私とあなたの恋愛道   作:カニ漁船

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出会っちまったその後。


邂逅時々偉業

 ……おーけいおーけい、まずは落ち着こう。落ち着いて状況整理だ、俺ならできるはず。

 まず、俺の目の前にいるのはとびっきり美人なウマ娘だ。ウマ娘って全員美人だし可愛いから感覚狂うけど、その中でも飛び抜けて美人……というか、高貴な雰囲気を感じさせる。可愛い系ではなく、綺麗系の顔立ちだ。髪は青みがかっている黒髪のストレートロングだけど……というか身長たけぇなオイ!180はある俺とそんなに変わらないくらいにはあるぞ!?ヒシアケボノクラスじゃねぇか身長!

 後は胸もデカい。というか出るとこ出て引き締まっているダイナマイトボディだ。なのに全体的に整っているという印象を与えられる。耳飾りは左につけてある。すげぇな本当に。目はきりっとしてるし、何より漂う雰囲気が凄い。下手なこと言おうもんなら護衛の者がやってきて即座に捕縛されそうだ。

 ただ、それでも聞かずにはいられない。どうか間違っていますように!という願いとともに。

 

「あ、あー……ごめん、もう一度名前を聞いてもいいか?」

「?構いませんが」

 

 所作がいちいち綺麗だ。マジで名家出身なんだろうなこの子、高貴な雰囲気漂わせているし。恭しくお辞儀をしながら、その子はもう一度自己紹介をしてくれた。

 

「私はカミノライザン。【神の一族】の現・当主でございます。私の目標達成のために……尽力してくださりますか?保科トレーナー」

「……スゥー」

 

 もう一度言おう、俺じゃねぇか。

 

 

 正直、何言ってんだお前?と思うだろう。ここで1つ、俺の前世について話をしよう。

 俺の前世は競走馬だったわけだが、その時の馬名がカミノライザンだったのである。つまるところ……この子は前世の俺をモチーフにしたウマ娘、ってことなのだろう。まぁ俺、というのにはかなりの語弊があるが。

 

(……俺後世ではこんな性格だと思われてんの!?)

 

 THE・真面目って感じの雰囲気!俺とは全くかけ離れている!しかもかなりストイックな性格なのか、会った時は大体トレーニングしている!史実を反映したらこうなるのか、俺。いや、俺じゃないけど。ま、まぁこれだけ違ったら別存在と納得できるな。

 というか神の一族ってあれかよ!?ウマ娘のレース界発展に多大な尽力をしてきた名家、さらには皇族の関係者とも言われているとこだ。メジロやシンボリ、サトノよりも上とまで称されている名家中の名家!知らねぇヤツいんの?ってレベルのとこじゃねぇか!しかも現当主!?超お偉いさんじゃん!こびへつらった方が良いのだろうか?

 ひとまず、冷静を装うことにしよう。うん、冷静に冷静に。

 

「あー、カミノライザン、カミノライザンね。うん、よろしく」

「はい、保科トレーナー。早速ですが、今からトレーニングの打ち合わせをしようと思うのですが」

「もう遅いから帰りなさい」

 

 カミノライザンは頬を膨らませながらも帰っていった。その辺は年相応なのね。それにしても……あれが、ねぇ。

 

(どういう確率だよ、前世をモチーフにしたウマ娘に会うなんて)

 

 最初に会った時からどことなく他人の気がしなかったけどそりゃしねぇだろうよ。

 

 

 ついでに、今ここで語ろう。なんで俺がウマ娘に転生することを選ばなかったのか、その原因は──カミノライザン(あのこ)にある。直接的な原因ではないし、あの子が悪いわけではないんだが、深く関わっているのは間違いない。

 あの子の耳飾りの位置に注目していただきたい。カミノライザンは左耳につけてある。加えて、体操服はブルマだ。エアグルーヴやダイワスカーレットと一緒だ。つまるところ、あの子の前世は牝馬である。

 ……もう分かるだろう?あの子は俺の前世をモチーフにしたウマ娘。つまり俺の前世は──競走馬は競走馬でも牡馬ではなく牝馬だったのである。

 

(ただでさえ地獄を味わったのに、今世でもまた地獄を味わうのは嫌だ!)

