『お母さんが死んだ』
『お父さんも徐々に体調がおかしくなり、身体を壊し始めた』
お父さんは、宿屋を売って・・・・そのお金を元に隠居先を探し始める事にした。
アルカパには、お母さんが作り始めた『ぶどう棚』しか未練は無い、買い取った人がアレで安眠枕作ろうかとか言ってたけど、大丈夫な気がする。
ベラから貰った魔導書は、まだ一部しか見えるようになってないけど、それ以上に色んなものが見えたりわかるようになった。この魔導書は、ベラが想像してた以上の物だ。
引き継ぎや町の人への挨拶が終わるのに、まだ数日間は掛かるけど、早く旅に出たい・・・・周りは、私が塞ぎ込んでると思っている。サンタローズの件からを含めて元気を無くしたと思っているようね?半分は当たりだけどと考えながら、まだ私達のものな宿屋を見上げた。
『宿屋』
始まりは、そこだった。
大事な存在を匿いながら育てている村にあった宿屋、お客さんが来てくれると嬉しいと思っていた私は、気持ちはわかると思ってしまったの。
『誰かを泊めたがっていた』
だから、ある日に村の近くで、山中に迷い込んでいた男を見つけて村に誘い込んで、泊めてしまった。
その男が『人間を滅ぼそうとした魔王』とも知らず。
時間の問題だったけど、その後に目を背けたくなる惨劇が始まった。サンタローズみたいに出来るだけ村人を殺さないように戦った兵士達とは違う・・・・皆、皆・・・・殺された。
その後に起きた事は、その村で唯一生き延びた存在が、酒場のおじさんが言ったような事をやる流れだったけど、その旅路で最初に出会ったのは?
「・・・・どんどん、ハッキリ見れるようになって来た」
夢から覚めた。今日は、旅立ちの日・・・・宿を買った人達と街の人達に、最後の挨拶を済ませて『ビスタの港』に向かう途中の休憩中だったわ、馬車で送ってくれているのはレヌール城に行った時に寝ちゃってた見張りの兵士さん。
あの後に、凄く怒られたらしくて気まずかったけど?そのせいで、今は真面目に仕事する気になっているけど、密かにトヘロス使ったせいで全然モンスター出ないのに戸惑ってたわ・・・・いえ『あのパパスさん』がいる状況で襲って来る方も何かおかしかった?と考えてた時。
「・・・・」
「ビアンカ、辛いだろうが・・・・」
そう、私はサンタローズのある方向を凝視していた。けど、お父さんが考えているのと違う事も思っている。ベラから貰った魔導書のお陰で、今の私は何となくわかるようになったの・・・・彼処には?
『私の剣がある』
けど、ごめん・・・・かなり背丈も伸びたけど、まだ今の私では?アナタを使いこなせない、だから?
『リュカが帰って来る迄、待ってて』
そして、休憩を終えて港への旅を再開した。
「パパスもリュカもいつかは帰って来るハズだ。けど、あの村を見たらショックだろうな、せめて誰か仲間や友達がいてくれたら・・・・」
「うん、けど大丈夫よ?リュ・・・・二人にはきっと強い味方になってくれるのが、いっぱい・・・・いるから」
「そう、だな・・・・あの二人は普通より持ってるものが多いのは私でもわかるからな」
お父さんは、一般論とかの延長で言ってるようだけど?私にはわかっていた。説明が出来ないものが見えるようになっている・・・・特に橋が掛けられる先にある建物がある方向には?
『私と同じものを継いでる子がいる』
更に、この先は・・・・リュカには?私なんかより頼りになるかもしれない存在が来てくれる。
『強くて優しい騎士との出会いがある』
そして、港に着いて船旅に出た。父さんもキツいのに、私を気遣ってくれたわ。
『嬉しい』
親だもん、血が繋がってないってわかってるけど・・・・私のお父さんは、お父さんだよ、だから心配いらない・・・・今の私は、それが我慢出来る理由なのよ。
その夜、私は夜に起きて海を見ているフリをしながら宝箱が一杯ある船室に意識を集中させた。これが魔導書を使った勉強で得た力の一つね・・・・私の手に、宝箱から飛び出て来た物が握られた。
『魂の貝殻』
以前、ここの船長に『パパスさん』がお礼代わりに譲ったものね、耳に当てると?多分、サンタローズに残ってる手紙にでも書いてあるものと同じ内容が聞こえたわ、それを聞かせてもらった後。
「アナタの奥様は、私の『お母さん』にもなってくれるよね?『パパスさん』」
(凄いな、ビアンカちゃんは)
『残留思念』
会いたかった人が目の前に立っていた。貝殻の魔力が手伝ってくれたからよね、知っている姿より、雄々しく、逞しくありながら頼もしくて、何より優しい姿だ。
『何が起きていたか理解した私は言うべき事を言わないといけない』
「ううん、私は『遅かった』・・・・」
そう、もっと早く私がベラから魔導書を貰ったりしてれば?
