助けた竜がメスガキだった件。円満追放から始まる異世界『わからせ』ライフ。   作:外なる天使さん

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 えーマジあけおめ~!?
 おっそーい♡
 あけおめが許されるのは1月までだよねー!


はにとらっ!

「ピピーッ! はいそこのおにーさん、止まってくださ~い♡」

 

 ギルドを後にして屋敷へ戻ると、エントランスを(くぐ)って五秒でメスガキに絡まれた。

 

「公的権力の者でーす♡ ちょっとお時間よろしいですか~?」

 

 メスガキ警察だ!

 現れたのは、アメリカンポリスみたいな出で立ちをしたレンリさん。紺色の制服は丈の短いヘソ出しタイプで、肩から伸びるサスペンダーがスリット入りのタイトスカートを支えている。

 

「ただいま、レンリさん。なんか強そうな格好してんね。権力の誇示に余念がなくて何よりだけど、マーマレードさんに用事があるから遊ぶのはそれが終わってからな」

 

 とはいえ今はやることがあるため、ここは一旦お引き取りいただこうと願い出る。……が、それが余計に彼女の遊び心(ロールプレイ)に火を付けてしまったらしい。

 

「遊びじゃないんですけどー? 反抗的な態度のおにーさんには、レンリちゃんが直々にボディチェックを行いまーす♡」

 

「そんな、待ってくれ! 俺にはまだ、義両親(かぞく)と仕事が残ってるんだ!」

 

「残念でした~、ドラゴンからは逃げられませーん♡ ほらほら、降参した雑魚ワンちゃんみたいにお腹を見せて、さっさと両手を上げろ~♡」

 

 ……取り敢えず流れに乗って抗弁を試みたものの、逆に喜ばせてしまったまであるな、これ。

 

それっ、ぎゅ~っ♡ このまま不審な点が見当たらないか、調べていきまーす♡」

 

 密着体勢に移行したレンリさんが、その胸元に隠し持っている武器を俺へと押し当てた。ちっこい身体で油断を誘い、予想外の膨らみと柔らかさで獲物を釘付けにする、天が与えし凶悪な武器だ。

 

「だとしても、こうはならんやろ!?」

 

「そんなの知ったことじゃないもーん♡ わたしにはわたしのやり方があるんで~す♡」

 

 刑事ドラマに登場する"優秀だけど命令無視を繰り返す問題児"みたいな台詞を吐きながら求愛行動を取るんじゃない。ギャップで風邪引いちゃうだろ、俺が。

 

「うーん……怪しいのはここかな? それともこっちかな~? カリ、カリ……♡ カリカリカリッ……♡

 

 俺が抵抗出来ない(物理)のをいいことに、レンリさんはおねだりする仔猫のような(つたな)い仕草で、その細くしなやかな指先を用いてこちらの懐を入念に(まさぐ)り始めた。

 

「どうしても捜査にご協力いただけないんですか~? わたしの知らないおにーさんのこと、いっぱい教えて欲しいのに……♡」

 

 更に彼女は胸元のボタンの隙間から覗く、桃色の下着に包まれた小さな谷間をわざとらしく見せつけながら。自分の可愛さを十二分に理解したあざとい表情でこちらを見上げ、甘えた声を向けて来る。

 

 …………く、屈さないが?

 

「ま、まあ別に急ぎの用事って程でもないし? レンリさんがどうしてもって言うなら、付き合ってやるのも吝かではないが?」

 

 俺は立派な大人なので、挙式も前にメスガキのえっちな誘惑なんぞに負けたりはしない。

 しかし考えてみて欲しいのだが……例えば幼稚園で戦隊ごっこをする際、ヒーロー役の子供と怪人役の先生がいるものとする。子供たちが必殺技を放つも、先生が『自分は大人だから、子供の攻撃で負けたりしない』と言って一向に倒れようとしない。

 

 さて、果たしてこれは大人に相応しい振る舞いと呼べるだろうか? 答えは否である。

 よって俺ことオニキスくんが、レンリさん扮するメスガキ警察のえっちな取り調べを受ける立場に甘んじたとて、それは大人として正しい行いをしたまでのこと……。

 

 今回の言い訳、ヨシ!

