ACFA×IS 汚染記   作:IBISNOSOKO

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第三話です。
毎度のことですが
最強系&オリ主が苦手な方はBACKお願いします。

また突っ込みどころ満載の科学考察なんかもしてしまいました。
ご考慮願います。


White space and room

太陽。ケンタウルス座アルファ星。バーナード星。ウォルフ359。ラランド21185。シリウス。

地上でも視認できるのだ、一層美しく輝いている。

恒星だけではない、遥か彼方にあるのであろう銀河や、太陽系の惑星も多種多様な色彩の光を放ち、広大な空間を儚く照らす。

……どういうわけか、今度は大海原ではなく宇宙に来てしまったのだ。

 

『ロケットの真上まで、あともう少し。気を抜かないで』

『付近まで到達したら、座標を伝えてくれ』

『了解!』

 

今からやるのは、最早サテライトキャノンと何も変わらない。衛星軌道に乗りながらの対物狙撃だ。しかしただ衛星軌道に乗って、スコープを覗き、トリガーを引けばロケットに着弾するのか。そんなわけはない。

必要になってくるのは、地球の自転との速度差を0にすることだ。地球はおよそ時速1700kmで自転している。つまりただ目標に向かって狙撃したとしても、着弾までの時間に地球は上記の速度で回転してしまうため、ロケットには絶対に当たらない。

これを解決する為には、ネクスト自身が自転と同じ方向に時速1700kmの速度で衛星軌道に乗り、その上で束博士の補助演算の下、予測射撃をしなければならないのだ。

 

『到達した。座標を』

『ロケットを基準に、x4 y3 z5のズレだよ。修正して!』

 

PIC制御を用いて、その僅かな座標のズレを修正する。しかしどうしても宇宙空間では重力、空気抵抗が存在しないため、随分と勝手が違う。

機体の動きを止めて狙撃体勢に入りたいが、そのためには逆方向かつ同じ力でスラスターを吹かさなければならない。地上とは違い、永遠に慣性がかかってしまうのだ。PIC制御を用いて速度を殺そうにも慣れない作業で、本体ごと座標がずらしてしまう。

 

『難しいね。でもあと20分はあるから、焦らずいこう!』

『……いや、どうやらそんな時間はないようだ。レーダーを』

 

ハイパーセンサーが地上付近にて放たれたとてつもなく巨大な何かを感知した。これは恐らく――

 

『長距離弾道ミサイル!? 準備はっや!』

『こちらの戦力を鑑みれば、当然の判断だ』

 

弾道ミサイルとは、砲弾のような放物線を描いて目標に到達、攻撃することからその名を冠している。そして長距離弾道ミサイルはこの放物線を大きくし、ミサイル迎撃の可能性を極めて低くしたものだ。つまりここで俺に着弾しそこなえば、このミサイルは地球の大地へ降り注ぐことになる。またここは宇宙空間。出し惜しみする必要はない、搭載されているのは核弾頭で間違いないだろう。

 

『こっちに来るまで数分もない! 不味いよぉ……』

061ANSC(スナイパーキャノン)を展開。狙撃体勢をとる』

 

折り畳まれていた銃身が展開され、機体全体が061ANSC(スナイパーキャノン)からのインストールプログラムに従い体勢をとる。視界は長距離狙撃に適したスコープモードに変わり、反動を可能な限り抑制するために機体の温度が高まり、鼓動のようにジョイント部分がぼんやりと光り始めた。

こうなればやるしかない。全て叩き落して、それからロケットだ。

 

『博士。核爆発に巻き込まれたら、どうなる』

『その機体なら大丈夫! ……でも061ANSC(スナイパーキャノン)はすっごくデリケートだから、精密狙撃は出来なくなっちゃうかも』

『なるほど』

 

ならばやはりここで打ち落とすしかない。地上に落ちるのを見過ごすわけにもいかない。

ぼんやりと地球の青い光を背に、ミサイルの光が見えてきた。ハイパーセンサーで確認してみると、やはりアメリカ製の様だ。

証明するしかない、通常兵器ごときで、最強のISを止めることなど、所詮は机上の空論でしかないことを。

 

 

キョリ3000。予測演算、開始。

弾道ミサイル、速度30M。

数 3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大統領の許可もなくICBMの使用とは……、私の首で済めばよいのだが」

 

ビール空軍基地はXバンドレーダーに反応が起きて以降、戦闘配備が続けられていた。

陸海空軍が結託し、ロケットの周辺は戦車が闊歩し戦闘機が飛び回る。海軍にしても動けるだけのイージス艦が遥か向こうのイレギュラーを常に睨む。この対ロシア戦のマニュアルを大きく上回る戦力投下に、ビール空軍の軍人達は卒倒しそうになった。