せめて、パパスさんが探していた存在の元になった勇者のように、私の『血筋』を知っている人から少しずつでも剣や魔法の訓練してもらえているような存在だったら、あの時に?『故郷』に帰れていた。でも、私はリュカとお化け退治とか行けなかったかもと考えてしまった瞬間。
(今は逃げて・・・・強くなるのだっ!)
魔導書のお陰で見た光景が思い浮かんだ。
そう、駄目ね・・・・かえって、酷い結果だったかも、下手をしたらアルカパもサンタローズの皆も殺された後、焼き払われていた。それは?
『私には、身代わりになってくれたような人はいないから』
今は、せめて伝えなければならない事を。
「私は、アナタも・・・・『お父さん』って、呼びたかったです」
(そうか、嬉しいよ・・・・情けないおじさんで、すまなかったな)
「違う、パパスさんは強い・・・・私もリュカも一生勝てないくらい強い・・・・!」
やっぱり、リュカを守れなかった事を気にしている顔になった・・・・少しして、何でわかっているのか理解して、優しくて雄々しい目を向けてくれた。
(・・・・違うぞ、勝てないとかじゃなくて?ビアンカちゃんはな?私に出来なかった事をするんだ)
「出来なかった事?」
(そうだ。ダンカンを大事にするんだ・・・・生きて、少しでも一緒にいてあげるんだ・・・・そろそろ行くよ?)
「はい・・・・あと、あの時から次はリュカにちゃんと?『あの本』を読んであげたくて勉強もしたから、今ならわかります。頭の中でこうなるように言えば良いんですよね『お義父さん(おとうさん)』・・・・ありがとう」
照れ臭そうに笑ってパパスさんは消えた。そうね、本来なら?私はパパスさんの倍くらい生きてからじゃないと、また会えないハズだったのよね。
私は寝室に戻る前に泣いた。お父さんには見せられない顔をしちゃ駄目だから。
そして、寄港した場で?
「あれが、ポートセルミ灯台?」
怪物が出るとか悪戯で言われてた灯台、けど邪気は感じないから出鱈目?って思った時。
『ビアンカちゃん?アルカパのビアンカちゃんか!?ダンカンさんも!』
「アナタは、サンタローズの薬師さんのところにいた人?」
「ああ、そうだ!親方も・・・・死んじまったんだけど、俺はサンタローズから逃げられた後、此処に来て船乗りの見習い始めたんだ」
「そうか、でも良く生きてたよ・・・・俺は親方さんの薬で助かった・・・・」
良かったわ、アルカパに逃げて来た人以外にも生き延びた人がいた。お母さんの事は察したようで聞かれなかったのは感謝した。
その日は、波の音も作りも父さん好みじゃないらしい宿屋に泊まって、翌日に灯台に設置されたばかりの望遠鏡を見せてもらった。
「向こうには、何か煙が立ってるわね」
「そうだ。ルラフェンには変り者の爺さんがおかしな研究してるらしい、向こうの方向にはすげえ高い山があるぜ?」
『山』
奨められるままに除いた先には、確かに高い山があった・・・・そして?
(・・・・ごめん、私には今は駄目なんだよ・・・・だから、今は生き、てね?・・・・『リュカ』)
無意識に理解したビアンカの内心での謝罪は意図せずに届いていた。
「ビ・・・・アン、カ・・・・」
「お、大丈夫かリュカ?意識戻ってるか?」
「ヘンリー・・・・」
「全く、何度目かだなあ?逃げ出しては捕まって痛い目に遭わされてよ?」
脱走未遂の制裁として鞭で打たれ続け、その後に疲労で倒れたリュカとヘンリーは、今日は早目に奴隷部屋に戻されていた。ヘンリーは、リュカが『ビアンカ』と呟いた事には触れなかった。何となくだが、理解はしていたのだ。
生き延びるんだ。父を殺され、奴隷にされて三年以上経ったのに、それでも諦めようとしない・・・・友達や仲間と言うにはおこがましいが、リュカと一緒に生き延びるんだとヘンリーは思い続けた。
それはリュカも同じだ。
負けてはならない!『あの日に会った青年』に言われたように、どんな辛い事があっても負けてはならない・・・・父の言葉を信じて、母を探しに行く、ビアンカともいつかまた会う!そう決意してリュカは生きていた。
二人の決意は『七年後』に繋がる。
前書きのは、ゲ◯◯レ派もいた。