『導かれし者たち』
一時期、そう語られた物語において、一人だけ『異端』の存在がいたわ。
他が重々しい理由なのに、夢を追い求めての旅立ちで次々と成果を出した。
『人間を困らせるキツネを懲らしめた』
『人間の国同士の戦争を止める為に奔走して成功した』
『違う土地に繋がるトンネルを開通させた』
本来、英雄の冒険ってのはこうあるべきね。
その後、一説には?何故か、出る度に経験値が無くなるダンジョンに挑み続け、もしもだけど積み重ねがそのままなら随一の実戦経験を誇る戦士で魔法使いで、いや?アイテム使いとかになった存在、違う物語で『魔技師』とか?
それはともかく、多分当たりか?本人か縁者の転生とでも言うのかしら?この人は、そっくりだ。嘗ては寝惚けていた地獄の帝王からの危機からすら仲間達を救ったとある男を思わせる人は、我が儘な方の娘が普通に客人を連れてきた事に奥様と一緒に感涙し、漸く落ち着いてくれた。
さて、その我が儘な方の娘なデボラさんが何故か私を連れて来た理由だけど?
「会わせときたかった」
目を丸くしてるわね、何となくなノリ。だけど、何故か理解してる?どうやら、もう一方の修道院に預けた娘も似たような事があったようね。
「・・・・」
「あの?」
「ああ、失礼。先ずは、はじめましてかな?ワシはルドマン、そして隣にいるのが妻のシャルロット」
「はい、はじめまして・・・・私はビアンカと申します」
「うむ、見たところ旅の途中じゃな?目的を教えてもらえんかね?」
私は簡単に話した。アルカパで宿屋を経営していたけど母が無くなった後に身体が悪くなって来た父、その父が落ち着いて過ごせる場を探す旅の途中だと、けど?
「お嬢ちゃん・・・・君はまだ見た目からして十代前半のハズだな。なのに、底無しの澄んだ湖の底みたいな目で、暗い過去を語るな?」
失敗した?考えが正しければ、この人があの商人の血筋かはともかく、近くにあるのは?とした時、予想外な行動に出た。違う部屋に自ら赴いて持って来たのは?
「これを見なさい」
綺麗な盾、そう、これは・・・・これも私の。せめて近くでと思っていた。
「我が家に伝わる家宝だ。見せるべきと判断したら見せるようにとも伝えられた。伊達に任されたワケではない」
「わかります。この盾が・・・・見た光景も」
魔導書のページが増えていくのがわかる。そして、確信した。今なら使える・・・・あの魔法は人間にとっては失伝魔法に近い。
「欲しくないの?」
「デボラ?」
「貴女、多分その盾を使えるわよ?」
「・・・・私に」
多分、デボラさんの言う事は本当ね。但し、今の私には?
『水と油』
この盾と、サンタローズにある剣が『光』とするなら、ベラにもらった魔導書は『闇』・・・・私はもう選んだ。だから?
(今なら引き返せるわよ?)
(っ!)
(このままだと、貴女は『私と同じになる』いえ、体よくご褒美も貰えなかった場合の私かしらね)
「構わない」
私には、そんなのいらない。私には、お父さんとリュカだけが全て・・・・だから、その為の力を欲する。
「・・・・ルドマンさん、街で聞きましたが?船を持っていますよね?」
「あ、ああ・・・・」
「近くにある『壺』を見つつ、山奥の村辺りに行く機会に乗せて頂けないでしょうか?」
「・・・・宜しい、その前に?宿の無料券の期限はあと2日間だな?街を見回ると良い・・・・今の内にな」
「ありがとうございます」
そう言って退出させてもらったわ。
『船』
船の先に愛する妻を象った像でもあったりして?あの商人さんなら、弁当箱持った愛妻を採用してそうね・・・・しかし、いつの世も『金』の力は偉大だわ、生きた金の使い方をしてる人ばかりじゃないから注意が必要ね。
聞き捨てならない単語。
『壺』
ルドマンにしかわからない事だが、そけさまで見透す少女が去り、ルドマン達は神妙な雰囲気であった。
「・・・・」
「良いの?」
「目の当たりにはしただろう、あの娘には時間が必要だよ」
「けど、あなた・・・・あの娘は」
「わかっている・・・・あの娘は『悪』じゃよ」
『悪』
人の良さで知られるルドマンの評価に反論は出来なかった。盾に秘められた『光』を拒絶した。それだけではなく、敢えて『悪』を選択した・・・・が?
「良いじゃない、理由はマトモかもしれないわよ?世の中の為に父さんみたいな太っ腹な金持ちより、敢えて裏社会のボスみたいのになるのを選ぶ金持ちがいるでしょ?それと同じよ、濁流に流されるならそれまでなだけ」
デボラのまとめには辟易するような色は感じない、遺伝子レベルで刻まれた記憶に従って、ビアンカの行く末に救いを願う他は無かった。
多分、デボラが一番見る目あるな展開。