しかも短いです。間をあまり空けず、これからも書いていきたいとは思っていますので、どうかこれからもよろしくお願いします。
コアリミッターの解除。
軍事用演習用問わず、ISコアのエネルギー出力には一定のリミッターが必ず設定されている。それは一体なぜか。
それはISコアにとって、ISという兵器カテゴリーはおまけ、いや副産物のようなものに変わりがないからである。
つまり、博士が開発したこの動力は、既存の兵器全てにおいて過剰なものであり、エネルギー学的観点で言えばISとはコアさえあれば成り立ってしまうとさえ言えるほどだ。
ゆえに出力を抑え、装甲や武装といった拘束具をもってして、人の武器に堕とす。こうすることで企業は博士のオーバーテクノロジーを社会経済に浸透させたのだ。
それを外せば、どうなるか。
それはもはや、神の領域に限りなく近づくことだ。
この地球で最も力を持つ個体になることだ。
そしてこのネクスト。
このフレームを持ってすれば、コアの限界出力を受けきりなお幾分かの余裕がある。
つまりはリミッターを解除して、そしてこのネクストをもって初めて、世界で初めて、この太平洋で本物のISが完成した。
博士が作り上げた、神すら肉薄する鎧が。
『……あ』
だが、
力の代償を払うのは博士ではない。使用者だ。
高機動戦闘か、あの新しいコマンドの爆発の力のせいか、血が止まらない。止まってくれない。
博士は俺を強化人間といった。ネクストに耐えうる体に強化したと。強化人間に、血は必要なのか。
これでは、やはり長くは持つまい。
(……博士が逃げるか、何か策を実行するか。どちらかを確認できれば)
死んでもいい。
そう思える。
博士のためなら、俺は寸刻の神になれる。
きっと。
『健気だな、犬』
『……』
IS達が引いていく。
と同時にオープンの通信が入った。
『十分、もう十分だ。貴様はよく戦った。間違いなく、今回の戦いは戦争であった。そして戦術的勝利は君たちのものだ』
笑える。痛みすら上書きしてしまうくらいに愉快だ。
なぜ、偉いアメリカ人はこうも演説に走るんだ?
それは恐らく、己が圧倒的優位に立ったと、そう確信しているからに違いない。あの時も、そうだったのだから。
……何だ。何を手に入れた。アメリカは。
『数十機のIS。ISを撃破しうる軍事兵器。これらを統計学的に、軍事学的に、天文学的に、貴様にぶち込んだ。だが貴様は倒れない。恐らく、こちらの戦力と貴様の強さはちょうど拮抗してしまっていたのだ。これでは、個に打ち負かされるのは当然だ』
この男の通信とともに、沖からハイパーセンサーに反応が帰ってきた。
これは……。
『最後通達だ。もしこの交渉を打ち切れば、我々は貴様という存在を否認し、否定し、否決することになる。確かに貴様は脅威であるが、それ故に我々は本当の全力を振り絞れる。隠し立てはしない、現実を告げよう。今、我々の有する戦力は、貴様をはるかに上回るものであると』
近い、と思った時。
ハイパーセンサーが、いや、レーダーが、いや動物としての本能の欠片が、全力で逃げろと鐘を鳴らした。
振り切れるほどのエネルギー総量、物量、物量、物量。
アメリカに足が生えてこの太平洋の真ん中にまでやってきたのではないかといわんばかりの、熱。
それは――船だった。
海中から浮上させた巨大な船だった。
提督は続けた。
名を、ギガベース。
ISを打倒するため、天才を排除するため、凡人が世を闊歩するために生まれた、渡り船。
君は今から、あれと戦う。
あの、“二機“と戦う。
二機。
提督の言葉とともに、もう一機の巨大な船が浮上した。
巨大な津波を引き起こしながら、再び要塞が出現した。
目に火花が散る。
『……あれは、あれはあああああああああ!!!!』
ビル群。艦隊。白いロケット。薄汚い曇り空。新緑、光。
映像がフラッシュバックする。
きっとあれは、消さなきゃならないものだ。己の存在を、根まで否定する鉄の固まりだ。
『挑むがいい、黒い怪物。貴様の力とアメリカの力、どちらが上か見物させてもらおう』
提督は通信機を切り、モニターを見た。
第二次世界大戦の大艦巨砲主義すら生ぬるい巨大な砲から、太平洋を照らしだす閃光が迸る。
それに挑む一条の光。それはまるで彗星のようだ。
太陽に挑む彗星。提督にはそう見えた。
この戦いに、人は干渉できはしない。
提督は水兵帽を頭に深く沈め、その視界を暗くした。