今回は戦闘はあまり無し&博士のキャラ崩壊が発生しているかと思われます。
苦手な方はBACKをお願いいたします。
白銀の機体。
アメリカとイスラエルの共同開発によって実現した第三世代型の現行最強機、シルバリオ・ゴスペル。
マルチ・スラスターによる高次元立体駆動。36の砲門から発射される高密度エネルギー弾。
最高速度は時速2450kmオーバー。
そしてこの機体はまだ、
「……正直さ、舐めてたんだよ。凡人共のこと」
「彼らはそれこそ必死になる。アナタという存在がいるのだから」
シルバリオ・ゴスペルそれ自体は、博士の設計した機体達に迫るほどの性能では決してない。
だが博士の認識では、これほどの機体を作るのには国はまだ時間がかかると考えていたらしい。
凡人が集まればどうなるか、思い知ったようだな。
「うん、少し見直したよ。クソみたいな機体だったら粉微塵にしてゆうパックで直送してやろうかと思ったけど」
「だがまあ、破壊してしまうのが最善だろう」
博士は膝をついているシルバリオ・ゴスペルを一瞥し、少しだけ表情を曇らせた。
そしてなにやら収容しているガレージのパネルをパチパチと操作し始める。
何かのコマンドを打ち終わったのか、博士が高らかにエンターキーを押した瞬間、ガレージの壁からロボットアームが数本飛び出し、機体へと向かった。
「おい、何をする気だ?」
「私好みに改造してみるー。まあ設計理念が特殊だから、普通に強化かな」
「やめろ」
博士が強化? あれはアメリカとイスラエルの研究者達が魂をこめて設計し、技術屋達がそれを執念を持って忠実に再現したものだ。
それをあなたが手を出せば、最早どれほどのものになるのか分かったものでない。ましてや再び敵になるなどもってのほかだ。
俺は博士の手を引っ張り、パネルから引き剥がした。
「うわっ、息子大胆! 女の子の手を簡単につかんじゃ駄目だよー!」
「ふざけるな。強化したあと国に返却するのか? 何を考えている」
「いんや? タダじゃ返さないよ。これは交渉の道具の一つにするのさ」
「何の交渉だ」
「言えんなー」
その言葉が耳に入った瞬間、博士の腕を思い切り掴み背中に捻り、背を押した。
博士は前のめりになってバランスを崩すが、左足を前に出して踏ん張る。狙い通りだ。そこを俺の左足で引っ掛けた。
当然、博士は一瞬宙に浮いたあと、くるりと回転してうつ伏せの状態で地面に倒れることになる。両腕を掴み背中に捻ったまま、俺は博士の体を足で挟み跨った。
「痛ああああああああああ。暴力だー!! 反抗期だー!! 息子おおおおおお!!」
「言えないのであれば言えないのだろう。ならばその理由だけでも話したらどうだね」
「いやああああああ!! 近親相姦いやああああああ!! あ、でもこれ近親相姦じゃないね? じゃあいいやああああああああああああ。おいで息子おおおおおおおおおおおおおおおお」
「……おい少し黙れ」
「でも本当はベッドにつれてって欲しいなあああああ。あとシャワー浴びたいいいいいいいいい」
「ちょ」
意味不明な言動に動揺した瞬間、博士はその体からは想像もできないほどの怪力で暴れだした。拘束が外れ、跨っていた俺の体が逆に引っ張られる。頭がぐりんぐりん回り、体もぶんぶん振り回されて、
いつの間にか馬乗りにされていた。
何だこれ。
「……強化人間の力を」
「んっふっふー。私は全てにおいて天才だからね。君と張り合えるくらいの力はあるよ」
博士は俺の体を指でつついたり、なぞったりしながら。
「本当は今にでも一連の詳細を教えたいんだけど、まだ早いの。これを聞いたら動揺して任務遂行に支障をきたすからね」
「都合のいい。どうせあの衛星でさえ、他の目的があったのだろう?」
「……全部、全部君のためだよ。それだけは教えておく、ね」
「……チッ」
俺はクスクスと笑う博士の顔を見るとばつが悪くなって、そっぽを向いた。
抵抗しようにも体を極められてるのでどうしようもない。
