込まれた弾丸に頭を撃ち抜かれ、音を立てながら転がり落ちる。その音にエレボスがあさっての方角を見やると、ステュクスはニヤリと笑みを浮かべ、エレボスは舌打ちしながら肩越しに片手の銃口を背後に向け、背後に迫った兵士を撃ち殺した。

 

「はぁぁぁぁっ」

 

レアもまた、エレボスやステュクスが殺戮するなかに飛び込み、兵士達に肉縛する。右手に持ったナイフで次々に喉笛を切り裂き、背後に振り返ると同時に左手に持った銃で確実に心臓を撃ち抜いていく。ナイフを振るう度に白いドレスが翻り、血飛沫が紅い斑模様を描き、いいようのない背徳感を宿した美しい血化粧を施す。

 

「なに!?」

 

唐突に眼前で繰り広げられる殺戮にさしものマーレも呆然となり、反応が遅れる。そんな隙をレアが逃すはずもなく、正確にマーレの心臓目掛けて銃弾を放つ。

 

衝撃がマーレを襲うも、そんな痛みを憶える余裕もなかった。

 

撃ち抜かれ、噴き出す鮮血がマーレの赤いパイロットスーツをより紅く染め上げていく。

 

「バ、バカな……連合、軍か………だから、ナチュラルは、信用…できないんだ……―――」

 

脳裏を一瞬掠めるマコトの顔――やはり、ナチュラルは敵だと…驚愕と憎悪を滲ませながら、マーレの意識は深い奥底に引き込まれ、倒れ伏した。

 

「おらっ、これで終わりだっ」

 

景気づけとばかりに、懐から取り出した手榴弾を振り投げ、抵抗する兵士達が身を隠すコンテナ付近に着弾した瞬間、閃光が拡散し、爆発が兵士を呑み込み、抵抗が完全に止んだ。

 

ほとんど抵抗することも逃げることさえもできず、瞬く間に30人はいた兵士とエースの証である赤のパイロットスーツを着込んだ者達が全滅し、制圧された。

 

辺りに乱雑するコーディネイターの死体と濃厚な血の臭いと硝煙。そんな様を一瞥しても、レアの表情は変わらない。

 

ただレアの内にあったもの―――敵を殺せというあの人の声のみ。

 

(褒めてください…私、ちゃんと殺しました。コーディネイターを…私達の敵を――)

 

そんな思考を抱きながら、レアは頬から流れ、口内に入った異物に表情を顰める。錆びた鉄のような味。倒した誰かの返り血だろうか――レアの頬に付着した血が口まで流れたのだ。

 

その味に嫌悪感を憶えながら、レアは気のない動作でもはや必要のなくなったナイフと銃を放り捨てた。

 

辺りに動く者がいなくなったのを確認すると、ステュクスがエレボスに歩み寄り、手に持っていたライフルを捨て、エレボスに声を掛けた。

 

「エレボス」

 

「ああ。しかしこうも簡単にいくとはな――コーディネイターの連中、もう平和ボケか?」

 

あまりに呆気なく事が進んだことに拍子抜けし、侮蔑するように鼻を鳴らし、死体の一つを蹴る。

 

「政治的パフォーマンスというやつでしょう。『我々はテロに屈しない』とね…まあ、そのおかげでこうもあっさり進んだわけですし」

 

式典にかこつけて一般市民まで招くのだから、潜入などお手の物だ。むしろ、これはどうぞ盗ってくださいと言っているのではないかと思えるほどだ。

 

「けど、まさかこんな苦労させやがるとはな、ロイの野郎――何が自分の機体が欲しければ、自分で奪ってこいだっ」

 

こんな辺鄙なコロニーにまで送り込んだ上官に向かって毒づくと、ステュクスは眼鏡を持ち直し、不敵な笑みを微かに浮かべる。

 

「仕方ないでしょう。命令とあらば。それに、ザフトがせっかく新型を造ってくれているんです。どうせなら前のお返しをするのも悪くはないでしょう」

 

悪びれもなく言いのける。

 

彼ら3人が部隊に正式に配属になった時に、それぞれの新型機が受領されると聞かされていたが、あけてビックリ――新型機は新型機でも、それはザフトのものであった。

 

数日前に彼らの許に下された命令は、アーモリー・ワンにて開発されているザフトのセカンドシリーズの奪取――要は、自分の機体が欲しければ、敵から奪ってこいだった。

 

前大戦において中立コロニーであったヘリオポリスで当時の連合軍が開発していたGシリーズを奪取された屈辱を晴らそうという上層部の思惑もあったかもしれないが、やらされる方にはいい迷惑だった。

 

「さて、長居は無用ですね」

 

「よし、行くぞ!」

 

エレボスは勢いよくサブマシンガンを投げ捨て、駆け出す。その号令に応じるように、ステュクス、レアもまた駆け出し、それぞれ3基のクローラーに向かい、その上に横たわる鉄褐色の灰色の巨人のコックピットに飛び込んだ。

 

シートに着くとともに、コンソールを操作してOSを起ち上げると、手元のモニターにOS名が浮かぶ。

 

 

 

 

 

―――Generation

 

―――Unrestricted

 

―――Network

 

―――Drive

 

―――Assault

 

―――Module

 

 

 

 

 

『G・U・N・D・A・M』―――起動画面の頭文字を繋げるとそう読める。『ガンダム』とでも読むのだろうかとレアは内心思うも、すぐに思考を設定画面に切り替える。

 

《どうだ?》

 

通信機からエレボスの声が響く。

 

《NO PROBLEM。情報通りです》

 

「いいよ」

 

ステュクスが応じ、レアも作業を続けながら答えた。その手が踊るように各キーを叩き、教えられた通りに起動シーケンスをこなす。

 

《量子触媒反応スタート、パワーフロー良好!》

 

OSの起動とともに各コンソールに光が灯り、コックピット内に充満していく。

 

《全兵装アクティブ、オールウェポンズフリー》

 

続けて各兵装のロックを解除し、戦闘体勢へと移行させていく。

 

「システム、戦闘ステータスで起動――」

 

エンジン音が低く唸りを上げ、クローラーを震わせ、横たわる3機のカメラアイに火が灯る。主を得、目覚めるようにその巨体を持ち上げ、クローラーごと立ち上がる。ロックを強引に弾き飛ばし、電源ケーブルが切り離される。

 

《へっ、凄いパワーじゃねえか!》

 

《ザフトには感謝ですね》

 