 ともあれ安心安全の十八歳以上ドラゴンさんは、俺の返答を聞いてにっこり笑顔。こうなった以上、満足するまで相手をするしかなさそうだ。

 

「やーん、おにーさんおっき~い(器)♡ ──実はこの近くに、ちょっと目を離した隙に他所のドラゴンと契約を交わして帰って来るような、わる~いオトナがいるってツーホーがあったの♡ もちろんおにーさんは、探すの手伝ってくれるよね~?」

 

 おっと、何やら急に雲行きが怪しくなってきましたね……。

 

「ほ、ほーん……? でもほら、見ての通りここには俺みたいな善良かつ品行方正な大人しかいないわけだしさ。仮にそんな奴がいたとしても、その情報だけで悪い大人と決めつけるのは早計なんじゃないかな~? ってオニキスくんは思うわけですよ。それにほら、一口に契約って言っても色々あるし。この素材は絶対にうちの店だけに卸して下さいね! とか、よくあるよくある。明日またギルドに来てくれるかな? いいともー! 的なね? あるある~!」

 

「えー? なんだか嘘くっさぁ〜い♡ ねーねー、知ってる? 王都だと怪しいオトナはすぐ"しょくしつ"されちゃうんだってさ♡ ……トクベツに、おにーさんにもシてあげよっか♡

 

「へ? いや、するも何も……今まさにこのシチュエーションこそが職務質問そのものだと思うんだが」

 

 第一、それって騎士団とか衛兵の仕事じゃねえ? そりゃあ立場的に、領主一族は取り締まる側かもしれんけど。

 俺がそのように指摘すると、レンリさんは溜め息混じりの大仰な仕草で肩を竦めた。

 

「はー、やれやれ♡ これだから流行に疎いおにーさんは♡ "しょくしつ"って言ったら、触手質問のことに決まってるじゃん♡」

 

 俺は察した。

 

「…………しまった、罠か!?」

 

 オニキスは にげだした!

 しかし まわりこまれてしまった!

 

「はーい、雑魚一名様ごあんな〜い♡」

 

 

 

 

【速報】俺氏、ドラゴンライダーに転職する。

 言うまでもなくドラゴンにライドされる側である。

 

「このワンちゃんすっごくおっそ〜い♡ あーあ、これじゃあママのお仕事部屋に着く前に、弟か妹が出来る方が早いかも♡」

 

バウバウ(バリトンボイス)」

 

 目指すは領主の執務室。悩める淑女(芋)を救わんがため、いざ征かん!

 ……え、この状態で親御さんの前に行くの? マジで?

 おっといかん、うっかり正気に戻ってしまった。

 

 ……あるいはこのメスガキは既に勝った気でいるのかもしれないが、だとすれば実にお目出度い勘違いであると言わざるを得ない。

 ──メスガキが尻に敷くとき、敷かれた背もまたメスガキの尻を触っているのだ。

 ククク……大人のプライドと美少女の尻、果たして価値があるのは一体どちらの方かナ?

 

 つまり俺は負けてない。敢えて言葉にするなら、今はまだ勝っている途中なだけである……!

 

「ふーん、契約したんだ? わたし以外の竜と……」

 

バウバウ(バリトンボイス)」

 

  ──でもまあ訊かれたことには素直に答えるべきだよねって。

 人間もドラゴンも知性ある文化的な生き物であるからして、身体に訊くなどという直接的かつ触手的な手段の前に、まずは言葉を用いるべきだと俺は思う。大切なのは気持ちだ。そのうち気持ち良くなるから大丈夫とか、決してそういう話ではない。

 

 俺はギルドでの出来事を全てゲロった。よくよく考えてみると、特に隠すような話が何もなかったというのもある。

 

 さて、何やらレンリさんが粘度の高いことを言っているが……そもそもがギルドの対応からして、複数のドラゴンとの契約が推奨行為として扱われているのは確定的に明らか。

 もっと身も蓋もないことを言ってしまうと、もしこれがお咎めを受けるような案件ならば──メスガキドラゴンポリスとかいう、どう考えても俺得な格好でお出迎えに来る筈がない。はい論破。

 

 ……いわば彼女のこの態度は、信じて送り出した猫カフェで知らない抜け毛を服に付けのこのこと帰宅した飼い主(げぼく)を前に、自分も構えと荒ぶる愛猫のそれに等しいのでは? このオニキスくんはそのように推察をする。

 

 故にこうしておもちゃ(俺)を与えて、斜めになったご機嫌を直していだだくって寸法よ。

 犬に円盤、猫にはじゃらし──メスガキには無様なワンちゃんを。これぞ異世界にも通ずる、現代における三種の神器である。……って誰が無様じゃい!