近隣の住民からは苦情が殺到し、何が起きているのかと基地管轄の土地へ押し入ろうとする輩が続出しているのだ。

 

「最高速度時速5000km、単発でISを撃墜しうる多連動ミサイルとライフル、そして衛星軌道からの狙撃。まごうことなき化け物です。今使わずしていつ使うのですか」

「そうだな。それはそうだ、間違いない」

 

だが、とアメリカ空軍参謀総長は言葉を綴った。

そう、本当に怖いのは核兵器を使用することではない。核兵器も『兵器』なのだ。これを用いることで、多くの人間の命が助かると分かっているのならば、この男は今も悩んだりしていない。それは正しく核兵器が使われたということであり、アメリカの正義の火であると胸を張っていえるからだ。

 

「ISの誕生から鳴りを潜めていたが、やはり核とは人類の究極の兵器だ。絶対のものであり、全てにおいて神に近いものでなければならない」

「……」

「もしも、もしもだ。この化け物に核が何の意味ももたないものであったと知ったら、私はどうすればいい。私は怖い、あの黒いのが」

 

参謀総長は自らに宛がわれた豪華な椅子にゆっくりと腰を沈めた。

この男は恐れているのだ。白騎士の再来を、国の尊厳というものを根元から否定される、あの事件の再来を。

そしてその参謀総長の脳裏を掠め続ける人物がいた。こんな訳の分からないことを引き起こすのはいつもあの女だ。

 

「参謀総長。まもなく着弾です」

「……無駄だ。あの女の前では、何もかもがごちゃごちゃに混ざる。混ざって腐るのだ」

 

ビール空軍基地の正面モニターがミサイルに搭載されたカメラの映像を映し出していた。目標までの距離はおよそ1700。

着弾までもう数十秒もない。参謀総長は、深く深く、椅子に腰を落とした。まるで初めてのアトラクションに緊張を隠せない、少年のように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『超超精密射撃可能距離に入ったよ!』

『ッ!』

 

意識を集中させ、息を殺し、極小のサイトにミサイルが収まるようにする。

やはり、でかい的だ。それに近い。

ネクストの反動抑制システムも限界まで高まり、本来漆黒に染まっているはずの機体が、ぼんやりと紅緋色に光を帯びている。

ジョイント部分に関しては、繊細なアクチュエーターを保護する為に最も熱を帯び、白熱し始めていた。

当然、シールドエネルギーが減り始める。

 

『スコープモードに入ったらそんなに長くはもたない。決めちゃえ!』

『了解!!』

 

弾丸が放たれた。

061ABSR(スナイパーライフル)とは明らかに違う巨大な衝撃が機体を襲い、そのまま大きく後方へノックバックした。恐らく地上で使用すればすさまじい轟音が響いたことだろう。

発射された弾丸の速度はおよそマッハ80。ネクストのハイパーセンサーですら捕らえきれないその速度は、弾丸の軌跡すらも追いつけず淡黄色のラインを生み出す。

そのラインが、ミサイルの光と交わった。

 

瞬間、博士との通信が途絶える。

視界一面に広がっていた漆黒の宇宙と地球の光が、白に塗りつぶされた。

 

鈍く、大きい痛みが、頭の中を襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い部屋だった。本当に、真っ白な。

 

「――○○○○○○○。これが青い惑星を牢獄に変えた、企業の罪そのものだ」

「……」

「ふむ、君はこいつから砲撃を受けたことがあったな」

 

黒い男はツカツカと周辺を歩き出した。まるで頭の悪い子供がテストを解き終わるのを待っているように。

 

「しかし君が攻撃を受けたのはクレイドルの直上、つまり地表から約9500m。○○○○○○○は衛星軌道から狙撃してくる。当然、彼我の距離はかなり遠かった。着弾しても、PAによって弾かれただろう」

「……」

「距離が遠ければ、発射された砲弾の威力は当然落ちる。大気圏を突入すれば空気抵抗も加味されるだろう。つまり本来の威力が生きる宇宙空間でもらえば、宇宙船もロケットもひとたまりもない、というわけだ」

 

男は歩みを止め、正面の椅子に座った。しかし笑みだけは止めず、

 

「ゆえに、船は出せない。……君にはこれを無力化するための駒になってもらう。人類の存亡のため、そしてなにより君のため」

 

白いテーブル、白い椅子。白い本棚。白いベッド。

よく映える男だ、とおもった。ただそれだけだった。

 

「了解した、Mr.メルツェル」

 

そういった瞬間、男は少しだけ表情を曇らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと狙撃体勢は解け、投げやりなまま宇宙空間をさまよっていた。

正しく宇宙の色は黒と藍白だけが存在し、視界の端には巨大な薬莢がくるくると回転しているのが見える。

 

『―おー……生き―、……あ――?』

『……』

 

何だ、今の映像は。夢? 白昼夢か?