エレボスとステュクスは自身が搭乗した機体の能力に魅せられるなか、機体を立ち上がらせ、2機に遅れてレアも機体をクローラーから立ち上がらせた。

 

立ち並ぶ3機の鉄褐色の装甲が、揺らめくように色づく。エレボスの乗り込んだ機体はモスグリーンに。ステュクスの機体はネイビーブルーに。そしてレアの搭乗する機体は黒く染め上げる。

 

 

 

――――ZGMF-X24S:カオス

 

――――ZGMF-X31S:アビス

 

――――ZGMF-X88S:ガイア

 

 

 

『混沌』、『深淵』、『大地』の名を冠する3機は本来とは異なった主を得、その道を違える。格納庫に佇む3機のセカンドシリーズは、その威容と異端さを醸し出しながら、ゆっくりと歩み出す。主が敵と定めた自身の創造主を淘汰するために――

 

3機が起動するとともに倒れていた兵士の内、一人の作業員が這い蹲るように作業コンソールに縋る。瀕死の状態で意識が朦朧とするなか、最期の力を振り絞って警報ボタンを叩き押した。

 

ガラスを破り、押し込まれると同時にけたたましいサイレンが響くも…既に遅かった――――

 

 

 

 

 

その数分前―――雫はデュランダルに連れられ、会談の場であった執務室から出ていた。

 

突然、工廠内を案内しようと言い出した彼に戸惑いを浮かべつつも同行し、それに伴ってラクス、キラ、リンらも喧騒とMSが歩き回る工廠を歩いていた。

 

工廠内には幾棟もの格納庫が立ち並び、きびきびと動き回る兵士に、MSが歩く度に地響きが聞こえ、辺りからはオイルの匂い。雑然とする工廠内にリンは思わず警戒するように見回す。

 

かつて、自分も一度はこの場所に身を置いた。軍を脱走した身なれど、ザフト内で培った習性は早々消えるものではない。内心自嘲しながら、バイザー越しに視線を周囲に向けていた。

 

(思えば開戦当初から身を置いていたな――)

 

柄にもなく過去に思いを馳せる。

 

よくよく考えてみれば戦端となったユニウスセブンの攻防戦に、自分は参戦していたのだ。あの頃はそんな戦績にも戦いにも意味を持てなかったため、興味など無かったが。

 

あの当時、自分も乗った最新鋭機であったはずのジンやシグーもちらほら見えるが、既に旧式に成り下がった。そして大戦後期に実戦配備が始まったばかりだったゲイツも改良型が開発されている。

 

薄黄色の戦車タイプの機体は、恐らくザウートの次世代機だろう。思わずMSに見入っていたが、その耳にデュランダルの声が再び響き、注意がそちらに向く。

 

「やはり、外交官には今のプラントを見ていただくのが一番でしょう」

 

その言葉は暗に今のプラントの軍事力を示唆させているのか、探るような視線を向けながら、行き交うMSや格納庫の中を時折指差して解説するデュランダルを雫とリンは凝視する。

 

「確かに、素晴らしいものですね。私は軍事には疎いのですが、こうして見るだけでも貴国の力の程が身に染みます」

 

どこか揶揄するような口調で答え返すも、雫自身困惑しているのだ。まさか、工廠内を案内する等と言い出すとは思わなかった。今回はあくまで条約を詰める前の交渉の第一段階でしかない。視察ともまた違うような気がし、デュランダルの真意を図りかねていた。

 

「先程申しました通り、今の世界における貴国とプラントの立場は、複雑な位置にあります。ならば今この情勢下のなか、我々がどのような道を取るべきかは、よくお分かりの事と思いますが―――」

 

デュランダルのほのめかしに対し、リンは内心舌を巻かずにいられなかった。

 

なかなか上手い言い方だ。プラントと日本が対等の立場であるかのように示唆し、それを持ち上げて今この行為自体も肯定的に錯覚させる。そして、相手の警戒を解き、自らの話術に引き込む。

 

人間、自分を認めてくれる者には、どうしても警戒を緩めてしまうものだ。

 

(やはり、油断ならない――か)

 

だが、デュランダルが漏らしたのは正論だ。果たしてこの問いに雫はどう答えるのか、視線を雫に向ける。

 

「勿論、それは承知しています。ですが、急がば回れ――あまり事を急ぎすぎては、足元をすくわれかねないことも、議長ならお分かりになると思いますが……」

 

どうやら、デュランダルの言葉の罠には掛からなかったようだ。皮肉を込めた言葉に、ラクスだけでなく随行するキラ達らも表情を硬くするも、デュランダルは一人感嘆を感じさせるように表情を驚きに包んでいるようにリンは感じ取った。

 

「此度のセカンドシリーズ、そして新造艦に合わせた大規模な軍事式典。プラントの地球での立場は決してよろしくはありません」

 

それでも言葉を選ぶ辺りはまだ理知的なのだろう。今回の軍事式典に関しても傍目――地球側の国々から見れば、不安を掻き立てるには充分なものだ。

 

ただでさえ、先の大戦における地球各国とプラント間の社会問題はまだまだ解決されていない。そんな状況では、プラントを快く思わない者にとっては絶好の付け入る隙になるのではないのだろうか。

 

「私も外交官です。軍事力を否定はしません。ですが、軍事力を背景にした外交など恫喝でしかない。私達は人間です――言葉を交わす術を持っている。だから、こうして私は貴方と話しています」

 

真っ直ぐな視線を向ける雫にデュランダルは頷き、その整った顔に穏やかな――見る者を引き付ける聖職者のような笑みを浮かべる。

 

「それは我々とて無論、同じです。そうであれたなら、一番良い」

 

雫の言葉を肯定しつつも、柔和な笑みを浮かべたまま、こう続けた。

 

「ですが…力なくば、それは叶わない――」

 

その言葉に雫だけでなくラクスやキラも表情を沈痛に俯かせる。リンもそれが真理であるため、苦いものを感じている。

 

先の大戦では、その力で終結させただけに、デュランダルの言葉は嫌でも響く。

 

「だからこそ、日本も軍備を整えていらっしゃる」

 

イニシアチブを取られた――そんな心境だろうか。雫は返す言葉が見当たらず、黙り込むだけだ。

 

力なくば叶わない――それは雫にもよく分かっていた。現にその力で日本を独立させ、また自国の独立を維持するために軍備も日本は整えている。

 

力のない者の言葉を聞こうとする者などいはしない――それが政治の世界なら尚更だ。だがそれは、言い換えれば軍事力を背景にしたものだ。己の内で矛盾と罵り、言葉が彷徨う。