 

 とまあ脳内でセルフノリツッコミを決めこそしたものの。一応俺とて、何の相談もなしにティアちゃんの加入を決めた点については多少の負い目を感じなくもないのだ。

 

「でもレンリさんとの婚約と違って、ぶっちゃけ単なる雇用契約でしかないんですがそれは……」

 

 そりゃあ言葉にすれば、どちらも『竜との契約』だけども。温度差がね、半端ないのよ。

 そこんトコどうなんです? という俺の問いに対し、レンリさんの答えは明瞭だった

 

「うん、知ってる! だって一番強いドラゴンをおにーさんに見繕うように、って冒険者ギルドに命令したのは私だし♡ これも妻のつとめ♡」

 

「やっぱりお前が黒幕じゃねーか!」

 

「きゃーっ♡ ワンちゃんが怒った~♡」

 

 俺はツッコミを放つと共に、その辺に捨ててあった大人のプライドを拾い上げた。よしよし、お前は今日からうちの子におなり……。

 

「えらいえらい、ひとりでよく契約出来ました~♡ ……じゃ、続きは夜にしよっか♡

 

「こんのっ……!」

 

 可愛いお顔を寄せて悪戯げに囁いたレンリさんが、とことこと廊下を先導する。ひとしきり俺で遊んで満足したようだ。

 ……つまり俺は今日一日、このメスガキのぷにぷにすべすべなちっちゃいお手々の上で転がされていたということになる。

 

 いやね? 正直なところ、俺も薄々察してはいたんよ。

 別にティアちゃんに不満があったわけじゃないけど、彼女が記入用紙の内容に即したメスガキか? と問われれば……まあ諸説あるよねって。

 

「しかしそうなると、ギルドの相性診断とは一体……」

 

「おにーさんさぁ、領主家(うち)がギルドに一体どれだけの援助金を出してると思ってるの? じゃなきゃよわよわ紙装甲のおにーさんをひとりで行かせたりするわけないじゃん♡」

 

 つまり元々のマッチングサービス自体はちゃんと機能しているものの、不正にならない程度の忖度は働いている、と。……うーむ、金は規律より重い。

 まあ冒険者ギルドが舐められる分には構わないのだが、その流れで俺まで侮られるってのはちといただけない。

 ここはいっちょ、大人の凄さってやつを見せつけてやらねばなるまいて。

 

「これだから世間知らずのメスガキは……。生憎だが、俺はもう昨日までのオニキスくんじゃないのさ。こいつを見てもまだ同じ台詞が吐けるかな?」

 

 つい先程更新されたばかりのマイ魔力カード。それも縁のデザインが一般向けとは違う、追放者仕様の限定版だ。

 射幸心を煽りすぎた結果、盗賊とのエンカウント率が上昇するとも噂される曰く付きのレア物である。

 

 それを印籠の如くレンリさんに突き付ける。

 彼女は両手で口元を覆いつつ、驚愕をあらわにして、

 

ええっ……!? び、Bランク冒険者!? すっごぉ~い、流石おにーさんだねっ♡」

 

「はっはっは! そうだろう、そうだろう」

 

ついこの間までSランクパーティのエリート冒険者だったのに、こんな短期間にふたつも下のざぁこ♡ ランクに転落しているだなんて……なかなか出来ることじゃないよ?」

 

「あっこいつ、人があえて目を逸らしていた部分を的確に……!」

 

 仕方ないじゃん! パーティーと個人じゃ評価基準が違うんだからさぁ!

 

 それにロイたちと知り合う前──つまり転生直後の話になるが、その頃にはもうエルフの冒険者(男)の世話になってたから、個人のランク上げに関心を持つ機会もなかったし……。

 

 まあ俺の素人冒険者時代の話は追々するとして、だ。

 目下の問題は、うっとりした表情で俺のカードを眺めるこのメスガキである。

 

「やだー、こんなの初めて見たんですけど♡ ホントにだいじょーぶ……? やっぱりわたしが守ってあげよっか?」

 

「ガチの心配のやつじゃん」

 

 つか、俺の追放事情にはレンリさんだって無関係じゃないからね? もはや寿退社だろ、あの流れ。

 

「だっておにーさん、わたし以外の竜と契約しても相変わらずよわよわのまんまだし……ぷっ、かわいそー……♡」

 

「レンリさんや、君ちょっと喜んでない?」

 

「え~? そんなことないですけどー?」

 

 弾んでるんだよなぁ、声色が!