しばらくの間、博士のくすぐり拷問に耐えなければならないと考えると憂鬱になる。
そして背後で動き続けているロボットアームを見て、複雑な気持ちにならざる終えなかった。
一悶着あったあと、俺は午後の余韻というものをソファーの上で楽しんでいた。
何もない時間を過ごすというのは素晴らしいものだ。しかしこの博士の研究施設は地下深くにあるため、太陽光を浴びることは叶わず、日光浴とはいかない。だがそれは贅沢というものだろう。こうやってソファーの上で眠ることなく目を瞑るだけでも身体の疲れは癒される。
やはり、最も惜しまれるのは経口摂取を必要としないこの体だ。
疲れは出るし、気分が悪くなることもあるが、栄養を取る必要はない。つまりこんなときコーヒーを飲みたくとも、飲む必要がないのだ。
無論、何かを口にしたところで故障する、ということはないが、とる必要がないものをとるというのは抵抗がある。もったいない。
「……本でも読むか」
この研究所には娯楽というものが少ない。機械類をいじって博士にどやされるのは御免被るので、それこそ本しかない。
適当に本棚から見繕ったものを持ち、ソファーに腰をかけた。
次の任務までどの程度の期間が空くかは分からないが、精々暇でつぶれないようにしなければならないな。
ぺらり、と最初の一ページ目をめくり、文字を目で捉えた。
その瞬間、
「オワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「……今日はよく叫ぶ」
俺の午後の余韻は、まるで風に吹かれた煙のように消えてしまった。
博士がドタドタと走りながらこちらに来た。俺は本をそっと閉じる。
「息子ぉ……。テレビ見てぇ……!」
「……?」
リモコンを手に取り、電源を入れる。
チャンネルを指示通りに合わせると、アメリカの最も人気なニュース番組、『FOX News Channel』が表示された。
どこか滑走路のような広大な土地をリポーターの男性がマイク片手に歩きながら話している。リポーターの傍には軍服を纏った男がついてきており、リポーターの問いかけに答える。
「このロケット施設移設に関して、空軍参謀総長辞任と関係性はあるのでしょうか」
「答えはNOです。繰り返しますが、この移設はビール基地の経年劣化と、ロケット発射の更なる安全性を目指した結果であり、なんら参謀総長の件と関わりはありません」
「なるほど、では……」
俺はその応答が終わり、中継がスタジオに繋がれるまで、画面から目が離せなかった。
要約すればこうだ。
基地が古い。そして一番良いロケット発射の環境はバーグ基地。よってロケット発射台とそれに類する機材、人員を移設する。
両基地はカリフォルニア州に位置しているため近い。よって金はあまりかからないので心配はない。
またビール空軍基地はしばらく機能を停止するが、補う分の戦力はバーグ基地に集めてある。
「再びサテライトキャノンを発射するつもりか」
「そう! そう! そう!!」
博士は手にしたノートパソコンを操作し、俺に見せた。ハッキングして手に入れた文書のようだ。
そこにはニュースであった基地移設を認めると記されており、アメリカ大統領の判子が押されている。すでに予算もでているようだ。
「現状、アメリカが急ぐべきなのは損害を受けたIS戦力を整えることだ。なぜここまでロケットにこだわる」
「今まで大層なキャッチフレーズで資材を集めてたのに、急に台無しになったから躍起になってるのかも」
ありえない。国とは、そういうものじゃないはずだ。
だがニュースにまでなっている以上、確実に彼らは基地移設を実行するだろう。
恐らくこの移設は、密かに実行したくとも隠し切れなかったに違いない。ビール空軍基地にあれほどの兵器を短時間で運搬し、使用したのだ。マスコミどころか近隣の住民にも、何かが起きている、程度の認識はされているはず。
とすれば大々的に報道して、逆に干渉しにくくした、ということか?