 

「議長のお言葉――それが確かに真実で、今の現実でしょう。ですが、これだけは言えます…過ぎたる力は、いずれ争いと災いを齎します。それは議長がご存知でしょう?」

 

前大戦の末期に起こった第2次ヤキン・ドゥーエ攻防戦。プラントに向けて放たれた核の炎、そしてジェネシスから放たれた死への光――それらが多くの命を奪ったのは、誰もが知ること。

 

だが、雫のその言葉に動じる気配もなく、緩やかに被りを振る。

 

「いいえ、外交官。争いがなくならぬから――力が必要なのです」

 

雫が息を呑んで立ち尽くしていると、突如警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

突如工廠内に轟いた警報に、あてがわれたハンガーで起動準備を進める刹那。工廠内を歩くルナマリア、レイ、セス。そしてミネルバに向かおうとするシン、ステラ、マコトの耳にも届き、工廠内は先程とは違い、一瞬静寂に包まれた後、再び喧騒に包まれた。

 

その余りにも突発的な事態に、対談も忘れ、その場にいた者達は周囲に視線を彷徨わせる。

 

「なんだ?」

 

デュランダルが困惑気味に漏らし、ラクスとキラも混乱した面持ちを浮かべながらも、キラは油断なく見回し、すぐに行動に移れるようにラクスの傍で構える。

 

「これは――?」

 

鳴り止まぬサイレンに、雫も胸騒ぎを憶えながら周囲を見回し、リンも工廠内の兵士達が事態を把握しようと動き始めている光景を一瞥する。

 

(やはり――っ)

 

緊迫した状況のなかで、確信に近い何かを憶えた瞬間――一画の格納庫内部から、鉄の巨大な扉を数条のビームが貫き、真っ直ぐに伸びるビームが前方の格納庫内部に吸い込まれるように消え、格納庫内に固定されていたMSを吹き飛ばした。

 

「伏せろっ!」

 

「きゃっ」

 

咄嗟にリンが叫び、リンはコートを拡げ、雫の腕を取った。悲鳴を上げるも気に掛ける余裕もなく、雫をコート内に庇い、身を低くする。

 

「ラクス!」

 

キラも素早くラクスの身を抱き寄せ、近くに止めてあった車両の物陰に飛び込み、デュランダルも近くにいた数名の兵士で覆い被さり、盾となる。

 

次の瞬間、彼らのいた場所を爆風が全てを吹き飛ばすように駆け抜ける。MSのエンジンが誘爆した際における爆風が過ぎり、濛々と立ち込める粉塵のなか、リンは舌打ちして粉塵を振り払うように身を起こす。

 

「あ、あの…ありがとうございます」

 

「礼ならいい」

 

そんな余裕はないとばかりに、状況を確認する。

 

「い、一体何が!?」

 

混乱を隠せず、身を起こしたラクスが、呆然と声を上げた。デュランダルも随員達に庇われて無事なようで、周囲に視線を向けながら危なげなく立ち上がっていた。

 

混乱するなかでリンは冷静に爆発のあった方に視線を向けると、風に吹き流されていく爆煙のなかから、3体の巨大なシルエットが現れた。

 

「カオス、ガイア――アビスっ!?」

 

誰が漏らしたのか知らない。だが、その特徴的なフォルムを見て判別し、驚愕とともにその名を口にした。そして、随員の一人がデュランダルに詳細を伝えると、驚愕に染める。

 

「何だと!?」

 

今までの冷静な彼らしくない驚きだったが、それに気を取られる余裕はなかった。リン達の視線はその姿を現わした機体に釘付けにされていたのだから。

 

ツインアイにツインマルチプレートアンテナという特長的な頭部に、ジンやゲイツに比べ、すらりとした直線的なフォルム。それぞれに特殊武装を施されてはいるが、その基本的なデザインは見間違えようがない。

 

「あれは――!?」

 

「ガンダム――?」

 

かつて、共に駆った愛機を思わせるその姿に、キラが絶句し、ラクスが愕然と呟き、リンはその形状に切れぬ皮肉な運命を憶えた。

 

 

 

 

吹き飛ばされ、融け落ちた扉からその存在を誇示するように姿を現わすカオス、ガイア、アビスの3機。

 

「まず格納庫を潰す! MSが出てくるぜ!」

 

エレボスが陽気に叫び、それに応えるようにステュクスが素っ気なくレアに命じた。

 

「レア、君は左をお願いしますよ」

 

「分かった」

 

レアは淡々と答え、視線を細めた。

 

「よしっ、やぁぁってやるぜっっ!!」

 

獲物を求める野獣のようなエレボスの掛け声とともに、3機はそれぞれの獲物を求めて3方向に飛ぶ。刹那、火線が迸った。

 

レアはガイアを左へと加速させ、レバーを引き、それに連動して跳躍したガイアは空中でその身を変形させ、四脚の獣型形態へと変え、素早い動きで工廠内を駆け、その獰猛な牙と爪で躍動する。黒い疾風が格納庫の間を駆け抜け、背部のビーム砲が放たれ、格納庫内に並んでいたジンやゲイツRの装甲を貫き、エンジンが爆発し、誘発によって格納庫内のMSが出撃する間もなく格納庫ごと吹き飛ばされた。

 

アビスは、両肩を覆う甲羅のようなシールドから突き出した2門の連装砲で砲撃し、幾棟もの格納庫を撃ち抜き、周囲を火の海に変えていった。

 

カオスは、ビームライフルで並び立つ式典用ジンを、豪華な射的の的を射落とすように、片っ端から撃ち抜いていた。背面の兵装ポッドが開き、一斉に放たれたAGM141ファイヤーフライ誘導ミサイルが花火のように打ち上げられ、空中で弧を描き、次々に格納庫に着弾し、炎の花を咲かせていく。

 

蹂躙する3機のMSは、次々と工廠内を爆発と悲鳴に染め上げていく。

 

だが、ザフト側も奇襲の衝撃から立ち直ると弾かれるように、迎撃のために次々とMSを発進させた。

 

いくら奇襲を受けたとはいえ、ここは軍事工廠だ。当然、MSの数も半端ではない。

 

「発進急げっ!」

 

整備士達が慌しく発進準備を進めるなか、パイロット達はノーマルスーツを着込み、搭乗機に乗り込んでいく。

 

「6番ハンガーの新型が、何者かに強奪されたっ! MSを出せ! 取り押さえるんだっ!!」

 

指揮官らしき男が怒号を張り上げるも、それを気に留める者はほとんどいない。皆、自身の作業で手一杯なのだ。

 