 

 今思い出しても震えが止まらない……!引退後のあの日々を!記憶の奥底に封印しておきたい出来事だ!よう鋼の意思で精神崩壊起こさずに済んだよ俺。自分で自分を褒めてやりたい。

 なのでクソ神にそれはもう懇願した。男として転生させるようにと。

 

「ところで君にはウマ娘として転生するという選択肢が「男として転生させろ」即答じゃん。悪くないと「男として転生させろ。じゃねぇとテメェの部下に頼んで」分かった分かった!分かったからそれは止めてよ!?というかいつの間に仲良くなったのさ!」

 

 そんな経緯もあって俺は無事男として転生を果たした。懇願じゃない?知らねぇなそんなこと。

 一応言われてはいたんだよな。君をモチーフにしたウマ娘に出会うかもしれない、って。あの時は楽観視してたけど……。

 

「まさか本当に会うとはなぁ」

 

 というか、カミノライザンはトレーナーの間では超有名だったのによく契約してなかったな。その名前と容姿を知らなかった俺もどうかと思うが。

 

 

 状況整理はこの辺にしておこう。とにもかくにも俺はあの子と契約をした。つまり……あの子のレース生活は俺にかかっているといっても過言ではない。

 

(だが、我に秘策有り!)

 

 なんてったって、あの子は俺をモチーフにしているわけだ。目に見えていない弱点だって分かっている。そう……俺と同じ、プレッシャーに弱いタイプだと見ている!

 ただ、それを表に出すことはないだろう。俺も現役生活の時は出さないようにしてたからな。だからずっと我慢するタイプのはずだ。それに不調なら、ステータスを見ればいい。使えるもんは全部使う!

 あの子の目標も聞いてある。あの子が掲げたのは──奇しくも俺と同じ、クラシック五冠の偉業

 

(またこれに挑戦することになるとはなぁ。どういう因果なのやら)

 

 クラシック五冠。桜花賞・皐月賞・オークス・ダービー・菊花賞の5つを制することをカミノライザンは目標に掲げている。秋華賞に関してはちょっと違うし入ってない。この辺の説明は省くが*1

 おそらくだが、他のトレーナー達はこの目標に難色を示したんだろう。まともな神経してりゃ無理だって言うからな。俺?俺はほら、自分でやり遂げたから。

 

「とりあえず、リスク管理からしないとな~。理事長とかたづなさんへの言い訳も考えとかないといけないし、後はマスコミの対応とかも考えないと」

 

 相手は名家のウマ娘。しかも皇族の関係者。下手なことになったら俺の存在ごと抹消されてもおかしくない。今からプレッシャーで腹が痛くなりそうだが……覚悟は決めた。

 

「とりあえず、最適なトレーニングプランを考えますかね」

 

 さ~て、夜通し練ってみますか!

 

 

 

 

 

 

 そこからの日々は光陰矢の如しってぐらいには早く進んだ。危なげなく勝ったデビュー戦。連勝街道に乗っているところに現れたにっくき宿敵・タニノムーティエ。目標発表後の世間の反応。とんでもない量送られてきた脅迫の手紙。それらを無視して始まるクラシック戦線。

 

桜花賞。逃げる快速美少女を悠々捕らえて一冠目。

 

皐月賞。連闘で疲弊してると思わせてからの1000mロングスパートで二冠目。

 

オークス。泥んこの不良バ場で消耗戦を強いられた三冠目。

 

ダービー。様々な策を講じてレースを支配した四冠目。

 

菊花賞。ライバルとの直接対決を制した五冠目。

 

 今も鮮明に思い出せる。あの激闘の日々を。そして全てを制して、クラシック五冠の偉業を成し遂げたあの時の景色を。史上初の偉業に日本中が沸いたあの光景を。滅多に笑顔を見せないアイツが、満面の笑みを見せた時は泣きそうになったね。ちなみにダービーが終わった頃には脅迫の手紙は来なくなった。

 それにしても凄かったなぁ。世間はシンザンの再来だ!とかさすがはシンザンの後継者!な~んてお祭り騒ぎ。取材もひっきりなしだったわ。

 その後も本番の大レースでは一度も負けなかった。天皇賞に宝塚記念、凱旋門賞にアメリカの国際レースも全部勝った。いや、国際レースは同着だったけど。そしてトゥインクル・シリーズ引退レースとなった有マ記念……どれも激闘の日々だった。

 

 

 この期間で、アイツとも随分仲良くなったもんだ。最初の内は遠慮がちだったアイツも、すっかり俺に気を許すようになったしな!