 

 ……竜と契約すると、その力の恩恵に与れるというのは有名な話だ。

 ただしその内容は、契約したドラゴンの性格や属性に影響を受ける以外は完全ランダム。要するにガチャである。

 

 この世界でよく見るような英雄譚(テンプレ)で例えると、

 聖竜に溺愛される村娘、あらゆる傷や病を治してしまう──SSR(スーパースペシャルレア)

 火竜の加護を授かりし戦士、剣に炎を纏わせてメラメラする──SR(スーパーレア)

 野生の竜王を餌付けした善人おっさん、あらゆる生き物に愛される──UC(アンコモン)、と思わせてからのUR(ウルトラレア)

 とまあ大体こんな感じだろうか。

 

 さて、ここで俺ことオニキスくんが今現在契約を抱えているドラゴンさんを改めて見てみよう。

 レンリさん──ハートアイズメスガキドラゴン【契約状態:婚約(つがい)

 ティアちゃん──血統書付きドラゴン(自称)【契約状態:パーティー雇用】

 

 ……わからせいただけただろうか。

 つまり後者はともかく、前者に関して言えば──ぷーくすくす、メスガキの加護で自分自身がつよつよになれるわけないじゃん♡ 実に浅薄♡ この様子だと新しい契約ガチャも爆死では? ──ってな具合である。

 

 本来であれば、メスガキの加護とは!? とツッコミたいところではあるが……俺にはひとつ心当たりがあった。

 魔法の効果が上昇している実感と、時折聞こえる奇妙な幻聴。

 

 いや、でもなぁ……。あくまで可能性の話とはいえ、何だよメスガキの幻聴が聞こえる加護って。それはもうシンプルに呪いでは? そりゃあ性癖って、目を背けても追い縋ってくる(たち)の悪い呪いみたいなトコあるけどさ。

 

 ま、まあ優れた鍛冶師や錬金術師には素材の声が聞こえるって言うしな……。

 それにオニキスくんは転生者。外れ判定はむしろ最強スキルへの布石みたいなモンよ。

 

「そう考えるとティアちゃんに関しても納得出来るな。あのレンタルお姉さん、自分が何ドラゴンなのか頑なに口を割らなかったし……。変身後の姿も知らないから、能力の推察もクソもねえや」

 

 あと単純に、まだ契約直後だから絆レベル的なアレが不足しているって線もあり得る。

 

「能力目当てに契約しないおにーさん格好いい♡ でも良く知りもしない相手と勢いで契約結ぶとか、チョロすぎてひとりにするのが不安になるくらい雑魚のカモだね♡」

 

「それは本当にそう」

 

 月並みな言い訳になるけど、ティアちゃんに関しては誰かに似てるというか、初めて会った気がしなかったんだよな……。向こうもこっちのこと知ってるっぽいし。

 

「で、そのティアって子は可愛かった? 家族(つがい)にする?」

 

 そうそう、お前も家族にしてやろうか──って違うわ! どこぞの閣下じゃあるまいし、そんな恐れ多い……。あ、そういやこの子の母親も公爵閣下か……。

 

「最後だけ無視して答えると、まあドラゴンだけあって顔は良かったな。あと身長(タッパ)(ケツ)がやたらとデカい、メスガキを名乗る巨乳のギャルだった」

 

「あ、じゃあ敵だね♡」

 

「巨乳に対して当たりが強い……」

 

 その割には屋敷の使用人とか、ミコっさんとは普通に仲良さそうに見えるけど。

 

「メイドやミコトは身内なんだから、実質わたしのおっぱいだしいいの! それよりおにーさん、いつまでその格好のまま歩く気なの……?」

 

「いや、どうせならパンチラのひとつでも拝んでおかないと、さっき捨てた分のプライドが勿体ないと思って……」

 

 今の俺は野生の魅力に溢れた四つ足スタイル。

 単に戻るタイミングを見失っただけとも言えるが、それはそれとして俺は米粒ひとつにも勿体ない精神を発揮する民族性の持ち主。

 捨てられて良かった~、とプライドくんが納得出来るだけの成果が欲しい。

 

「なになに? おにーさんってば、そんなにわたしのパンツが気になってたの〜? もー、早く言ってくれればいいのに〜♡」

 

 あ、ダメだわこれ。好感度高すぎて、俺に下着を見られることになんのデメリットも感じてないわ。

 俺は心を鬼に──もとい、"おじ"にしてお説教を始めた。

 

「はいストップ! 一旦手を止めて下さーい。……このパンチラは出来損ないだ、トキメキがないよ。レンリさんさぁ、俺は別に下着が見たいんじゃなくて、チラッ……が欲しいの。見えそうで見えないからこそ、追い求める浪漫が生まれるわけ」

 

 準備して挑んだ迷宮のボスとかがさぁ、置きっぱなしの宝箱を指差して『ご自由にどうぞ』とか盛り放題のメシ屋みたいなこと言い出したら、ええ……? ってなるじゃんね。それと同じよ。