ジン、シグー、ゲイツRらが銃を手にハンガーより起動し、空戦用MSであるディンが翼を拡げて飛び立ち、大火力を誇るガズウートが戦車形態から二足歩行に切り替え、その砲門を向け、砲撃を浴びせた。

 

標的にされたアビスのコックピットでロックオンに気づいたステュクスがガズウートに向けて笑みを浮かべ、砲撃が周囲に着弾するなか、レバーを押し、アビスを加速させた。

 

いくら改良されたとはいえ、その鈍重さではアビスの機動性に追いつけず、懐に潜り込まれたガズウートに向けてアビスは手のビームランスを振り被る。

 

突き出される先端からビームの刃が飛び出し、ガズウートのコックピットを貫き、アビスはそれを振り上げる。

 

「はぁぁぁっ!」

 

突き入れたボディごと、アビスはガズウートの巨体を持ち上げ、それを勢いよく放り投げた。

 

放り投げられたガズウートはそのまま後方の格納庫内に投げ入れられ、追い討ちをかけるようにアビスは全火器を展開し、一斉射する。

 

大容量のエネルギーが格納庫内で荒れ狂い、一際大きな爆発とともに格納庫を炎の柱で包む。

 

その炎に照り映えるアビスのツインアイが不気味に輝き、その形相を悪鬼のように錯覚させる。そして、その主たる少年も歪んだ嘲笑を浮かべていた。

 

 

 

「8番格納庫がやられたっ!」

 

「くそうっ何がどうなってる!?」

 

離れた場所で炎を上げる様子に、待機していた式典ジンのコックピットでパイロットが苛立った声を上げる。

 

工廠内は混乱し、まともな情報が入ってこないが、敵襲であることは明白だった。しかし、今現在彼らの搭乗しているのは式典用の装飾を施されたジンで装備もただのハリボテに近いものだった。こんな装備では戦闘どころではない。

 

「とにかく、こんな式典用装備じゃどうにもならん! 実弾の入ったライフルを――!」

 

武器を換装しようと背を向けた瞬間、格納庫の陰から影が飛び出し、その背中の翼から光が迸り、式典用ジンの間を駆け抜けた。

 

黒い影が過ぎった瞬間、ジンの胴体が真っ二つに切り裂かれ、パイロット達は何が起こったか知覚する前に爆発に意識を呑まれた。

 

爆発を背に駆けるガイアに、ザフト兵士が困惑する。

 

「何だ!?」

 

「バクゥ? ラゴゥ?」

 

四脚で向かってくる機影は、バクゥやラゴゥといった機体と酷似した形状を持つも、デイテールはまるで違う。

 

「いや違う! アレは――っ!?」

 

それが新型の一機であると理解した瞬間、ガイアは寸前で大きく跳躍し、MSの上を取る。

 

上空で変形し、再び人型となったガイアのコックピットでレアが怜悧な視線で見据え、何の躊躇いもなくトリガーを引いた。

 

ビームがジンとゲイツRのボディを撃ち抜き、四散する。爆発のなかへ着地するガイア。多くの爆発という炎が太陽のないこの虚構の空を焦がす。躍動に満ち溢れる鋼鉄の獣を自由自在に駆るこの瞬間が、レアの体内の血を熱く沸騰させる。

 

 

 

―――これは最高の搭乗機だ。私のガイア!

 

 

 

声にならない歓喜をその表情に浮かべ、レアはその感じる興奮と高まる気分に導かれるままに、襲い掛かってくる新たな獲物に向けて獰猛な爪で切り裂くべくガイアを駆る。

 

もっともっと――もっともっと壊したい。そんないいようのない快感が神経を浸していく。まるで麻薬に侵されるように、レアはガイアを砲撃の中へと突撃させた。

 

 

 

 

戦闘の混乱が渦巻くなか、ルナマリア、レイ、セスの3人も迎撃に出るために搭乗機が格納されているハンガーに向かって駆けていたが、その足が思わず立ち止まる。

 

彼らの搭乗機の格納庫前で、一体のゲイツRが護るように応戦していたが、カオスの放ったビームに装甲を貫かれ、爆発した。

 

その爆発の余波が格納庫に向かい、壁を融け崩し、爆風が3体のザクを押し倒し、瓦礫が降り注ぐ。

 

爆風を避けるために頭を覆って身を低くし、凌いだ3人は慌てて身を起こすも、その眼前の光景に絶句する。

 

炎が燻る格納庫内で瓦礫に埋まる愛機を前に、3人は悔しさに歯噛みした。

 

 

 

 

 

 

「外交官らをシェルターへ!」

 

最初の衝撃から立ち直り、安全な場所へと移動すると、デュランダルはすぐさま随員にそう指示を出した。それに従って兵士の一人が雫を先導すると、デュランダルはラクスらを見やる。

 

「外務次官らもご同行ください、ここは危険です」

 

「え、しかし…」

 

困惑するラクスだったが、キラがラクスの肩を抱き、呆然としているラクスを促し、後ろ髪引かれるように後に続いた。

 

リンも逡巡するも、身を翻し、ラクスらの後を追った。その後姿を一瞥すると、デュランダルは指示を飛ばす。

 

「なんとしても抑えるんだ! ミネルバにも応援を頼め!」

 

流石にデュランダルはすぐに冷静さを取り戻し、事態の収拾に掛かっていることに感心しながら兵士の後についていった。

 

その声を背中に受けながら、リンは瞬く間に火の海と化した工廠内を見回す。もはや先程の光景はどこにもない。

 

あるのは硝煙と血の臭いのみ。一瞥したあの3機のMSは間違いない。セカンドシリーズの機体だ。かつて自分が駆った愛機、エヴォリューションの流れを汲むと思われる、次世代型MS。

 

(やはり、セカンドシリーズか――それに、ガンダムっ)

 

新たな火種になりうるもの――だがまさか、こんなに大胆不敵に行動を起こすとは、リンにも予測できなかった。

 

いや――戦時中ではなく平時だからこそ、及んだのかもしれない。

 

力は新たな災いと争いを呼ぶ――そう漏らした雫の言葉が内を巡る。あのセカンドシリーズもまたそういったものだったということ。考える間でもないことだった。その力を危惧し、また欲する者がいる限り……

 

また…新たな嵐が吹き荒れる―――そんな予感を、リンはひしひしと感じていた。

 

 

 

 

 

 