まさか――

 

『あ、繋がったか。ご機嫌麗しゅう? わが息子』

 

博士との通信強度が100%に戻る。核爆発によって発されたプラズマがECMとなり通信を阻害したのだろう。しばらくは不安定な接続しか維持できなかったのだ。

だがそんなことはどうでもいい。疑問は垣間見えた映像だけではない。

付近を漂流している061ANSC(スナイパーキャノン)の薬莢が、

 

多すぎる。

 

 

『何も指示してないのに、一人で終わらせちゃうなーんて。いやあ、ざまぁないなあ凡人共! ウワハハハハハハハハハハ』

『……!』

 

ハイパーセンサーを最大にしてビール空軍基地を見る。

スコープモードではないので正確に視認できるわけではないが、それでも見えた。

粉々になったロケットらしきものが。

 

『……これは』

『まあまあ、初陣お疲れ様! ご飯作ったから早く帰ってきーてね。今日は君の好きなカレーだよ、ウフフ』

 

あの夢を見ながら、終わらせたというのか。この所業を。

博士からの補助演算は? 地球の自転との速度差は0にしたのか?

 

一人で? 

 

馬鹿な、座標を合わせるだけで一苦労だったというのに。意識もないままやり遂げたのか?

 

『……帰還、する』

『んん? どうしたのだわが息子! 元気ないぞい!』

 

いまだに頭から離れない。白白白。そして頭痛。

博士が関わった可能性は高いはずだが、それを言及できないほどに気分が悪い。

あの映像は……、過去の記憶、なのか?

 

『なんでもない……、帰るよ博士』

『うんうん! 待ってるからねー!』

 

061ANSC(スナイパーキャノン)をリリースし、オーバード・ブーストを起動する。

俺が生まれたときからあった、増え続ける疑問。恐らく博士が全てに関わっているのだろう。

……いつか、知らねばならない。記憶も、俺の存在意義の真実も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼそり、ぼそりとうめき声が聞こえた。

胸に力が入らず、空気が抜けるような音があちこちから響く。

肉が焼けるような匂いが充満し、鼻の裏の神経を逆なでにする。

目に見えたものは、地獄だった。

 

「……やはり、か」

 

男は椅子に深く深く腰を落としたまま、硬直していた。

だが緊張で動けないのではない。外傷により身体活動に支障が出ているからでもない。

男は悟ったのだ。動けなくなるほど、眼球一つすら満足に動かせなくなるほどの真実を。

 

「人類は腐ってゆく。あの女は……」

 

本来なら、本来ならどのような建造物よりも分厚い装甲によって守られている基地に、いくつもの穴が開いていた。

男はその穴から空を見上げた。

そこには国、アメリカそのものがあった。資金、資材、技術すべて。すべてを結集させて完成した【アメリカ】があった。

 

「……総、長。ご無事、ですか」

 

一人の兵士が吐血を省みず近寄ってきた。

だが瓦礫が散乱している中、ふらついた足取りでは――

 

「お逃げ――んがッ」

 

そのまま前のめりに倒れ、硬いコンクリートに頭部を打ち付けた。ギャグのような光景だが、重傷者が頭部を強く打てば当然その生命に関わる。

証拠に兵士の体からは生命反応が失われ、ビクンビクンと大きく痙攣した。

男はその映像に眉一つ歪めることもせず兵士の命の終わりを見届け、そして再び空を見上げた。

 

「……さようなら、アメリカ」

 

アメリカは、ロケットは既に形を失っていた。

だがまだ損害の少なかったロケット下部の装甲版には、煤けた国旗と。

 

Assault・cell

 

大きな大きな刻印が、記されていた。




文章力ないのに、シリアス気味にしようとしている私を殴れ。
殴ってください。

あとがきですが、主人公の謎について当たり障りのない程度に触れておきます。

・主人公ですが、特に決まった名前はありません。わが息子なんて呼ばれちゃいますが、これから色々な呼称が生まれることだと思います。

・束博士は細胞レベルで彼を製造したわけではありません。既存の人間を加工したのが彼です。

・ビジュアルは決めない、としますがやはりやりづらいので。
 二十代、男、とします。あとそれなりにイケメンです。くっそおお。

こんなところか。謎でもなんでもないですなあ。
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