 

「うっわ、訊かれてもないのに急に早口……♡ 勝手に拘りとか押し付けて来るの、ちょっとキショいね♡」

 

 キショくない。

 

「ま、メスガキ初心者のお子ちゃまドラゴンにはまだわからないか……この領域(レベル)の話は」

 

 仮にもメスガキを名乗るなら、無自覚パンチラと小悪魔パンチラのどちらか一方は必修科目だろうに。

 全く……頼めば笑顔でパンツ見せてくれる可愛い彼女とか、そんなの単なる男の夢じゃねーか。最高かよ。

 

「じゃあ別にいいじゃん!」

 

 悪いが大人には『それはそれ、これはこれ』っていう便利な言葉があってだな……。

 

「えー、とにかくオニキス先生の採点では、先程の振る舞いはメスガキとして赤点を付けざるを得ません。悔しかったら再提出して、どうぞ」

 

むむむーっ! お、おにーさんなんて……おにーさんなんて……

 

 俺のダメ出しに対し、頬を膨らませた彼女は負けじと指先を杖のように突き付け──反論の言葉に代わり、必殺の呪文を唱えた。

 

「──わたしでドーテー捨てるくせにぃ~……!」

 

「唐突に未来を予知するのは止め給え」

 

 …………。

 ……。

 

 Take2

 

 大声を上げたレンリさんが、内股でスカートを抑えながら勢いよく飛び退いた。

 

「あ~!? このおにーさん、今わたしのパンツ覗こうとした~!」

 

「は? み、見てないが!?」

 

「言い訳とかダッサ~♡ さてはおにーさん、彼女とか居たことないでしょー? 大人のくせして、そうやって負け犬みたいに這いつくばらないと、女の子のパンツを見ることも出来ないんだ~? カッコ悪~い♡」

 

「わァ……あ……」

 

「あーあ、泣いちゃった♡ いい大人がなっさけな~い♡ うーん……何だかカワイソーになってきちゃったし、ちょっとだけ見せてあげよっか? ……はい、どーぞ♡」

 

 自分の可愛さには特別な価値がある。そんな世間を見下した態度を隠そうともせず、彼女はスカートの裾をゆっくりと持ち上げ……あともう少しといったところで、その手をパッと離してしまう。

 

「あっ……!」

 

「はい、おしまーい♡ ぷぷっ、『あっ……!』だって~♡ あれあれ~? もしかして、本当にパンツ見せて貰えるとか思っちゃったんですかー? くすくす、そんなことあるわけないじゃん♡」

 

「ぐっ……このっ!

 

「きゃっ……!? あ、あれ? おにーさんってばそんなに怖い顔して、どうしちゃったのかなー……? あはは……も、もしかして本気で怒っちゃったり? やだなー……ほんの冗談なのに……」

 

「ガキが……! 大人を舐めたらどうなるか、身体でわからせてやるっ!」

 

「あっ……♡ や、やだやだっ♡ 謝るっ! 謝りますからぁ……♡ お願いだから、ひどいことしないでっ♡ わたしまだ、彼氏とちゅーもしたことないのに……♡」

 

 その瞬間──ガチャ、と近くの部屋の扉が開いた。

 自らの邸宅であるにも関わらず、恐る恐るといった様子でジョナサンが顔を覗かせる。

 

「うぐぐ……顔が良すぎて力が出ない……!」

 

「センセー、まだ時間掛かりそうですか~? オトナを舐めたらどうなるのか、早く教えてくださーい♡ あ、もしかして今日は自習ですか~? ──それじゃあお耳から順番に舐めてみよーっと♡」

 

 彼が目撃したのは……マウントポジションで両手をがっぷり四つに絡め、ニヤニヤと余裕の笑みで迫るレンリさん。

 そして廊下の床に押し倒され、今まさに耳舐めF◯NZAドラゴンの餌食にならんとする、か弱いオニキスくんの姿であった──。

 

 不思議なことに、義父殿はヤベー奴に遭遇した時のような表情を俺たちに向けつつも、ゆっくりと言葉を絞り出した。

 

「……君たち、さっきから僕の部屋の前で何をやってるのかな……?」

 

 ええまあ、メスガキとわからせごっこを少々。

 

 




 書籍化進行ちゅう♡
 レーベルはKADOKAWA『ファミ通文庫』様。
 担当イラストレーター様は『nima』先生です。
 他、情報が解禁され次第こちらやTwitter等でお知らせいたします。

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マシュマロ

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