戦闘区域からほど近い工廠内のドックに繋留される淡いグレイの戦艦。前方に突き出した艦首の両側に大きな三角形の翼が広がり、船体中央に小型のカタパルトが備わり、両舷にもMS用ハッチを備えている。翼部や船体下部を赤に塗り分けられ、従来のザフト艦に比べてやや直線的な印象を感じさせるそのフォルムは、どちらかと言えばオーブ系艦船に類似している。

 

それは、明日に進水式を控えたザフトの最新鋭艦:ミネルバだった。

 

そのブリッジでは、奇襲の確認に追われるクルー達の姿があった。今、動けないこの艦もいい的だ。進水式を待たずして沈まされるなど、艦長にとってこの上ない屈辱だ。

 

ギリッと奥歯を噛み締めるように、中央のキャプテンシートに着くのは純白の軍服を着込んだ女性。

 

先の大戦においてナスカ級:ヘルダーリンの艦長を務め、最終決戦において多大な貢献をした士官:タリア・グラディスだった。

 

その功績を認められ、こうして新造艦の艦長に任命された彼女はモニター越しに映る爆発を睨むように見据える。揺れと振動はこのミネルバにも伝わってくる。

 

「艦長! 司令部より入電! ミネルバ艦載機にも応援の要請が!」

 

上部の通信席に座る、通信管制を務めるメイリン・・ホークが上擦った声でタリアにそう報告した。

 

「なんですって!?」

 

さしものタリアも言葉を失う。このミネルバに艦載されている機体は、現状2機しかない。だが、その2機はただのMSではない。それを出撃させることに対する影響をタリアは逡巡する。

 

だが、司令部からの要請である以上、従うしかない。すぐさま思考を切り替え、タリアは矢継ぎに指示を飛ばした。

 

「メイリン、格納庫に通達! インパルス及びセイバー発進スタンバイ! アーサー! 彼らは!?」

 

その指示に驚愕するクルー達だったが、有無を言わせぬタリアの口調に、慌てて実行していく。

 

そして、タリアは立ち上る煙を映し出すモニターを睨みながら、新たな戦いの予感に身を震わせた。

 

 

 

 

ミネルバ周辺でも慌しく作業員が動き回り、作業を中断してミネルバへの搭乗が行われている。シンとステラも駆けるようにミネルバへと向かっていく。

 

「マコト、お前らは早く逃げろっ!」

 

タラップの前で止まり、同じようにここへと走ってきたマコトに向かってシンは怒鳴るように叫ぶ。

 

「はぁ、あ、ああ――」

 

走ってきたためか、息が大きく乱れながらも頷き返す。工廠に戻れば突然の警報。聞き慣れぬ音に面を喰らったのも束の間、次の瞬間には爆発と悲鳴が木霊する破壊の光景が繰り広げられ、マコトは一瞬呆然となったものの、シン達に意識を戻され、なんとかミネルバの傍まで避難してきた。

 

「けど、なんでこんな……」

 

やるせないものが胸のなかで拡がる。まさか、こんな場所で戦闘が起こるとは思っていなかった。

 

「わからねえ。けど、俺達にも出撃が下ったんだ、お前らは関係ない、早く逃げろ!」

 

正直シン達も困惑しているのだ。突然の奇襲に出撃。2年前に味わったあの感覚が再びシンの内で沸き上がるのを感じていた。

 

そして、護るという意思も――マコト達は元々招かれただけの客人だ。戦闘に巻き込むわけにはいかない。

 

「シン、気をつけてな」

 

「ああ。縁があったらまた会おうぜ!」

 

手を振ると、シンはステラに促され、タラップを駆け上がり、艦橋内へと駆け込んでいく。

 

その背中を見送ると、マコトは表情を顰める。

 

次に会うのは…果たしていつのことになるのか――これが今生の別れになるかもしれない。そんな不安がマコトの内を駆け巡るも、右手に感じた感触にハッと我に返る。

 

右手に握り、ここまで走ってきたカスミがマコトを見上げている。そうだと――今の自分には、護るものがある。

 

決意を新たにマコトは今一度シン達が消えたミネルバを一瞥し、彼らの身を案じながらその場を離れた。

 

生き延びるために……護り抜くために―――――

 

 

 

 

 

 

《コンディションイエロー発令! コンディションイエロー発令! 各要員は持ち場に!》

 

メイリンの非常事態を告げるアナウンスが響くなか、パイロットスーツに着替えたシンとステラがミネルバの格納庫に駆け込むと、既に技術主任であるマッド・エイブスを筆頭に発進体勢が急ピッチで進められていた。

 

「シン! ステラ!」

 

「マッド主任! インパルスとセイバーは!?」

 

「どちらもいける! 早く乗れっ」

 

その時、格納庫がまた揺れる。戦闘の振動が大きくなってきている。このまま大きくなれば、最悪外壁に穴が空くような事態になる。そうなれば最悪の結末だ。

 

「何をしている! 全員、作業を急げ!」

 

振動に不安な面持ちを浮かべる整備士達を一喝し、作業を再開する。そして、シンとステラは互いに頷き、整備士達の間を駆け抜け、機体が収められている収納エレベーターへと向かう。

 

ハッチが開放され、その先には愛機が発進の時を静かに待ち構えている。二人は愛機へと飛び込んでいくように搭乗する。

 

コックピットに着くと同時にハッチが閉じられ、ヘルメットのバイザーを下ろし、発進シークエンスを開始する。

 

《インパルス、セイバー発進スタンバイ! パイロットは搭乗機へ》

 

コンソール画面にOS起動画面が表示され、各種モニターに光が灯る。

 

 

 

 

―――Generation

 

―――Unrestricted

 

―――Network

 

―――Drive

 

―――Assault

 

―――Module

 

 

 

 

『GUNDAM』と名打たれたOS画面の起動とともに機体が起ち上がり、エネルギーが機体の躍動を響かせるようにいき渡る。武装を確認し、全装備がグリーンを表示する。

 

そして、戦闘ステータスで機体を起動させる。

 

《インパルス、モジュールはソードを選択。シルエットハンガー2号を開放します。シルエットフライヤー、射出スタンバイ! プラットホームはセットを完了、中央カタパルトオンライン!》

 

コロニー内での戦闘となる以上、派手な火器は使えない。なら、近接戦とパワーに優れたソードシルエットの方がいい。

 

《気密シャッターを閉鎖します! 発進区画、非常要員は退避してください!》

 

セイバー、コアスプレンダー、ソードシルエット、チェスト、レッグの順番でエレベーターホールへと収まり、その周囲を覆うように透明なガラスが降り、整備士が退避していく。