「……戦力は」
「戦車装甲車砲台戦闘機がいっぱい、あとIS」
「デジャブを感じる。しかしあれだけやってISを捻り出せると思えん。恐らく友軍の支援を受けているな」
「うーん……。ハッキングして手に入れた写真だと、端っこにリヴァイヴの推進翼っぽいのが映ってるんだけど……」
リヴァイヴは世界第三位のシェアを誇り、その汎用性から十二カ国が正式採用しているのだ。この情報では特定はできないか。
だがこのタイミングだ、十中八九EU諸国のどれかのはず。
「写真も白黒だしなあ。全く、面白い対策だよコレ」
「ハッキング対策に白黒写真? まるでハッキングされるのは防げないかのようじゃないか」
「うん? もうばれてるよ? 私だって」
「……はあ」
まあ無理もない、か。
『作戦は簡単。そのショルダーユニットを上手く使いたまえ! 以上!』
『作戦時間は』
『無制限!』
『了解』
はるか上空。俺は吊り上げられていた。
ステルス戦闘機に。
さて、何度も繰り返すが、後述の通りネクストといえども大規模に展開した軍勢を相手取れば、そう長くは持たない。
一発一発は大したことはない弾丸でも、雨のように放たれれば防げないし避けようもないからだ。
ではどうするか。答えは単純かつ明快。
撃たせなければ良い。
『ECM発動。次弾装填開始』
ECMとは、端的に言えば電子対抗手段のこと。敵が求める受領信号を上回る電波を発することで、レーダー、FCS、その他諸々電子機器全ての機能を妨害する。
無論、ほぼ全ての重火器にFCSが搭載される世だ。当然ある程度の対策はしてあるだろう。だが博士の作った兵器に太刀打ちできるものなどこの世に存在しない。今、ネクストが流している電波量は都市部の総量の数十倍に相当している。
『分かってるね? 持久戦に持ち込まれたら負けだ。今からやるのは』
『一人電撃戦』
『よろしい! ネクストエンゲージ!』
博士の叫び声が耳いっぱいに響くと、機体を肩部で固定していたハンガーがガチリと音を立てて外れる。
博士製のステルス機には至る所にポップな人参の刻印が施されており、頭上を見上げると、その人参がどんどん遠ざかっていくのが見えた。ハイパーセンサーでコクピット席を覗くと、博士が笑顔でサムズアップしているのが確認できる。
では本題に入ろう。ステルス戦闘機に揺られ、俺はどこに行き着いたか。
ここは、
ヴァンデンバーグ基地直上である。
「……!!!! ECM濃度4000!!!???」
「なんつう妨害だ!! 照準が外れる!!」
空から突如出現した黒いIS。そう、唐突に化け物は現れた。
レーダーに何の反応も示さず、最も原始的かつ確実な目視でさえ、誰も黒いISを捕らえることは出来なかった。
レーダーから姿を隠すためのECM濃度によって発見することが出来た、というのは皮肉であろう。すでに滑走路から500mほどの距離しかない。
「出たな!! B・K・Mだ! 手動に切り替えて攻撃を開始しろ!!!」
滑走路に点々と設置された対空砲が火を吹き始める。
幾つもの発射された弾丸が落下する黒い機体めがけて飛来するが、どの弾丸も命中することはない。
普段からFCSという装置に身を委ねている兵士に、空を舞う人間台の目標を狙う技術など持ち合わせているわけがないのだ。
「クソ!! 当たらねええ!!!!」
ついに、黒いISが動き始めた。
空中で身をかがめたかと思えば、まるで彗星のような青白い光を迸りながらこちらに向かってきた。
音速すらも置いていくその速度に、反応できる人間はいない。
近隣全ての兵士の瞳に、浅緑の光が灯る。
さあ露骨な白黒写真。
リヴァイブの推進翼。
だれが登場するのでしょうか。気になりますね。