 

「総一さん。今日のトレーニングはいかがいたしましょう?」

 

 トレーニングの時はやたら身体を密着させてくるようになったし。

 

「総一さん。私、総一さんとお出かけしたいです……ダメ、でしょうか?」

 

 上目遣い……ちょっと屈んでるけど、普段休む暇あるならトレーニングと考えていたカミノライザンがお誘いするようになったし。

 

「総一さん?今、どこを見ていらっしゃったのですか?見るなら私を見てください」

 

 俺が他のウマ娘を見ていたらジト目で睨むようになったり。

 

「総一さんのためにお弁当を作ってみました。……ご迷惑、だったでしょうか?」

 

 俺のためにとお弁当を持ってきたり……いや、食べるからそんな目をウルウルさせないでくれ。俺が殺される。ともかく、俺とカミノライザンの仲は深まっていた!

 ……いや、これは気を許しすぎではないだろうか?仲良くなり過ぎじゃね?ま、まぁ待てよ。これは普通のことかもしれない。年頃の娘だってこれぐらいはするだろ、多分。まぁカミノライザンとは良好な関係だ。他のウマ娘ともそれなりに仲は良いと思っている。相談乗ったりしてるし。

 ただ悲しきかな、俺は新しい担当ウマ娘を持てないでいる。スカウトしようとすると不思議なくらいにウマ娘が寄ってこない。なんで?嫌われてんの俺?

 

「なんでだろうな、ライザン」

「何故でございましょうね……フフフ」

 

 あの意味深な笑顔の裏には何もないと信じたい。

 とにかく。俺とカミノライザンはかなり仲良くなった。それはもうベストパートナーと呼べるくらいには!

 

「いや~、それにしても俺達も良く噂されるようになったよな。これってあれか?」

「ッ!は、はい!何でございましょうか!?」

親友ってヤツだな!アッハッハ!」

「……あぁ、はい」

 

 一緒に過ごしてて楽しいし、俺とライザンは親友の間柄みたいなもんだ!これも付き合い方を間違えるなって言ってくれた先輩トレーナーさんのおかげだな!

 

(違う!そうじゃない!お前はもう手遅れだよ!?)

 

 なんか受信したような気がするけど気のせいだろう。

 

 

 俺とライザンはクラシック五冠という偉業を成し遂げた。それだけじゃ足りず、天覧レースとなった春の天皇賞を制し、日本のウマ娘として初めて凱旋門賞を制した。さらにはアメリカでライバルと繰り広げた激闘は映画にもなったし、最終的にはG1レースを10勝。カミノライザンは目覚ましい活躍を残し、ドリームトロフィーリーグで鎬を削っている。今もみんなの目標みたいだ。

 

「さ~て、今日も頑張りますかね!」

 

 ……願わくば、新しいウマ娘をスカウトできたらいいなぁと思いながら。

*1
秋華賞は創設時期の関係でクラシック三冠には含まれていない。後は元となったイギリスのクラシックレースに秋華賞にあたるレースがないからとも




まぁトレーナー視点はここから激減するんですけどね。次回以降は基本カミノライザン視点で進めます。以下カミノライザンのスペック的なもの↓


カミノライザン

誕生日:3月21日

身長:178cm

体重:恐れ多すぎて聞けない

スリーサイズ(B/W/H):99/65/95

一言メモ
青みがかった黒い髪を腰まで伸ばしたストレートロングのウマ娘。流星はない。可愛い系よりは綺麗系の顔立ち。厳格な雰囲気を漂わせており、表情が表に出にくい。そのため、彼女と相対すると自然と畏まってしまうらしい。
【神の一族】と呼ばれる一族の当主。学生時代から務めており、その権威はかなりのもの。しかし本人はその権威をひけらかすことはなく、誰にでも平等に接する。慈愛に満ちており、一族のウマ娘は全員彼女を慕っている。


カミノライザンの秘密①

実は、プレッシャーに弱いらしい……?

カミノライザンの秘密②

実は、かなりノリの良い性格らしい……?
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