 

《中央カタパルト、発進位置にリフトアップします》

 

ベルトが動き、エレベーターを上へと押し上げていく。上昇する感触がコックピットに着くシンとステラにも重く圧し掛かり、息を呑む。

 

《全システム、オンラインを確認! 発進シークエンスを開始します! ハッチ開放! 射出システムのエンゲージを確認!》

 

起動を終え、発進位置に就く。前方に拡がるハッチが開かれ、その先に光が差し込む。

 

その光にステラは一瞬眼を閉じるも、再び開かれた瞳に力強い意志を宿し、先を見据える。

 

《カタパルト推力正常――進路クリア、セイバー発進、どうぞ!》

 

カタパルトラインが形成され、ステラはレバーを押し、操縦桿を押し込む。それに連動して後部エンジンが火を噴き、発進を告げるパネルが点灯し、戦闘機を打ち出すように発進させる。

 

「ステラ・ルーシェ、セイバー出るの!」

 

鉄褐色の戦闘機がミネルバから飛び出し、加速する。

 

続けて上階へ立ち昇るリフト。ゆっくりとカタパルトデッキの床が眼の上から下がり、同時に前方のハッチの向こうに見える光が視界に入る。隙間から薄青い空が覗く。

 

ミネルバに戻ってすぐに伝えられたのは、自分の搭乗する機体と同じく開発されたセカンドシリーズの3機が強奪され、それによる奇襲が行われているということ。

 

演習ではない――久方ぶりに感じる戦闘の空気が、肌をピリピリさせる。

 

《進路クリア、コアスプレンダー発進、どうぞ!》

 

「シン・アスカ、コアスプレンダー、いきます!」

 

左手のスロットルを全開にし、直後カタパルトによる加速度が身体をシートに押し付ける圧迫感が襲い、機体がエンジンを噴き上げる。

 

電磁パネルが全てのシークエンスをクリアさせ、『LAUNCH』という文字が表示された瞬間、コアスプレンダーが飛び立つ。

 

ミネルバから飛び出し、一瞬の内に全方位が開け、シンは差し込む光に僅かに眼を細めた。空中で機体を旋回させ、加速させる。

 

そして、ミネルバではインパルスを形成するパーツの射出に移行する。

 

《カタパルトエンゲージ、シルエットフライヤー射出、どうぞ!》

 

先端に戦闘機を思わせるパーツを装着したソードシルエットが自動制御でエンジンを噴かし、カタパルトから飛び立つ。

 

《続いてチェストフライヤー射出、どうぞ!》

 

カタパルトが固定されると同時に固定具が外れ、宙に浮いた瞬間、チェストが発進する。

 

《レッグフライヤー射出、どうぞ!》

 

最後にレッグが射出され、3機のフライヤーは先行するコアスプレンダーを追い、加速し、戦闘空域へと突入していった。

 

工廠内を飛ぶシンの視界に立ち昇る黒煙が映り、予想以上の破壊に愕然となる。至る所に火が見え、数十棟の格納庫が無残に倒壊し、何十というMSが破壊され、その屍を晒している。

 

そして、未だに工廠内で咲き誇る火花。あの場所で誰かが死んでいくのかと思うと、いいようのない怒りで頭が沸騰し、砕けそうなほど強く奥歯を噛み締めていた。

 

その怒りを胸に、シンは戦闘空域に突入していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

先導され、リン達は格納庫の間を走っていたが、建物の陰を出た所でリンは足を止めた。それに反応するように全員が足を止めると、ほんの十数メートル先で、MS同士が戦闘を繰り広げていた。

 

陰から飛び出したカオスがビームサーベルでジンを貫き、リンは舌打ちして雫を引き寄せ、キラはラクスを抱いて、引きずるように建物の陰に跳び下がる。直後、機体は爆発し、炎は反応の遅れた先導の兵士をあっという間に呑み込んだ。

 

ジンとゲイツRがカオスに向けて砲撃するも、シールドを翳して受け止め、カオスは次なる獲物目掛けて駆ける。

 

その光景に絶句するラクスと雫。だが、今は気に掛けている余裕はない。

 

「こっちよ!」

 

案内役を失った以上、できるだけ戦闘区域から離れるしかない。

 

リンは駆け出し、キラもそれに応じてラクスを促して走る。雫も先程の光景に、何度も振り返りながらも今は従うしかなく、後を追った。

 

息を切らしながら走るも、彼らの退路を塞ぐように縦横無尽に走り回るガイアが向こう側から踊り出、上空から迫るディンの砲撃が、ガイアを避けて4人の周囲に降り注ぎ、巨大な穴を穿つ。

 

咄嗟に近くにあった車両の陰に飛び込み、身を隠す。流れ弾が周囲に着弾し、建物の壁が崩れ、轟音とともに破片が降り注ぐ。

 

(くそっ、こいつら正気なのかっ)

 

リンは内心悪態を衝く。あの強奪犯にしても迎撃するザフトにしても、コロニー内で派手な火器の応酬をやるなど、正気の沙汰とは思えない。下手をすればコロニーの外壁に穴が空き、内にいる人間は全滅する。

 

「なんで…どうして、こんな――っ!」

 

キラの腕のなかで、ラクスがやり切れない思いを吐き出す。

 

めまぐるしく動く現実――やはり、新たな争いは噴出してしまうのか。それも今度は自分達の属する陣営から。

 

「これが現実よ、ラクス」

 

沈むラクスに向かってリンが言い放つ。

 

虚を衝かれたラクスは息を呑むも、リンは淡々と告げる。

 

「貴方自身が言ったことでしょ――歯車が狂えば、世界はまた不安定な状態になる」

 

恒久な平和などありはしない。それはラクス自身が言ったことだ。それは新たな争いのための準備期間でしかないと――分かってはいたが、いざ現実に直視しては、やるせないものを憶える。

 

「とにかく今は生き延びることだけ考えなさい」

 

そう――悩むのも後悔するのも後だ。この場を生き延びなければ、そんなものに何の意味もなくなる。

 

未だ迷うラクスを一瞥し、リンが顔を上げて戦闘を見やると、ガイアが跳躍し、空中でディンと交錯する。背中の2枚の翼が拡がり、それに沿って発される光刃がすれ違いざまにディンのボディを切り裂き、落下してきた。

 

ディンの残骸が格納庫の屋根を突き破り、内部で激しい爆発を起こす。それによって巻き起こる爆風と爆発に弾かれるように壁を突き破って倒れてくる影。

 

爆風から身を護るように車両の陰に隠れる。建物の破片が降り注ぎ、巨大なものがすぐ傍に倒れ、その衝撃で身を寄せていた車両が僅かに跳ね上がる。

 

「キラ――!」

 

キラに庇われていたラクスは、震える声で自分を庇った身を案じて声を掛けるも、キラは安心させるように微笑む。

 

「大丈夫だよ」

 

「そっちも無事ね」

 

「ええ。なんとかですが――」

 

雫を庇っていたリンも歯噛みする。破片が直撃しなかったのは幸運だが、このままではまずい。

 

車両の向こう側では、MS形態になったガイアがビームライフルを放ち、シグーやゲイツRを粉砕し、手近の格納庫を手当たり次第に破壊している。

 

もはや周囲は瓦礫の山と化し、退路を探すのは不可能に近い。絶望がひしひしとにじり寄るなか、この状況を切り抜ける術を模索し、リンは周囲を見渡すと、すぐ後方に倒れ伏した機体に気づいた。

 

路上に横たわっていたのは、2機の緑のMS。ZGMF-1000:ザクウォーリアだ。どうやら、先程の攻撃で破壊された格納庫から飛び出したらしい。開かれたハッチと目立ったダメージを受けていないことを確認すると、リンは意思を固め、キラを見やる。

 

「キラ、腕は鈍ってないわね?」

 

「え?」

 

唐突に掛けられた声にキラも振り返り、その視線の先にあったザクウォーリアを確認し、リンに思わず視線を向けると、リンが視線で促し、意図を察したキラも決然と頷く。

 

「キラ、あんたは二人を!」

 

言うやいなやリンは駆け出し、キラも一筋の光明を見出したような思いでラクスと雫に声を掛ける。

 

「ラクス! 貴方も!」

 

ラクスと雫を促し、呆然となっていた二人を引っ張りながら機体に駆け寄る。二人の手を引きながら、ハッチ付近まで登ると、二人を促す。

 

「早く、乗って!」

 

「え?」

 

戸惑うラクスを抱き上げ、雫を視線で促すと、雫はおずおずとコックピットに入り、それに続くようにキラも飛び込む。素早くシートに着き、慣れた動作で起動シークエンスを立ち上げる。

 

ハッチが閉じられ、コックピットの起動スイッチを押しながらキラは急ぐ。

 

自分がかつて搭乗していた機体とは多少レイアウトが違っているが、大体の見当はつくし、基本的な部分は変わっていないことに感謝をすると同時に、場違いな安心感を持ってしまった。

 

「キラ―――」

 

3人で狭いコックピット内で、ラクスは複雑な思いを滲ませながら声を掛ける。あの大戦で傷つき、もう二度とMSには乗らないだろうと思っていたキラの気持ちを慮るが、キラはそんなラクスの思いをありがたいと思うと同時に、短く吐き捨てた。

 

「こんな所で、君を死なせるわけにいかないよ!」

 

むしろこの状況では、この中の方が外よりは遥かにマシな避難所だった。操縦系統は旧型と異なってはいるが、大方見当がつく。動かせないわけはない。

 

そして、隣のザクに搭乗したリンもハッチを閉じ、同じように起動シークエンスを開始する。この機体に乗るのは初めてではない。既に何度か乗ったこともある。操作方法に問題はない。

 

基盤のスイッチをすべて起動させ、流れるようにキーを叩き、コンソールに光が灯ると同時にリンは通信回線を開き、隣のザクに通信を繋ぐ。

 

「キラ、私がガードに就く。あんたは二人を!」

 

「う、うん!」

 

この状況ではどちらかがガードに徹しながら戦闘空域を離脱するしかない。そして、キラには悪いがお荷物は任せる。リンは同乗者に気を遣って戦闘ができるような性格ではない。

 

起動が終わると同時に機体の状態を確認するが、問題はない。これならいけると確信すると、リンはシートに備え付けられたベルトで身体を固定した。

 

エンジンが滑らかな駆動音を伝え、モニターに光が入る。頭部のモノアイに光が宿り、ゆっくりと身を捩り、破片を振り落としながら状況を確認しようとザクの身を起こさせる。胸部の排気口から熱せられた排気が噴出し、上に積もった瓦礫がばらばらと落下した。

 

レバーを押し、ザクはその身を力強く立ち上がらせた。

 

その新たな脅威を察したのか、レアは高まる五感に導かれるままに振り向き、リンとキラは表情を顰める。

 

機体の起動で相手の注意を引いてしまった。モニター越しに映るガイアがビームライフルを構えた瞬間、リンとキラは培った反射神経でレバーを操作し、ペダルを踏み込んだ。

 

ザクがスラスターの噴射で左右に跳び退くと同時に、ビームが背後の壁を灼いた。

 

「何?」

 

攻撃が外れたことにレアが一瞬困惑したのも束の間、リンのザクが着地した足を軸にし、踏み切ると同時にスラスターを噴かせ、敵機へと突貫する。

 

虚を衝かれたレアは、ザクのショルダーアタックをまともに喰らい、背後に吹っ飛ばされる。

 

「ぐっ」

 

その衝撃に呻き、反動でビームライフルを手離すも、ガイアはなんとか着地する。

 

「ちっ、やはり、PS装甲か!」

 

あの攻撃でガイアにはほとんどダメージがない。やはり、この機体にも物理攻撃対策用にPS装甲が採用されているのだろう。構えながらその機動性とパワーに苦い感想を抱きつつ、相手の出方を待つ。

 

「こいつっ!」

 

今までまったく反撃もできずにやられていった機体とは違うと、レアのなかで危険信号にも似た警告が響き、ガイアは体勢を整え、ビームサーベルを抜いて加速する。

 

浴びせられる殺気とも取れる気迫に触発され、リンも左肩のシールドからビームトマホークを抜き放ち、応戦する。

 

ガイアの斬撃をシールドで受け止め、素早くビームトマホークを振り上げて反撃するが、向こうもシールドを掲げてそれを受け止める。

 

だが、リンは素早く左脚を振り上げ、蹴り上げられた一撃にレアは反応が遅れ、ガイアを弾き飛ばされる。いくら物理的なダメージを受けずとも、衝撃までは防げない。

 

よろめくも、なんとか踏ん張って吹き飛ぶのは堪えるも、ザクは間髪入れず突っ込み、ビームトマホークを薙ぎ払う。

 

レアは反射的にビームサーベルを振り上げ、その斬撃を受け止める。

 

激しいスパークが両機を照り輝かせ、リンとレアは互いに歯噛みするも、ここで量産機種という差が出た。ガイアはそのパワーを全快にし、強引にザクを弾き飛ばし、リンが歯噛みする。

 

「くっ!」

 

咄嗟に身を背後へと跳ばせ、着地するもガイアはお返しとばかりに、追撃する。

 

「ええいっ!」

 

意地になったように何度もビームサーベルを振るうも、リンは操縦桿を切り、その斬撃を紙一重でかわす。その上空でディンと交戦していたカオスは足のビームサーベルで一閃し、ディンを両断して爆発させる。

 

その爆発を見詰めるエレボスだったが、モニターに地上の戦闘が映し出され、注意が逸れる。

 

「ん? 何やってんだあいつは、たった一機相手に?」

 

モニター内でたった一機のザクに苦戦するガイアの様子が映し出され、エレボスは溜め息をつきながら、援護に向かおうと操縦桿を切る。

 

「モタモタすんなっ、レア!」

 

悪態を衝きながら一撃で終わらせてやると、カオスが足のビームサーベルを展開して急降下で斬り落とす。

 

戦闘から離れたキラの駆るザクのコックピットで、キラ達もそれに気づいた。

 

「「ああっ」」

 

「リン――!」

 

思わず悲壮な声を上げるも、リンも上空からの接近に気づき舌打ちする。

 

「ちっ、もう一機!」

 

厄介なことになったと、悪態を衝きながらも身を捻り、直上からのカオスの斬撃をかわす。空を斬ったカオスのビームはそのまま地表を焼くも、エレボスは驚愕に眼を見開く。

 

「何!?」

 

自分の攻撃をかわしたことにエレボスは焦りにも似た感情を憶える。ザクは素早く間合いを取ろうとするが、その機動に先程まで相手にしていた連中とは違うと直感したのか、エレボスもリンのザクに敵意を集中させる。

 

「かわしただとっ、だがっ!」

 

追い討ちをかけるようにビームサーベルを振り上げる。そして、反対方向から迫るガイア。

 

リンは同時に振り下ろされるビーム刃を左肩のシールドでカオスを、右手のビームトマホークでガイアの斬撃を受け止める。

 

攻撃が防がれたことに、再度驚愕に眼を見開くエレボスとレア。だが。リンの方も受け止めるだけで精一杯だった。純粋なパワーでは、拮抗できない。

 

歯噛みしながら押し切ろうとする2機を抑えていたが、突如カオスとガイアに銃撃が浴びせられ、2機は思わずザクから飛び退いた。

 

「何っ!?」

 

その攻撃を浴びせられた方角を睨みつけるように見やると、彼方より飛来してくる小型戦闘機。

 

シンの操縦するコアスプレンダーが搭載していたミサイルを発射し、カオスやガイアの周囲に着弾し、炸裂する。

 

大したダメージではないが、隙ができたとばかりにリンは距離を取る。

 

その隙にスロットルを踏み込み、シンは棒立ちになったカオスとガイアの横をすり抜け、再び上空に舞い上がった。

 

そこへ編隊を組むように追いつく4つの機影。3つのユニットとセイバーだ。

 

上空へ舞い上がるセイバーが機体を変形させていく。前部ユニットが後退し、脚部が伸び、現れる両の腕。その腕に握られる銃と盾。

 

突き出すように出現する頭部とツインアンテナが左右に拡がり、同時に鉄褐色の鋼の色が流麗な赤へと変わっていく。

 

その横でシンは3つのフライヤーユニットと相対速度を合わせ、この機体特有のシステムを起動させた。コアスプレンダーの翼部のミサイルポッドが外れ、機首がくるりと回転し、翼端とともに機体下部に折りたたまれる。同一軸上に並んだ各ユニットにビーコンが発せられたのを確認し、シンはスロットルを絞った。

 

後方のレッグフライヤーが伸びる赤外線にも似た誘導ラインに従い、コアスプレンダーが接合し、同時にユニット下部がスライドしてMSの下半身となる。ドッキングが正常に繋がり、モニターに『COMPLETION』の文字が表示される。

 

更に加速した機体は、次に前方のユニットと接合し、折りたたまれていた両腕が展開し、四本の角を持つ特徴的な頭部が現れた。

 

人の四肢と同じ形態を取った機体に向かって最後に二本の対艦刀が備わったシルエットフライヤーが誘導機器を離脱させ、導かれるように背面に装着され、同時にVPS装甲が展開される。

 

鉄褐色の機体はベールを剥ぐように色づき、下半身と腕部を白く、肩やボディを赤を基調とする鮮やかな色に変化させる。

 

ONになった位相転移が、まるで命を吹き込んだようにその姿を悠然と現わす。その息吹にシンは顔を上げ、前を見据える。

 

シンは背中に負った二本の長大な大剣:エクスカリバーを両手に抜き放ち、自重と擬似重力、それにバーニアの推力を生かして2体はザクを護るように降り立った。

 

 

 

――――ZGMF-X56S:インパルス

 

――――ZGMF-X23S:セイバー

 

 

 

流麗な赤と燃え立つような赤と純白に身を輝かせる2機は雄々しくその場に佇む。

 

シンは一振りが刃渡り十数メートルにも及ぶレーザー対艦刀:MMI-710エクスカリバーを柄の部分で結合させ、頭上で大きく振り被り、切っ先をガイアに向け、同時にビーム刃を形成させた。

 

突如出現したインパルスとセイバーにその場にいた者達は呆然と佇み、その2機を見据える。

 

「なんで、こんなことを―――」

 

インパルスのコックピットのなかで、シンは例えようのない怒りを感じていた。

 

「また戦争がしたいのか!? あんた達は!?」

 

怒りの咆哮とともに『騎士王』と謳われし王の持つ剣と同じ銘を打たれた大剣を構え、シンはコックピットの中で吼えた。

 

烈火のような怒りと気迫を込め、シンは新たな火種を打ち倒すための戦嵐のなかへ舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《次回予告》

 

 

平和…誰もが望んでいたもの―――

 

それは呆気なく突き崩される。

 

 

新たな嵐が舞うなか、戦士達は戦いのなかへ身を投じていく。

 

護るために…戦うために……壊すために………

 

 

 

激しい砲火が飛び交うなか、亡霊が姿を現わす。

 

過去を清算する…卑しき亡霊が―――

 

 

 

そして…騎士を葬るために……影は姿を現わす――――

 

 

 

 

 

次回、「PHASE-08 亡霊」

 

卑しき過去を清算せよ、ストライクE。

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